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66.お掃除アルゴスとシャドウ隊

 戦国の覇王である織田信長。敵が多いため当時から現在に至るまで誹謗中傷されてきました。

その中でも有名なのは「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」の句だと思います。

 豊臣秀吉なら工夫して「鳴かせてみようホトトギス」

 徳川家康なら忍耐して「鳴くまで待とうホトトギス」


 ですが「殺してしまえ~」は武力メインというより短気な殺戮武将を連想します。あるいは風情もわからぬ野蛮なバカ殿という感じでしょうか。

 ひどい侮辱ですが、コレを言った人々は覚悟ができているのでしょう。

 「包囲網まで作ったのに暴力バカ殿に負けた戦国武将は○○ですね」とささやかれる覚悟を完了しているのでしょう。

 「ウッ、ウッ、ウッ。マスターが。私のマスターが汚れてしまった。

  

  汚泥に御み足を穢されてしまった」


 「だから、悪かったって。もう泣き止んでよ」



 ウァーテルの町。そこでは盗賊ギルドを圧倒するシャドウたちが異常行動をしていた。

 側溝のお掃除。どぶ川にたまった汚泥をそぎ落とし掘ってくみ取り。悪臭まみれに《近い状態》と化して黙々と清掃に従事していた。


 その光景に盗賊ギルドを圧倒した腕利きたちの面影はなく。大雨によって汚濁を流してきた住人たちは珍獣を見る視線をシャドウたちに送っていた。



 「ほらほら、『アルゴスコート』だよ。これで体表面を覆っていればあら不思議。どんなに汚れても『コート』を解除すれば汚れとサヨナラ。悪臭も一切つきません」


 「マ・ス・タ・ーーー!!!


  そんなアレンジをするくらいなら側溝の清掃など下級シャドウにお任せください!マスターにはもっとなさるべきことがあるでしょう」


 「ボクがするべきこと・・・」



 扇奈の言葉にシャドウたちの半数が小さく頷き、残り半数が胸中で賛成の声をあげる。

 この理不尽な世界でシャドウたちは側溝の掃除など比べるべくもない苦労をしてきた。そこから拾いあげてくださった恩人・主君にして崇拝の対象がわずかでも悪臭まみれるなど悪夢に等しい。


 シャドウたちは心を一つに束ねて意思の視線をイリスに送る。

 「清掃など私たちにお任せください」・・・と。



 「(よし、ボクは下水道を掃除してく・・・)ッ、コホンわかったよ。


  アルゴスの黄金を使うカオスヴァルキリーとして。楽にお掃除ができる術式を組み立てるよ!」


 「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」


 「・・・まあ、よろしいでしょう。今は空気を読んでいただいたことに満足いたします」


 不穏な空気が一瞬、流れるも。主従たちは各自で目をそらし、気付かぬフリを装ってその空気を飲み込む。彼らが闇ギルドを圧倒し、ウァーテルを一夜で陥落させた。

 

 その戦歴がデマと思いたくなる一幕であり。




 「アレに敗北した連中ってナンだろう」という毒が広まる一刺しでもあった。








 



 「んーーーっと、ん~~、うん?よしっ!『アルゴス・プリズム』~」


 「もう、できたのですか?相変わらずお早い術式アレンジですね」


 『アルゴス・ゴールド』

 それは術式の火力を封印する誓約をかけることで、光属性の魔術に千変万化の強化を施す【魔導】である。それにより『明かり』あつかいのライトで他者の魔術や魔眼に干渉することも可能だ。


 ゆえに人間の魔術師どころかC.V.でもあり得ない次元でイリスは術式を紡ぎ編み出す。

 その異常な神秘に対し、配下のシャドウたちはいちいち驚く感情を欠落させた。


 「あっ、わかる?さすがは扇奈。これはいつも使っているアレを改造しただけだよ。

  同じ家事系なんだから問題無いよね」


 「そのセリフ。担当の者たちの前では仰りませんように。彼らにも矜持がありますので」


 「そう?せっかく扇奈と合わせて魔術が使えると楽しみにしたんだけど」


 「とはいえ汚泥の除去は彼らにとっても望ましいこと。

  私がフォローいたしますのでマスターのなさりたいようにしてください!」


 イリスと協演する栄誉を最優先にするシャドウたちの姫長。

 その手のひら返しな言動を配下たちは全員一致で見ざる、聞かざるの態度で掃除に没頭した。



 「・・・ボクからも丁寧にフォローするよ。


  とりあえずみんなは見ててね。行くよっ『アルゴス・プリズム』!!」


 舌で転がした呪文と並列してイリスは静音詠唱・眼球運動で術式の対象を精査する。


 唱えるは『発光』をアレンジした術式。瞳の魔力はどぶ川の汚れを構成する微粒子を精査して術式の標的にしていく。


 イリスの魔導は〈火力封印〉の誓約がある。とはいえ〈物理干渉〉を封印しているわけではない。〈目のまばたき〉〈指先〉以下の力や重みを付与することは可能だ。

 そして『ライト』『鬼火』は浮遊する魔術の代表格だ。汚れている《微粒子》に『発光』をかけて水面に浮く浮力を与えることもできる。


 要は軽い汚れをもっと軽くする。重い汚れをさらに重くして沈める。そうやって水と汚れを分離したのが今回の『アルゴス・プリズム』の効果だ。


 「これはっ・・・」「汚れが水面に浮かんできて・・・」


 まずは用意した〈ひしゃく〉で水面に浮かぶ軽い汚れを取る。密度のある泡のようなそれは低級の魔術袋につめられていった。


 『今日は初日だからズルしちゃおう。交代で袋に魔力を流して水抜き・汚れの圧縮をしようか』

 『『『かしこまりましたイリス様』』』


 数人の魔力高めのシャドウたちが魔術袋の担当をする。低級とはいえ魔術袋は高額だ。

 盗難のリスクを減らさないと窃盗を働く者を制裁する手間が増える。魔術袋の件は信号術式で会話を行う。


 その間もイリスはひしゃくで水面の汚れを取り除き続け。すると澄んだ水と黒光りする汚泥が見えてきた。


 「ここで浄化の『水』術式とか使えたならカッコイイんだけど。ボクたちには無理!!


  扇奈。魔術を合わせて」


 「かしこまりましたマスター!!」


 イリスの呼びかけに嬉々として扇奈が応じる。使うは旋天属性のオリジナルな地の術式。

 本来は砂粒・土石の螺旋・穿孔の凶器を作る術式で、泥球を形成していく。


 「・・・扇奈、術式の対象はボクに任せて。泥球から水をぬくことに集中して」


 「お任せを」


 「よし、もう少しで泥球の大きさが手頃になる。ウルカたちはシャベルで回収して袋につめて」


 「承知いたしました」「二名でそれぞれシャベルを持ち連携します」


 イリスの指示で汚れた泥球が素速く回収されていく。それは錬金術であり洗練され連携の舞台でもあった。どぶ川が普通の水路に変わっていく。


 そんな労働の汗をかく姿から評判の悪い妖術使いを連想することはできない。

 そもそも微粒子を認識・捕捉して重量操作を行い水と分離する。それを『発光』の異能魔導で行うなど魔術師でも想像の埒外だろう。






 その行動に周囲の視線は確実に増えていった。

 


 

 


 



 織田信長を武力偏重の苛烈な武将と考える。

 その根拠となる話はいくらでもありますが「それはないでしょう」と私が考えるものがあります。

 それは「上洛した京都で略奪を禁じ、違反したものを処刑・見せしめにして治安を回復させた」

 こんな話が本当なら衛士は誰も苦労しません。三好家、足利将軍でも治安を回復できるでしょう。


 命令を絶対厳守するように兵たちを鍛え、充分な給料を払い。さらに略奪のリスクが高いと教育を完了させていなければ、古都の治安は保てないでしょう。しかもこれはあくまで最低条件。


 放火を当たり前の作戦とする忍者や武将たちを武力・外交の両面で退け勝ち続ける。

 経済を回して「治安が維持されていたほうがみんな得だ」という富とイメージを拡散させる。


 できれば信長と敵対する勢力も「京都の治安だけは別」と考えるよう。密偵の活動、貴族への工作などを見逃す。ただし治安維持には兵と予算を割くなどの硬軟に腐心したのかもしれません。

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