人工楽園
それから船頭に指示して下流まで船を進ませた。途中二股に分かれ、リュウシュウハの指示により左手の支流へと向かった。おそらく航路からは外れている。切り立った崖はなりをひそめ、ジャングルのような装いを見せ始める。
木々の上空にジャンヌの姿が見えた。あの位置にユユリがいるという意味なのだろう。何とか上陸できる場所に船を横付けさせてもらい、俺とリュウシュウハとステッラが上陸する事にした。ジジが残ったのは船頭が逃げないための見張りである。
「山脈の合間にこんなところがあるとはな」俺の呟きは妥当なものと思われる。ジャングルの周囲を山々が取り囲み未踏の地を眼前に繰り広げている。
「こんな場所があるなんて訊いた事がない」ステッラはフィーリアに指示して植物を退けて道を作りつつ歩いている。彼女が居なければ歩行するのも難儀していた。「実の成る木が多いな」
ステッラの言う通り、そこら中の木に実が実り甘い香りが漂っている。その匂いに釣られて虫が来そうなものなのにまるで見かけない。
「人工的な空間に思えるな」リュウシュウハは考え込みながら呟いた。「農地、あるいは人工植物園のような偏りがある」
秘密裏に開発された土地にしては人の痕跡がない。偽物の楽園のような風景を尻目にさらに進むとようやくジャンヌのいる場所に辿り着いた。
木々のない開けた空間に小さな丘がある。菜の花が咲き誇る、その中心附近にユユリが居た。
「勝手に飛び出すな」俺は開口一番言ったものの、ユユリは聞く耳を持っていない。どこか惚けた顔つきで地面を見つめている。
「危険な奴かもしれないだろう」漸くユユリの元に辿り着いてから再び俺は言った。
振り返ったユユリの頬には涙が流れていた。「カムイ」
「何だ」と答えてから先ほどまでのユユリの視線の先を見た。




