6.アルゴスゴールド 3
魔導王ソロモンが従える72柱の魔神たち。彼らの能力から上位魔神に必須の権能を除外した場合、最も多くの魔神が共通して使う能力は何でしょうか?
なお上位魔神に必須の権能は次の通り。『強大な魔力』『悪魔の軍団』『カリスマ』『戦闘力』『変身能力』
これら五つのうち三つ以上は上位魔神として持って欲しいところです。
「あんた、いったい何を考えてい!自分の手の内をさらすなんてどういうつもりだ」
バルムの問いかけ。そして槍使いと邪術士による不信と敵を見る視線。それらをまっこうから受け止めながらイリスは口をひらいた。
「どういうつもりと言われても。これからウァーテルの町を支配するのに異能者じゃ困っちゃうからね~。『ボクはこういう手札を持っています。絶対無敵ではありません』とアピールしているんだよ」
「ハッ。異能者で何が困るというんだ。正体不明の異能の力。それがもたらす恐怖と暴力こそがザコ共を支配する力だろう」
たった今まで圧倒されていた衛士が吠える。そんな負け犬にイリスは優しく語りかけた。
「確かに山賊のボス猿ならそれも有りなんだろうけど。ボクたちは商人、職人に老若男女問わない人々の王様になりたいんだよ。魔術師の法則って知らない?」
魔術師は人間たちの王にはなれない。何故ならほとんどの人間にとって魔術は未知の恐怖でしかないからだ。よって魔術師は魔術師のトップか魔王にしかなれない。人々は術者が頂点に立つことをけっして認めない。
「バカな!そんな法則など知るものか!」
法則の説明もされてないのにソーサラーは悲痛な叫びを返す。裏社会は実力至上主義などと言われているが魔術師の地位は表とさほど変わってない。そんな現実に疲れた男の恨み言が一時的に魔力を高め、イリスに襲いかかる。
「わあっ!魔術抵抗力を下げる術式⁉地味だから人気のない魔術なんだけどよく勉強しているんだね。すごい、すごい!」
しかし一時的に高まった魔力がイリスになんの痛痒も与えられていないのは明白だった。本気で感心している彼女の視線は小動物に向けるそれに等しい。この場で良識の欠片でもあるものは誰もが沈黙を守った。
「この役立たずがっ!禁呪の一つも使えねえのかよ。てめえも暗黒導師なら自爆呪文でも唱えやがれ!刺し違えろ!」
そんな中で本当の役立たずが勝手なことをのたまう。その騒音を永久に黙らせようかと扇奈は主に目線で問いかけた。
「怖いコトを言うねキミは。ボクのアルゴス・ゴールドが魔術の照準・構成に干渉できるって知らないの?学習してないの?」
そんな従者の問いかけにイリスも視線で返答する。その冷たい視線とは裏腹に口調には熱量があった。
『人間は視覚に依存した生き物だ。その文化も術技も大半が目で見る光学情報によって認識されている。魔術も例外ではない。むしろ見えない魔力を視認できるように変性させることが術式と言える』
再度の機密の暴露。その予兆にも今度は制止がなかった。
『ボクのアルゴス・ゴールドはその視線を解析する。加えてボク自身の光術式を侵入させて魔術に細工をする。それがボクの〈アルゴスゴールド〉だよ』
その重要情報を耳にした男三人は素早く頭を回転させる。
「ならばっ!」
「よせっ!」
「へっ、バカ女が!」
ある者は素早く対抗策を考え実行しようと。ある者はそれを制止しようと。そしてあるモノは秘密を持ち帰ることを理由に敵前逃亡を開始した。
私は『過去、現在もしくは未来を見通す力』だと思います。ですがこの権能をもつ魔神たちは、『巫女・預言者』の外見を持っていない。魔術師タイプかも微妙な魔神が、『過去視・探査に予見』の権能を所持している。
この不自然さから推測すると。魔神たちの『見通す権能』は『神眼、全知の力』とは異なる。『考古学・推理や予測演算』といった【情報分析】の力であり。
学者、猟師や軍師などの玄人が、当たり前に持つ能力だと私は愚考します。