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70.屋根上巡回の表裏

 動物には様々な神秘があり。それを取り込んだ怪亜人には微妙なチート能力があります。


 カメレオンの怪亜人もその一つでしょう。

 保護色で身を隠す虫、鳥獣は数あれど。実際に体色を変化させられる能力を持つ動物は少なく。

 さらに生活圏外で保護色を活かせる動物はもっと少ないです。要するに森林で生きるカメレオンは町中の景色にまぎれるどころか悪目立ちしてしまう。海水の青に同化する魚は河川・沼の水色にまぎれることは困難ということです。


 そんな常識を覆しあらゆる環境?で姿を消せるカメレオン亜怪人は一応チートだと思うのです。

 少なくともステルス兵器を開発するチームにとっては「ふざけるな!」と罵声をあげたくなるでしょう。

 ウァーテルの町。かつてそこを支配していた闇ギルドはシーフどころか“犯罪者の集団”として落ちぶれ、追い立てられていた。


 その原因として下級シャドウたちが行う《屋根上巡回》がある。

 


 建物の屋根上を疾走、跳躍して行われる《屋根上巡回》は腕利きのシーフたちにとっても理解し難いものだった。


 当然その情報を集め、対策を練り。巡回路の屋根上に罠を仕掛けるなどの試みが失敗しても、彼らが諦めることはなかった。

 息を潜め、身を隠し。必ず悪徳の都を取り戻すという誓いの元、情報収集に邁進し続けた。その結果いくつかわかったことがある。


 


 「こんにちは。屋根の修理に来ました~」


 「おおっ!これはありがたい。さあ、入って入って」


 スラムの一画。つぶれかけた建物の入口で軽快なやり取りが交わされる。当初は不信感があふれていた住人たちも、今では自らの幸運をかみしめていた。


 《屋根上巡回をするため、足場となる建物の屋根を修理する》


 その行為はすぐに壁の補修が追加され。住民に臨時収入をもたらし、家屋の改築へと変わっていくのに時間はかからなかった。




 〈騙されるな!何か企みがあるに決まっている!!〉


 〈何故そのことをっ!?〉

 〈もろい屋根を走るのは普通に危険で怖い〉

 〈壁走りの奥義を会得しても、その足場が崩れたら滑稽なだけ〉


 〈そもそも私有地を通り抜けているのだから通行料を払うのは当然のこと〉

 〈破壊したチンピラどもの建物資材を捨てるくらいなら有効利用しよう〉


 〈どうせ税金をかけていつかは回収するんだ〉

 〈遠慮は論外。警戒するだけバカを見る〉





 こんなやり取り、ウワサが飛び交った後に超殲滅級の禁呪が放たれる。



 〈これ以上、マスターがどぶ川のお掃除をするのも、それを止めるのも耐えられない


  衛生状況が改善しないなら。建物ごと更地にしてオソウジをする〉


 〈〈〈〈・・・・・・〉〉〉〉



 誰もその暴挙を諫めたり、止めようとはしなかった。だって死にたくないしムダだから。



 「・・・皆さん、お願いします。このシャドウを守るため力を貸してください!」


 「それでいったいどうしろと?」


 「どぶ川に捨てるゴミを減らすための仕組みを作ります。


  タダでやれなどとは言いません。税の軽減に水・食料の提供を確約します」


 

 そう言って契約書を取り出すシャドウは本気で怯えていた。


 誰でも死にたくないし、家を焼かれ?たくない。ましてスラムの住人たちは自ら汗を流して家を補修したばかりだ。女魔神の怒りに巻き込まれるなどまっぴらゴメンである。


 こうして契約が結ばれた。


 1)排泄物と他のゴミを分けて集める。


 2)排泄物は毎日2回決まった時間に。他のゴミは種類や量を鑑みて収集日を決める。


 3)それらゴミを集める場所は更地にした(ギルド跡)地にする。


 4)排泄物、ゴミ収集のためスラム住民を雇用する。清掃状況によって区域住民に別途、報酬を出す。


 5)清掃状況が悪い。他の区域にゴミを捨てる等の不正が見られた場合は制裁を課す。



 大まかにこんな内容の契約が下級シャドウたちとスラム住民の間に結ばれた。

 それらの契約書を束ね直訴し、どうにか“略奪”よりひどい暴挙はかろうじて防がれたとか。


 こうして《屋根上巡回》は治安維持に加え、衛生状況を確認するという役割が追加される。


 「仕事が増えるのは面倒だなあ」

 「みんなの“安全”のためには必要なことだ」

 「わかっている。言ってみただけだ」


 そんなやり取りが交わされたとか。交わされなかったとか。詳細は不明である。




 



 「ふっざけるなぁ~~~~!!!」


ギルドの隠しアジト。そこでは幹部のシーフロードが怒声をあげていた。

 理由は一つ。《屋根上巡回》によって闇ギルドが徹底的に攻撃されているからである。


 治安維持を名目に“残党狩り”が行われるぐらいはギルドの頭脳陣も想定していた。

〈巡回のため屋根を修理してくれる〉〈シーフよりシャドウのほうが身軽で強い〉


 そんな評判が広まっても、闇ギルドの上層部は逆襲を成功させる勝算があった。

 何故ならいくらシャドウたちやそのボスが治安維持に務めようと。住民の不安を煽り、飢えの恐怖を蔓延させれば。お行儀の良い勇者の治世など早晩、破綻する。


 そんな甘い考えにひたっていたシーフたちの頭上を大きなネズミが走り回っていた。


「うるせぇ!!」「お前がうるせぇ!!」「静かにしろっ!気づかれたらどうする!」



 大きなネズミ。その正体は建物の屋根上を“爆走”するシャドウである。

 普段は“疾走”して住人はもちろん盗賊の見張りにも気取られぬよう巡回するシャドウたち。


 だがある時期を境にシャドウたちは“疾走”と“爆走”を行う建物を特定し始めた。



 《どぶ川のお掃除》上はC.V.の聖賢から下はスラムの子供まで。

 


 「おやおや、この建物に人は住んでいないはずだが。ずいぶん大きなネズミがひそんでいるな」


 「「「ッ!?」」」


 住民までをも動員しての《どぶ川のお掃除》。それはどの建物に何人住んでいるかの戸籍作りも兼ねており。将来的には税金の徴収に利用されるだろう。


 だが現状は《どぶ川のお掃除》に参加しない不心得者・不審者のギルドメンバーをあぶり出すのに使われていた。

 無論、シーフも隠し部屋、拠点移動を駆使して潜伏しようとした。

 邪気を放つ魔窟と化した地下道は使えなくなったが、闇ギルドと内通している商家、宿屋に身を隠せるはずだった。


 「おおっと~、足が滑った~!」

 「落っ、ちっ、る~♪ダカラ壁に爪を立てて身体を支えナイと」

 「ウッ、ギャ~~~。跳躍を失敗してオウチに穴を開けちゃった~。修理するから家に入るぞ」


 「「「・・・・・・・・・・」」」


 家探しをするにはそれなりの段取りがいる。たとえ権力者でも衆目を避けて反感を買わずに、家宅捜査を行うなど不可能だろう。

 だが“屋根上巡回で失敗”してしまったという名目があれば話は別だ。

 少なくとも全員にとって初見の《屋根上巡回》が行われる今回に限っては、周囲が驚いている隙を衝ける。


 屋根を“爆走”し壁に“体当たり”を行って建物を震動させ騒音をまき散らす。そうしてまっとうな住人が文句を言ってくれば平身低頭するしかない。


 だが僅かでも異音や不審な気配を感じたら。そこは闇ギルドの拠点と考えて地上げ同然の嫌がらせをシャドウたちは始める。家探しを行う。

 戦闘力で遙かに劣り、潜伏中のシーフにそれを防ぐ手段はない。


 「こうなったらスラムの住民のフリをして文句を言ってやる!」


 「おいバカよせ!バレたら終わりだぞ」


 「そうだ。この怨みは一斉蜂起の時に返してやればいい」




 「フッ、一斉蜂起ですって?自棄になって暴走するの間違いではないかしら」


 「「「ッ!?」」」



 そんなカメレオン亜怪人。悪の組織に所属していても和を尊ぶ。亜怪人同士の仲を取り持つコミュ力に長けたムードメイカーでしょう。あるいは仕事熱心な偵察要員ということもあり得ます。


 何故ならカメレオン亜怪人はケンカが弱いから。序盤の雷装とならいい勝負ができるでしょう。

 しかし同僚の亜怪人が吐く毒ガス。飛び道具に伴う煙はカメレオンの保護色をたやすく無効化してあぶり出します。

 そして一番厄介なのがカメレオンの武器である舌。感覚器でもある舌はいくら鍛え改造してもムチや槍にはなりません。

 つまり改造によってどんな毒血になっているか知れたものではない。そんな怪亜人と争って舌を血で汚すのはリスクが伴う。メカ系の燃料、電気も舌にとって有害でしょう。返り血も体色を変化させる皮膚にかかれば、洗浄は一苦労です。


 よって血液対策をしているか、舌をワイヤーワークのみに使って攻撃に使用しないか。


 そんなあり得ないカメレオン亜怪人でない限り。カメレオン亜怪人は隠れて引きこもるか。

 もしくは亜怪人同士の仲を取り持って組織の融和を図るか。そうしないと不毛なケンカが死の原因になりかねない。それがカメレオンの亜怪人というものです。




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