酒は飲んでも呑まれるな!
旅館で朝を迎えた。
外はまだ秋だと言うのに雪景色が広がっていた。
最近温暖化が酷いというのにすごいな。
さすが北海道。
雪原の白い世界は最高だ。
これで目の前にいるやつがいなければもっと最高だった。
「ぷっはぁ~!朝酒はいいねぇ」
目の前で酒盛りしているこの男は俺の父親、明石影政だった。
明石影政だった!
「ふざけんな!朝っぱらから息子とその恋人の居るところで酒盛りすんな!仕事どうした!」
「仕事は夜だ。今日は二年も逃げてた勇者がぼろを出した。昨日の女性二人を匿ったおかげでなぁ。現在、北海道に住む学生の実働隊が潜伏先を取り囲んでいるらしいぜ。俺は何かあったときのフォローだ」
そんな情報俺達には来ていない。
まぁ俺達の所属は日本南関東支部だからなぁ。
「まぁいいじゃない。今日の朝ご飯楽しみね。昨日の鰻の蒲焼きは美味しかったわ。一体どんな料理が来るのかしら?」
もう気にすると疲れるだけだな。
キャリーのように朝ご飯のことを考えよう。
「酒のつまみがいいなぁ」
「お前もここで食うのか?」
「ったりめぇだろうが!かわいい息子とかわいい義理の娘と酔いながら朝飯を食いてぇんだ。キャリーちゃん。酌を頼めるか?」
「え?まぁ別にいいけど」
「キャリー、調子に乗るから一回だけでいいぞ」
「それでも一回は許してくれる当たり、家族愛を感じるぜ」
「なら一回も許さないけどいいのか?」
ここで一回もやらなかったらこいつは駄々こねるに決まってる。
「はぁ!?そりゃ困るぜ!義父には義理の娘に酌を注いで貰う義務があんだよ!」
ほれみろ。
そんな義務ねぇっつうの!
ふらふらしながらこっちに寄ってきた。
「酒くせぇ。寄るんじゃねぇ!」
「酒を飲んでるのに酒臭くないわけねぇだろうが!バカかおめぇはぁ!」
バカはてめぇだ!
自覚あるなら寄ってくんな!
「ほら。おめぇも飲めって」
「俺は未成年だぞ?」
「かてぇこというなよ。俺なんて中坊の頃から酒に煙草に色々やったぞ?」
この不良が!
俺はこれでも学校では根暗優等生を演じてんだぞ。
「いいからのめぇ!」
「ぐぼっ」
こいつが持っていた酒瓶を口に押しつけられる。
溺れる溺れる。
「てめぇ・・・」
やべぇクラクラしてきた。
これなんだ?
酒瓶のラベルを見る。
度数66%だと・・・
「ほれもっと飲め飲め!」
――――――グビグビグビ。
「良い飲みっぷりじゃねぇか!くぅ!わけぇのにやるじゃねぇの!」
「あぁん?てめぇ誰の所為だと思ってんだ、ぶっ殺すぞ!」
「おいおい。怒ると酔いが回るぞ気い付けろ!」
知るか。
あー頭がぽわぽわしてきた。
顔も熱いし。
あれ?天井だ。
俺倒れたんか。
「光!?大丈夫?」
「あー。キャリー」
俺の頭を膝に乗せてくれるキャリー。
俺はそんなキャリーの顔を俺の方に寄せて唇を合わせた。
「んー!」
俺はキャリーの口の中に舌を入れる。
所謂ディープキスってやつだ。
「ぷはっ!いきなり何するのよ!」
「わりぃわりぃしたくなったんだ急に。嫌だったか?」
「嫌じゃないけど・・・さ」
顔を真っ赤にしちゃってよ。
かわいい反応しやがって!
「ひゅーひゅー!わけぇもんのお盛んな行動を見たら俺もヤりたくなってきたな。朝飯前に小猫ちゃんでも可愛がってくるか!」
クソ親父は窓を開けて部屋から出て行った。
どっから出てくんだ。
あーやべぇ。
顔あっちぃ。
「なんか眠くなってきたな」
「もうすぐ朝ご飯がくるわよ。しばらく寝てなさい」
「あー」
俺はそのままキャリーの膝で意識を落とした。
*
あーもう昼だ。
頭痛い。
あのクソ親父、今度会ったら覚えてろよ。
「うっ・・気持ち悪っ!」
「あーもう。ほら路地裏で吐いて来なよ」
俺は路地裏に行って胃の中の物をぶちまけた。
ちなみに朝ご飯は鮭の塩焼きに味噌汁。卵焼きだ。
味噌汁はカニが入ってたらしいが、俺はその記憶がない。
酔っ払って記憶が飛んだからだ。
「せっかく高い金払ったのにこんちくしょ!うっ・・・」
「あーはいはい。出すもの全部出しちゃって」
キャリーは俺の背中をさすってくれる。
吐きすぎて咽が痛い。
「はぁ・・・とりあえず釧路支部にレポートを提出して本部に戻ろう」
「レポート提出したら本部に戻って今日は外出は控えましょうか」
「そうだなキャリー。正直釧路支部に行くのもしんどい」
俺はふらふら歩いてると人にぶつかった。
小学校低学年くらいの小柄の金髪の少年だ。
「いたたっ。あ、ごめんなさい大丈夫ですか?」
「大丈夫で・・・おぇぇぇぇぇ」
「――――!?」
俺は小柄の少年に腹に思い切りリバースしてしまった。
少年は悲鳴にも近い声を上げる。
「あ、ごめんなさい!服、弁償します」
やらかしてしまった。
なんとか耐えるべきだった。
「ごめんなさい少年。彼は朝から具合が悪くって。ちゃんと服は弁償するわ」
キャリーがフォローを入れてくれる。
フォローしてくれるのはありがたいけど英語じゃこの子には通じないんじゃないか?
「あ、いえ問題ないですよ。ちょっとびっくりしましたけど。服は洗えば大丈夫です。急いでいるんで僕はこれで」
日本語で返答する少年。
まぁ英語が理解できるだけでも結構スペックは高いな。
「そう。本当にごめんなさいね」
「いえいえ。では僕はこれで」
そういうと少年は走り去っていた。
キャリーは凶相の笑みを浮かべ俺を見る。
「もう!光!彼に失礼でしょ」
「あーやらかしたよ。しかし彼、英語が通じるなんてすごいな。見た目は小学生くらいなのに」
「そうね。日本人であんな流暢に英語を話せるなんて若いのにすごいわね」
ん?今なんて言った?
話が噛み合ってるようで噛み合ってない気がする。
「彼日本語で応対してたよな?」
「いや、どう聞いても英語でしょ?」
あ、これはスキル翻訳か。
じゃあ今の彼は勇者か?
少なくともスキル翻訳があるのはたしかだな。
「俺は日本語に聞こえていたぞ。彼は勇者の可能性がある」
「あらまぁ。でも今の貴方は調子が悪いわ。彼のことは放っておきましょう」
「それもそうだな」
仮に対峙しても本調子で無いこの状況で勝利を汲み取れるとは思えない。
俺達の身体能力は一般人程度なんだ。
異世界に行って鍛えた勇者に調子が悪いときに勝てるはずも無い。
「わたし達のスキルは集中力が肝なんだから」
「わかってるよ」
俺達AACが何故異世界にも行ってないのにスキルを持っているか。
それは俺達が肉体改造を入所時にされるからだ。
脳を改造してスキルを得られる身体になる。
ステータスを見る機械もその時に埋め込まれた。
身体も改造すればいいじゃないかとは思う。
実際昔は行われていたらしいが。
しかし身体の改造は寿命を縮めてしまうので本部長、クソ親父の世代ではもう撤廃されていたそうだ。
「せめてちゃんとステータスを見とけば良かったな」
「そうね。まぁいいでしょ。危険性はないんだし。また見かけたら確認すればいいわ」
キャリーの言うとおりだな。
もう、このことに関して考えるのはやめた。
「吐いたから段々楽にはなってきた。さっさと釧路支部にレポート提出して、本部の宿泊寮で休もう。キャリーさえよければ耳かきでもしてもらおうか?」
「はいはい。じゃあ行きましょうか」
行こうって言うほど遠くも無いけどな。
俺達は釧路支部に向かって歩き出した。
行く途中で何度も吐いたことは言うまでもない。
*
「あのときは我慢したけど、正直汚いなー」
お腹がゲロまみれの少年は、路地裏に来ていた。
来る途中でゲロまみれにされたので服を脱ぎすてて別の服に着替えるためだった。
何も無い空間から服を取り出した着替え出す少年。
「しかしあの人大丈夫かな?具合でも悪かった?見た目は僕と同じ高校生くらいだったからお酒とかじゃないだろうけど」
この少年は小学校低学年の見た目をしていたが立派に高校二年生だった。
「まぁ僕の実年齢はもう成人してるんだけどさ」
そうこの少年は光達の予想通り、異世界帰りの勇者だった。
3年間の異世界を周り、魔王を倒した。
本人は異世界から帰還するつもりはなかったが、諸事情により送還されてしまった。
「しかしあの異世界侵略対策委員とか言う奴ら、マリンに一体何をしたんだ。彼女が口を割るとは思えないから酷い目に遭わされてるだろうな」
少年はぼそぼそ独り言を続ける。
――――ブゥブゥ。
ポケットが振動した。
少年はケータイを取り出す。
数年前から大ブレイクして今や使ってない人はいないSNSの通知だった。
「不測の事態!?一体何があったんだ!?」
この少年はそうつぶやくと闇の中に消えていった。
そして誰もいなくなった路地裏にはゲロまみれの服だけが残されていた。
一読ありがとうございます。
なんかハイペースで書いてしまいました。
異世界物なのかなこれ?
書いてる自分でもよくわからない今日この頃ー




