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カオスブレイク ~お仕事で世界の均衡を保持します~  作者: 自宅守護神
一章 お仕事は攻城戦
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五話 聖剣召喚

「魔力を限界まで高め準備は万端、ここからは私の時間、お二人に親愛なる美学をお見せしましょう。」


 胸に手を当ててこちらに歩いてくる彼女に対し、


「……何言ってんだあいつ? 頭大丈夫か?」


「なんかカッコいいですね、僕もキメ台詞考えた方が良いでしょうか?」


 フィリアは歩きながら魔法を詠唱していく、込められた魔力で風が放たれ辺りの草を揺らすなど、中々絵になった登場である。


「さあ、私の中に眠る聖剣よ、姿を現しなさい」


 フィリアの目の前の空間が歪むとその中に手を突っ込む、そして引き抜いたその手には銀色に煌めく一本の刀を握っていた。


「紹介をしましょう、聖剣『リア充殺しⅡ』ですわ」


 一振りの刀を手に凛として立つ彼女の姿は言葉にならない美しさがある。


「…………あれ? いつもはもっと禍々しい感じしてたのに今回普通じゃね?」


「前の文明にて打たれし剣ですね、人生に不満を得た人間が刀を打ち、人生に絶望した人達が呪いを込めた剣ですね、人の執念が生み出した剣ですけど僕は知らないですがⅡということはⅠもあるのでしょうか?」


「呪いを込めた剣って絶対に魔剣の部類に入るよな?」


「行きますわよ!」


 一言発すると体を低く構えデッドスパイダーに突っ込んでいく、右前足から繰り出される攻撃をひらりと躱しデッドスパイダーが体制を整える前に一本の足を横薙ぎで切りつける、


 キンッ、音と共に刀が弾かれる、


「硬っ!」


 フィリアは走って戻ってきた、向こうでデッドスパイダーが暴れているがフランが指を鳴らしまくっているので幻術でなにかしているのだろう、フィリアが俺たちの所まで来ると、


「無理です硬すぎますわ、ルークちょっといいですの?」


「あ?俺の手を取ってどうすんだ? …………ってちょっと待て、痛っ!」


 こいつ俺の手を刀で切りつけやがった!


「ご協力感謝しますわ、さぁ、餌の時間ですわ」


 血の付いた刀は液体を吸収するとだんだんと赤黒く染まっていき、禍々しい気配を周囲に纏う、


「いっっって! えっ! なんで俺切られたの? 恨まれる事したっけ?」


「いえ、この子の切れ味を上げるには血を吸わせる必要がありますの」


 表面に付いてる血が吸収されるたびに刀は禍々しい気配を段々と増していってる、俺は傷口を押さえながら刀を愛おしそうに触れる彼女に対し、


「だったら自分の血でも与えればいいだろうがよ! なんでわざわざ俺が切られなきゃいけねーんだよ?」


「何故だかこの子は私の血を好みませんの、男性の血が良いのかしら? それに私のような乙女に傷が付いたら大変じゃありませんの」


「もう捨てちまえよ! その刀ぜってー呪われてるって、あと、お前も乙女って年じゃ………………あぶねっ! 足は止めて! 謝るから足は止めてって!」


「あの、そろそろ幻覚をかけるのも限界なんですけどそろそろ行けそうですか?」


 執拗に刀で腿を狙ってくるのを避けているとフランが聞いてくる、フィリアも刀を止めてデッドスパイダーの方を向きながら髪をかき上げる、


「しょうがないですわね、私もいきなり斬りつけましたので先程の不敬は不問にしますわ」


「ありがとなフィリア、俺も影で若作り必死じゃんとか言わないように……………足は! 足は止め、さっきよりも速い!」


「幻術見切られました、こちらに来ます!」


 無言で狙われるのをひたすら避けているとフランがこちらを見ていた、その向こうではデッドスパイダーが物凄いスピードで突っ込んで来ている、


「まったく、しょうがないですわね」


 フィリアが突っ込んでいくと蜘蛛は慣性を無視した動きで止まり、反応できない速さで前足を叩きつける、しかしフィリアに当たる寸前で足は切れ、空中を舞っていく、蜘蛛の動きが止まると同時に踊るように残りの足を切りつけていき、先程とは違い溶けたバターを切るようにリア充殺しで切断していく、足を失った蜘蛛は胴体だけを残し大地に重い音と共に落ちていった、数秒のできごとであった。


「うっわ瞬殺だよ、何だよあの反応速度とスピード化物じゃねーか」


「すごいですね、あの刀血を取り込んだだけであの硬く巨大な足を軽々斬っていきましたよ」


「いや、あなた方にだけは化物呼ばわりされたくありませんわ」


 フィリアの見ている方向には無数のデッドスパイダーの子供が転がっていた、炎も魔法で消されていて、焼け残った死体や惨殺された死体が洞窟の前を埋め尽くしている。


「さて、止めを刺しますわ、残らず血を吸いつくしてあげなさい」


 刀をデッドスパイダーの目の前に持ってくると蜘蛛は諦めたように目をつむる。フィリアが刀を振り上げようとした時、


「まってえええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ」


 悲鳴とも呼べる叫び声が大気を震わした。

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