8日目
目が覚めると私はお城の中にいました。
何故分かったかって?
それは目の前の大きな窓からベニスのような城下町が見下ろせているからです。
「ああ、起きたみたいだね。その顔は此処が何処か分かっているみたい」
私は生返事で返しました。
「何か食べたいものはない?」
生憎、先ほどお寿司を食べたばかりと記憶していますが。
「でもさ、君。丸一日寝ていたよ」
あ、それは驚きです。しかしながらお腹は減っていないのです。
「そのさ、思考で返事をするのやめてくれない? お姉さんは分かるけれど、お喋りがしたいんだよね」
蒼い彼女は妙なことを言います。
「私、眠いんですけれど」
「起きたばっかりじゃん」
「ぐぬぬ」
「諦めて、私の質問に答えてもらいます」
何を諦めるというのか。
「それだよそれ。めんどくさがりなのかしら」
コロコロと話していく彼女に段々と腹が立っていきます。
「君本当に魔女じゃないの? そのローブは?」
「魔女じゃないですよ。魔法使えませんし。このローブは町の雑貨屋で買いました」
ふーんと考える姿勢をとる彼女が次にはなった言葉こそ私の人生を買えるのです。
「君、私の子になるつもりはない?」
「良くわからないですし、面倒臭そうなのでお断りします」
「断られるつもりはないのだけれどね」
断ったはずなのですが。
蒼い彼女は強引です。
彼女が私の髪をそっとなでると私の中に何かが流れ込んできた。
気持ち悪いとかそういう負の感情は一切なく、母なる海にそっと、やさしく包み込まれた気がした
そして気が付くと、私の二つある眼からは涙が零れだしていた。
彼女はそれが止まるまでずっと抱きしめてくれた。
お母さんって呼んでもいいですか?
私はそう呟いてから、また眠りへとついた。