死者復活と精霊復活
「少し気になる事がある」俺は二人の和解を見て、踏み込んだ質問をしても許される雰囲気を感じて言った。「ステッラの人質って誰だったんだ?」
「フィーリアだ。ゲヘナには精霊を拘束する術がある。他の国には無い技術だな」
納得しつつももしユユリが拘束されたら、と考えて恐怖がよぎる。
「ゲヘナ以外にその技術が流出したという記録はないから安心しろ」ステッラは俺の心を読んだような事を言った。
俺は屈伸をしてみた。だいぶ体が軽くなった。それにしても回復が早すぎる気がする。
「拡張薬のおかげだ。精の循環により肉体的損傷、あるいは疲労を即座に治す」立ち上がったリュウシュウハもまた俺の心を読んだような事を言った。
寿命を半分にするだけのことはあるなと、と思った。
「さて、改めてパーティーの結成という事でいいか」リュウシュウハは皆の顔を見渡して言った。「このパーティーの目的はいくつかある。まずはシンアルにあるバベルの塔へ赴き、死者復活の術を知る事。そしてそれに付随する形になるが、現シンアル政府の打倒。そして私の借金の返済だ」
叡智の獲得と大規模なクーデターという大義と下世話な願いに一同に乾いた笑いが起きた。
「どうした?」俺はステッラの神妙な顔つきに思わず質問した。
「死者復活とは何だ」
ステッラは真剣な眼差しで問いかけてくる。なので俺はこれまでの経緯ーー、ユークリウスの襲来とハルナギの死、そしてユユリが現れてユークリウスを退け、リュウシュウハ達と出会い、この町に来た事を告げた。
「そうか」
そう言ってからステッラは黙り込んだ。
「何か知っているのか? 知っているなら教えて欲しい」
俺の勘は彼女は何かを知っていると告げている。だがステッラから出てきた言葉は予想外のものだった。
「バベルの塔から流出した技術によってゲヘナの国は反映した。この話はシンアルではタブーとされているが、その昔、シンアルの王族を追われた男がバベルの塔で得た技術を駆使して立ち上げた国がゲヘナであると言われている。差別云々の歴史を問うつもりはない。だが、そういう意味ではゲヘナとはシンアルの別の歴史を辿った同じ国と見ることも出来る」
「知らない話だ」リュウシュウハは目を丸くして言った。「本当なのか? いや、疑うつもりは無いのだが」
「ゲヘナでも一部の者しか知らない。ゲヘナ創世記には『客人参じて国を成す』としか書かれていない。だが、外伝に当たる『ナチチ記』にはその客人が塔の技術を盗んできたとある。塔と言えばバベルの塔しかない」
「それが死者復活と何の関係があるんだ?」薄々話の流れは分かってきたものの、先を促す意味で俺は問う。
「死者復活は知らない。だが、精霊復活の秘術はゲヘナには既にある」
その場にいた全員が固唾を飲んだのが分かった。
「その方法を君は知っているのか?」リュウシュウハは厳かに言った。
すまない、とステッラは頭を下げた。「私が幽閉されていた場所とは別の部署で研究されていると聞いただけだ。不確定な情報で混乱させてしまったな。だが、私の研究していた精霊結合と遠くない技術であると私は睨んでいる。そしてこれは勘だが」
ステッラは自信がなさそうでありながらも明確に言い切った。
「精霊の復活と人間の復活は同じ技術を使っている」
「もしかしたら目的地の変更が必要になるかもしれない」リュウシュウハは手近にあった椅子に座り、考え込みながら言った。
「俺はこの水み国しか知らない。シンアルとゲヘナではどちらの国へ行く方が危険なんだ?」
「シンアルは割に貿易も盛んです。入国するのはさして難しくもございません。ただ、バベルの塔に関しては、王宮への侵入になります。それなりの覚悟は必要です。ゲヘナは国自体が排他的なので入国には手間取ります。そして国に入ってからも凡そ常識的ではない事が待ち受けています」
ジジは淡々と語る。常識的ではない事について聞きたかったが部屋のドアをノックする音に我々は会合のお開きを悟った。




