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52.四凶刃の火 ~出現

 幻想世界にある都市施設。その中で最も神様のご加護があり、魔術の神秘までもが充満している。それでいて物理的に汚れている場所はどこでしょうか?


 私は下水道、地下水路だと思います。事実上、毒持ちと断言できる病毒持ちのローチ、ラットが跋扈している迷路。主人公ならともかく新米冒険者がそんなところで数減らしを行い生還できるのは神様の御力でしょう。

 ましてローチが直立し甲虫、蜘蛛と戦わない。暴食のラットが地走りを起こさないのは魔術の神秘。

適当に薬を捨てているように見えて奇跡の調合が行われているに違いありません。

 悪徳都市ウァーテル。その地下にはかつて商業都市だったころの名残がある。


 広大な地下水路。それに併用して建設された下水道は増え続けるであろう人口を見こした先見の明であり。豊富な海の幸とそれらを獲り食べる人々を思いやる心の現れであろう。


 とはいえそんな地下水路の存在も今は昔のこと。悪徳都市ウァーテルと化してからは路地裏よりも昏い常闇の世界と化している。

 物理的に一応は日が差すところではできない悪行。それらが昼夜を問わず横行するこの世の奈落こそが現在の地下通路だ。


 そんな地獄への通路では地上の騒乱を頓着することなく凶行が始まろうとしていた。



 『お~れ~はトウジ。四凶刃。カンブであるけどさい弱だ~』


 調子外れな酔っぱらいの歌が地下通路に響く。正気よりどのくらい狂気に侵されているか推測するべき。そんな歌への冒涜をがなりたてるのは髪を短く刈った盗賊風の男だった。


 彼の名は藤次。その騒音・歌詞にあるとおりシャドウたちの幹部。四凶刃の一員である。その服装はともかく顔には軽薄、表情はお調子者の表示が貼り付けられており、幹部どころかシャドウであることすら疑わしい存在だ。


 「お~い誰かいないのか~『ここに美味しくないけどお肉が歩いていますよ~誰か気付いて~』」


 道化ならもっとましなことを言うだろう。そんな戯言とも言えないセリフが地下通路に木霊し消えていく。沈黙だけが藤次の話相手だった。



 かと思えた。


 「うわっちゃっ、ちゃ~。何だ?そよ風か?まさかコウモリ!?でもこんな下水にいるはずないか~」


 藤次の周りの空気がゆらぐ。それは澱んだ空気をかき回し殺気でお調子者の言動に応えてきた。


 「う~む、なんだか危ない短剣が振り回されている気がするな~。ちょっとヤらかして地下道巡りをするように命じられただけなのに。オレの命は風前の灯火。『だけど助けは誰も来ない~』」


 軽口に対し不可視の刃が何度もふるわれる。だがセリフ以上に酔っぱらっているかのような藤次の足取りはそれらをかろうじてかわし続けていた。

 だがそんな回避行動がいつまでも続くこともなく。


 「ッ!?」

 「どわっ!なんかヌルっといった。ヌルっと通り過ぎた!」


 藤次の大声に派手な水しぶきの音が重なる。それは不運な何かが藤次の膝下につまずいて転倒した。汚濁が流れる水路にヒト型をさらした瞬間だった。


 「おいっ!誰か・・・・・何かっ!?こんな汚れた所に落ちたら大変なことになるぞ!!」


 そう告げて藤次は下水の人型に腕を伸ばす。汚濁に浮き沈みするヒト型はその手を取るべくもがき、生存本能に従って何も持っていないほうの手を差し出してきた。

 その手をしっかり藤次は握り、自らが汚れるのも厭わず力いっぱい引き上げる。



 


 

 そして身体強化している握力で握りつぶした。


 「!!!!!!ッ!?」


 「おいおい、何でオレがお前らシーフ連中を助けなきゃ・・・」


 セリフの途中で藤次は圧壊した手をグリップにしてヒト一人の体重を振り回す。そして狭い通路を割れよとばかりに振り下ろした。


 「・・・ならないんだ?闇ギルドっていうのは頭の中がお花畑な連中の寄り合いか?」


 「!?、ガッ!!」


 だがその肉塊は通路に傷をつけることなく。闇の中でナニかにぶつかって下半身を飛び散らせた。

 同時にぶつかったモノが細身の暗殺者らしき姿を現す。


 「ア、ガ、」


 既に昏倒している。死への誘いが確定しているソレに対し藤次は非情にも短剣を突き刺す。あげくに術式を発動した。


 『ミミックキューブ』


 悪臭漂う地下水路に火炎が舞う。それはナニかに引火して地下の通路一つを瞬間的に火あぶりの刑場と化した。


〈〈〈!?・・・ッ!!!!!ァ〉〉〉


「おお、良く燃える。さすが盗賊ギルドのアジトだな。このくらいの火炎なら壁は燃えないか」


のん気に告げる藤次の目の前でヒト型のたいまつが数本出現する。

彼らはギルドの戦闘要員だったのだろうか。不可視の魔術を使いこなすシーフ魔術師だったのかもしれない。


いづれにしろ問答無用で火だるまにした藤次にとってはどうでもいいことだった。


「うわっちゃ。自分で火をつけてみたがやっぱりキューブの中は熱いな。だけど単独行動をする理由にはなるか」


そんなセリフを垂れ流せるほどくだらないことだった。


  


 しかも地下水路は良識によって維持管理されています。下水道を拠点や逃げ道として利用する悪者は大勢いるでしょう。

 しかし「世界を滅ぼす」と言う邪教徒すら下水の資源を利用しません。ローチ・ラットや堕とし子に下水の養分を吸収させてモンスターマーチを起こせば都市の一つぐらい壊滅しそうですが。

 そういうロクでもない話を聞かないのは理性・良識の勝利ということでしょう。



 以上、褒め殺しによるファンタジー施設の紹介でした。誰でもそんな汚れた怪物ラッシュは嫌でしょう。とはいえ新米冒険者をローチの群れに放り込むのをさすがにご勘弁いただきたいと愚行します。

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