三話 ロリコン
「この中だよなぁ」
神様から転送されてきた場所はウエストブルグの町から徒歩で二日、山の中にある洞窟の前だった、横幅と高さが数十メートルはある大きな入り口は山の奥に向かって伸びており奥は暗く外の光が届かない部分から向こうが全く見えない、
「ここさー、絶対にやべぇの居るじゃん?さすがに無理だって帰ろうぜ」
洞窟の奥は見えないが確かに何かが居る、闇の向こうで蠢いている気配がするし何より洞窟前が何も無いのだ、他は木々で覆われているのに対しここらへんだけは木が全てなぎ倒されており何か大きな物が洞窟に入っていった感がはんぱ無いのだ。文句を言ってる俺に対しフランが横で指を鳴らした、どうやら魔法を発動させたようだ、目の色が変わり洞窟に視線を送っている姿を眺めながらフィリアが聞いてくる、
「フランは何してますの?」
「たぶんだけど千里眼の魔法を使って洞窟の中見てるんだろ、洞窟の中は暗いけどこいつには見えるんじゃね?」
「そうですの、……その千里眼の魔法私にも使えますの?」
「無理、目の奥に魔道具を埋め込んだんだけど脳の部分まで魔法を侵食させているみたいで生き物だと脳が溶けちゃったんだよ」
「過去形ですの! ルーク前科持ちですの! 狂った人体実験している非道な男ってなんて…………カッ、カッコいいですわね」
「いや、引いてんじゃねーよ、だいたい溶けちゃった脳もちゃんと元に戻したからセーフだろ」
「そっ、……そうですわね」
あれ? なんかさらに引かれたんだけど、
しばらくすると目を閉じていたフランがこっちを見て、
「これはすごいですね、中に蜘蛛がたくさんいますよ、壁や天井にもびっしりです‥‥‥‥デッドスパイダーの巣と見て間違いないでしょう」
デットスパイダー、白銀の殻に包まれた巨大な蜘蛛である、周りに子供を従えてその硬い殻と機動力、そして数で獲物を蹂躙しながら捕食していく、冒険者ギルドではS級災害レベルのモンスターとなっている。
「じゃあ無理だな、今から転移の魔法陣描くから帰ろうぜ」
「ルークさん、残念ながらそれはできそうにないです」
フランは首を横に振る、
「この穴の一番奥に大きめのクリスタルがあります。その中に人が封印されていました、そしてこれを見てください」
フランは自分のカバンから紙の束を取り出す、巫女様のお告げが書かれた物だその束から一枚とり渡してきた紙の一行にはこう書かれていた。
⦅ウエストブルグの町から北北東に二日程歩いた所の洞窟で運命を分ける出会いがあります。ルークが嫌がっていてもその出会いを手放してはいけません⦆
「毎回思うんだけど巫女様正確すぎね?占いの域ぜってー超えてるって」
これはもう未来が見えているとしか考えられないんだけど、
「これ貴方が以前占いを無視して大変な事になったからじゃありませんの?前に巫女様に会ったときマジ切れしてましたわよ?」
後ろから身を乗り出し覗き見ていたフィリアが言う肩に手を置かれ体重をかけてきてるからすごく重い、
「ちょっと待て!あれ俺だけののミスじゃねーだろお前らだって賛成してたじゃねーかよあとフィリア、重いし無駄にでかい乳が当たってるからどけろ」
するとフィリアが誇らしげな表情で、
「当ててますのよ、私の魔力は殿方のエロでも貯める事ができるのはご存じですわよね?ルークの勃起で貯まるなら安いもの………………まったく貯まらないんですけどどういうことですの?」
フィリア曰く、天使は愛により魔力を吸収できるらしく、その中でも得意不得意の分野があるらしい、今は得意な性愛で魔力を貯めようとしているのだろう、背中に柔らかい物を感じながら呟く、
「いや、だって俺貧乳好きだし……」
「え!ルークさんロリコンだったんですか! 僕の事をそんな目で見ていたんですか! やっばい考えたらすごく興奮してきました!」
「フランからすごく魔力が流れて来てますわね…………ですがさすがに身内にロリコンが居るのはちょっと引きますわ……それでお告げにはこう書かれてますがロリコンはどうしますの?」
「お前ら次俺のことをロリコンって言ったらマジで殴るからな? まったく、…………おいフラン、中の蜘蛛に気づかれずに中の人間だけ回収したいんだけど他に入り口ねーの?」
隣でぶつぶつ呟いているフランに言う、
「ランドセル?いや逆にワイシャツだけっていうのも捨てがた…………あぁ、すいません入り口はここだけで奥は行き止まりになっています」
他に入り口は無く上や横から新しく穴を掘っても時間がかかりすぎる。何より見つかった場合に逃げ場も無いからここは、
「殲滅するかぁ」
「特攻しますの?」
「いやいや、さすがに死ぬから罠張って誘き出す、俺は外側にどんどん罠仕掛けっからフランは洞窟の中の見張り、フィリアは飯とここら辺のモンスター狩っといて、明日の朝仕掛けて昼までには終わらせっぞー」
「了解しました」
「わかりましたわ」
フランはあくびをしながら寝ころびフィリアはリュックを背負い歩いて行った、
「やるかぁ、めんどくさいけど、…………フランちゃんと確認してる?」
「してまーす、だいじょうぶでーす」
手を挙げて答えているが完全に寝る体制に入ってるし、
「まぁ、大丈夫か、中の蜘蛛がさすがに日中に出てこないだろ」
ルークは作業に入った。この甘い考えが後にあんな事件を起こすとは考えられなかった……
「‥‥勝手にナレーション入れんのやめてくんない?」
フランは手を挙げて答える、俺はため息を尽きながら洞窟の入り口に魔法陣を描き始めた。