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第11話 扉から女王陛下



(だ、誰――この金髪お色気美人さんは――?)


 わたしは、テオドール様に抱き着いた女性の姿を見て、びっくりしてしまった。

 金色のゆるやかな巻き髪に、少しだけつった碧色の瞳。そして、ローブ越しにも分かる大きい胸にくびれた腰……。


 テオドール様から手を離した私は、両手で自分のまな板のような胸を触って落ち込んでしまった。


「アーレス様、離れてくれませんか?」


 テオドールが促すと、アーレスと呼ばれた女性は、彼の身体から離れた。


「せっかくテオドール伯爵が研究所に現れたのに――ご挨拶ですこと……」


 少し寂しそうにアーレスと呼ばれた女性は答えた。

 優雅な物腰に、ゆったりとした話し方、それにテオドールが敬語を使っている様子からして、彼女はおそらく高い爵位にある方の令嬢か何かなのだろう。

 わたしがアーレス様を見ていると、彼女も私の方を見てきた。

 

(ちょっとだけ、つった碧色の瞳……どことなく見たことがあるような……?)


 そうして彼女は、テオドールに視線を移して問いかけた。


「こちらのお嬢さんは、あなたの使用人ですか――?」


(や、やっぱり、使用人としか思われなかった――!)


 すぐに自分がただの使用人だと、アーレス様にはばれてしまった。

 どうしようかと、わたしが慌てふためいていると――。


「アーレス様、彼女はただの使用人ではありません。私の恋人になります――」


 テオドール様がきっぱりとそう言い切った。


(直球――そして、使用人というところは否定しなかった――)


「恋人? 着飾ってはいますが、どうみても平民でしょう? お妾さんにするのですか?」


 アーレス様は、ずばずばとテオドール様に向かって口にする。


(うう……手厳しい……妾とか、なりたくないよ~~)


 わたしの胸にぐさぐさとアーレス様の言葉が刺さって辛くて仕方がない。

 落ち込んでいると――。


「私は、彼女を妾にするつもりはない」


「でしたら、遊びでして――? おかわいそうですわ」


「違います、正式な妻として迎える予定です――」


 テオドール様の言葉に、アーレス様は怪訝な表情を浮かべていた。


「貴族は平民を側妻にしか出来ませんことよ」


 そんな中、研究所の奥にいる男性魔術師から、彼女に声がかかった。


「ごめんあそばせ、実験の途中でしてよ――それでは――」


 そういうと、アーレスは建物の奥へと消えていった。


(あまり、納得はされていなかったわね……)


 テオドール様がため息をついている。


「あの、もしかしてあの方が、例の――?」


「そうだ、変な女だ――爵位が上というか――そもそもどうして、私に絡んでくるのか、目的が不明瞭なんだ」


「その、テオドール様に、こ、こ、こ、恋をされているのでは――?」


 わたしの声がついつい上ずってしまった。


「そうではない気が、なんとなくするんだ――」


 うんざりした表情をテオドール様は浮かべて、こめかみを指で叩いていた。


「そうではない――?」


 それ以外の理由で異性に抱き着くのは、どういう理由だろうか――?


(テオドール様が、鈍いだけなんじゃ……)


 そこで、私ははっとなった。


(そういえば、オルガノさんどこに行ったの――?)


 途中まで一緒だったはずだが、周囲を見渡しても、彼の姿は見当たらなかった。


「アリア、すまない。私は上の階にいる魔術師長様にあいさつにいかないといけない――少し、このフロアのソファにでも腰かけて待っていてはくれないか――?」


「は、はい。わかりました。テオドール様、お気をつけて――」


 そうして、わたしは広いフロアで一人きりになった。

 手持ちぶさたになってしまったので、どうやって時間をつぶそうかなと、うろうろと歩きまわっていると――。


 魔術研究所の扉が開いた――。


 逆光で、誰が入ってきたのかは良く見えない。


 目が慣れるまで、少しだけ時間がかかる――。



「あら? あなた、ネロさんの妹さんではない――?」


 中に入ってきた人物が私に向かって声をかけてくる――。


 そこに立っていたのは――。


 生成り色の綿モスリンで出来た豪奢なドレスに、赤いカシミアショールを羽織った女性。亜麻色の長い髪をしていて、愛らしい顔立ちに丸くて大きな黄金の瞳がきらきらと輝いている。


「そうでしょう――?」


 平民にも気さくに声をかけてくれる、優しい雰囲気の同年代の女性の正体は――。



「女王陛下――」


 この国の女王陛下ティエラ・オルビス・クラシオン様だったのでした――。





 女王陛下は、同じ世界観の「記憶喪失の癒し姫」の主人公です。

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