禁断の技
どういうわけか無言でいるユユリは暴風が収束してきた頃にようやく口を開いた。
「僕とカムイの精が混ざり合って反応してしまったんだ。カムイの転移の能力は空間に干渉する。だからある程度の大きさで壁を作った。正確には壁からはみ出した精は中心に転移し、その中心に移動した精に押し出された精は壁際まで押し出され、そしてーー、という繰り返しで暴風のような形になった。あの中にいたら僕もカムイもミンチになっていたよ」
精が尽きたのか、暴風は収束し、やがて消えた。後には丸い大穴が空いて、大地からえぐり取られた土と草木が粉々になってばら撒かれた丸い土砂が山となって積み上がった。何の施設もない、通りからも外れている荒野で良かった。犠牲は案山子だけで済んだ。この世界ではまだ私有地の方が少ない状況なので賠償請求される事は無いだろう。
「思っていた結果と違うね。開墾には使えるかもしれない」どこか冷めた口調でユユリは言った。
「被害が大き過ぎるな。自暴自棄になった受験生の部屋みたいだ」
「じゅけんせい?」
「ああ、いや」
てっきりまたユユリの追求が始まると思ったがうっかり吐いた軽口には触れず、静かな声色で彼女は言った。
「この技は二度と使わない」
俺としても同意見であったがユユリの様子が気になったのであえて質問した。
「大きな敵には有効かもしれないぞ。技名はそうだな、“テンペスト”なんてどうだ?」
「何だっていい。使わないって言ったでしょ」
どうせ褒めてくれないし、とユユリは小声で付け加えた。
今褒めると確実にご機嫌取りのような雰囲気になってしまう。
ああ、そうだな、と嫁に怒られた旦那のような口調で仕方なしに答えた自分が惨めである。気分を変える為に腰につけた鞄からサンドウィッチを取り出して言った。
「精も尽きそうな感じがする。飯にしよう」
「うん!」ユユリは無邪気な笑顔で言った。
俺は安心して鞄からランチョンマットを取り出して地面に敷いた。
「見つけた」
どこかから声が聞こえた。ちょうどサンドウィッチを食べ終えて俺もユユリも一息付いていた時だった。




