422.閑話~水蛇姉の防衛網+通行証の使い方:水粒衝
江戸時代より、昔の時代に何故”辻斬り”がなかったのか?
端的に言って、ロクな理由ではないと愚考します。
捜査能力が未熟だったり。捜査をする役人のモラルが”アレ”で、”辻斬り”が取り締まれなかった。鬼・物騒な妖怪あつかいされ、放置された。
”辻斬り”より物騒な連中がうろつく世界であり。”辻斬り”を取り締まっているよりも、”山賊・侵略者”に対抗する必要があった。
時代劇の世界ではないため。
”辻斬り”などしたら、弓矢で射殺されるか、毒殺されるか、集団で袋叩きにされるか。『住まい』を調べられ、寝込みを襲われたり。
”辻斬り”が無敵剣士になれるほど、世の中は甘くない。都合の良い正義の剣客もいないでしょうし。そのため江戸時代より前に、”辻斬り”は現れなかったと愚考します。
〔下級シャドウにとって、3番目くらいに恐ろしいことは何か?〕と、問われたならば。
シャドウの弁弥ならば〔上級シャドウの任務に同行すること〕と、答える。
何故なら人は、人喰いの怪物がそばにいれば、恐怖を感じるものであり。
その『人喰い怪物』を蹂躙して、殲滅する存在の近くにいると、下級シャドウは思考停止してしまう。
上級シャドウたちが普段、『手加減』を行っており。実際は極めて狂猛で、いかに理不尽なのかを、目の当たりにすると。
『手加減』に気付かぬ、自分の愚かさにうんざりし。
己の非力さを嫌悪して、培った『自信』の破砕音が聞こえてくる。
弁弥にとって、上級シャドウとは、そのくらい雲の上な存在であり。
シャドウ一族に生まれたことを、いつも聖賢の御方様に感謝している。
〔まあ、それでも怖い物は、恐いんだけど〕
『水粒衝!』
侍女シャドウのユリネ様が『術式』を発動する。
その眼前には雲霞のように、モンスターどもが群れており。その中心では堕ちた勇者が、何か”言霊”をさえずっている。
しかし弁弥たち下級シャドウにとって、真に警戒すべきはユリネ様の『術式』による、余波であり。
〔命がけで魔物の群れに、突入しなさい〕と、命じられようとも、今ほどの緊張はしないだろう。
そして、そんな『暴威』を知らぬ、”暴行亜人”どもが獣欲をまき散らしながら、殺到してきて。
「「「「「「「「「「「「「「「ッ!⁺;—」」」」」」」」」」」」」」」
約50匹以上が硬直し、それに続く100匹が抹殺された。
「あ…えぇ?:?」「「「「「「「「「「・・・・-」」」」」」」」」」」
この『怪物誘導』を引き起こした、”首魁”が絶句している。飢えて凶暴ながらも、『嗅覚』に優れた獣モンスターが状況を察していない。
それほど瞬時に”獣欲の亜人”どもは、ユリネ様に殲滅された。
「ひるむなっ!数で押し包め‥『魔力』切れになれば無力な・
「ーー・~-ーッ」
首魁の指示が言い終わる前に、ユリネ様の滑走が始まる。氷上を舞うのか、秘伝の『歩法』なのか、わからない。
弁弥たちの知らない『移動術』が、怪物どもの前衛をかすめるように、ユリネ様を運んでいき。
『ーー・~』
「「「「「「「「「「「「「「「ッ!⁺;*ー」」」」」」」」」」」」」」」」
命知らずな先方を務める、脚・攻撃力に秀でた魔物どもが、転倒を強制される。
その時になって弁弥は、ようやくユリネ様の『水粒衝』を感知できた。
『水粒衝』:空気中の『水気』に魔力を与え、『怪奇』に変える。『怪奇の水』は顔面にある水気を操り、目鼻舌の『感覚器官』に渇きを与え。
支配した水を『耳』から注入して・・・
〔見てない、感知してない、言う気はない!〕
事実上、五感を封じられて、ほぼ即死させられる。『殺戮の術式』は恐怖でしかなく、凡人たちの理解を拒絶した。
水源に『毒』を流す。それには様々なコツがあり、採算についても考えねばならない。
川に毒を流して魚をとる。手っ取り早く村人を全滅させるため、井戸に毒を投げ込む。
都市部の住民を恐慌に陥らせたり、物欲を増大させる時は、『毒薬』に加えて『仕込み』も必要であり。『疫病』への抵抗力を弱めて、間接的に住民を減少させる時もある。
他にも邪魔な貴族を『毒殺』するときは、銀の食器に『透明な塗料』を塗って、『毒薬』と銀が接触しないようにするなど。
毒使いは、多岐にわたる知見を得る必要がある。
「それが力攻めの物量作戦とは…」
”怪物誘導”で魔物の群れをけしかけて、小さな街を滅ぼす。
混成都市と化したウァーテルに打撃を与えるため。周辺にある五つの街へ、同時に襲撃をかけ。万が一、失敗しても魔物の屍が発する『毒気』で、土地まで汚染するなど。
毒使いのヒュラムとしては、美学に反するおおざっぱな『依頼』であり、”恥”とすら言える。
〔やむをえん。”魔女”の狙いが???の拡大・再構築ならば、『毒薬』の材料を集めるのも苦労する。『毒使い』として、それを認めるわけにはいかん〕
しかし徒弟制度でガチガチに固まった、『毒使い』の師匠が受けた依頼ならば。弟子のヒュラムとしては、逆らうわけにはいかず。
〔この依頼が終わったら、そろそろ代替わりを計画しよう〕
「魔獣どもよ!その飢えを満たすため、疾く駆けろ!!」
そんな事を考えながら、ヒュラムは『魔導の杖』を作動させて、モンスターどもに街の蹂躙を命じ。
「‥-‥‥え?」
空に『スライム』が浮かんでいるのが見えた。
それは『青色の雲』となり、『巨大な水塊』になったと思えば、『雪の乱舞』と化し。
「いかん、逃げっ/—/**・
『どこに?』
問いかける声の主に、道連れの『毒』を放つこともできず。ヒュラムの意識は、永久に闇の中へと沈んでいった。
郊外でそんなことが、起きているとも知らず。ミトラの街は夜の眠りについて、静寂を保ち。
”堕ちた勇者”が一人、絶望のうめきを上げていた。
「なっ、な、なぁ‘‐`」
「さすがは旦那様の妹君‥義姉として私も鼻が高い…」
「何をしたっ!キサマらは、いったい何をっ;・*」
「答えるわけ、ないでしょう。『死人に口なしとも言いますし』」
”盗賊ギルドの手駒”に対し、C.V.リアベルは冷たく応じ。
会話を完全に拒否して、『術式』を発動させる。暗がりから『ネコ科の猛獣』を模した、魔力の影が群れをなし。
『作戦』という、”虐殺行為”をたくらむ”連中”に襲い掛かった。
「ギっG!;」「「「~/-;!:?」」」「どこっ、どこに*/-;―」
「おのれぇー‐ー―!」
〔夜目がきくといっても、所詮は人間レベル・・・*:*〕
〔夜目がきくといっても。所詮は闇討ち・素人相手にして『実戦』を騙る、低俗な『感知』にすぎず。マシなのが”仲間?割れ”で同族を出し抜く時では、心根も腐るというもの。
四凶刃の『技』とは、比べるのも愚かしい〕
「ひぃ、ヒッ、H;~」「ヤメr*-」「/‘‐;//…」
そんな”傲慢”に心を委ねつつも、リアベルは油断なく『バステトシャドー』を操っていき。『モンスタートレイン』による、襲撃が失敗した時に備え、ミトラの街に放たれている”凶賊”どもを狩っていく。
〔それにしても義妹様は、聞きしに勝る実力を持っている。お会いするのが、今から楽しみ…その時は『猫女神の魔導』の術理を教えあって、力を高めて…〕
「こうなれば、せめて”魔女”だけでも討ち取って・・ッ⁉」
「…〇ー〇」
「なっ・・*キ、貴様はぁ…」
リアベルがひとにらみしただけで、”堕ちた勇者”の表情が硬直する。
〔始末したところで、旦那様の武勇の足しにはならず…ユリネ様の手土産には、論外だけど…〕
「「「「「ー・・・;・+」」」」」
本来、ミトラの街を影ながら防衛している、シャドウ一族たちが怯えた視線を、リアベルに向けてくる。そんな彼らに旦那様のものである【証の矢じり】を見せつつ、リアベルは微笑んで見せ。
「「ひゃぅ;・!」」「「「・-・・;・」」」
よりいっそう、シャドウたちに怯えられた。
「こうなれば、手ごろな捕虜を(シャドウ一族に)手土産にするしかないわね」
「ーーーーー-;‼」
迷わず逃げ出した”元勇者”に、リアベルの『足刀』が襲い掛かる。一番、弱めの攻撃で体力を削れば、捕らえることも難しくない。
そう判断してリアベルは、”元勇者”の頑丈な背中を蹴りつけ。
捕虜を預かったシャドウは、迷わず『蘇生作業』に取り掛かった。
混成都市へと続く、ヴァデスの街にて…
『マンティスグレイヴ! グレイヴフォレスト…
マンティスフォレスト!!』
「‥∼;お鎮まりください、桐恵様っ!」「『竜角鬼』は目立ちすぎます‘!`」
「捕虜をっ…情報を吐か+*s」「ヒィ;・!」
小さな街を滅ぼすには、十分すぎる数の魔物が誘導され。
その魔物が倍の数になっても圧倒できる、『暴虐の力』が振るわれ続け、死体の山が積み上げられていく。
「街を滅ぼす、”外法”を使う連中だ。徹底的に殲滅しなければ‥」
〔ウソだっ!『妖蟲の鎌』を振るいたい、だけだっ!〕〔タクマさんと結婚して、大人しくなったんじゃ、ないのかよっ…〕〔なるわけねぇだろっ;・:〕
〔むしろ不満をためて、ここで発散しているんじゃ…・-〕
「何か言いたいことでも?」
「周辺の街は、混成都市の環境を良くする、要衝でございますっ‥
どうか、ご配慮を願Ⅰ*—」
「ウソをつくな‥貴様らにとって大事なのは保身だろう。
『マンティスフォレスト! フォレストソーン…
マンティスソーン!!!』」
『巨大カマキリ』と『竜牙兵』を、掛け合わせたような『竜角鬼』が桐恵の魔力によって、変成していく。長刀から妖樹の森・・妖樹の森からトゲだらけの魔蟲へと変わり。
そのたびにモンスターたちは『肉塊』と化していく。
その元凶たる中級シャドウの桐恵を、何とかとどめようと。下級シャドウたちは必死になって、呼び掛けを続けるが成果はなく。
「桐恵‥もう少し手心を加えないと、部下たちたちが怯えてしまうわよ」
「姉上か…ルビゥムの街方面は、もう終わったのですか?」
「もちろんよ。しっかりカタをつけて、守備隊に引き継いできたわぁ」
〔〔〔〔〔霧葉サマァーーー〕〕〕〕〕
この時〔霧葉様が来訪して、桐恵様を止めてくれる〕と、いう希望を誰もがいだいてしまい。
「「「「「ッ⁉」」」」」
運んできた”荷物”を目の当たりにして、その望みが皆無なことに、下級シャドウたちは心胆を寒からしめる。
そうしてユリネ様の『親族』になって、義姉となる。タクマ様と『重婚』を行った女傑たちは、その後も各地で猛威を振るい続けた。
『宝石の騒動』で貸しを作り、混成都市の宰相C.V.イセリナは領主たちに、『通行証』を発行させ。
それをあえて使わないことで、『通行証』を与えられた商人たちは、評判を高めていき。
同時に『通行証』を偽造・盗んだ”賊”どもは、各地で取り締まられ。
「”詐欺師ども”を掃除する、『準備運動』も一段落したし。
そろそろ本番の計画を始まるとしましょう」
「かしこまりました、イセリナ様!!」×8
小者な領主たちを驚愕させる、大事業が開始された。
「これは、一体どういうことだっ!」
「どういうことと、申されましても・・・ただ普通に商いをしているだけですが…^・^」
「ふざけるなっ!リメラ男爵家を蔑ろにして、他領に食糧を売りさばくなど許されない!:!」
混成都市の中心に建つ政庁。その一画にある部屋で、イセリナは標的を相手取ってに『外交』を行っていた。
物理法則を超越する『魔術』が存在しないのと同様に。
万能至高の完璧な『法治社会』などいう、ものはあり得ない。
だから少しでもマシな選択肢を、必死になって作って選び取り。
打算・生存と自己満足のため、外交を行い続ける。
それがイセリナ・ルベイリーというC.V.のルールであり。
圧力をかけて、ようやく『通行証』を発行した、リメラ男爵は彼女にとって”邪魔者”でしかない。
「許すも許さないも…リタニア王国を襲った、悪天候に伴う不作に対し、救援を行っているだけ。ヨーセン男爵領が求める、『食糧』を輸送して、販売しているだけにすぎず。
その商売について、一男爵家に指図される、言われはないのですが」
「商売だとっ・・・不作になる前の相場でっ!
通常価格で投げ売りにしておいて、何が商売だ!”!」
「そんな目先の利益だけを求める、取引を言われても困るのですが。
しっかり利子を取り立てて、借りを作って、領地経営に対しうるさく口出しを行い。
そうそう、優秀なお子さんがいるなら、ウァーテルで留学を…コホン、人質に取るのも楽しいでしょう」
「ー∼^∼‐ー・~—>-<‐:」
イセリナの本音を察して、リメラ男爵の胸中は荒れ狂っているが。
”盗賊ギルド”を野放しにして、領民の生き血をすすり、贅沢をしていた。最後のチャンスであった『通行証』も、イセリナが”脅迫外交”を行って、ようやく発行するに至る。
そんな”暗愚”の思惑など、イセリナの知ったことではなく。
例年の収穫が得られた『幸運』に満足せず。”重税”を課して、取り上げた農作物を転売する。不作に苦しむ他領の弱みに付け込んで、利益を得ようとするリメラの計画に対し。
だいぶ離れた不作の影響を受けてない地域から、イセリナのコネを使って食糧を買い付け。それらを不作のヨーセン男爵領で売りさばく。
その結果、リメラの”アコギ”な商売と、イセリナの『通常価格』な商品が、かち合ったとしても。ヨーセン領の住民が、誰の売る商品を買うかは、イセリナの関知?することではない。
「ヨーセン男爵家は、我が一族にとって因縁のある相手だ…
その意思をくみ取って、譲ってもらいたい:!*」
「・・・-・-・:・・-・」
リメラ男爵が命がけの『代償』を払えば。一考の余地があるという、ポーズぐらいとってもいい。
もっともイセリナとしては、領主の都合で『領地の境』が閉じられる、この状勢を変える。そのために『通行証』を秘かに集め、『宝石騒動』も利用した。
リメラ男爵のように、因縁・欲得によって『流通』を阻害したり。もう少しマシで領地を安定させるため、食糧等を蓄える目的で領境を閉ざす。
そうすると『血管』が詰まって、血の巡りが悪くなり、身体不調になるように。
遠方からの『流通』も滞り、飢饉・商品不足の際に、必要なものを取り寄せられない。自給自足が出来るところはマシだけど、輸出入が必須のところは、詰んでしまいかねず。
そこまでいかずとも、経済状況が悪化すれば治安も悪化して、破滅する者が増大する。
〔食糧が足りない。商売が成り立たない〕と、いうイメージだけで人もC.V.までもが、不幸になってしまう。
〔だから、まっとうに流通に携わる『商人』たちは、自由に領境を通させる。
そのために、キサマのような”暗愚”は邪魔でしかない〕
そんなことを考えつつも、リメラ男爵の主張を聞き続けて、イセリナは『外交』の体裁をとり。そうしてリメラの粘りに辟易したフリをして、彼女は口を開く。
「何と言われようと、混成都市は『通行証』を所有している。
リメラ男爵家が何と言おうと、その特権で領内を通過させてもらう」
「なんだとっ!そんな風に『通行証』を悪用するというのか!!」
「認められた『特権』を行使するだけよ。それにしてもとても残念だわ。
『貴族の特権』に敬意を払い、最大限の尊重を行うため。『平民』にすぎない商人たちに『通行証』を預けても、特権は行使させてこなかった。
だけどリメラ男爵家のせいで、『特権』を使わなければ、飢えたリタニア王国の民を救えない。ならば、この機会に『通行証』を商人たちが使うのを許可するとしましょう」
「…は?:?」
”暗愚”なリメラ男爵は一瞬、呆然自失になる。
だが保身を最優先にする『思考』は覚醒をしたようで、その表情は蒼白になっていった。
荷物チェックを免れ、行列に並ばなくとも街に入れる。その『特権』を入手しても、ちらつかせるだけで、”詐欺師”を罠にはめていただけ。
その本当の狙いは、『通行・流通』を妨げる領主を黙らせるため。
〔平民ごときが、尊い貴族と同じ『特権』を行使する。
その”元凶”となって、他の貴族から吊るし上げにされたくなければ。派閥を問わず、貴族たちから袋叩きにあいたくなければ。
指定した商人の『流通』を妨げることなく。
不仲な貴族領だろうと、安易に”経済封鎖”を行うことを禁じる〕
これを伝えて、アピールすることがイセリナの狙いであり。
〔生活必需品が買えない・届かない〕と、いう不安をも破壊する。
そのために愚かな、リメラ男爵の会談に応じ。
思い通りに踊る、リメラ男爵を利用して『通行証の使い方』を知らしめる。この大陸の文化的に、戦災での救援は難しくとも。
天候不順・モンスターの被害の際に、手を差し伸べられる『システム』を構築していく。
〔そうしてC.V.の次代を育成しやすい環境を構築していく。
そのためには姉上のお力が、まだまだ必要です。早くお戻りください〕
「待てっ、待ってくれぇ…そんなことが許され‥;」
「少なくとも、寄親のイルズラウ侯爵は〔そんな愚か者は、追放に‥いや厳罰に処する〕と、仰られていましたが」
「・;*:+ー∼ー”—”!」
そんなことを考えつつ、イセリナはリメラ男爵の哀願を聞き流し。
半月が過ぎることなく、リメラ男爵家は当主の交代が決定した。
ネタバレ説明:『水粒衝』について
現在のユリネが主に使っている『術式』であり。下級シャドウが『顔面の感覚器から水を奪い、その水を耳から侵入させて、脳を破壊する』と、いう『即死術式』と誤認している、『水術式』です。
とどめを刺す時に、上記のことを行う時もありますが。それだけで『怪物誘導』の物量と、中ボスクラスの脅威に対抗できない。
ユリネが無事でも、背後の街・集落に侵入されてしまい、住民たちを守れないでしょう。
『水粒衝』のメインとなる効果は、敵の『重心・バランス』を崩すこと。
空気中の水分に『質量付与』を行い、様々な無臭・不可視の『水弾』を造る。
ゴム・粘着・冷凍や重水の『水弾』を、自他に当ててバランスを操作してしまう、『術式』です。
敵の力を利用する『合気・柔の術』は、様々ですが。その技が『魔物』に使われることは、めったにありません。その理由は主に二つあると、ユリネは考え。
一つは、様々な他者・魔物の身体構造を『理解』できない。『理解』しようとせず、重心崩しをイメージできないから。
もう一つは、片手でしか『柔の術』を使えないから。人間が両手を使おうとしても、『巨体の魔物』の重心を崩せる、身体部位に手が届かない。そして人が片手で使える『技』など限定的であり、四肢・六脚や多足の重心を崩せるはずもない。
ましてユリネの相手は”水源を汚染”するため、飛翔し自爆もいとわない”連中”であり。素手でさわるなど、自殺行為に等しい。かと言って『飛び道具』で仕留めて、体液が飛び散るのも、”毒液”をばらまくに等しい。
ユリネは『凍結術』が不得手ですが、仮に使えても『魔力消費』が莫大であり。上級シャドウの事情もあって、戦場を『氷原』に変えたくない。
そこで『水属性の魔力感知』で、まず体内の水分を『解析』し。
少なくとも『筋肉』の動きを解析・察知することで、重心を崩せるタイミングを見定める。
そうして『水粒衝』の水弾で、『視覚・聴覚』の片方を塞ぎ。獣系の『嗅覚』は正面に突き出してるなら、完全にふさいでしまう。
『感覚・感知能力』を混乱させたり。もしくは感覚器をふさいだ、『水粒衝』を拒絶する勢いを利用して、『目・鼻・口』から水分を奪い、渇きの『呪縛』をかけていく。
それら『乾燥・感知阻害』によって、標的を混乱させてから、重心を崩しにかかります。ザコ敵の二足歩行なら、一発の『水粒衝』で片が付きますが。
四足以上で移動し、重心が低いモンスターはそう簡単にいかず。
ユリネも複数の『水粒衝』を放ち。右前足+左後ろ足が回るよう、同時に水弾を当てたり。下手な立位を取ったら、左から頭部を打ち、右から足を払う。
こうしてモンスターを転倒させれば、トレインなら後続の魔物に踏み殺され。
巨体ならば、動揺して『抵抗力』が低下した耳から、『水粒衝』を侵入させて・・・それでも生きてるなら、得意の『酷冷泉』をかけたり。『浸透する衝撃』で、殴り蹴ってもいい。
1)身体を透視して、重心・動作を探る。
2)『感覚器官』を、魔物それぞれの『身体構造』にあわせてふさぎ、混乱させてから重心を崩す。
3)無力化した敵の『耳・急所』から水弾を侵入させて、脳神経を破壊する。他の手段で、とどめを刺す。
『水粒衝』は大まかに、この三段階を行う『術式』で構成されており。
〔まさか、自分が転倒したり、脚がなえることはあるまい〕と、考えている魔物を驚愕させ。その隙をついて仕留めます。
ちなみに1)『水属性の魔力を感知して、身体構造を解析する』に関してですけど。
初期の経験不足の時はともかく。散々、魔物の群れを壊滅させ、その身体を解体していれば。既知の魔物について『知識』も蓄えられ、『水粒衝』の効率も上がっていき。
そのため人間の『邪法』で、誘導できるレベルの魔物は、もはや敵ではなく。
亜人系なら最初から、3)を行って即死させることも可能です。
その結果・・・
〔ザコの数百が集まっても敵ではないし。ユリネなら『酷冷泉』で仕留められるよね〕
〔‥かしこまりました。スタンピート・トレインを殲滅する時のみ、『水粒衝』を十全に使えるという、『制約』をかけます〕
〔うんうん、そうした方がいいよ〕
こんなやり取りが行われたとか。
以上、『水粒衝』のネタバレ説明でした。
それでは江戸時代の中期以降に、辻斬りは何故現れなくなったのか?
時代劇ルールで考えるなら。
〔辻斬りをするより、用心棒・殺し屋になった方が、金ももらえて得だろう〕と、いうのが一つ。
そしてロクでもない理由が、”犯罪の取り締まりが困難で、まともな資料を作れない”と、いうもの。
ただし”治安を守る奉行所が無能だ”と、いう話しではありません。
江戸時代も後半になると、商人が経済力を得て、武士を圧倒し始めました。それは物流が盛んになり、全国的に人の移動が多くなったとイコールです。
それは現代で言えば”高速道路の建設に伴い、犯罪者が田舎にやって来る”と、いうのに近い。人・物の移動が増えたことで、”不届き者”の移動も容易になり。
犯罪件数もさぞかし増加したでしょう。
一方、治安を守るべき奉行所・お役人の方は、『捜査範囲』が定められている。一昔前の『所轄』よりも、役人が捜査できる『範囲』に制限が課せられ。犯罪者を追って、移動・情報共有するのが不可能だった。
”不届き者”がちょっと領地の境を越えて、高飛び?すれば簡単に逃げられる。
一方の治安を守る役人は、捜査範囲に制限が課せられ、人数も少なく。あげくに上司からは〔悪党を捕まえろ〕と、無理くりを強いられる。
お上の逆鱗に触れる、悪事を働いた下手人を『捜査』することが優先され。
”辻斬り”の取り締まりは、後回しにされたと愚考します。




