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43.港のルール、扇奈のルール

騎士道。それは薬などと同様にメリットとデメリットがあります。

最大のデメリットは騎士道を遵守しようとするあまり戦争で負けてしまうこと。必勝の策を卑怯と罵り。

騎士道を守らない兵種、痛い目にあった傭兵たちを嘲り差別する。そんな狭量・偏見をもたらずのが騎士道の欠点だと考えます。

港町。そこにはいくつかのルールがある。その中の一つに〈争いは禁止〉というのがある。あたり前のこととは言うなかれ。陸地の〈争い禁止〉とは重みが違うのだ。


港での争い。それは航海で疲労の極みにある船乗りたちを地獄に突き落とす凶行である。


ぎりぎりの航海計画で水、食料の補給が急務の船。ぎりぎりどころか嵐によって流されてしまい、すでに犠牲者の出ている追い詰められた船の乗組員たちが寄港できない。

もしくは積み荷をさばけなければ、借金を返せず倒産や奴隷落ちしかねない海運商人たちにとって。


悪徳の都だとか。カオスヴァルキリーの事情で開戦するかなどは心底どうでもいい。というよりはっきり迷惑以外の何物でもない。

港の安全を確保するため安くない金を払っているのだから闇ギルドは信用にかけて平穏を維持しろ。

加えて頭がすげ変わるのは勝手だが、カオスヴァルキリーとやらは寄港の邪魔をするな。港の破壊や停泊している船を燃やすなら船乗りを敵にまわすつもりでいろ。


これが海運貿易で日々の糧を得ているものたちの主張である。



「フッ。海賊との兼業船乗りどもがどの口でほざいているんだか」


だがそんな主張も扇奈にとっては盗人猛々しいにもほどがある戯言にすぎない。まっとうな船乗り、それなりに誠実な商人ならその主張も通るだろう。


しかし扇奈たちシャドウの調べでは水夫どもなど人喰い魚人に等しい。

利益の上がる続ける商売なら商人の皮をかぶり。相手が自分より弱いとなれば海賊・奴隷狩りを始める最低の賊と化すのが船乗りだ。

海なら死体は魚の餌となり処理に困らない。悪行・殺戮の痕跡も潮風に飛ばされて消えるというインテリ殺し屋気取り。

略奪品を運ぶ輸送船を襲うなら勝手に喰い合っていればいい。だが奴らは経済封鎖の御旗のもとまっとうな商船を沈める私掠船の乗員候補だ。


「できれば都市ウァーテルともども殲滅したいのだけど」


それは扇奈の主君であるイリスの意向に反する。

奴らの海賊行為によって必要な時に必要な素材が届けられなかった。そのために敬愛するマスターの未来が閉ざされかねないことを考えると、扇奈は衝動に身をまかせたくなる。


「落ち着け、私。見せしめと港の封鎖をすることだけは許可をいただいている」


そう唱えて扇奈は自らの心に刃を置くことをイメージして平静を保つ。この戦況では港の封鎖は即日、イリス様の勝利によって解除されるだろう。ならば迅速、徹底的に下手人の海賊どもは見せしめに処刑しなければこの怒りは収まらない。


その結論に至った扇奈は本当の攻撃手段と猛毒に等しいモノを解き放った。





騎士道のメリット。それは恩賞をごまかせる。それは無理でも分割払いに近い猶予を得られることでしょうか。

戦いとは理不尽なものであり勝ち続けることなど不可能。そして並みの将軍では勝利しても戦費の回収すら困難であり、命がけの働きに報いる恩賞を払い続けるなど絶望的と断言できる。

鬼畜外道の略奪・殺戮を行って恩賞を払う。あるいは血税を食いつぶすなどという暴挙に出れば国が傾く。もしくは亡国の徒を育てかねない。

そこで騎士道が重要となります。

「勝利に加え騎士道を守る立派な戦士」そうやっておだて褒めちぎることで恩賞の支払いを待ってもらう。略奪、血税の浪費に制限をかける。これこそが騎士道における最大のメリットではないでしょうか。

即金で報酬をもらわないと生活していけない傭兵にとってはどうでもいい。もしくは報酬の支払いを渋る害悪かもしれませんが。傭兵もお行儀が良いほうが人気が出ると思います。

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