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カムイは神無球に転生する

ファンタジア編

神無球と呼ばれる世界に来て数年が過ぎた。


いわゆる中世ファンタジーのような世界に心踊らなかったと言えば嘘になる。


まずこの世界は天動説が実現した場所である。光源となる太陽のような衛星が星の周りを巡る。月らしきものも夜には現れるが、それとは別に計都と呼ばれる星が神出鬼没に現れる。地上間際に降りてきたのを見たと証言する村の若者はさすがに法螺吹き扱いされた。


四大陸で構成されていて、星の中心にはバベルの塔があり、その周辺に星の都市国家がある。バベルの塔の上半分は朽ちていて、その昔に神の怒りに触れたから雷を落とされた、と教科書で習った。


海の果てには断崖絶壁があり、地の果てから落ちた海水はエーテルとなり再び空に昇って雲となる。星の下に何があるかを知る者はいない。禁忌の場所とされているからである。


俺の住む村「ファンタジア」は四大陸で一番小さな大陸である「水み国」にある小さな村だ。俺はある日そこに住む少年の姿となって目覚めた。農道でぽつねんとしていると母親と思しき人物から日本語で呼ばれた。


「ご飯だから帰ってきなさい」


返事をした自分の声が甲高くて驚いた。そして不意に経験していない記憶が頭になだれ込んできた。この星の一般的な常識と俺の体の持ち主の記憶が我が事のように舞い降りてきた。


同時に、元の世界での記憶もーー。

俺には好きな女の子がいた。女友達という間柄にはなっていたが、何でも相談し合える良い関係を築けていた。彼女にはストーカーが付きまとっていて、それについて対策を練ろうと待ち合わせしていた時のことだ。この件が終わったら告白しようと思っていた。その為に恋愛指南マニュアルも沢山読んだ。

公園の入口から小走りで来る彼女の向こうに人影が見えた。俺の元にたどり着いた瞬間に彼女は倒れ、その背後には血のついた包丁を持った男が立っていた。まだ間に合うかもしれない、そう思って俺は即座に彼女の体を庇った。男は俺の背中を滅多刺しにした。

俺はおそらく方法を間違えた。まずはストーカーを無力化すべきであった。そんな後悔をしてから徐々に意識が消えていった。


おそらく俺はそこで死んだ。




「何をしているの。ご飯冷めちゃうよ」という母親の声で我にかえる。


生返事の後に手を繋いできた母親は言った。「怖い顔をして、どうしたの」


その後に一声「誰だ、お前」といずこから声が聞こえた。


母親にその事を訪ねると一瞬顔色が変わった。それから取り繕うように言った。


「起きたまま夢を見ているの? 変な子ね」


母の笑った顔を見て俺も笑った。




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