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7日目

 蒼い美女に抱えられ、おぞましいと感じるよどんだ液体にドボンしたはずなのですが。

 確かにドボンはしました。

 この耳で音を聞きました。


 ですが私は濡れしていませんし、何しろ街にいます。

 古都を感じさせる洋風な街並みですが、なんだか寒いです。

 私は濡れていません。

 身震いすると蒼い美女は、これまた青色のストールをかぶせてくれました。

 見てくれに限らずちゃんと暖かいです。

 それでも視覚的には寒いですが。

 彼女はこう言いました。


「ここは高度があるからね、大分寒いんだ」


 山の上にでもあるのですかね。

 寒い寒くないの事象解明よりも私は、ここにいることの、理由が知りたいです。

 転移ですか? 転移。どこ〇もドア。


「そうだね、転移だよ。と言っても君たち魔女みたいに詠唱する必要はないけれどね」


「魔女?」


 私は首をかしげました。多分、頭上にもはてなマークが浮かんでいると思います。


「えっ? その恰好どう見ても魔女でしょ? しかも魔女御用達のコートに身を包んでいるし」


「わたし、ゲームでいうMP? の使い方わかんないですよ」


「あっれー?」


 美女も首を傾げた。

 美女は私を魔女と勘違いしたから助けたみたいです。

 勘違いがなかったら、過剰防衛でお務めですね、私。


「うーん、次はどうしたい?」


 それ、私に訊いちゃうのですか。

 街の探索とかはどうですかね、私は興味あります。

 見たところ、イタリアの古都、ベニスに似ている気がする。

 路地と路地の間には水路が線引きされている。

 勢いをつけて飛ばない限り、水路にドボンしそう、と思った矢先、ちゃんと橋がかかっている。


 まあ、私のベニスの知識なんて、ちびま〇こちゃんの裏番組でしか培ってませんけど。

 聞いて驚け、クラスメイト私以外誰一人として見ていない。

 授業中、英語の先生にその話で馬が合って、クラスの公開処刑……。


 その話は置いといて、ここがベニスではないと言える訳が二つある。

 一つ、人がどこにもいない。世界遺産で観光地なんか昼夜とはず人はいるでしょう。

 でもここは私たちの声が響き渡るだけ。

 二つ、目の前に大きなお城がある。

 お城なんてデ〇ズニーランドでしか肉眼で見たことないけれどそれの倍以上の大きさがありそうだ。

 こんなのあったら、疑似ベニスいらなくない?


「あはは、言うねー。でもこの街は私に取っては必要なんだ。思い出の地だからね」


「ということは随分と昔にでも建てられたんですか?」


 訊いてから思った今の時代城は建てられなさそうだ。王政が主流ではあるまいし。


「うん、ざっと三万年前にね」


 うわー、すごい寒気した。この人相手にするなら、ストーカー(笑)を相手にしたほうが何万倍もマシだわー。


「君ほんとに魔女じゃないの? なんで私の話を聞いて疑わないの?」


 え、だってもうどうとでもなるじゃないですか、トニカクワタシハマジョジャナイデス。


「疲れました、眠りたいです。詳しいお話はあとでいいですか?」


「いいよ。じゃ、お姉さんとエッチなことでもする?」


 ナンデソウナル。

 このあと数回問答を繰り返した後、私はお姉さんの背中で眠りにつきました。

 水のような香りが私の体隅々まで包み込むようでした。



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