402.閑話~炎熱の不得手+水蛇の踊り
ギリシャ神話における『ペルセウスのメドゥーサ退治』について。
この神話には一つ矛盾した点があります。
それはゴルゴン三姉妹を討って、名を上げようとした戦士たちは、彼女たちが住まう『形のない島』へ赴き。返り討ちにあって、『石化』したというのに。
『ペルセウスはグライアイ三姉妹を脅し』て、『ゴルゴーンの住む島を訪れた』となっており。
〔戦士たちはメドゥーサの住まいに襲来したのに、ペルセウスはグライアイたちに尋ねる必要がある。この差は何なのだろう?〕と、首をかしげます。
『干し肉が不味い』
そんな一言で『ネタ話』あつかいされ、軽視されている。
重要な『保存食』の問題は、改善どころか分析すらされていません。
もっとも『釜戸女神の魔導』と、いう料理外交を行う『魔導能力』を行使する、料理担当のフリスも同様であり。
〔『脚のケア・依頼料の分割払い』と、やっていったのだから。
今度は干し肉の味を改善したいな~〕
そうつぶやく、ユングウィル様のお言葉を聞き。フリスは自らの”鈍さ・浅慮”に恥ずかしくなった。
『塩』は生物に必須なため、『最も美味な料理』とされるが。同時に過剰に取り過ぎれば、身体に悪く。
塩気の強い『干し肉』も、身体に悪いのは明らかです。
しかも”過剰な塩”のもたらす悪影響には、血液が増えて『高血圧』にかかるというのがあり。頭に血が上って、怒りやすくなったり。血流を操る『身体強化』が、”暴走するリスク”を高めてしまう。
〔のんきに『実験』して、情報を集めてからでは、遅すぎます。
”過剰な塩”は有害だと考え、速やかに対策をとり。データ収集を行って、杞憂だったら幸運と考えるべき〕
というより『釜戸女神の魔導』を会得した、料理担当であり。気付きをもたらすユングウィル様に、侍るC.V.フリスとしては。
〔”塩辛い干し肉”などというモノは、冒険者の長期活動を阻害する”害悪”です〕と、先に考えて然るべき。
アドバイスを受ける以前に、料理担当者から献策すべきであり。
長期の旅・冒険において、『水』は生命線なのですから。”渇き”を誘発する”塩辛い干し肉”は、水を浪費させ、思考にまで悪影響を及ぼしてしまう。
冒険者ギルドから禄をいただいている者として。
〔もっと冒険者たちの『食糧事情』に配慮すべきでした〕と、フリスは深い後悔にさいなまれ。
〔過去の冒険の記録を読めば、ヒントはいくらでもありました。
それなのにユングウィル様から、御助言をいただくまで、考えもしない。
この償いは、問題の焼滅をもってのみなされる〕
かくして仲間たちも気付かない、フリスの情熱はノーグ村で解き放たれ。
「そういうわけで、まず”美味しくない干し肉”が、どうしてできるか。
私なりに考えてみました」
「そうなんですか…」
〔圧が強い。目が怖い。熱気が重い…!:〕
『冒険者ギルドへの依頼料を分割払いにする』と、いう仕組みを作る『布石』を打つため。
ノーグ村へとやって来た、ギルドスタッフのユングウィルは、メイドC.V.の情熱にさらされていた。
もう少し具体的に述べると。
『調理する魔導』によって、美味しい料理を作り。女子供たちに、その調理技術を惜しみなく教え。
村中の『包丁』を研ぎ、『釜戸』を整備してから。それらの技術指導を行い。
『食事事情』に貢献しまくって、村人たちの胃袋を、フリスは掌握した。
〔フリス様に村に残ってもらうには、どうしたらいいだろう〕
〔村長の長男と結婚してもらい…〕
〔・・・無理じゃね?〕〔だよなぁ〕〔全然、釣り合わない〕
〔〔・・・+・;〕〕
〔だからって、あの小役人に囲われているとか…〕
その後、こんなやり取りが、あったとかなかったとか。
ちなみに村長一家は、屋敷を半ば明け渡し。ユングウィルたちが広いスペースを占領して、ノーグ村に滞在している。
もう、この時点で『分割払いの詳細な条件を決める』『きっちり依頼料を分割して払ってもらう』と、いう『交渉』は成ったも同然だが。
戦争種族C.V.なフリスさんは、さらなる追い討ちを、お望みのようであり。
「”マズイ干し肉”ができる理由は、大まかに三つあります」
1)材料の『肉』が血抜きできていない。『塩』の製塩技術が低いなど。『材料』に問題がある。
2)『肉の保存を最優先にして、味は二の次にする』と、考えたり。塩漬けする技術が低すぎるため。『干し肉』が塩辛くても〔そういうモノ〕と、考えてしまう。
3)上記の理由により製造された”マズイ干し肉”を、調理もせずにパンと水で流し込むから。行軍中など、どうしても『調理』をできない状況ならともかく。
調理を行い、『美味しい干し肉』にするのが大事です。
「私たちが重視すべきは、3)の『干し肉を調理』することになります。
簡単な処理で、麦がゆ・スープに混ぜたり。農作業で汗をかき、身体が『塩』を求める人々に、軽食として提供する。
これだけでも『干し肉』の味・必要性は改善されます」
冒険者のように『料理をするとモンスターが寄ってくる』と、いう過酷な旅をしている最中ではなく。ノーグ村は平和で、貧しい村だ。
そのため昼食を食べないのが、ノーグ村では当たり前なのだが。
〔開墾という、重労働をしている期間だけでも・・・〕
〔耕作も、充分に重労働ですから・・・〕
交渉とも言えない、こんな誘いにより。村人たちは、最低限の軽食を、昼間に取るようになっていき。
〔昼食を食べ過ぎては、午後の作業に差し障ります。あくまで汗をかいた分だけ、『兵糧』の補給をしましょう〕
〔戦いは『命』を左右します。そして村の皆さんにとって、作物を育てることは『戦』に等しい。でしたら『戦働き』には、相応の『補給』が必要でしょう〕
〔イヤ、わしらが駆り出された戦では、ロクな食い物もなく…〕
〔女性種族C.V.として、男性だけが昼食を取るなど、認められません〕
ノーグ村の風習・備蓄食料などに配慮しつつも、反対意見は説き伏せられ。
細かく刻んだ干し肉入り、少量の雑穀粥を昼間に食べ、村人たちの心身は向上していき。
その分、農作業の効率も上がっていった。
〔『魔導能力』とか、関係ない所でも食事改善しているな~〕
そんなことを考えていたユングウィルの予想を、フリスは軽々と超えて行き。
「”塩辛い干し肉”は保存食ではなく。肉が加味された『塩』と考えてもらい、『調味料』として使う。
それを身体が『塩分』を求める、一働きした正午に提供する。
これで第一段階は成功しました」
「うん、ちょ~っとだけ、フリスは待とうか」
ノーグ村にもたらした、フリスの影響は甚大であり。
当初の交渉目的を考えれば、予定を早めてノーグ村を去ってもいいくらいだ。
しかしフリスとしては『食事改善の炎でノーグ村に焼き討ちをかけている?』に、等しい文化的侵略を行って、〔第一段階〕などと仰る。
残りの滞在期間と『フリスの手腕』を考えれば。
計画が完了した時に、ノーグ村が原型を保っていられるのか。周囲への影響とか、ユングウィルのが、怖くなってきた。
「フリス…まず、ゆっくり話し合おう。
夜は長いんだし、情報交換は大事だ。改革とか、ショックが強いとデメリットが肥大化してしまう」
「ユングウィル様が、それをお望みなら・・・」
そんなやり取りを交わしつつ、ユングウィルはきゃしゃな身体を、ベットに運び込み。
念入りに互いの理解を深め合ってから、フリスの計画を詳しく聞き。
「どうぞ召し上がってください」
「・・・●:●」
「ひとかけらも残さず、召し上がってください」
翌朝、温厚なフレイシアから、精力のつく肉料理を完食するよう。ハーレムの主は、怖い笑顔で勧められた。
わかりやすく攻撃力の高い『火属性の魔術』には、いくつか不得手がある。
『開墾』も、その一つであり。火力を必要とする『鍛冶・錬金』ができるなら、将来的に使い道もあるが。
まず『水・食糧』を確保しなければ、『開墾』する以前に生きていけず。
『地水風の他属性』に対し、火属性は『荒れ地の開墾』において、どうしても見劣りする。
そして、それは自然豊かなノーグ村でも同様であり。
「くっ…また逃げられた!!」
「・・・というか、私たちが『狩り』をするとか、無理があるでしょう」
ノーグ村で新たな畑を作る『開墾作業』において、駄目だしをされ。『狩り』を志願した炎熱C.V.のフィニー、フルルは、森の中をさまよっていた。
〔街のメイドさんは綺麗だな~〕
〔凛々しい、女剣士さんって良い!〕
そんな風にチヤホヤされていた・・・物珍しさで2人が村人の興味をひいていたのは、最初のうちだけ。
〔フラミアさんの魔術で、腕力を増したら、新しい畑を作るぞ!〕
〔勝手なことは、フレイシア様が許さないわ!〕
〔フリスお姉様…ずっとノーグ村にいてください〕
『魔術』に特化したフラミアの付与魔術、フレイシアの指揮能力に加え。
頭の固い老人たちも認めざるえない。料理全般に関連する技術指導も、フリスは行っていき。
ノーグ村の住人たちは、ユングウィルも含めて炎熱C.V.3人を、受け入れていったのだが。
ノーグ村に来た当初、村人たちを威嚇したり。火力重視の『術式』を習得しているものの、村人たちに『技術指導』できるほど、積み重ねたものがない。
フィニーとフリスの2人は、肩身の狭い思いをすることになり。
〔こうなったら、獲物を狩って、村人にアピールするっ!〕
〔オーーーー、行くよっ、ファイトっ!〕
こうして山の中に入った2人は、『火属性の不得手』を再び味わっていた。
『この領域の魔術は、物理法則と互いに干渉しあう』
この法則、以前の問題として、『火属性』はとても目立つ。
そのため野生の獣に接近を気付かれ、逃げられまくっていた。
「こうなったら、囮作戦で…いや挟み撃ちなら・・・」
「・・・まあ、やってみよっ!」
普通の村人は、人間を捕食するモンスターの生息地、近くになど住めない。
そして普通の野生動物は『火』を怖がり。『火の魔力』を帯びる、剣呑な炎熱C.V.から、速やかに逃走する。
そのため故郷のように拠点を出たら、弱い魔物の方から、フィニーに襲いかかってくることはなく。
フルルの技能では、動物の警戒をくぐりぬけつつ、痕跡を見つける。獲物を捕捉することは困難であり。
「見つけたっ!!『ファイアーボu』」
「っ⁉…『バルカン!』」
何とか遭遇した『熊』を、フルルは『得意の魔術』でハチの巣にされた。
「ちょっと…何をするの⁉」
「それは、こっちのセリフよ~*ー」
『火属性の魔術』は全般的に火力が高く。獲物の毛皮を焼きつくし、肉の大半を炭化させかねない。
しかし、その程度ならマシであり。
物理法則が厳然と存在する、この領域において、高火力の『術式』は常に、火災のリスクを伴うことから。
火ダルマになった獣が、転がったり狂乱すれば”山火事”になりかねず。高威力の『火炎魔術』が獣の肉体を貫通すれば、『火矢』を放ったに等しく。
炎熱C.V.たちが、山林に放火したも同然になってしまう。
「そういうわけで・・・『ファイアーボウ』から『イグニスアロー』を射るのは禁止よ」
「承知した・・・もう帰って、『木炭』でも錬成しない?」
「気持ちはわかるけど…いい機会だから、『火術』以外の戦闘技術を鍛えなおすのは・・・●ー」
言の葉を続けようとしてフルルが『発火信号』を送ってくる。
〔何者かが接近している〕と、いう警鐘にフィニーも剣をぬき。
「お初にお目にかかります!C.V.様…シャドウ一族のフォルカと申しますっ」
この領域にいるC.V.勢力の中で、トップのイリス様に仕える人間が現れる。
その顔は青ざめ、引きつっており。
「皆さんは、お腹が空いていないでしょうか・?;」
〔〔あっ・・これ、絶対にダメなやつだ〕〕
フィニーは瞬時にフルルと意思疎通を行った。
〔知識の巨人の肩に乗って、発明をする〕だったでしょうか?
サヘルさん、タクマ兄様たちは、天才的な思考で新たな『術式』を、編み出し続けますが。それらは先人の知識を学び、活かした成果にすぎないとか。
一例をあげると。
現在、冒険者たちの脚をケアすることで、彼らの行動力を増大させる。
前衛・後衛で『脚力』の差が大きい、冒険者パーティーの『足並みの乱れ』を、防止するため。
ユリネ姉様たちも、影から色々とサポートを行いましたが。
この計画は『悪辣な怪物誘導』を観た後に、知識のひらめきがあった。
間違っても”トレインを観て、思いつきました”などと、いう事実は秘匿すべきであり。
ユリネ姉様の妹であり、魔力の塊でもある『水那』からすれば。
〔面倒くさいオハナシですね~〕と、言いたい言霊を胸中に呑み込んでいる。
何でも『怪物暴走』が起こると、脚が遅い・サイズが小さい魔物は踏み殺されてしまう。足が速く・サイズが大きい魔物が、前者を踏み殺して、事実上の間引きを行う。
それを目の当たりにした姫長様が、冒険者パーティーにも似たようなトラブルがあると察し。
その対策の一つが『脚のケアを行う』と、いう企画だそうです。
難しい外交?のやり取りで、黒霊騎士団に企画は譲渡されたそうですが。
世の中には『怪物誘導』の迎撃すらできない、弱兵がおり。
”トレイン”の通り道に村があり、村人たちが貪り食われている。
そんな”おぞましい事態”に、有効な対策をうてない、無能領主があふれており。
〔あげく食料供給をする村が滅びて、食料不足に陥ったあげく。”重税・奴隷の売買”など、”悪政”の連鎖をやらかす。
いい加減にして欲しいね〕と、聖賢様は仰られた。
そういう救いようのない”愚か者”たちは、こういう事を責めるしか、自尊心を保つ術がなく。
〔冒険者やギルドのイメージアップのため、黙っていましょう〕
〔承知しました、ユリネ姉様〕
そんなやり取りを交わして、『水那』は本音を呑み込んでいるものの。
〔”トレイン”を行う、テイマーと”盗賊ギルド”。それと奴らに従うモンスターを、全滅させればいいだけでしょう〕と、いう『本音』を実行に移すべく。
『水那』は広域から水気を集め、『水の蛇体』を巨大化させていき。
『雨雲は影を映し 雨音は肉に響き 雨水はのどを潤す
されど泉は冷たく、沼は昏く 湖は生命を育み、呑み込む
ならばワタシは水の長虫を創り 蛇を束ねて、竜を惑わそう
濁流の根に、抗う牙を突き立てるべく…水蛇流剛・・・○-○』
『人間態』の『水那』が、大気中から水気を集め、魔力を練り上げていく。
それらは雲間に『大蛇の影』を描き。それによって、テイマーどもが頭上を見上げたところを、足元から『分身体の水蛇』をけしかけ・・・
「ちょっとっ!何か切り札とかないの~-~?」
「「「っ*;-:」」」「「「「Gぁポbbb*ー/」」」」
「「Gィy∼・/~ゥぅぅ*;」」「「「「「や*/m+*pkpk」」」」」
『水那』の声に、応える者はなく・・・正確には返事を返せる者はおらず。
テイマーも巨大モンスターたちも、等しく顔面に水球に覆われ。『無数の水蛇』に噛みつかれ、締め上げられて、一部は呑み込まれていく。
もちろん『水那』が使役する『分身体』たちは、『毒・溶解液』の類を使うことはせず。ドラゴンのように、肉をかみちぎれる口の構造をイメージできない。
そのためワニの真似事をして、デスロールを行い肉を引き裂く。『分身水蛇』を『多頭蛇竜』のように合体させ、蛇体を複腕のように使い、巨大モンスターを力任せに引きちぎる。
「グォオオオーーー*:*^~//∼*+*
真人間の目がある、都市・街道では凄惨な血の雨が降って、できないことも。『トレイン』の足並みをそろえるため、巨大モンスターを山間に集合させている、へき地なら思いっきり行える。
はっきり言えば、無防備な村人を残虐に捕食し、踏み潰す。”トレインの駒”ならば、どんな殺され方をしても、文句は言えないでしょう。
そんな大義名分を思いながらも。
巨獣の唾液・急所の血流を凍らせ、体温を奪いながら。久しぶりに『暴力』をふるう快感に『水那』は酔いしれ、質の悪い魔力を吸収していき。
「あの…『水那』様。そろそろ、よろしいのでは;?;」
「そうだね~…巨大モンスターは、どうせ”捨て駒”だろうし。もう食べてしまおうか」
そのセリフに監視役のシャドウは、平静を装おうとして失敗した。
ちなみに某検索サイトでは『グライアイ三姉妹を脅して、神具を管理している半女神の居場所を探させた』とのこと。
私が今まで読んできた『ペルセウスのギリシャ神話』と、大幅に違い。
『女神アテナ』が『冥界神ハデス』『伝令神ヘルメス』の神具を、『冥府』つながりで借り受けているなら、ともかく。
半神・山河の精霊であるニンフたちが、『上位神格の神具』を管理しているなど、初耳どころではなく。不用心なうえに、神が神具を英雄以外に預けて、使えない時期があるなど。
『ギリシャのメジャーな神々』を貶めている、ようにすら感じます。
〔全く信用できない〕と、申し上げたい。
とはいえ『ペルセウスがグライアイ三姉妹から情報を得た』と、いう点に関しては、私が知ってる『ギリシャ神話』と共通しており。
この点が、そもそも不可解です。
神話でなく、『昔話』ならば。神話でも上位神格の『加護』が関わらないなら、『仙女・魔術師に助言を求める』と、いうのもわかるのですが。
『冥府』を束ねる『冥界神ハデス』。冥界への伝令も務める『伝令神ヘルメス』。そして現世と冥府を行き来する『フクロウ』を眷属にする『戦女神アテナ』
『予言』があり、『神託』のある神話世界において、これほどの神格が三柱もそろい。
『グライアイを脅して、尋ねて、情報を得なさい』と、言ってるに等しい。実際、『ペルセウス』にそういうことをさせた。
〔なんかペルセウスの神話は、おかしくないですか?〕と、愚考します。




