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ヴァルキリーズ・シティ~混成都市ができるまで、あるいは盗賊連合の滅亡記  作者: 氷山坊主
閑話~混成都市の渦+シグルスの模擬戦闘
422/429

422.閑話~水蛇姉の防衛網+通行証の使い方:水粒衝

 江戸時代より、昔の時代に何故”辻斬り”がなかったのか?


 端的に言って、ロクな理由ではないと愚考します。


 捜査能力が未熟だったり。捜査をする役人のモラルが”アレ”で、”辻斬り”が取り締まれなかった。鬼・物騒な妖怪あつかいされ、放置された。


 ”辻斬り”より物騒な連中がうろつく世界であり。”辻斬り”を取り締まっているよりも、”山賊・侵略者”に対抗する必要があった。


 時代劇の世界ではないため。

 ”辻斬り”などしたら、弓矢で射殺されるか、毒殺されるか、集団で袋叩きにされるか。『住まい』を調べられ、寝込みを襲われたり。


 ”辻斬り”が無敵剣士になれるほど、世の中は甘くない。都合の良い正義の剣客もいないでしょうし。そのため江戸時代より前に、”辻斬り”は現れなかったと愚考します。

 〔下級シャドウにとって、3番目くらいに恐ろしいことは何か?〕と、問われたならば。


 シャドウの弁弥へんやならば〔上級シャドウの任務に同行すること〕と、答える。

 何故なら人は、人喰いの怪物がそばにいれば、恐怖を感じるものであり。


 その『人喰い怪物』を蹂躙して、殲滅する存在(暴威)の近くにいると、下級シャドウは思考停止してしまう。

 上級シャドウたちが普段、『手加減』を行っており。実際は極めて狂猛で、いかに理不尽なのかを、目の当たりにすると。


 『手加減』に気付かぬ、自分の愚かさにうんざりし。

 己の非力さを嫌悪して、培った『自信』の破砕音が聞こえてくる。


 弁弥にとって、上級シャドウとは、そのくらい雲の上な存在であり。

 シャドウ一族に生まれたことを、いつも聖賢の御方様に感謝している。




 〔まあ、それでも怖い物は、恐いんだけど〕


 『水粒衝すいりゅうしょう!』


 侍女(上級)シャドウのユリネ様が『術式』を発動する。


 その眼前には雲霞うんかのように、モンスターどもが群れており。その中心では堕ちた勇者が、何か”言霊”をさえずっている。

 しかし弁弥たち下級シャドウにとって、真に警戒すべきはユリネ様の『術式』による、余波・・であり。


 〔命がけで魔物の群れ(死地)に、突入しなさい〕と、命じられようとも、今ほどの緊張はしないだろう。

 そして、そんな『暴威』(ユリネ様の実力)を知らぬ、”暴行亜人(ゴブリン・オーク)”どもが獣欲をまき散らしながら、殺到してきて。


 「「「「「「「「「「「「「「「ッ!⁺;—」」」」」」」」」」」」」」」


 約50匹以上が硬直し、それに続く100匹が抹殺された。


 「あ…えぇ?:?」「「「「「「「「「「・・・・-」」」」」」」」」」」


 この『怪物誘導』を引き起こした、”首魁”が絶句している。飢えて凶暴ながらも、『嗅覚』に優れた獣モンスターが状況を察していない。

 それほど瞬時に”獣欲の亜人”どもは、ユリネ様に殲滅された。


 「ひるむなっ!数で押し包め‥『魔力』切れになれば無力な・


 「ーー・~-ーッ」


 首魁の指示が言い終わる前に、ユリネ様の滑走が始まる。氷上を舞うのか、秘伝の『歩法』なのか、わからない。

 弁弥たちの知らない『移動術』が、怪物どもの前衛をかすめるように、ユリネ様を運んでいき。


 『ーー・~(水粒衝)


 「「「「「「「「「「「「「「「ッ!⁺;*ー」」」」」」」」」」」」」」」」


 命知らずな先方を務める、脚・攻撃力に秀でた魔物どもが、転倒を強制される。


 その時になって弁弥は、ようやくユリネ様の『水粒衝』を感知できた。



 『水粒衝』:空気中の『水気』に魔力を与え、『怪奇』に変える。『怪奇の水』は顔面にある水気(涙・ツバ・鼻水?)を操り、目鼻舌の『感覚器官』に渇き(デバフ)を与え。

 支配した水を『耳』から注入して・・・


 〔見てない、感知してない、言う気はない!〕


 事実上、五感を封じられて、ほぼ即死させられる。『殺戮の術式』は恐怖でしかなく、凡人(弁弥)たちの理解を拒絶した。

 










 水源に『毒』を流す。それには様々なコツがあり、採算についても考えねばならない。


 川に毒を流して魚をとる。手っ取り早く村人を全滅させるため、井戸に毒を投げ込む。

 都市部の住民を恐慌に陥らせたり、物欲を増大させる時は、『毒薬』に加えて『仕込み』も必要であり。『疫病』への抵抗力を弱めて、間接的に住民を減少させる時もある。


 他にも邪魔な貴族を『毒殺』するときは、銀の食器に『透明な塗料』を塗って、『毒薬』と銀が接触しないようにするなど。

 毒使いは、多岐にわたる知見を得る必要がある。


 

 「それが力攻めの物量作戦とは…」


 ”怪物誘導トレイン”で魔物の群れをけしかけて、小さな街を滅ぼす。

 混成都市と化したウァーテルに打撃を与えるため。周辺にある五つの街へ、同時に襲撃をかけ。万が一、失敗しても魔物のしかばねが発する『毒気』で、土地まで汚染するなど。


 毒使いのヒュラムとしては、美学に反するおおざっぱな『依頼』であり、”恥”とすら言える。


 〔やむをえん。”魔女”の狙いが???の拡大・再構築ならば、『毒薬』の材料を集めるのも苦労する。『毒使い』として、それを認めるわけにはいかん〕


 しかし徒弟制度でガチガチに固まった、『毒使い』の師匠が受けた依頼ならば。弟子のヒュラムとしては、逆らうわけにはいかず。


 〔この依頼が終わったら、そろそろ代替わりを計画しよう(師匠を毒殺しよう)


 「魔獣どもよ!その飢えを満たすため、疾く駆けろ!!」


 そんな事を考えながら、ヒュラムは『魔導の杖』を作動させて、モンスターどもに街の蹂躙を命じ。


 「‥-‥‥え?」


 空に『スライム』が浮かんでいるのが見えた。

 それは『青色の雲』となり、『巨大な水塊』になったと思えば、『雪の乱舞』と化し。


 「いかん、逃げっ/—/**・


 『どこに?』


 問いかける声の主に、道連れの『毒』を放つこともできず。ヒュラムの意識は、永久に闇の中へと沈んでいった。




 郊外でそんなことが、起きているとも知らず。ミトラの街は夜の眠りについて、静寂を保ち。


 ”堕ちた勇者”が一人、絶望のうめきを上げていた。


 「なっ、な、なぁ‘‐`」


 「さすがは旦那タクマ様の妹君‥義姉アネとして私も鼻が高い…」


 「何をしたっ!キサマらは、いったい何をっ;・*」


 「答えるわけ、ないでしょう。『死人に口なし(バステトゲーム)とも言いますし』・・バステトシャドー…


 ”盗賊ギルドの手駒(堕ちた勇者)”に対し、C.V.リアベルは冷たく応じ。

 会話を完全に拒否して、『術式』を発動させる。暗がりから『ネコ科の猛獣(メスライオン)』を模した、魔力の影(シャドーキョャッツ)が群れをなし。


 『作戦』という、”虐殺行為”をたくらむ”連中”に襲い掛かった。


 「ギっG!;」「「「~/-;!:?」」」「どこっ、どこに*/-;―」

 「おのれぇー‐ー―!」


 〔夜目がきくといっても、所詮は人間レベル・・・*:*(今のなし!)


 〔夜目がきくといっても。所詮は闇討ち・素人相手にして『実戦』をかたる、低俗な『感知』にすぎず。マシなのが”仲間?割れ”で同族を出し抜く時では、心根も腐るというもの。


  四凶刃(タクマ様)の『技』とは、比べるのも愚かしい〕


 「ひぃ、ヒッ、H;~」「ヤメr*-」「/‘‐;//…」


 そんな”傲慢”(タクマ様を)に心を委ね(称賛し)つつも、リアベルは油断なく『バステトシャドー(影の魔獣の群れ)』を操っていき。『モンスタートレイン』による、襲撃が失敗した時に備え、ミトラの街に放たれている”凶賊”どもを狩っていく。


 〔それにしても義妹ユリネ様は、聞きしに勝る実力を持っている。お会いするのが、今から楽しみ…その時は『猫女神の魔導(バステトゲーム)』の術理を教えあって、力を高めて…〕


 「こうなれば、せめて”魔女”だけでも討ち取って・・ッ⁉」


 「…〇ー〇」


 「なっ・・*キ、貴様はぁ…」


 リアベルがひとにらみしただけで、”堕ちた勇者”の表情が硬直する。


 〔始末したところで、旦那タクマ様の武勇の足しにはならず…ユリネ様の手土産には、論外だけど…〕


 「「「「「ー・・・;・+(がたがた、ブルブル)」」」」」


 本来、ミトラの街を影ながら防衛している、シャドウ一族たちが怯えた視線を、リアベルに向けてくる。そんな彼らに旦那様のもの(所有)である【証の矢じり】を見せつつ、リアベルは微笑んで見せ。


 「「ひゃぅ;・!」」「「「・-・・;・(ガクぶるブル)」」」


 よりいっそう、シャドウたちに怯えられた。


 「こうなれば、手ごろな捕虜を(シャドウ一族に)手土産にするしかないわね」


 「ーーーーー-;‼」


 迷わず逃げ出した”元勇者”に、リアベルの『足刀』が襲い掛かる。一番、弱めの攻撃で体力を削れば、捕らえることも難しくない。

 そう判断してリアベルは、”元勇者”の頑丈な背中を蹴りつけ。


 

 捕虜を預かったシャドウは、迷わず『蘇生作業』に取り掛かった。






 混成都市ウァーテルへと続く、ヴァデスの街にて…


 『マンティスグレイヴ!  グレイヴフォレスト… 

  

  マンティスフォレスト!!』


 「‥∼;お鎮まりください、桐恵様っ!」「『竜角鬼』は目立ちすぎます‘!`」

 「捕虜をっ…情報を吐か+*s」「ヒィ;・!」


 小さな街を滅ぼすには、十分すぎる数の魔物が誘導(トレイン)され。

 その魔物が倍の数になっても圧倒できる、『暴虐の力』が振るわれ続け、死体の山が積み上げられていく。


 「街を滅ぼす、”外法(トレイン)”を使う連中だ。徹底的に殲滅しなければ‥」


 〔ウソだっ!『妖蟲の鎌(竜角鬼)』を振るいたい、だけだっ!〕〔タクマさんと結婚して、大人しくなったんじゃ、ないのかよっ…〕〔なるわけねぇだろっ;・:〕

 〔むしろ不満をためて、ここで発散しているんじゃ…・-〕


 「何か言いたいことでも?」


 「周辺の街は、混成都市の環境を良くする、要衝でございますっ‥

  どうか、ご配慮を願Ⅰ*—」


 「ウソをつくな‥貴様らにとって大事なのは保身だろう。

  『マンティスフォレスト!  フォレストソーン… 

  

  マンティスソーン!!!』」


 『巨大カマキリ』と『竜牙兵』を、掛け合わせたような『竜角鬼』が桐恵の魔力によって、変成していく。長刀グレイヴから妖樹の森(マンティスフォレスト)・・妖樹の森からトゲだらけの魔蟲(マンティスソーン)へと変わり。


 そのたびにモンスターたちは『肉塊』と化していく。


 その元凶たる中級シャドウの桐恵を、何とかとどめようと。下級シャドウたちは必死になって、呼び掛けを続けるが成果はなく。


 「桐恵‥もう少し手心を加えないと、部下たち(下級シャドウ)たちが怯えてしまうわよ」


 「姉上(霧葉)か…ルビゥムの街方面は、もう終わったのですか?」


 「もちろんよ。しっかりカタをつけて、守備隊(下級シャドウ)に引き継いできたわぁ」


 〔〔〔〔〔霧葉サマァーーー〕〕〕〕〕


 この時〔霧葉様が来訪して、桐恵様を止めてくれる〕と、いう希望を誰もがいだいてしまい。


 「「「「「ッ⁉」」」」」


 運んできた”荷物”を目の当たりにして、その望みが皆無なことに、下級シャドウたちは心胆を寒からしめる。




 そうしてユリネ様の『親族』になって、義姉となる。タクマ様(ユリネ様の兄)と『重婚』を行った女傑たちは、その後も各地で猛威を振るい続けた。










 『宝石の騒動』で貸しを作り、混成都市の宰相C.V.イセリナは領主たちに、『通行証』を発行させ。


 それをあえて使わないことで、『通行証』を与えられた商人たちは、評判を高めていき。

 同時に『通行証』を偽造・盗んだ”賊”どもは、各地で取り締まられ。



 「”詐欺師ども”を掃除する、『準備運動』も一段落したし。

  そろそろ本番の計画を始まるとしましょう」

 

 「かしこまりました、イセリナ様!!」×8


 小者な領主たちを驚愕させる、大事業が開始された。




 「これは、一体どういうことだっ!」


 「どういうことと、申されましても・・・ただ普通に商いをしているだけですが…^・^」


 「ふざけるなっ!リメラ男爵家をないがしろにして、他領(敵貴族)に食糧を売りさばくなど許されない!:!」


 混成都市の中心に建つ政庁。その一画にある部屋で、イセリナは標的カモを相手取ってに『外交』を行っていた。


 

 物理法則を超越する『魔術』が存在しないのと同様に。

 万能至高の完璧な『法治社会システム』などいう、ものはあり得ない。


 だから少しでもマシな選択肢を、必死になって作って(・・・)選び取り。

 打算・生存と自己満足のため、外交(戦い)を行い続ける。

 

 それがイセリナ・ルベイリーというC.V.のルールであり。


 圧力をかけて、ようやく『通行証』を発行した、リメラ男爵は彼女にとって”邪魔者”でしかない。



 「許すも許さないも…リタニア王国を襲った、悪天候に伴う不作に対し、救援を行っているだけ。ヨーセン男爵領が求める、『食糧』を輸送して、販売しているだけにすぎず。

  その商売について、一男爵家(キサマごとき)に指図される、言われはないのですが」


 「商売だとっ・・・不作になる前の相場でっ!

  通常価格で投げ売りにしておいて、何が商売だ!”!」


 「そんな目先の利益だけ(・・)を求める、取引を言われても困るのですが。

  しっかり利子を取り立てて(るかもしれない)、借りを作って、領地経営に対しうるさく(適切な)口出し(アドバイス)を行い。


  そうそう、優秀なお子さんがいるなら、ウァーテルで留学を…コホン、人質に取(人材スカウトをす)るのも楽しいでしょう」


 「ー∼^∼‐(ふざけるな、)ー・~—(ふざけるな、)>-<‐:(フザケおって!)




 イセリナの本音を察して、リメラ男爵の胸中は荒れ狂っているが。


 ”盗賊ギルド”を野放しにして、領民の生き血をすすり、贅沢をしていた。最後のチャンスであった『通行証』も、イセリナが”脅迫外交”を行って、ようやく発行するに至る。


 そんな”暗愚”の思惑など、イセリナの知ったことではなく。


 例年の収穫が得られた『幸運』に満足せず。”重税”を課して、取り上げた農作物を転売する。不作に苦しむ他領の弱みに付け込んで(に売りつけて)、利益を得ようとするリメラの計画に対し。

 

 だいぶ離れた不作の影響を受けてない(・・)地域から、イセリナのコネを使って食糧を買い付け。それらを不作のヨーセン男爵領で売りさばく。

  

 その結果、リメラの”アコギ”な商売と、イセリナの『通常価格』な商品が、かち合ったとしても。ヨーセン領の住民が、誰の売る商品を買うかは、イセリナの関知?(力を示す)することではない(チャンスであり)


 

 「ヨーセン男爵家は、我が一族にとって因縁のある相手だ…

  その意思をくみ取って(怨みをはらすため)、譲ってもらいたい(、何としても譲れ):!*」


 「・・・(それならば)-・-・:(取引条件ぐらい)・・-・(出しなさい)




 リメラ男爵が命がけの『代償』を払えば。一考の余地があるという、ポーズぐらいとってもいい。


 もっともイセリナとしては、領主の都合で『領地の境』が閉じられる、この状勢を変える。そのために『通行証』を秘かに集め、『宝石騒動』も利用した。



 リメラ男爵のように、因縁・欲得によって『流通』を阻害したり。もう少しマシで領地を安定させるため、食糧等を蓄える目的で領境を閉ざす。


 そうすると『血管』が詰まって、血の巡りが悪くなり、身体不調になるように。


 遠方からの『流通』も滞り、飢饉・商品不足の際に、必要なものを取り寄せられない(輸送できない)。自給自足が出来るところはマシだけど、輸出入が必須のところは、詰んでしまいかねず。

 そこまでいかずとも、経済状況が悪化すれば治安()悪化して、破滅する者が増大する。


 〔食糧が足りない。商売が成り立たない〕と、いうイメージだけで人もC.V.までもが、不幸になってしまう。



 〔だから、まっとうに流通に携わる『商人』たちは、自由に領境を通させる。

  そのために、キサマのような”暗愚”は邪魔でしかない〕

 



 そんなことを考えつつも、リメラ男爵の主張を聞き続けて、イセリナは『外交』の体裁をとり。そうしてリメラの粘りに辟易したフリをして、彼女は口を開く。


 「何と言われようと、混成都市は『通行証フリーパス』を所有している。

  リメラ男爵家が何と言おうと、その特権で領内を通過させてもらう」


 「なんだとっ!そんな風に『通行証』を悪用するというのか!!」


 「認められた『特権』を行使するだけよ。それにしてもとても残念だわ。

  

  『貴族の特権(通行の自由)』に敬意を払い、最大限の尊重を行うため。『平民』にすぎない商人たちに『通行証』を預けても、特権フリーパスは行使させてこなかった。


  だけどリメラ男爵家のせいで、『特権』を使わなければ、飢えたリタニア王国の民を救えない。ならば、この機会に『通行証』を商人(平民)たちが使うのを許可するとしましょう」


 「…は?:?」


 ”暗愚”なリメラ男爵は一瞬、呆然自失になる。

 だが保身を最優先にする『思考』は覚醒をしたようで、その表情は蒼白になっていった。




 荷物チェックを免れ、行列に並ばなくとも街に入れる。その『特権(通行証)』を入手しても、ちらつかせるだけで、”詐欺師”を罠にはめていただけ。


 その本当の狙いは、『通行・流通』を妨げる領主を黙らせるため。


 〔平民ごときが、尊い貴族と同じ『特権』を行使する。

  その”元凶”となって、他の貴族から吊るし上げにされたくなければ。派閥を問わず、貴族たちから袋叩きにあいたくなければ。


  指定した商人の『流通』を妨げることなく。

  不仲な貴族領だろうと、安易に”経済封鎖”を行うことを禁じる〕


 これを伝えて、アピールすることがイセリナの狙いであり。

 〔生活必需品が買えない・届かない〕と、いう不安イメージをも破壊する(やわらげる)



 そのために愚かな、リメラ男爵の会談に応じ。

 思い通りに踊る、リメラ男爵を利用して『通行証の使い方』を知らしめる。この大陸の文化的に、戦災での救援は難しくとも。


 天候不順・モンスターの被害の際に、手を差し伸べられる『システム』を構築していく。


 〔そうしてC.V.の次代を育成しやすい環境を構築していく。

  そのためには姉上のお力が、まだまだ必要です。早くお戻りください〕




 「待てっ、待ってくれぇ…そんなことが許され‥;」


 「少なくとも、寄親のイルズラウ侯爵は〔そんな愚か者は、追放に‥いや厳罰に処する〕と、仰られていましたが」


 「・;*:+ー∼ー”—”!」


 そんなことを考えつつ、イセリナはリメラ男爵の哀願を聞き流し。




 半月が過ぎることなく、リメラ男爵家は当主の交代が決定した。


 


 


 

 


 

 ネタバレ説明:『水粒衝すいりゅうしょう』について


 現在のユリネが主に使っている『術式』であり。下級シャドウが『顔面の感覚器から水を奪い、その水を耳から侵入させて、脳を破壊する』と、いう『即死術式』と誤認・・している、『水術式』です。


 とどめを刺す時に、上記のことを行う時もありますが。それだけで『怪物誘導トレイン』の物量と、中ボスクラスの脅威に対抗できない。

 ユリネが無事でも、背後の街・集落に侵入されてしまい、住民たちを守れないでしょう。


 

 『水粒衝』のメインとなる効果は、敵の『重心・バランス』を崩すこと。


 空気中の水分に『質量付与エンチャント』を行い、様々な無臭・不可視の『水弾』を造る。

 ゴム・粘着・冷凍や重水の『水弾』を、自他に当ててバランスを操作してしまう、『術式』です。



 敵の力を利用する『合気・柔の術』は、様々ですが。その技が『魔物』に使われることは、めったにありません。その理由は主に二つあると、ユリネは考え。

 


 一つは、様々な他者・魔物の身体構造を『理解』できない。『理解』しようとせず、重心崩しをイメージできないから。


 もう一つは、片手・・でしか『柔の術』を使えないから。人間が両手を使おうとしても、『巨体の魔物』の重心を崩せる、身体部位に手が届かない。そして人が片手で使える『技』など限定的であり、四肢・六脚や多足の重心を崩せるはずもない。


 ましてユリネの相手は”水源を汚染(毒流し)”するため、飛翔し自爆もいとわない”連中”であり。素手でさわるなど、自殺行為に等しい。かと言って『飛び道具』で仕留めて、体液が飛び散るのも、”毒液”をばらまくに等しい。


 ユリネは『凍結術』が不得手ですが、仮に使えても『魔力消費』が莫大であり。上級シャドウの事情もあって、戦場を『氷原』に変えたくない。



 そこで『水属性の魔力感知』で、まず体内の水分を『解析』し。

 少なくとも『筋肉』の動きを解析・察知することで、重心を崩せるタイミングを見定める。


 そうして『水粒衝』の水弾で、『視覚・聴覚』の片方を塞ぎ。獣系の『嗅覚()』は正面に突き出してるなら、完全にふさいでしまう。

 『感覚・感知能力』を混乱させたり。もしくは感覚器をふさいだ、『水粒衝(水弾)』を拒絶(抵抗)する勢いを利用して、『目・鼻・口』から水分を奪い、渇きの『呪縛』をかけていく。



 それら『乾燥・感知阻害』によって、標的を混乱させてから、重心を崩しにかかります。ザコ敵の二足歩行なら、一発の『水粒衝』で片が付きますが。

 四足以上で移動し、重心が低いモンスターはそう簡単にいかず。


 ユリネも複数の『水粒衝』を放ち。右前足+左後ろ足が回るよう、同時に水弾を当てたり。下手な立位を取ったら、左から頭部を打ち、右から足を払う。



 こうしてモンスターを転倒させれば、トレインなら後続の魔物に踏み殺され。

 巨体ならば、動揺して『抵抗力』が低下した耳から、『水粒衝』を侵入させて・・・それでも生きてるなら、得意の『酷冷泉(体熱放射)』をかけたり。『浸透する衝撃』で、殴り蹴って(・・・)もいい。


 

1)身体を透視して、重心・動作を探る。

 

2)『感覚器官』を、魔物それぞれの『身体構造』にあわせてふさぎ、混乱させてから重心を崩す。


3)無力化した敵の『耳・急所』から水弾を侵入させて、脳神経を破壊する。他の手段で、とどめを刺す。


 『水粒衝』は大まかに、この三段階を行う『術式』で構成されており。


 〔まさか、自分が転倒したり、脚がなえることはあるまい〕と、考えている魔物を驚愕させ。その隙をついて仕留めます。


 ちなみに1)『水属性の魔力を感知して、身体構造を解析する』に関してですけど。

 初期の経験不足の時はともかく。散々、魔物の群れを壊滅させ、その身体を解体(解剖)していれば。既知の魔物について『知識』も蓄えられ、『水粒衝』の効率も上がっていき。


 そのため人間の『邪法』で、誘導できるレベルの魔物(中位ドラゴン)は、もはや敵ではなく。

 亜人系なら最初から、3)を行って即死させることも可能です。



 その結果・・・


 〔ザコの数百が集まっても敵ではないし。ユリネなら『酷冷泉』で仕留められるよね〕


 〔‥かしこまりました。スタンピート・トレインを殲滅する時のみ、『水粒衝』を十全に使えるという、『制約』をかけます〕


 〔うんうん、そうした方がいいよ〕


 こんなやり取りが行われたとか。




 以上、『水粒衝』のネタバレ説明でした。

 それでは江戸時代の中期以降に、辻斬りは何故現れなくなったのか?


 時代劇ルールで考えるなら。

 〔辻斬りをするより、用心棒・殺し屋になった方が、金ももらえて得だろう〕と、いうのが一つ。



 そしてロクでもない理由が、”犯罪の取り締まりが困難で、まともな資料を作れない”と、いうもの。

 ただし”治安を守る奉行所が無能だ”と、いう話しではありません。


 江戸時代も後半になると、商人が経済力を得て、武士を圧倒し始めました。それは物流が盛んになり、全国的に人の移動が多くなったとイコールです。


 それは現代で言えば”高速道路の建設に伴い、犯罪者が田舎にやって来る”と、いうのに近い。人・物の移動が増えたことで、”不届き者”の移動も容易になり。

 犯罪件数もさぞかし増加したでしょう。



 一方、治安を守るべき奉行所・お役人の方は、『捜査範囲』が定められている。一昔前の『所轄しょかつ』よりも、役人が捜査できる『範囲』に制限が課せられ。犯罪者を追って、移動・情報共有するのが不可能だった。


 ”不届き者”がちょっと領地の境を越えて、高飛び?すれば簡単に逃げられる。

 一方の治安を守る役人は、捜査範囲に制限が課せられ、人数も少なく。あげくに上司からは〔悪党を捕まえろ〕と、無理くりを強いられる。


 お上の逆鱗に触れる、悪事を働いた下手人を『捜査』することが優先され。

 ”辻斬り”の取り締まりは、後回しにされたと愚考します。

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