辻褄合わせ
「さて、問題です。これからどうやって賞金を貰えば良いのでしょうか」
ステッラは自身も協力した事も忘れて元の守銭奴に戻っていた。俺たちは湖畔で円陣を組み、各々腰を下ろして今後の事を話し合った。もちろん、バランタインとハイオルトも加えて。
「主犯格は明らかにバランタインです。でもこれまでの経緯を聞いてしまってはエルシアの組合に突き出すのも忍びない」わざとらしく敬語で話すステッラは皮肉たっぷりで周囲を威圧した。
俺の中ではある程度筋書きは決まっていた。ふとユユリの方を見上げると満面の笑みで両手の拳を握って頷いている。お見通しか。
「提案がある」皆の顔がこちらに向いた。俺は内心良心を痛めながら話し始めた。
「巨人退治が依頼内容だった。これから巨人が出没しなければ依頼は達成したと言って良いと思う。確認するまでもないがバランタインもハイオルトも侵入者にモズクをけしかけるつもりはないな?」
二人は頷いた。それを確認して俺は続ける。
「勿論、エルシア労働組合からも証拠の提示があると思う。そこでこれだ」俺は傍に置いたパラダイスマンゴーを手にした。「ご存知の通り、この果実は実が弾けただけで周囲の人に幻覚を見せる。巨人は幻覚だった。そしてそれを栽培していた男達を逮捕すれば全て解決、という筋書きはどうだ?」
我ながら酷い筋書きである。詐欺に近い。そしてそれにはもう一仕事必要になる。
「男達を再び呼び寄せるにはどうすれば良い?」リュウシュウハは真面目に問いかける。犯罪すれすれの事態には目を瞑ってくれているようだ。「要は人身御供だろう。奴らがしていた事だ。因果応報なら仕方ない」
王族の許しが出た事で俺の思考もエンジンが掛かりだした。「任せてくれ」
エルシアに戻るまでにまずは船頭の記憶をどうにかする必要がある。船頭と共にいるジジへとジャンヌがメモ帳を渡し、再び巨人となったモズクに船を襲撃してもらった。もちろん茶番である。戦いの終盤、予定していた通りにモズクはパラダイスマンゴーを粉砕した。ジジは息を止め、船頭は昏倒した。彼が目覚めるまでに船に乗り込み、ジジの操船により船を出す。目覚めた時にパラダイスマンゴーの破片を差し出し、これによって昏倒し巨人の夢を見ていたという話を吹き込んだ。もちろんハイオルトの楽園に入るまでの記憶も夢であると思い込ませた。ハイオルトとバランタインはモズクの引力操作で秘密裏にエルシアまで飛んでもらった。
禁制品を発見した事でおそらくこれが巨人被害の原因だろうという事をエルシアに戻ってから組合に話した。
「つまり幻覚だったと?」掲示板のあるカフェに来た組合員は明らかに不審な目つきで俺たちを見た。もちろん他にも目撃者はいるが殆どが外部から来た賞金稼ぎであるし、この手の噂はそれなりに納得できそうな理屈があると簡単に風化するものだ。
「証拠ならあるぞ」ステッラは飽くまでも強気の姿勢を貫き通して言った。「その被害にあったとかいう連中の連絡先を教えてくれないか。私たちから話す」
組合員が渋りつつ話した内容に俺たちは顔を見合わせる事態となった。そもそも巨人退治を依頼し賞金を提示したのはその男達であったのだ。
組合員が帰った後に俺たちはカフェで再び会合を開いた。
「つまり男達は禁制品を諦めていなかったという事だな」リュウシュウハはどこか馬鹿馬鹿しいという面持ちで吐き出すように言った。
「おそらく賞金も出すつもりはないだろう。巨人を退治したら今度はその人たちを宿根にして口封じをする」俺なりに分析した結果を話した。
「タダ働きか!」ステッラは机を叩きながら言った。
俺はステッラをなだめつつ言った。「そうでもないさ」




