AACの存在を知っているとどうなる?
これから父親の乱交パーティーの後処理をしないといけないと思うと憂鬱だ。
俺とキャリーと青谷は一番最初のホテルへと向かっていた。
そしてついたのは白い建物のホテルだった。
おいおい。俺はここを知っているぞ。
「ここ政府公認国際旅館だろ?俺も泊まったことがある。そりゃ後始末の清掃しなかったら怒られるわ」
「AACに依頼した時点で気づくべきだった。一般的にはAACの存在をほとんど知られてないんだから。全く恥さらしにもほどがある」
AACは政府の組織ではあるが、公にできない殺しをしているため世間一般には知られていない。
国会議員以外の公務員でも警察庁長官くらいしかAACの存在を知らされていないだろう。
「あの人はそういう人ですもの。絶倫王子同様、そういう奴と割り切るしかないわ」
キャリーの言うとおりだな。
もう気にしない。
俺は休みをもらってバイトしていると思えばいいんだ。
なにせ親父は居ないんだからな!
ホテルに入るとみるからに私服の人が二人、おそらくここの責任者だと思われるメガネをかけたキャリアウーマンが一人こっちへ来た。
「てっきり昨日の方が来られると思っていたのですが。初めまして、わたしは亀戸と申します。先の申し上げておきますと、謝礼金は用意しておりません。ご了承ください」
どういうことだ?
「依頼料は支払っているでしょう?謝礼金なんて恐れ多い。父が迷惑をかけたので、仕事はきっちりさせていただきます」
AACに仕事を依頼しているということはその時点でお金は発生しているはずだ。
つまり謝礼金とは、依頼料に加えて感謝の気持ちとして渡すお金と言うこと。
そんな恩着せがましいこと頼むわけないし、今回は俺達は謹慎処分。
謝礼金を渡されてもあのクソ親父に渡さなければいけないとなると、むしろ要らない。
「なるほど。あのゴミは後始末に息子を寄こしたのですね。しかし聞いていないのですか?今回は依頼料は発生してはいません。ここに来る人間の給料は謝礼金のみ、条件がのめない場合異世界侵略対策委員様方の宿泊は永久にお断りさせていただきます。という形での依頼で提出させて頂いたはずですが」
あーそういうことか。
つまり実質ただ働きだけど責任を持って掃除しろってことか。
そして断る場合、連帯責任としてここには泊めないぞと。
はーそこまで怒らせたのかあの親父は。
「問題ありません。僕たちは今回給料が出ておりません」
「ワターシ達、サービスでキテマース!」
「まぁほとんど仕事するのは明石だし」
まぁスキルを使えば一発だがな。
スキルはAACの仕事以外で使うつもりはない。
ただの清掃作業に見えるけど、れっきとしたAACの任務だし。
「あたしらより若いのによくやんねー。まぁあたしには関係ないけど」
「どういうことですか?」
私服の二人のうちの一人が関係ないとか言うけど一体どういうことだ?
「あんたの父親にわたし達は酔った勢いで襲われてね。わたし達はこんなことになるなら辞めますって辞表を出したのよ」
この女達正気か?
どっかのビジネスホテルなら普通の光景だけど、ここは政府公認国際旅館だぞ?
俺は後ろの私服の女性達二人に聞こえない声量で亀戸さんに話しかける。
「あのー亀戸さん?」
「なんですか?」
「あの二人ここを辞めたらどうなるかはご存じなのでしょうか?」
「おそらく存じてないでしょう。しかし我々はここへの配属が決まった人間に最初に了承を得ています」
つまり、去るとどうなるかは先に説明してるから辞めるというなら忘れてようと止めはしないと。
徹底してるな。
もう辞表を出しているなら、こういう人が取り消すとも思えないからほっとくか?
うん面倒だしほっとこう。
「そうですか。とても正気とは思えなかったのでつい」
「失礼ですが、辞めたらどうなるかは誰か聞いて?」
「いいえ。あくまで予想です。しかしその反応を見るに予想は正しいようですね」
「えぇ。あなたはお若いのに組織へを身を置く身。そのことを説明もしていなのに中々聡明ですね。あの父親を持ちながら全然似ておりません。ぜひ任期終了後に欲しい逸材です」
亀戸さんは社交辞令とはいえ俺のことを評価してくれたのだろう。
あの二人の馬鹿さ加減をみてからもわかる。
原因があのクソ親父の所為ということが少し嫌な気持ちにもなるけど。
「過大なる評価痛み入ります。一応父がしでかしたことですので良心として質問させていただきました」
「構いません。それでは清掃作業の方をお願いします。貴女達は早く帰りなさい。ここでの出来事を機会があれば活かしてがんばってください」
機会があればって言ったよこの人。
「お世話になりました~また」
「はいありがとうございます亀戸さん。また会うことがあればよろしくお願いします」
この様子だと亀戸さんの予想通りどうなるかを忘れているのだろう。
もしくは説明をちゃんと聞いていないかのどっちかだな。
俺は二人の帰る方向を見る。
車に乗せられる二人を見た。
おそらく送迎か何かだと言って乗せたんだろうな。
俺は再び亀戸さんに向き直り、部屋への案内をお願いする。
「ねぇ光。彼女と何を話していたの?」
英語でキャリーがさっきのことの詳細を階段を登りながら聞いてくる。
「あぁ。あの二人の行く末だよ。国際旅館の従業員が辞めたらどうなるかわかってるかをさ」
「なんか辞めたら問題あるのか?」
「青谷、お前はバカか。AACの存在を知っている旅館の従業員。これだけでわかるか?」
青谷は少し考え込むが答えにたどり着いたのか手をぽんとする。
「なるほど。あいつらは始末される。秘密保持のために。そのことを知っているかどうかの話か」
「その通りです。あと私も英語は使えますし、それは内緒話にはなりませんよ?」
別に隠すようなことでもなかった。
キャリーもそう言う顔をしている。
青谷だけは驚いた顔をしていた。
「いえ、別に内緒話をしようとはしてませんよ」
「えぇ。ワタクシは英語の方が話やすいから英語で話しただけです」
「なに!?勘違いしていたのは俺だけか!?」
まぁ似非シスターのこともあるし、感覚が麻痺してたんだろう。
こいつもバカじゃ無い。
「そうですか。これは早計でした。あ、着きました。この部屋です」
着いたのは最上階の大きな部屋だった。
そして中に入り部屋の光景をみて絶句した。
部屋の中の臭いが酷かった。
壁の至る所にクソ親父が飛ばしたであろう、液体が残っていた。
しかし絶句した理由そのどれでもない。
何人かの女性が笑顔で裸で倒れていたからだ。
「これは?」
「彼女たちは元勇者。お楽しみの最中の絶頂時に全員死亡したそうです。あの親父のスキルだと言っておりました」
やっぱ死んでるよなぁ。
笑顔だから本望だろうなぁ。
「えぇ。そんなことだろうと思いました」
「明石の父親は仕事でここを借りていたんでしょうか?」
そんなわけあるか!こんな水商売に近い仕事AACにはない。
「まさか?従業員にも手を出したと言っていたでしょう?」
「父が迷惑をおかけして申し訳ございません。すぐに片付けます」
さっさとスキル使って次の場所に行こう。
三件ともこの光景だったら最悪だ。
「はい。モップ等は自由に使って貰って結構です。お願いしますね」
そういうと亀戸さんは歩いて階段を降りていってしまった。
「スキル使えばすぐなんだけどな。死体は汚物と認識してるし」
そして俺はスキルを発動し女性達の遺体とまき散らされた液体、そして壁の染みは綺麗さっぱり消え去った。
「さて、これで仕事は終了だ。報告しに行くか」
「ほんの秒数、僅か3秒よ。彼女びっくりするんじゃないかしら?」
絶対するだろうな。
清掃スキルはかなり便利だ。
――――プルルルルルル。
携帯の音がするのででる。
『あー明石光。今、ちょっと良いか?他にも清掃の依頼があるんだが』
本部長の声だ。
そうか、どうせなら俺が北海道にいるうちに難易度の高い清掃の依頼をこなそうという算段だろう。
しかしだ。
「申し訳ないです本部長。俺は今、謹慎中の身であるので」
俺は謹慎中の身。仕事をするわけにはいかない。
めんどくさいからとかそういう理由じゃない。
『あーもう悪かった。全員の謹慎は解く。ホテルの清掃依頼だけはこなしてくれ。AACにとって今後の不利益になる』
簡単に謹慎処分を解くのな。
まぁ誰もしなさそうな清掃業を秒で終わらせる俺は貴重だよな。
「任務内容は?」
『北海道国際旅館付近で、女性二人の遺体を処理してくれ』
ん?それってここの旅館の名前。
じゃあさっきの二人のことじゃないか?
「それは従業員が辞職したから秘密保持で殺害。その遺体の処理ですか?」
『なんだ?知っていたのか?あぁ今そのホテルに居るんだな』
「そうです。その二人もみました」
『なら話は早い。近くの黒いバンに二人の遺体が入ってる。処理を頼む』
「依頼が全部終わったら、家に戻ってもいいんですか?」
『謹慎処分は解除だが、体裁的に一週間は居て貰わないと困る』
デスヨネー。
知ってた。
まぁいいか。
死体の処理を行おう。
「わかりました。とりあえず死体の処理とホテルの清掃を終わらせて本部に帰還します」
『うむ。では頼んだ』
そして通話を切る。
「喜べ。俺達の謹慎処分は解除だ」
「意外と早く終わったわね」
「でもまだ帰れないんだろう?」
憂鬱だけどその通りだ。
俺達は階段を降りて亀戸さんに声をかける。
「驚きました。もう終わったのですか?」
「確認の方お願いします」
そして亀戸さんと部屋の確認を行った。
「驚いたわ。これはスキルを使用したのですか?」
「はい。俺のスキル清掃です」
「本気で任期終わったらここに就職しないかしら?」
悪くないな。いつのまにかラフな感じになってるし。この人仕事ができる人には優しそうだし。
「考えておきます」
「色よい返事を待っているわ」
「はい」
そして踵を返しロビーへ行く。
なんと謝礼金を渡された。
「これは謝礼金じゃ無いわ。わたしからのお小遣い。あなたたちはまだ学生でしょう?」
「謝礼金として渡すとクソ親父に行くからですか?」
「あら。さすが察しがいいじゃない」
ニコニコしながら言われる。
来たときとは大違いだ。
「あ、あの女性達はもう処分されたそうです」
「仕事が早いわね。それを知っているということはさっきの部屋のように死体の処理で連絡が来たってとこかしら?」
この人も話が早いな。ロビーに人がいないとはいえ、物騒な話をしている。
「その通りです。外に黒バンが止まっているそうなので」
「あーなるほどあれね。どこか山の中で処理するのかと思っていたけど付近とはね」
まぁ俺がいなきゃそんな形で始末されたと思うけど。
少なくても遺体は山に埋められただろうな。
海に流すにしたって浮上する可能性があるし。
「引き留めて悪かったわね。じゃあ任期が終わるまでに死なないでよね」
「そんな縁起でもないこと言わないで下さい」
「ふふっ。ではまたご贔屓に!」
そして一礼する亀戸さんに一礼を返し、俺達は黒いバンへと向かった。
一読ありがとうございます。
前回から一日間が空いてしまいました。
よろしくお願いします。




