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55.四凶刃の火~デモンズミラー

ファンタジーとSF。昔は星を渡り滅ぼす力のあるSFのほうが強力だろうという認識でした。

しかし昨今の異世界なろうのチートぶりを見ると中世幻想のほうが凶悪だなあと考える次第です。(作品世界が多く、競争しているのですから当然そうなるのでしょうが)


とはいえ中世よりSFのほうが〈まだ〉今のところ優れている分野があります。「ライディング」や「工場」「銃器」に関すること以外で。量産をそれほど?していないものでSFが優れているもの、と問えば何を皆さんは思い浮かべるでしょう。

小部屋・通路の一部を覆う結界箱の術式が形成されていく。

それは男シャドウの低い魔力で発動する火術に意味を持たせるためのもの。建物に被害を与えないようにと小ズルい知恵をしぼり、可能性を代価に払っただけの器用な術式の二重併用。


その程度の術式であるミミックキューブがいづれ模倣・流用されるのは当然のことであった。


「だからって今はないだろうがっ!」


毒づく藤次の叫びに応じることなく結界の檻は閉じていく。憐れなシャドウをあざ笑うかのようにその壁は強固であり、すでに逃げ道までもがふさがれている。その後、どうなるかは結界檻の中央に収束しつつある熱量が示していた。


「イヤだっ!イヤだイヤだイヤだっ!せっかく四凶刃の最弱になったのに。こんなとこでオワルのはイヤだぁっ!!」


そう叫んで藤次はがむしゃらに高熱化した短剣を振り回す。あげくその短剣を取り落とし、床に落ちる寸前で蹴り飛ばした。



閉じる瞬間の結界の角へと。とたんに閉じつつあった魔力の牢はわずかにふるえて四散した。


「おっとラッキー。偶然、投げた短剣がうまいこと刺さったナァ」


「戯言はそのぐらいにしてもらおうか」


そう告げる男は異様な雰囲気を放っていた。瞳は瑠璃の輝きを放ち、下水道にはふさわしくない清浄な空気をまとっている。だが放つ殺気は断じて聖者のそれとは異なる。

何より藤次より高い魔力でより強固なミミックキューブをアレンジしてみせた技量は只者ではない。


「自らの固有魔術を奪われておきながら道化を装う。その度胸に免じて我が名を知る栄誉を与えよう

我が名はミスラム。この地下迷宮を支配するものだ」


「おいおいミミックキューブは俺の固有魔術なんかじゃねぇ。こいつは献上が決まっている術式だ。

少しばかりレアだとすぐ固有魔術って。シーフどもの妖術使いはコレだから困る」


威圧と挑発。その言の葉が交わることはなく、殺気のみが交錯する。そして実力者同士の戦いは瞬きのうちに決する。


「自らの姿と影に屈せよ!『デモンズミラー』」


『九炉身』


魔力の高さ、神秘の技能は明らかにミスラムが藤次を凌駕している。シャドウを束ねる姫長の扇奈ならともかく藤次はそれなりのシャドウでしかない。


盗賊を蹂躙したミミックキューブも火属性以外の術式を発動不可、〈大半の〉魔道具の使用不可という誓約を課しての初見殺しだ。二番煎じが通用するのは数段格下のザコまで。同格以上の術者に通用するようなギミックではない。



だから迷わず切り札をきる。血流・鼓動を使っての静穏詠唱。機動力にも優れた身体強化の死角を突いた、屋内専用の鉄鼠と化す技を。


だがそれでもミスラムの固有であろう魔術には及ばなかった。


「ハッハァッ!自らの姿と影に屈せよと命じたはずだぞ!写せ!悪魔たちの鏡!!」


その発動句に伴い十基ものミミックキューブが出現し藤次に砲口を向ける。あげくミスラムの帯びている魔力波動が藤次のそれに共振した。

それは初見のはずの身体強化・九炉身まで簒奪されたことを意味する。迷宮のボスという名乗りも誇張ではないのだろう。


瞬時にそう結論付けた藤次だができることは少ない。まずは地下水路の天井に向けてダガーを放ちつつ特攻を仕掛ける。不得手な脚力を酷使して片手間の鍛錬しかしていない突撃を仕掛けざるを得ない。

それが必要なほど藤次とミスラムの技量は隔絶していた。


「行っけぇ~」


「フッ、くだらんわ!!」


突進する藤次。その行方を遮ったのは砲塔かと思えたミミックキューブの結界箱だった。結界箱の位置固定をゆるく、部分的に行う。内部の火爆を推力として結界箱事態を砲丸と化す。


それは藤次の戦闘記録をのぞき視ていただけのシーフソーサラーにできることではない。


「邪魔だっ!どけっ、どきやがっ!?があぁっ」


「足が止まっているぞ。いい的だな」


そして襲いかかる無情な砲撃。それは藤次が血のにじむ努力で得たものの反響だった。










数分後。ホコリの舞い散る下水迷宮とやらでのん気なセリフが響く。


「うっわぁ~、アブねアブね。もう少しで制裁されるところだったぜ」


「・・・・・・・・・ッ!?」


それは傷を負った藤次と動揺を隠せないでいるミスラムだった。


「あ~あ。やっぱり俺に魔術の才能はねえなあ。とっととイリスの御方様に献上して正解だったぜ。

学者先生じゃあるまいし術式の発案者だからって発展・改良までできるかって~の」


藤次は負傷したといってもそれは軽微。ポーションの類が〈効けば〉即座に無傷となるだろう。


むしろミスラムのメンタルダメージのほうが大きそうだった。


「何故だ。何故その程度の傷ですんでいる。何故生きていられる!!」


「そりゃな。タネも仕掛けもあるからだろ」


そう言いつつ藤次は下水道・地下水路の損耗を見やる。いつか建て直しは必須とはいえ、当分は利用しなければならない大事な施設だ。


こんなアホらしい戦闘で「破損しました」「汚水・悪臭がもれました」などと報告したらどんな制裁を受けることやら。


そんなことを真剣に考えながらミスラムの眼前で藤次は安堵のため息をついた。


私は【義手】【義足】に関してはSFのほうがファンタジーより秀でていると愚考します。その理由は社会復帰できるか否か。


ファンタジーで義手をつけると暗器の収納箱ならまし。異形の四肢をつけたり、元の手足とは明らかに異なる棒の類を取り付けてしまう。これでは外見から色眼鏡で見るものもいるでしょう。

特に軍人貴族・兵士では必死に戦ったのに、外見だけを理由に強制引退などとなりかねません。どうして等身大人形の製作技術をもっと流用しないのでしょうか?


残念ながらファンタジーの【義手・義足】は大昔のレトロサイボーグにも劣ると思います。




もっとも節度のある作者が部位欠損の人物を登場させないから海賊アームしかないのかもしれませんが。


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