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ヴァルキリーズ・シティ~混成都市ができるまで、あるいは盗賊連合の滅亡記  作者: 氷山坊主
閑話~混成都市の渦+シグルスの模擬戦闘
417/429

417.閑話~宝石の騒乱+ブラックドッグの乙女:ヘビーシュラウド

 全ての髪が蛇と化している、『メドゥーサの頭部』

 それを絵・像として、製作するのは難しく。掃除・維持管理するコストが高く。事実上の皆殺しを行っている『神話』のため、『魔除け』をイメージするのも、かなり難しい。


 そんな『メドゥーサの首』を、『鬼瓦』と同様に建物・屋根の上に設置する・・・〔無理がある!〕と、申し上げたい。


 とはいえ『鬼=地獄の鬼』とイメージする人。『鬼』を悪党・外来の脅威と考える文化にとって、『鬼の面』も『メドゥーサの首』も似たようなものでしょう。


 そうなると〔『鬼瓦』が魔除けになっているんだから、『メドゥーサの首』も同じように・・・〕と、考える人もいるのでしょうけど。

 大陸中の国で、『宝石の輝き(・・)』が失われる事件が続発し。

 その『灰色の宝石』を所有する権力者たちは、様々な行動に出た。



 『宝石』に元の輝きを取り戻そうと、賢者を招き、魔術師に頼る者がいれば。


 ”けがれた宝石”を所持して、失墜した権威を取り戻そうと、暴挙に出る(紛争を起こす)者が現れ。


 そして様々な事情から、精神的に追い詰められ。

 ”詐欺師”にだまされて、”盗賊ギルド”に依頼を出し。評判のいい貴族が所有する、『輝き続ける宝石』を奪おうとする者たちが活動し始め。



 下級シャドウのギンヤは、宰相のC.V.イセリナ様から命じられた、任務に取りかかり。


 「『旋風閃・・・(加速の身体強化)』…『重鎌じゅうれん!!』」


 「ぐッ∼ゥ・・!/ー*/」×20


 「おおっ!」「助かった‥;」「ギンヤ殿っ!!」



 悪徳の都を落とした・・・訂正:悪徳の都をイリス様、姫長様の御2人が一夜で陥落させ。最下級シャドウたちが路地裏で”盗賊ザコ”狩りをしてた頃に比べ、ギンヤも腕前も上がった。


 そうして”山賊”狩りを行い。”山賊・盗賊”の宝を回収し、持ち主に返却していれば、相応にトラブルも発生するが。同時にコネもできるわけであり。


 ギンヤは、その時の経験・コネを活かし、今回の任務を遂行する。

 〔コネを作った、まっとうな領主貴族を悪党どもから護衛する〕と、いう任務に取り掛かり。



 他人様の住居に不法侵入する者は、『旋風閃』の脚力で蹴り飛ばし。

 ”詐欺”を仕掛けようとする者は、不幸な事故にあわせ(高速で関節を外し)てから、穏やかに尋問(くすぐり刑)を行い続け。


 そうして集団で”強盗”を行おうとした連中は、標的となる屋敷の私兵に防備を固めさせ。連中が襲撃を仕掛けるタイミングで、ギンヤは背後から(旋風閃で)強襲を仕掛けてやった。


 

 「おのれぇ~‐ー、魔Jぉ*;/*」「ギャp*;—*」「/*/‥*;・」


 「発言には気をつけるがいい。

  確実に即死するならいいが、運悪く生き残ると”悲惨”なことになる」


 「「「「「・・・;-・…」」」」」


 ギンヤの忠告に、襲撃者たちは硬直する。

 どうしようもない死の予感に震え。既に戦闘の主導権を握られている、戦況に顔を引きつらせる。


 実際、『目印(刻印)』に向かって飛ぶ『風の刃』、『重鎌』の発動条件(準備)が整った時点で、”強盗”どもは詰んでおり。

 『目印』となる傷・ダメージを『旋風閃』でつけられた、連中はもちろんだが。『目印』にめがけて飛ぶ、『風の刃』の進路に立っている連中も、『ダメージ+目印』の両方を負うこと必至であり。



 「待たせたなっ!」

 「こっちは片付いた‥残りにも引導をくれてやる!」


 「「「「「:・!‘・`-…・」」」」」


 そうしている間に、シャドウの班(3人1組)がそろい、『術式』の連携が始まった。


 『『夜露をしのぐ、家屋に踊る旋風の舞


  水が流れ陽に照らされる、大地を翔ける風の息吹


  双頭の竜がふるう、爪より鋭き斬閃ざんせんとなれ  双竜爪!!』』


 「「「「「ギャa*ーーーーー!;!」」」」」

 「「「「「「「「グッ-/-/*;―」」」」」」」」


 そこからは一方的な殲滅だった。


 一人が牽制を仕掛け、一人がその反応を見て、敵の実力を解析し。その情報を活かし、ギンヤが敵集団を『旋風閃』の高速機動で、切り裂いていく。


 それにより”強盗”たちが防御を固めても、命がけの特攻を仕掛けてこようと。

 『双竜爪』にとって、ちょうどよい的であり。

 

 大地にそって飛び、建物・家屋を破壊しない『風の刃(双竜爪)』は、”賊”どもの脚を切り裂き。転倒した連中の全身を切り裂く。


 そうして脚を斬られた”賊”は逃げられず。身体の重心も崩れて、攻撃することもままならず。


 「今だっ!皆で一気にとどめを刺せ‼」


 「オオォーーー!!」×30


 半ば無力化した”強盗”どもを、ギンヤは警備兵たちに攻撃させる。

 そうして領主貴族たちに花を持たせられるほど、ギンヤたちは余裕があった。











 貴族にとって『伝統』は極めて重要なことです。

 平民にはない『歴史』で圧倒し。『伝統を守ってきた』と、いう『歴史』を学び、貴族は『知識』を蓄える。

 『伝統を守る』ことによって、先祖の知識(伝統)を活かし。『伝統マニュアル』の通り行動することで、自信をもって迅速に動ける。


 だから小さな田舎貴族であるメイハート家でも、これまで『伝統』を大事にしてきました。


 しかし、そんなメイハート家に変化が訪れます。


 

 〔”悪徳の都”から逃げた””盗賊ギルド”どもが、”山賊”と化して領内を荒らしています。


  どうか山賊討伐に、(を行う)ご助力ください(許可をください)


 そんなことを告げる使者シャドウによって、メイハート家は変化を余儀なくされました。




 「山賊の宝は、討伐した者が所有権を得る。ギンヤ(シャドウ)殿たちは、宝を自分のものにしないのか?」


 「報酬ならば主君から、充分にいただいています。

  それに山賊の宝で、富を築いても”賊”の標的にされるだけですから」


 「ふむ…道理だな。

  しかしメイハート家は伝統を守って、山賊の宝を所有させてもらう」


 「助力をいただいている、シャドウとしては異論ございません。

  貴家の伝統を尊重いたします」


 「とはいえ〔悪銭身に付かず〕とも言う。

  だから兵士への恩賞、諸々の経費を差し引いて、残った分は混成都市の大商会(太守殿)に預けたい」


 「賢明な判断に、敬意を表します」



 父上とギンヤ殿とで、短いやり取りを行い。

 それを境にメイハート家は、混成都市とよしみを通じ。


 ”盗賊ギルド”の隠し財産を、持ち主の貴族・・に返すことに、協力したり。

 多様な人材交流を重ね、大都市に集まる『最新情報』を、預けた資産の『利子』代わりに伝えられ。


 そうして今回も〔宝石の輝きを保つには、『契約』に誠実であらねばならない〕〔輝きを保つ『宝石』を狙って、”刺客集団(強盗)”が襲来する〕と、いう情報が伝令シャドウによってもたらされ。


 宝石を狙う”強盗集団”を待ち伏せして、多大な戦果をあげ。

 ギンヤたちのC.V.勢力に、完全に所属してると認定されるようになり。



 メイハート家は伝統を破る、必要に迫られた。




 「さあ、ギンヤ殿。好きなだけ、召し上がってください」


 「グラスが空いていますわ。お注ぎいたしますね」


 「…どうも」


 『輝きを失わない宝石』を狙って、押し寄せた”強盗団”を撃退し。

 領主であるメイハート家の屋敷で開かれた、戦勝会は少し異様な雰囲気に包まれていた。


 「あの~私の連れは、どこに行ったのでしょう?」


 「お二人なら、婚約者が既にいるとのことで・・同じような立場の者と、別室で酒宴を楽しんでいますわ」


 猛獣を捕らえるような、挑戦者の気概を発し。同時に外交相手への礼節を失わないよう、慎重に言葉を選んでいる。

 そんな異様な雰囲気の部屋で、メイハート男爵家が出せる、精一杯の豪華な晩餐がふるまわれ。


 〔味がわからねぇ‥いったい何を企んでる?〕


 「いかがでしょう。ギンヤ様の仰る通りに、ズゥサ子爵に『財宝』を渡してきました。

  これは、そのささやかな成果です」


 「・⁺・ああ、いい味わいだと思う。

  これから、もっと『取引』が盛んになればいいな」


 「ありがとうございます!私も、もっと頑張りますね!!」


 

 ”山賊”から取り返した『財宝』を、メイハート男爵家を通じて、各地の貴族に返却する。


 言うだけなら容易だが、前例のない、伝統が通じない『外交』の連続であり。


 〔もっと、財宝をよこせ!〕〔混成都市に内通する気かっ⁉〕

 〔余計なことをせずとも、山賊討伐くらい我らで行えた!〕


 感謝どころか、罵声を浴びせられることも、珍しくなく。

 派閥のしがらみから、なかなか礼を言えない、貴族ならマシだと言えた。


 もっとも、それも最初のうちだけであり。


 〔『宝石の輝き』を取り戻したいなら、○□△をすればいい〕

 〔無理に『宝石』を磨かないで、『+<◆な香油』を塗れば、輝きを補える〕

 

 〔当家は、これからゴメス男爵の領地に向かいます。『財宝』の対価というわけではありませんが。貴家の特産品を販売する、許可をいただけないでしょうか〕


 『財宝』とともに、『輝きのかげった宝石』に関する秘密(C.V.)情報を渡し。

 さらに仲の悪い貴族家に対して〔財宝のお礼替わりに、商売の制限を撤廃(ゆるく)してください〕と持ち掛ければ。



 「ほとんどの貴族が、取引に応じてくださいました。

  『宝石の輝きが喪失した』件に対処するため、どこも物入りになりますから」


 「それはよかった。

  互いが喜ぶ、『取引・契約』が盛んになることこそ、聖賢の御方(イリス)様の望み。


  配下シャドウとして、メイハート男爵家の助力に感謝する」


 一夜にして『宝石の輝きが失われた・陰った』という異常事態は、その『宝石』を所有する貴族の『面子・資産』にまで、多大な影響を及ぼし。

 その対策を練るため、貴族家のトップが直接、話し合いを行うとなれば。旅行費だけでも、支出を増大させるわけで。


 対策の内容によっては、湯水のごとく財産を浪費することになりかねない。この状況で、まっとうな商取引は、どこの領地も歓迎して当然だった。



 「そんな水くさいですわ。

  ですが、ギンヤ様がお礼を告げてくださるなら、【お願い】を聞いていただけます?」


 「『お願い』かぁ~∼‥あまり無理な内容は困るんだが」


 〔いよいよ、来たか!〕と、警戒するギンヤ様に対し、メイハート家の令嬢であるリアニスは、にこやかな笑顔を見せ。



 「実は最近、『一目惚れ』をしたお友達(C.V.)ができましたの。

  ギンヤ様に、ぜひ相談に乗って欲しくて…お友達を紹介させてください」


 「えっ…」


 その言葉が終わる前に、扉が開けられ。黒髪の野生的な美女が、ドレスをまとって入室してくる。


 「面と向かって、御会いするのは初めてになる。

  我が名はフェリミア・ウルバー。6級闇属性のC.V.にして、魔王軍・黒霊騎士団に所属する、黒犬の騎士C.V.だ」


 〔いったい、何が起こっている?オレの身分なら、まず婚約者を決めて‥いや、お見合いからか?:*〕


 そんな風に動揺をあらわにしている、ギンヤ様に内心で謝罪しつつも。

 令嬢リアニスはにこやかな『笑顔』を浮かべ、胸中で恨み言を告げる。


 

 〔今さら商業・軍事の『外交条約』だけで、メイハート家と交流を続けられるなどと、思わないでください。


  貴方様には、絶対に私と()婚約してもらいます。それが私の誘いを断り続けた、貴方様への意趣返しです〕


 

 こうしてメイハート家の伝統的な婚姻パターンは、一時的にお蔵入りした。 










 カオスヴァルキリーという種族がいる。


 通称C.V.と言われるカオスヴァルキリーは、『魔力』を知覚でき、『魔術文明』を持ち。他種族の文明が持つ長所を、自らの『魔術文明』に取り込む連合種族であり、戦()種族でもある。


 そんなC.V.にとって、最も使用者の多い『魔術』は『身体強化』だ。


 身体スペックをシンプルに強化できるのに加え。


 『五感』を強化して、敵性存在の奇襲に反応できる。魔境の過酷な環境を、とりあえずでも乗り切り。何より様々な『魔術の反動・負荷』にも耐えられる。


 単純に戦闘力を上げられ、種類の多い脅威に対抗できる。そんな『身体強化』の『魔術・魔術能力デザイン』はC.V.種族に重宝され。



 C.V.種族が『次代を育む』ことに、影を落としている。


 『完璧な生物』の中には、生殖能力が失われるタイプもいるが。

 そこまでいかずとも、身体能力を高めることに注力しすぎて、『色欲』が低下してしまう。ゾウ・サイやムササビなどのように、身体スペックが極めて高い代わり、『繁殖能力』が低下した獣のごとく。


 『身体強化』を追求しすぎて、心身両面から『次代を育む』ための能力が低下したり。


 〔それなら問題解決に努力すればいい!〕と、安易な素人考えで『色欲(性的嗜好)』をこじらせる、問題が発生している。



 一例をあげると。

 一目惚れは、ただでさえトラブルのもとなのに、『嗅覚』で2キロ先から殿方を分析し。『関係』を迫りたくなってしまう。


 今まで〔恋愛なぞ興味ありません〕と、いう態度だった騎士C.V.が、半ば暴走してしまう事件が発生し。



 〔私は大丈夫で、冷静だ。黒霊騎士として礼節を守り、まっとう貴族(マイハート家)殿に仲介を頼み。がっついていない女騎士として、挨拶もできた。私は安全な淑女だ〕


 相棒のシェリンは頭痛をこらえながらも、応援してくれるとのこと。

 重要な『魔導能力』を持つ、ミスティル様は隠し城砦にこもってまで、フェリミアを後押ししてくれた。


 〔まあシャルミナ団長も、魔王様とお過ごしになるは…(けっこう暴走気味というウワサが流れているし)〕

 〔黒霊騎士の何人かは、(慕情?が)燃え上がるのを止めたほうが、トラブル(惨事)が大きくなってしまうから・・・;+〕


 こうしてフェリミアはギンヤ殿に求愛を行い。



 〔主筋の聖賢イリス様、シャドウ一族に話を通すべきだった〕と、気付いたのは色々と過ぎて、一夜が明けてからだった。



 〔いかがでしょう、この蜂蜜酒ミードを使えば、たいていの作物が美味しいオツマミになります。それによって・・・〕


 〔そんなっ⁉食べ物で『流行』を作るというの!:?;〕


 〔そんな気はないわ。蜂蜜酒で味付けをして、作物の『生産調整』を行う。不作・豊作の両方で苦しむ、農家に支援を行うだけよ〕


 〔そういうのを『流行を作る』と言うんじゃないかしら〕



 そんな風に楽しい夜をすごし。

 人間社会も、夜の作法も、男性シャドウ(ギンヤ様)の事情も、ロクに知らない。


 C.V.フェリミアにとって、非常な有意義な時間を、朝まですごし。






 「何者だキサマはーーー!

  我らを勇者テスモドの一行と知って、ここにいるのかぁ!!」


 「せっかく、楽しい徹夜をしたのに、『掃除(掃討)』をしなければならない。

  戦の場に立つ者は、ままならないな」


 メイハート家が治めるシギュンの街から、だいぶ離れた街道の山あい。

 そこでフェリミアは招かれざる客を迎えていた。あるいは交わらない『言の葉』を垂れ流す、独り言をつぶやいていると言うべきか。


 「この地を収めるメイハート男爵は、”魔女の都”に魂を売って、内通した。

  身の潔白を主張するなら、おとなしく…」


 自称勇者の”戯言”を聞き流しながら、フェリミアは獲物テスモドを観察する。


 昨日、襲ってきた”強盗団”と比べ、だいぶ実力は上なようだ。

 しかも何らかの”催眠”をかけられ、『瞳の色』が濁り。身体からは剣呑な魔力反応が『透視』できる。


 ”強盗”に続けて、”勇者モドキ”を送り込んだ指揮官は、なかなかに凶悪なのだろう。この連中がギンヤ様を討ち取れなくとも、街に侵入して破壊行為を行えば。



 魔王様の元側室候補、黒霊騎士で結婚願望を持つ同僚、シャルミナ団長の喜ぶ(・・)時間など。諸々の『次代を育成する』ための努力が、後退しかねない。


 無論、昨夜の【楽しい時間】など望むべくもないだろう。


 〔おっと、今は目の前の敵に集中しないと〕


 不毛な争いを止め。戦姫・術者のC.V.だけで、技量を競い。

 『蜂蜜酒』を造ることも含め、農作物で料理を楽しむ。わりと気楽に弁当でも作り、難しい料理はリアニスの家人たちに任せ。


 「黒犬の”魔女”よ!いかにキサマとはいえ、勇者パーティーにはかなうまい。

  今なら慈悲をかけ…◎+*ー-―…ー●


 「邪魔だな・・ー・『ヘビーシュラウド!!』」


 「「「「「「◎⁺*ー-―…~:」」」」」」

 「「「「グ◎*+!-‐—」」」」


 フェリミアの身体に『魔力の加重』がかかる。鍛えられた体幹に加え、獣の身体能力まで併せ持たないと耐えられない。

 人体を圧死させる『魔力の重圧(ヘビーシュラウド)』が、フェリミアを覆いつくし。


 「おっと・・地面がへこんでは、街道の整備代がかかってしまう」


 フェリミアは余裕をもって、街道の地面に『硬化の付与』を行う。それによって地面がきしむ『音』が止まり。


 「+◎*ーッ」×15


 実力のある勇者パーティーが、『着衣への加重付与』によって圧死する。

 フェリミアのように、空気・装備に全身にいたるまで、『負荷』をかけていたわけではないが。


 ”賊の捨て駒(自称勇者)”では、『鍛練用の術式(ヘビーシュラウド)』程度で致命傷になるようであり。


 「旦那ギンヤ様を見つけて、『魔力』があがったとはいえ。まっとうな人間の前で、『魔術能力』を使うときは、気を付けないと」


 もう少し『感知能力』を上げて、手加減しないと嫌われてしまう。内心で怯える正室リアニスとハーレムを形成しても楽しくない。



 「とりあえず、このむくろを街道からどかすとしよう

  

  『ブラックドッグ!  ガルム‼  ベアスレイヤー!!


   交錯の時に爪を研ぎ、牙をあわせ・・血族(家族)に仇なす害悪を狩れ


   トライアドタスク‼!』」


 長年、フェリミアが蓄えていた『魔力の塊』が、『術式』によって分解されて、細胞レベルで身体を作り変える。

 それは『結婚』の準備をするため、生命を育む人間女性に近い、身体に変性する『儀式』であり。




 昨晩までのフェリミアが可愛く感じる、『暴虐の騎士』へと変成する。

 一生に一度だけ使う、オモい『まじない(禁呪)』の発動だった。











 ネタバレ説明:『ヘビーシュラウド』について


 本来は着衣に『重さ』を付与して、トレーニングを行う。衣服に『荷重の付与』を行っても、体幹がぶれないよう、修練を行う際に使われる『術式』であり。

 中の下レベルの者が『筋力トレーニング』に使ったり。『魔性の鎧』をまとう練習に、この『術式』を使っていました。


 名称も『アーマープレリュード』『パワードビギナー』というのがあり。

 この地を訪れた黒霊騎士たちなら、『昔使っていた初歩の修練を行う術式』にすぎないのですが。



 『魔力量』が増大したフェリミアによって、事実上の”抹殺術式”になってしまい。


 『ヘビーシュラウド』を回避・対抗できない。あるいは『ヘビーシュラウド』がもたらす加重を、ものともしない、『身体強化』が使えない。

 そういう敵は『ヘビーシュラウド』の加重によって転倒し、呼吸もできなくなります。


 一応、言い訳をさせてもらうと。

 『特攻』を仕掛ける敵が、市街地に侵入すると被害が出るため。脚・移動力を封じて、敵を討つ必要があったため、『ヘビーシュラウド』を使用したのですが。



 後述の『身体強化トライアドタスク』を使うまでもなく、今までの『身体強化』で”偽勇者”を瞬殺できた。

 8割がたフェリミアが『魔力チェック』を行うため、『ヘビーシュラウド』は使われました。


 以上、『ヘビーシュラウド』のネタバレ説明でした。






 『トライアドタスク』のネタバレ説明は、次回に行います。

 しかし『昔話の恐ろしい鬼』と『鬼瓦・鬼の面』は、かなり異なる存在だと愚考します。


 昔話に出てくる恐ろしい『鬼』。それは地獄という『死』のイメージであり。『死』をもたらす疫病・犯罪や戦乱の類です。

 昔の人々は、それらに対抗する術がなかったため。『鬼退治(・・)の昔話』を作ることで、恐怖をまぎらわせた。


 はっきり言えば、地方どころか『都』でもロクなことがなかった。貴族の時代は『昔話』にすら”✖肉喰い”があり。金・権力を持っている上位の貴族たちですら、『病の治療』は加持祈祷に頼っていた。


 これで下級貴族たちが、まともな治療を受けられるはずがなく。その下は、推して知るべし。

 さぞかし恐ろしい『鬼・魑魅魍魎』が跋扈ばっこしたでしょう。


 『石化能力』で殲滅を行い、『形のない島(幽世の魔境)』に住まう。『メドゥーサ』に通ずるものがある、『鬼』と言えますが。


 こんな危ない存在()を、貴人が見上げる『屋根』に、設置できるはずもなく。

 そんなことが可能なら、”鬼の首を切り落として、屋根の上に・・・”と、いう気持ち悪い昔話が、ちまたにあふれるでしょう。



 『鬼瓦・鬼の面』の鬼は、昔話が無い(・・)『鬼』だと愚考します。あるいは『昔話』を作るわけにいかない、『祀られた鬼』と言うべきでしょうか。


 あくまで『海外』と比較してですが、日本はわりと『異教』に寛容なほう。”異教徒皆殺し”は、そんなにしないほうだと愚考します。

 そうして『土着の神々』が『鬼・妖怪』として扱われたり。あるいは”虐殺・騙し討ち”の類をやらかした勝者が、祟りを鎮めようと敗者を祀ることもある。



 そういう『死・地獄』のイメージとは異なる『鬼』が、『鬼瓦・鬼の面』となっていき。歴史・昔話からは、ほぼ(・・)抹消された存在の残滓(尊厳)が、寺社の屋根でにらみをきかす。

 

 それが『鬼瓦』であり。異なる勢力の間で、それなりに【和解】もあったと期待したい。


 

 皆殺しの『メドゥーサの首』、無慈悲に殺していく『災厄な鬼』などと〔一緒にするな〕と、申し上げたい。



 今回で、『鬼瓦』≠『メドゥーサの首』に関する、コラムは終了です。

 お読みいただいた方、ありがとうございます。

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