414.閑話~魔王軍との交渉+ガルグイユとの対戦:ガルグイユの魔竜鬼:光術の隠形
『メドゥーサの首をかたどったものには、魔除けの効果がある』と、いう考察があるようですが。
私は『メドゥーサの首(をかたどった美術品・装備)』は、よくて敵を驚かせ、『威圧』する。はっきり言えば『多数の敵を瞬殺する、チートなペルセウス神話』にあやかって、敵を殲滅する『願望』の現れであり。
仮にそれを行ったりすれば、”殺戮者”になりますから。
『メドゥーサの首』を持ったものは、イメージダウンになる。
落ち着いたデザインが求められる『魔除け』に、『メドゥーサの首』は遠い存在だと愚考します。
一方、『鬼瓦』こそ『魔除け』の建築であり。素晴らしい日本文化の一つだと、考えます。
偉大なる魔王ハーミュルズ様の魔王城。
その3分の一は、それぞれ『ダンジョン』『研究所・修練場』『生活スペース』に分かれており。その優れた拠点には、優秀なC.V.たちが大勢集った。
しかし魔王様にとって、最も大事なのは『正室・側室たち』であり。
彼女たちに待ち望んだ『変化』が現れ。『育児』に時間をかけ、重点を置きたいとなれば。
魔王城を築いた初期に、外交上の理由で預かっていた、側室候補たちの居場所はなくなってしまう。
『魔王城の大改築を行う』と、いう宣言が行われ。
側室候補のC.V.たちが、魔王城から遠く離れた外で『修行・研究』するよう、命じられるのは自然なことでしょう。
とはいえ露骨に”追放”を行っては、”怨恨の種”をばらまき。後の世に”禍根”を、確実にもたらしてしまう。
そのため長寿で強力な上位C.V.たちと【ある約束】をして、彼女たちを遠征させて。
〔上を目指したいなら、魔王軍に利益をもたらせ(側室にするとは言ってない)〕と、いう大義名分も出して、側室候補のC.V.たちを混成都市の勢力圏に送り出し。
上位C.V.の監視・誘導のもと、有望な男性シャドウの『ハーレム』に、元側室候補たちを入れる。
魔王様の『側室』になるため、無為な時間をすごすより。腕の立つ男性シャドウの『正室』になったほうが、はるかに将来性があると『誘導』する。
これが魔王軍の意向であり。
黒霊騎士団長のシャルミナ様をはじめ、他にも数人の上位C.V.様が遠征に赴かれます。
「冒険者ギルドに属するユングウィル殿は、この状況でうまく立ち回り。
カップルを成立させる、『婚姻外交』を行ってもらいたいのです」
〔・・・そんな婚姻外交があるかっ:・!〕
冒険者ギルドの職員にすぎない、ユングウィルは心の底から怒鳴りたかった。
魔王様が『育児?』に集中したいのは、大変けっこうなお話だが。
それに巻き込まれるユングウィルは、いったいどれほどの敵を作るのだろう。
〔魔王軍に内通した〕と、騒ぐ”連中”はいるだろうし。
何よりシャドウ一族の中で、許婚・恋愛模様が荒れていれば、〔火に油を注ぐ〕ことになる。ユングウィルは心の底から死にたくなかった・・・となれば、やるべきことは一つ。
「魔王城の新たな『改築』に、ご協力したいのは山々ですが。
未だに『闘技場の興行』も形になっておらず。シグルスの街は、発展していると言い難い。
シグルスの街で働く、冒険者ギルドのスタッフとして、私が『仲人役』を務めるのは無理があります」
「そうかしら?
たとえ万軍を率い、莫大な資産を持っていようと。”盗賊ギルド”の影がちらつく連中など、信用に値しない。
短期間で5名ものC.V.から信頼を勝ち取った、ユングウィル殿を私たちは大変評価している」
「お褒めいただき、ありがとうございます。
そういうことでしたら、私のメイドであるフリスは『釜戸女神の魔導』を行使できますから。
食事事情の面から、新たな道を模索するC.V.様たちを、サポートさせていただきます」
「・・・~・それは助かる。よろしく、お願いするわ」
〔魔王城の後宮から退出した、元側室候補様を個別に面倒を見る。男性シャドウと結婚させる『仲人役』は、お断りします。
その代わり、混成都市の勢力圏に来られた、C.V.様たちが少しでも快適にすごせるよう。食事の『レシピ』を教えたり、料理の作り方をフリスに教えさせます〕
物理法則が厳しい、この世界において『食事』は重要であり。次代を育んだり、力を求めるC.V.様たちにとって、『食事メニュー』は人生を左右しかねない。
そのため台所・釜戸で料理の補助を行う『ヘスティアゲーム』は、一生を左右する『効力』を持ち。自らの身体作りから、パートナーの親愛度稼ぎまでもこなす、かなり重宝する『魔導能力』だ。
『異種族の結婚』を成し遂げようとする、C.V.様にとって『戦略的な魔導』とすら言える。
そんな『ヘスティアゲーム』を行使する、メイガスメイドに頼って難題を解決する、ユングウィルは情けない御主人様だが。
女シャドウを敵に回す”自殺行為”を考えれば、〔はるかにマシ〕と、言えるし。
メイガスメイドは主人に仕える職種で、力を有効活用されることこそ喜びだ。
万が一にも、元側室候補のC.V.様と距離が近付くよりも、炎熱C.V.班の能力を有効活用したほうがいいだろう。
〔既に『魔王城のハーレムを縮小する』と、いう初耳なことが起きている。
万に一つを警戒して、し過ぎることはない。
ここは接触を断って、全力で保身に走るぞ!〕
こうしてユングウィルは一つの危機を乗り越え。
『フリスの覚醒』という、後回しにしていた危機に取り掛かり。
『将来の激務』を抱えることが、確定した。
魔王軍のメルフィナ様が『ガルグイユレギオン』によって、デリング王国の水源を攻撃するのを、下級シャドウのフォルカは止めさせる。
しかし『瞬流星』によって、気絶させたと思っていたC.V.ディアニー様が起き上がり。メルフィナ様の『魔竜鬼ガルグイユ』との対戦を、フォルカに強いてきた。
『首を斬られ 頭をさらされ 頭蓋を魔像に変えられし水竜よ
再生の時を流れ、水妖は集い 復活の場を整えるべく、怪魚はめぐる
そして逆襲と勝利のために、魔群は猛り
濁流の邪竜は姿を現し 侵略者の橋と渡河を、ことごとく阻め
再臨せよ・・ガルグイユ!!』
充分に『魔力』を練り上げた詠唱によって、甲羅を背負った亜竜『水邪竜』が、出現する。鋭角な頭部から、『肉食魚』の牙が生えそろい。その目が放つ『眼光』はフォルカが遭遇した、どの魔獣よりも鋭かった。
「先手必勝…『フォトンダーツ』」
『ギィっ*・!』
そんな『水邪竜』に真っ向勝負を挑むほど、フォルカは自信家ではなく。
『亀』の鈍重な身体を持つ『ガルグイユ』に対し、速攻を仕掛け。目・口腔に膝の皿など、装甲の薄そうな箇所に『光術式』を放ち。
「効かないっ!」
「ッ:!!」
『ハン㏉アアーーー』
巨大な陸ガメの外見にあるまじき速さで、『ガルグイユ』が突進してくる。
馬車ほどの体躯が、フォルカの眼前に迫り。
『旋風閃っ』
『ゴLuラッ⁉』
『身体強化』によるバックステップからの加速で、フォルカは難を逃れる。
同時に審判役・・・この対戦を企画した元凶のC.V.様に、視線で訴えた。
〔この『ガルグイユ』は手加減・寸止めは、できるんですか?〕
〔ムリに決まってるね~〕
〔・・-⁺-…・〕
「こ・のぉーー~、逃げるなっ!」
勇ましい口調とは裏腹に、胸元で手をあわせるのは、自らをかばっているのか。それとも闘争心を奮起させているのか?
はっきりしているのは〔こんな素人に、”危ない魔竜鬼”を使役させるな!〕と、いうことであり。
もしも『ガルグイユレギオン』で都市に被害など与えていたら、お優しいC.V.様は『精神』が病んだかもしれない。
フォルカは他人事ながら、不安になった。
「逃げていません。こういうのは回避しているのです」
「減らず口を・・『ガルグイユ』やって!!」
『シャGuラァ~--!』
『ガルグイユ』の口から通常の『水球』よりも、重そうな『水塊』が吐き出される。同時に巨体の足元から『水』がわき出し、複数個の『水球』と化す。
それらは、それぞれの速度でフォルカを囲むように動き。フォルカが設置した『光術式の布石』を、ゆっくりとだが確実に破壊していく。
『術式』の罠・連鎖を多用するフォルカにとって、『魔力』を認識できるC.V.様は相性が悪すぎた。
「これだからC.V.様とのバトルは嫌なんだ…
おれ達、凡夫の努力を、たやすく飛び越えていく」
「やったっ!これが『ガルグイユ』の力というM
「メルフィナっ!『ガルグイユ』に緊急防御をっ!!」
世の中には『不文律』というものがある。『明文化』されておらずとも、禁止されている。あるいは義務化されていることがあり。
対戦の最中に、勝敗を左右する助言を、外野が行うのは問題だろう。
〔まして『術式』で介入したあげく、刃をつきつけるなど、『不文律』以前の問題だ〕と、フォルカでなくとも思うだろうが。
「あの…ディアニー様・・私は何かやらかしたでしょうか?」
「まずは私が提案した『対戦』に、乱入したことを謝罪しよう。
そしてC.V.の隙をついた、『ステルス』を称賛するわ」
「・・ありがとうございます」
しかし暴力・身分差は、そんな『不文律』をたやすく破壊する。
あるいは異文化のすれ違いは、悲劇・惨劇を呼ぶと言うべきか。
巨体の『魔竜鬼』に仕掛けた、フォルカの起死回生の一撃は、ディアニー様に防がれ。
あげくに”暴行魔”に向ける視線を、フォルカは向けられていた。
とても〔対戦の最中に、割り込むとは何事か!〕と、フォルカが詰問できる状況ではない。
「そのうえで問う。貴様は先ほど『何』を仕掛けようとした?
『術式』の効果は、何かしら?」
「『光術式』による『透明化・魔力の隠蔽』で、C.V.様たちの『目』から逃れることは、不可能と考えました。
そこで少し距離をとって『狙撃』を行う・・・・・『呪符』を高速で射出する『装置』で、不意をつき。『ガルグイユ』に目くらましを、仕掛けようと思っていました」
「・・・・・●:・」
フォルカはディアニー様の詰問に対し、馬鹿正直に返答する。今後、あるいは既に敵対してるC.V.に対し、自殺行為な『情報開示』を行っていると思うが。
ディアニー様の『眼光』に、類似している『視線』をあび続けてきた。フォルカは『勘』の命じるままに、自らの『手札』をさらし。
「そう…・・まず、一つ言っておく。
私たちC.V.の戦いは”奴隷狩り・暴行魔”との戦いという面もある。
そして『呪符』で頭部を狙うのは、身体の操作を奪おうとする。
『僵屍鬼の操作術』につながる”邪法”であり。〔見つけ次第、問答無用で攻撃していい〕と、定めるC.V.も少なくない」
「・・・;・:*…・」
〔そんな話、聞いたことない!〕と、叫べるのは強者の特権であり。
C.V.ディアニー様の実力を見誤っていた、フォルカが言えば主君の”恥”になってしまう。
むしろ〔問答無用で尋問する〕に、とどめたディアニー様は温情がある方だと言える。
「えっと…・・私の『ガルグイユ』はコントロールを奪われたりしない!」
「…そうね。『魔竜鬼』の特性の一つに『コントロールの簒奪に耐性をもつ』と、いうのがあるから。理論上は悪意のない『呪符術式』で、『ガルグイユ』が奪われる可能性は、ゼロに近いでしょうけど」
「だったら・・・」
「だからと言って、万が一にも『コントロールを奪う術式』は見逃せない
『仕込み』は終わっているようだし」
「・・・『フォトンカード…リリース』」
ディアニー様の要請に対し、フォルカは速やかに応じる。
そうして『ガルグイユ』の鱗の隙間・とがった装甲の裏側に『潜ませた紙片』を、全て除去し。
「『ガルグイユ』さんに仕込んだ『術式』は、これで全てです」
「な、な`・な…」
「・・どうやら術者を観覧席に保護して、『魔竜鬼』だけをけしかける。そんなハンデだけでは足りなかったようね。
6級光属性のC.V.ディアニー・ルベイロアの名にかけて『対戦』の降参を宣言するわ」
「何なのっ!:?私より『魔力』が低いのに、どうしてっ…!!」
騒ぐメルフィナ様をスルーして、フォルカはディアニー様を見つめる。
『イリス・レーベロア様』『イセリナ・ルベイリー様』
〔主君であり、混成都市のトップを占める、御方の名字に似ていますね。
『瞬流星』を防げたのって、『相性』とか全然まったく関係ないのでは?〕
フォルカは、そんなことを考え。
『ア^タ^リ~^』
聖賢の御方様の『お身内』であることを示す『符丁』を、『光術文字』で瞬時に送られ。
フォルカは心の底から震え上がった。
ネタバレ説明:『ガルグイユの魔竜鬼』について
魔王ハーミュルズの側室パルティナの妹であり。元側室候補だったメルフィナが使役する水邪竜の『魔竜鬼』です。
水を変成・放出する『水邪竜の魔導』とは、全く別の『魔術能力』になり。併用はできできません。
外見は『亀の頭の代わりに、首の長い亜竜の頭部が付いている甲羅』と、いう『魔力の塊』が『核』となっており。『核』の部分は、固体・固定されて変化しません。
その代わり『尾・四脚』は、メルフィナの意向によって3形態に変わります。
1)陸上の活動に適し、防御力・パワーに秀でた。巨大な陸ガメの脚・尾が生えている形態。
2)泳ぎが得意で、低コストで『魔竜鬼』を維持できる。巨大なウミガメの四肢・ヒレを持ち、『水草の尾』が生えている形態。
3)『水の魔術』を巧みに使い、『魔力』を吸収・蓄積する能力が高い。
『尾・四肢』から、複数の触手が生え。甲羅の下部が粘液体で覆われている。
これがメルフィナの『魔竜鬼』です。
それぞれ長所が短所となっており。
1)鈍重かつ不器用
2)陸上ではザコ。3形態の中で、最も低スペック
3)高コストなうえに、暴走のリスクをはらむ
・・・という有り様です。
もっとも『亜竜』だろうと、『竜』の一種に違いはありませんから。
短所が鈍重な『1)陸ガメの四肢を持つ形態』だろうと、オオトカゲより動きが速い。
『2)ウミガメの四肢を持つフォーム』ですら、中型猛獣の牙をはじく、防御力を持っています。
『3)触手を持ち、スライムで覆われている』は切り札であり。『甲羅の硬度』『泳ぎの速さ』を除いて、1)2)に全ての面で勝っています。
以上がメルフィナの『魔竜鬼なガルグイユ』の性能であり。彼女のイメージする『水邪竜』を、『魔力の塊』を介して具現化している。
『強いガルグイユ』をメルフィナなりにイメージして、護衛役・攻撃手段にしていますが。
『3)のスライム状』は魔力の塊として、不安定であり。確かな自信・エゴを持つ、C.V.が使役する『ドゥーガ』には、全く通用しない。
格下や『ガルグイユ』に怯えている者は、圧倒できても。姉であるパルティナが使役する『ガーゴイル』をはじめ、側室C.V.の『魔竜鬼』には、まず勝てない。
『ガルグイユ』という『亜竜の種類』で呼ばれている。固有の名称がつけられてないのも、メルフィナの自信がない事の現れであり。
C.V.姉のパルティナが改善を試みて、失敗・悪化させたこともあります。
以上、『ガルグイユの魔竜鬼』に関する、ネタバレ説明でした。
ネタバレ説明:『光術の隠形』について
『ガルグイユ』との対戦で、フォルカは『呪符』を見えなくしている。『魔力を認識』できるC.V.のメルフィナが、気付かないうちに『呪符』を『ガルグイユ』の体表に貼ったり。
ディアニーに防がれたとはいえ、『魔竜鬼』の頭に『呪符』をはる、寸前になりました。
その手段はいくつかありますが。
今回は『高速』での投擲を行い。『フォトンダーツ』で注意をひいて、極薄の『呪符』を放つ。
この二つを、フォルカは使いました。
『魔力を認識できる・見える』と、言っても。
それは『動体視力も優れている』『遠くの魔力を視認できる』と、いうのとイコールではありません。
まして『透明化を警戒し。フラッシュで目つぶしされるのを防げば大丈夫!』と、メルフィナは思い込んでおり。
〔『フォトンダーツ』が通用しない⁉〕と、フォルカが慌てて見せれば、警戒心もゆるむというもの。
さらにメルフィナはディアニーに守られ、『魔竜鬼』の操作に集中していられました。それは『頼りのガルグイユの巨体』『フォルカの身体・術式』によって、死角が増えるということであり。
対戦するバトルゾーンの隅っこギリギリに、『呪符の射出装置』を設置したり。
『色々と併せた特殊呪符』を秘かに動かすのに、都合が良かった。
フォルカがメルフィナを翻弄できた理由は、こんな感じです。
以上、『光術の隠形』に関するネタバレ説明でした。
『鬼瓦』は、その『位置』がまず絶妙です。
寺社の建物で、『屋根の高所』にありながら。真正面から見えない、『側面』に位置している。
『仏像・御神体』よりも高所にありながら。『側面』に置かれ、『本尊』より目立つことはなく、その存在を立てている。
それに対し、『メドゥーサの首(の美術品)』は悪目立ちしており。
英雄とメドゥーサ、どちらが主役なのか、わかったものではない。
ガーゴイル・悪魔像の設置場所も、微妙であり。
本命のボスに侍っているのか、門番をしているのか?家臣・儀仗兵よろしく並んでいるのか?
二心のある家臣なのか。『肉壁』になる気のない、二流の番兵にすぎないのか。
ガルグイユの首を切った『戦果』を誇る、オブジェクトにすぎないというパターンもあり得る。
『魔除け』以前に、文化としても適当であり。
〔流行り廃りのあるモンスターと、日本文化の『鬼瓦』を一緒にするな!〕と申し上げたい。




