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60.功績の少ない者たち

 私は竜牙兵が好きです。できれば魔法のある剣の一世界に登場する竜牙兵を使役できたら重宝すると考えています。


 ゴーレムより賢くコンパクトで。ホムンクルスより頑丈で維持コストが低い。

 何よりスケルトンよりはるかに清潔です。できればアンデットナイトのように改良したり上等な武具を装備させたい。


 さらに骸骨の外見は不気味ですから、兜で隠すか整形もしたいです。

 悪徳の都ウァーテル。その港に向けて一隻の船が航行をしていた。


 その船は巨大な大樹を加工した箱のような外見を持ち。帆はなく重厚な外見はまるで海の砦であるかのようだった。

 そんな外見を巨大戦艦の威容と畏怖する者。鈍重な輸送船どころか流木を連想し嘲笑する者。陸の住人と海の民によって反応は異なるだろう。


 「いよいよウァーテルに鉄槌を落とせますな」


 「そうだな」


 その船の甲板には二人の男女がいた。

 一人は鎧の下からでもわかる筋肉を持つ巨漢。もう一人は金髪を肩口で切りそろえた女騎士だった。


 女騎士の名はイセリナ・ルベイリー。7級光属性のカオスヴァルキリーだ。

 そして彼女の後ろで戦いへの期待を隠そうともしない副将の名をガルド・ログナーという。


 いづれもC.V.の世界で一軍を率いる実力があると認められた将と人間騎士だ。

 彼女たちが率いる軍団はC.V.の逆鱗に触れた悪徳都市を滅ぼすために航行している。その構成は陸軍が主力であり、移動している輸送船に海戦を仕掛けられたら大打撃を受けるだろう。


 魔術能力に劣る人の騎士団だけで構成されているならば。そういう注釈がつくが。

 

 「どうやら扇奈殿たちはうまくやってくれているようですな」


 「当然のことだ。彼女たちは姉上が見いだした配下。

  陸の海賊たちぐらい始末してもらわねばイリス姉上の威光に関わる」


 そんなやり取りが交わされる船が征く海原。そこには沿岸を〈警戒していた〉海賊を名乗る連中の船が残骸と化して漂っていた。

 波間をかろうじて泳いでいた船員たちは既に力尽き。魔道具で離脱を企てた幹部共は術式干渉で行き先を海底へと変更してやった。


 軍人の規律を持つ海賊の警戒網。それらをイセリナたちは只の一人も逃さず殲滅していた。


 「ですがイセリナ団長。数人でも捕虜を取らなくてよかったのですか?

  情報はともかく交渉の札には使えますが」


 そう告げる副団長のガルドは海面近くを泳ぐ赤黒い竜蛇の影を見やる。それは怪物でありC.V.でありながら騎士団に所属する同僚でもあった。

 彼女は戦闘海域を念入りに見回り生存者がいないかを確認している。もしくは虐殺を完全なものにしていると言うべきか。


 「かまわない。私の魔術能力によれば奴らは《海上封鎖》をしていたことが判明している。

  海の藻屑となるのは自業自得というものよ」 


 《海上封鎖》貿易船を沈め海路を封じるためにまっとうな船乗り《も》魚のエサにする殺戮作戦。

 最近まで戦術指揮官だったイセリナは浅はかにもそんな生ぬるいことを考えていた。




 「だけど合法的に水死者を出す私掠船を出航させる連中ののもたらすモノはそんな甘くはない。

  『コイントゥルス(裏表のある真実)』」

 

 「これはっ!?」


 ガルドの眼前に光信号による情報ボードが展開される。そこにはロクでもない暗闘が記録されていた。


 《海上封鎖》イコール《通商破壊》ではない。《海上封鎖》とは戦争で勝利するための《経済破壊》を狙った凶行だ。つまり《経済破壊》を行うための密偵が連動して裏工作・仕掛けの準備をしている。

 その結果、経済界を支える要人が不意の死を迎えるなどというのは序の口だ。何故か治安が悪化したり商家が不意の倒産に見舞われたり。


 あげく凡人・野心家の貴族が事態を打開しようとして余計に傷口を広げていく。その傷口から流れるのは善人の生き血と決まっている。何故なら他人に損を押しつけるのが弱肉強食の経済だから。


 「まあ悪徳都市なんていう多頭の策謀屋がいなければここまでひどくはならない。ここで沈んだ海賊兵の家族も陸で強盗殺人にあっているけど」


 「同情の余地はありませんか」


 人間として生きてきたガルドは完全にカオスヴァルキリーの法による思考はできない。

 よってイセリナほど「目には目」「略奪を働いた兵の家族は放火されても因果応報」などという考えには心からの賛同はできないだろう。命をかけて戦う戦士は家族の安全を信じて戦っているのだから。



 「まあさすがにこの連鎖を言いふらす気はないよ。でないと魔女狩りと真似陰謀がセットで行われるからね」


 「それがよろしいかと。臣の不明を恥じ入るばかりでございます」


 そんな会話をする主従はこの件に関する思考を停止する。本来なら墓まで封印・忘却したいところだ。

 だが上に立つ者としてそれは許されない。何故なら《流血が少ない》などと勘違いした策士はこれからも《海上封鎖》を企てる。


 それ以前にイセリナが今、ガルドに知らせた悪意の連鎖など氷山の一角に過ぎない。

 イセリナは姉の参謀としてこれから手の届く範囲で被害者に手をさしのべる。それは人気取りの偽善だが、その影響は少し遠くの罪なき老人、幼子を破滅させるだろう。


 『コイントゥルス』が集めた〈全ての〉情報による予測演算はイセリナにそんな未来を示していた。

とうてい悪徳都市を倒して正義をもたらすなどとは言えない。

 将来的にマシになる。最悪よりは良いと【姉妹たち】を説得した過去の自分を思い出すと彼女は吐き気がしてきた。


 『こちらファン。出入り口となる陸海の全てを押さえたわ。』


 そんなイセリナにウァーテルが位置する方向から術式によって伝声が飛翔してくる。とたんに彼女は冷徹な軍師ヴァルキリーへと思考を切り替えた。


 どうやら人買いの片棒をかついでいた門番はエサと脅迫の挟撃によって思惑どおり動いたらしい。

 それは彼女と【妹たち】の渇望する願いがかなう一歩がひとまず成功したこと。


 使者の首をはねることを当たり前とする闇ギルドの連中が《正当な護身防衛》によって戦力差もわからずに壊滅したということだ。

 当然、その手柄は火の粉をはらったシャドウたちと姫長のもの。その主である姉イリスのものとなる。



 「いかがなされました。イセリナ団長」


 「どうやら想像を超えてゴロツキたちは腐っていたらしい。イリス姉上に手を出したあげく返り討ちにあったと今、連絡が入った」


 「ッそ、それは何というか。我々の見せ場がなくなりましたな。

  海賊兵団を壊滅させましたがそれはカティア殿一人の力によるもの。我々の功績ではございません

  船長、幹部の一人でも捕虜にしていれば外交もできたのですが」


 「魔道具で逃走しようとしていたのだからしかたない。アレを討ちもらすわけにはいかなかったわ」


 そう言いつつイセリナは副団長のガルドと視線を合わせようとしなかった。

 これから論功行賞で地位、階級が大幅に変わる。できることならイセリナは文官のトップに異動したいところだ。最低でもガルドは陸戦師団長に出世させたい。


 そしてイリス姉上の地位は確定している。全ての財、権力を行使してでも健やかに命を延ばすべき玉座に座っていただく。これは有力幹部と妹たち全員による望みだ。



 「イセリナ団長閣下」


 そんな未来を夢想しているイセリナの肩が優しく片手でたたかれた。優しいが強い剛拳も放つその手はイセリナとガルドの視線を柔術の技によって接合させた。


 「『ハンドレッドデイ』をお使いください。あのお力ならこの船を使いつぶして都市へと急行できるでしょう」


 「えっと・・・。あれものすごく疲れる。というか切り札だから温存したいというか。

  そう、海中にカティアがいるじゃない!我が騎士団で唯一の・・・・・」


 


 「待たせたな。鎧魔は惜しいけど今は刻こそが重要事項だ。いつでもいけるぞ」


 いつの間にか甲板に上がったのだろう。そこには堂々と裸体をさらした女闘士のC.V.が異形の斧槍だけを携えていた。その蛮族スタイルに憐れな従士が全速でタオルを用意して駆け寄る。

 既に海中の長大な蛇影はない。


 そんな風に蛇体を切り離せることはイセリナにとって初耳であり。

 彼女は初めて『コイントゥルス』の誓約を後悔していた。


 「・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・え~っと」


 「イセリナ団長【閣下】はいつも仰っていました。刻こそが金だと。時間を制するものが常勝の入口であると」


 「冷えるな。こき使われ疲労した身としては早く陸で養分を補給したいのだが」


 "あんたの栄養補給は海獣でしょうが"



 そのセリフを飲み込んでイセリナは周囲を見渡す。甲板のクルーたちは聞こえないふりをしつつ聴覚を研ぎ澄ますという器用なことをしていた。人間の配下だけではない。

 イセリナが率いるパーティー。親衛隊とでも言うべきC.V.たちに至っては魔物像のように圧力をかけてくる。


 包囲陣の中で孤立無援。この状況を想定しているであろう聖賢姫のことを考えれば共犯者である扇奈の助力は望むだけ無駄だ。


 「まあ今更、ウァーテルへ到着しても遅参に変わりない『ハンドレットデイ』!!」


 別の利用法があった箱船に膨大な魔力がこめられていく。

 その魔力に気が遠くなりながらイセリナは計画の完遂を断念した。



 


 

 

 


  

 しかし竜牙兵を運用・製作するにあたって一つ問題があります。それはドラゴンと絶縁しかねないこと。

 普通、人間の頭蓋骨を装飾に使っている亜人と平和な交流は不可能でしょう。生存をかけて刃を交えるかもっと凄惨な戦いが始まりかねません。


 一応、蛇喰いの王毒蛇などもいますから、他の竜を倒して竜牙兵を作っても気にしないというドラゴンもいるかもしれません。ですが穏健で人間と話せるドラゴンでそれは皆無でしょう。


 いつか話すドラゴンのために竜牙兵を断念するか。それとも即物的に力を求めて竜牙兵を作る。

 もしくは蛇、トカゲのたぐいから素材を取る。あるいは竜の鱗が剥がれて埋まった土で錬金術を行う?


 竜牙兵。単に使役するだけでなく、異種族との兼ね合いも考えて創作したいです。

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