396.閑話~炎熱の襲来+キラーゲーム1::
『徳川綱吉』と『徳川家光』。両者ともに諸大名を取り潰しまくった、江戸時代の”暴君”ですが。この2人は、政治状況が大きく違います。
『家光』の時代は、まだまだ戦国時代の風潮が残っていた。
〔戦で城が、焼き討ちにされるよりマシ〕と、いう考えがあり。『半農半武士』の仕組みが残っていて、かろうじて食いつなぐことができる。
極論を言えば、”山賊”に堕ちる浪人に対抗するため、『護衛』の浪人を雇う必要があり。血生臭いですが、雇用はあったでしょう。
『参勤交代』も始まったばかりで、まだ財政赤字にはなっていませんでした。
しかし『綱吉』の時代は幕府・諸大名のどちらも、財政悪化に苦しみ。その状況で大名の取り潰しは、藩札(事実上の借金)の踏み倒しにつながった。
”忠臣蔵”では『藩札は4割返しが普通』と、いうセリフがありますが。実際のところ”4割より少ない、2~3割しか借金を返さず、大名改易になる”と、いうのが少なくない。
そうなると経済は混乱し、借金取り立ても厳しくなる。某時代劇の悪徳商人のように”借金返済の代わりに、商売の便宜をはかってくれ”と、いうことになり。
さらに武家は改易を恐れ、四角四面に法を守り。情報収集や政治工作を行うため、賄賂・臨時徴税が横行していって。
こうして、どんどん悪い連鎖が続き、悪影響が広がったと考えます。
[『依頼料を分割払いにする』と、いうのは都合よくメリットだけがある、計画ではない。貧しい村人から、『分割された依頼料』という『借金』を回収しなければならず。
領主・高利貸しなど、村人から金をむしり取る連中と、もめ事になるのは避けられないだろう。
そこで冒険者ギルドスタッフのユングウィルは、彼らに対抗する人脈を築くため。
『仲裁役』のスタッフを選別して、他勢力との外交WOオコナわセルYOTEIナノデスw~-~:--・・・・]
圧倒的な戦力を有し、混成都市に巨万の富を築く。そんなC.V.様に対抗し、多重婚で男が刹那の安息を得る。
そのために『仲裁役』を育てているのが、バレたときの言い訳を、ユングウィルは既に考えていたのだが。
『バーンスライダー!!』
『バーストフレア!!』
「・・・ッ-*∼:」×2『鎧影よ…護りの籠手を!』
「・・・-;・」
「聞いています?御主人様」
現在、ユングウィルは危機的状況に陥っていた。
『仲裁役』に就く、年輩の冒険者に対し、名誉と定職をもたらすため。
ユングウィルは闘技試合における審判役のポストを、『仲裁役』と兼用で任命した。
さらに不満をいだくチンピラな有象無象に対処するため、人間サイズの棒を使う、『山崩し』を企画していた。
子供の遊びではなく。C.V.様の訓練で行われる、『棒倒し』と同じサイズの『山崩し』を行い。大きな『棒』に人間を縛り付ける。
そうして黒霊騎士様の『攻撃魔術』によって、『棒』を支える砂山・土山を削ってもらおう。チンピラとユングウィルを、同じように『棒』にくくりつけ。
『攻撃魔術』がかすめる恐怖によって、うるさい”チンピラ”の心を折る。
そんな完璧な計画を立てたはずだが。
「人の命は平等ではありません。今の10人、後の100人を救う人材には、生きてもらわねばならないのです」
本音では嫌っている、”選民思想”の言の刃をふるいながら。
炎熱C.V.のフリスは、『火炎の短剣』を使い、ゆっくりユングウィルの拘束を焼き切っていく。
焦げた臭いが漂い、時おり熱を肌に感じる。普段なら絶対にあり得ない、五感に伝わる『火の気配』が、ユングウィルの心胆を寒からしめ。
フリスの怒りを、如実に知らしめる。
「聞いていますか?ユングウィル様」
「ああ、もちろん…
『インフェルノボール!!』×3
「ー・・*‐!」「*:*ッ」「くっ・・‥∼」
「;・;⁺…;∼-‥;ー」
「ほらほら、さっきまでの威勢はどうしたの?
怖くな~い、ちっともコワいことなんて、無いカラネ?」
ユングウィルの軽いセリフが、『インフェルノボール』の爆音によって遮られ。
試練に挑み、ユングウィルの隣で『棒』に縛り付けられた、チンピラの泣き声が聞こえる。それに重なるフルルの明るい声音が、不安をあおり。哀しく後悔している泣き声は、心が折られたどころではなく。
正気が危ぶまれる気配を、ユングウィルに否応なく感じさせ。
「ゴメンナサイ、ユングウィル様。
私たち火属性C.V.は、精密な『攻撃魔術』を使うのが不得手でして。こういう『山崩しの棒』を支えるような、砂土を削ることは苦手なのです。
ですから黒霊騎士様の『遠距離攻撃』で、大きな『山崩し』を行われるのが妬ましい。どうしても嫉妬してしまう。
愚かな女と笑ってください…」
「ハハ…・ソンナことはしないさ。何か理由があって乱入したんだろう?
俺はフリスたちを信じている!;!」
「ユングウィル様・・」
その後、ユングウィルはちょっとした『提案』を行いつつ、炎熱C.V.パーティーのご機嫌を、必死になってとり!!
しばらくの間、シグルスの街を離れることになった。
冒険者には『緊急依頼』という義務があります。事実上の『強制依頼』であり。
『怪物暴走』などで、多くの人命が失われる時に発令され。冒険者たちを、死地に送り込む強権です。
〔だけど戦力的に劣る冒険者を、戦場に送っても”足手まとい”にしかならないのでは?〕と、いうのが戦争種族C.V.としての総意です。
『命をかければ、勝利をつかめる』と、いう局面は多いですが。
弓で遠距離攻撃を行う狩人を、前線の盾役にするのは不可能であり。逆に重装備の戦士を城壁に並べても、押し寄せるモンスターの数を削ることは難しい。
はっきり申し上げれば、弱い冒険者は命をかけても、脅威の足止めにすらならない。人喰い怪物に対し、”新鮮な養分”を提供して終わってしまう。
それが戦場というものであり。『敢闘賞』をささげためには、勝利が必須になります。
「それで?」
「ランクの低い冒険者の皆さんには、強制依頼に最低限の対応ができるよう、『訓練』をしていただく。
そして、『訓練』の結果が思わしくない方には、別件で冒険者ギルドに貢献してもらいます」
ギルドに併設された、闘技場で開催された『大きな山崩し』。それが完膚なきまで大失敗に終わり、ユングウィル様は、即座に次の企画をとりかかった。
ちあみに実際のところ。『山崩し』は失敗ならマシで、命を危うくするスキャンダルだった。
『大気中には魔力が漂い、それを吸収して魔術を使う』と、いう術理がある。
それは生物ならば呼吸のごとく行っており。普段なら気にかける、必要はないのだが。
魔王の軍勢は大気中の魔力に、自らの体内魔力を『混合』させることにより。
自らが仕える『魔王様の領土』を広げていく、『特性』を当たり前に持っており。
『通常のマナ』による呼吸を阻害して、魔王様に逆らう敵勢力の消耗を、増大させることも可能だ。
無論、イリス様が支配する混成都市の周辺で、魔王様の領土を広げる気など、黒霊騎士たちにはない。武辺者な黒霊騎士たちは、戦闘力を重視しており。面倒な『魔術戦』の駆け引きは不得手で、『毒気』を放つ意思すらない。
〔そもそも侵略して、統治するなんて面倒ですし〕
〔”瘴気を呼吸する”などという、”ウワサ”になるだけで迷惑です〕
〔そもそも絶望の剣に挑むなど、戦いではなく”自殺行為”よ〕
そのため今回の件は、過失の事故であり。
ユングウィル様が依頼された、黒霊騎士が苦手な『遠距離攻撃』で、適当に『魔力』を放出し。何も考えずに呼吸を行い、無防備に『大気中の魔力』を体内に取り込む。
そんな特殊な条件下でなければ成立しない、命数の消耗を察知できるC.V.は、最近までいなかった。『魔力抵抗』に劣る只人にとって、死病を患う自殺行為が行われかけていた。
〔〔〔いくら人間でも、この程度ならどうということはない〕〕〕と、考えた黒霊騎士も不注意ですけど。
ユングウィル様のように新しい事を行うのは、感知・分析に秀でた後方支援のC.V.による助力が、必須でしょう。
「いかがなさいました?ユングウィル様」
「ん-〔この企画はうまくいくといいな~〕と、思ってな」
あのまま”大きな山崩し”を続けていれば。
ユングウィルの命が削られるのは、自業自得だが。関わった冒険者たちまの命数まで削られたあげく。
黒霊騎士団は”侵略者・毒使い”の烙印を押され、大惨事になっただろう。
フレイシアたち炎熱C.V.が乱入してくるのは、最善の対処であり。
〔あそこでフリスたちを責めていたら、終わっていたな〕と、ユングウィルは思う。
もっとも世の中きれいごとではなく。黒霊騎士団と冒険者ギルドの面子を守るため、”嫉妬に狂ったメイガスメイドが乱入した”と、いう報告書があげられ。
ユングウィルはメイガスメイド二人を連れて、山村に向かった。
表向きは”暴走した二人を罰するべく、山村で労役を課す”と、いうことになっているが。
無論、そんなことがあるはずなく。
穴埋めと、償いと火属性C.V.に利益をもたらす。そのため『知識の巨人の肩に乗る』べく、ユングウィルたちは山村へと向かった。
〔今度、失敗したらフレイシアたちに、持ち帰られるかもしれない〕と、いうしょーもない危機をいだきながら。
世の中とは理不尽なものだ。
どれだけ鍛えて、武力を高めても。『毒酒』や『奇襲』によって、殺されてしまう。そんな努力を踏みにじる、理不尽があふれている。
そして『誘拐』は、そんな理不尽の一つと言えるだろう。
善政をしき、強大な軍勢を組織しても。愛する者、大事な存在がさらわれれば、動揺はさけられない。
誘拐された者を無事に救えるのは、物語の”英雄”ぐらいであり。
理不尽な世界では、『誘拐の企て』に怯え。護衛にコストをかけて、心身を消耗させていき。
それでも『誘拐』を防げず、最大の敗北感を味わう。
戦争捕虜のように、『身代金』をとる必要などない。
人質をネタにかく乱して、本性を現させて、救出作戦を失敗させる。それだけで利益を出せるし。
たっぶり楽しんでから、盗賊ギルドの裏マーケットに、さらった者を売り出せばいい。
そんな誘拐の稼業は、物心両面でやりがいのある。技巧・暴力に駆け引きなど、あらゆるものがからむ。極めて高尚なシノギと言えるだろう。
そんな誘拐魔ジョコブたちは、”災厄”に見舞われていた。
『シャaaaーーーー‼』
「ギき//ー-っ」×2「ッ*⁺//~…」「ヤy/:/・/-」
暗闇の中を影が走る。生暖かい風が吹き抜けると、首筋に怖気が走り。アジトの部屋・通路に、むせかえるような血の臭いが漂うも。
何故か、仲間たちの『息づかい』が絶えることはなかった。
「何者だっア。オレたちを盗賊ギルドの一員と知っT//:*ギィY」
怯えを含んだ威圧の声が、血飛沫をもって返答される。
誘拐を行う以上、標的ともめることも仕事の範疇であり。
偵察から荒事まで、あらゆる状況に対応できる有能な人員を、ジョコブは取り揃えている。当然、警戒・見張りに特化した人員もいるのだが。
「セルバっ…敵は何名だ!どこにいるっ!!」
「…―-~」
視力に優れた見張り役から返事はなく。武器をかまえ、敵の姿を探す部下たちは、次々と血の海に沈んでいく。
「「「「「・・・*/;^;」」」」」「イテぇ;+…*」
「ひギy;ー~」×4
そんな部下たちを目の当たりにして、ジョコブの胸中に浮かんだのは、『疑問』だった。
〔なんでっ…なんで、こいつらは死んでない、生かされてる?そもそも何もしてないオレたちを、どうやって探したんだ?ヘマはしてねぇ・・誰かが裏切ったのか?〕
誘拐組織の強みは、『先制』を取れることだ。
たとえ”魔女C.V.”だろうと、縁者・配下の親族だちにまで、『警戒網』を常時しけるはずもなく。
民草を大事にする”偽善者”ならば、かどわかす手管・隙のある『標的』も無数にあり。
〔だから、先手を取るのは常に俺らだっ!不意をつかれ、怯えるのは獲物の役目だろうがっ‼〕
それなのにジョコブたちは襲われ、狩られている。
〔なんで殺さない…逃げられないっ⁉〕と、いう『疑問』が悪い連鎖ばかりを、想像させる。
しかしジョコブにまっとうな思考ができたのは、そこまでだった。
『血をすすり、肉を食い散らかす悪鬼の大あご
誇りを弄び、心を蹂躙する邪鬼の長舌
キサマが得られる糧はなく オマエがすする滴は、乾いて凍る
凍って壊れ、壊れて昏く、昏くて凍え
氷獄に堕ちる刹那を、共食いの爪牙で刻み彩れ ジュデッカシャドー…』
「㏉ア*アあアーー;ーーーーーー」×12
ジョコブたちの口から、断末魔に近い叫びが、吐き出される。
心身が凍え、腐って、邪悪な何かに呑み込まれていく。そんなあり得ない悪夢が、理不尽に誘拐魔たちに襲いかかり。
死より恐ろしい、最期を確信させた。
ネタバレ説明:『キラーゲーム』について
C.V.が標的と定めた『職種・種族・罪人』に対し、『特効』を得る『魔導能力』です。
リアベルが使う『キラーゲーム』の場合、”誘拐魔”を狩って、殲滅するための『キラーゲーム』となっていますが。
山賊・ドラゴンムなど、術者が定めた『特効の標的』によって、『魔導能力』の内容も変わってきます。
というのも『ドラゴンスレイヤー』の場合、『竜を殺せる、高い攻撃力を得る』のを『特効』と定めますが。
別にドラゴン以外のモンスターに対しても、高い攻撃力を発揮する。
『凶悪な竜王』相手だと、『特効』をふるって、やっとダメージを与えられるという感じですが。
『特効の魔導』の場合、攻撃力以外に『防御・感知』に関しても特化する。
C.V.の術者が狙う獲物を、効率よく狩るための『術式群』であり。
”誘拐魔”を標的としている、リアベルの『キラーゲーム』の場合、連中を探し出す『感知能力』に秀でており。続いて”誘拐魔”を惨殺して、見せしめにする『凶器の術式』で攻撃する。
それらに続き、”誘拐魔”を『幻惑する術式』を、『キラーゲーム』に組み込んでいます。
つまりリアベルの行使する『キラーゲーム』は、純粋な攻撃力が、それほど強化されておらず。
攻防に優れた『ドラゴン』を標的にしている『キラーゲーム』の場合、攻防や機動力などに特化しており。感知能力は、『巣穴』を探せる程度になっている。
『キラーゲーム』という同じ名を冠していても、『標的』によって構成する術式の内容は別物になっており。全く違う『魔導能力』と言ってよいでしょう。
ちなみに『ドラゴンキラーゲーム』と、いうように標的の名称を付けないのは、術式を秘匿するためであり。
”ドラゴンを狙うC.V.なら、優れた武具を持っているだろう”と、推測されて狙われる。有名税を払うぐらいですみますが。
リアベルのように”誘拐魔”に憎しみを抱き、『魔導能力』まで編み出すのは、狂気も入り混じっており。通り魔よろしく、”誘拐魔”に襲いかかる。
他国で”誘拐任務”を行い、祖国では影の英雄な『諜報員』だとしても。
リアベルは手段を選ばずに暗殺したり。濡れ衣を着せたり、暴走させてから抹殺する。
『特定の職種・罪人』を標的とした『キラーゲーム』を使うC.V.は、彼ら・彼らの属する組織にとって、凶悪な『テロル・殺人鬼』に等しく。
C.V.のイセリナは”詐欺師”、エレイラは”故買屋”を標的にして、処断しているとはいえ。仮にも法の範囲で行い、損得勘定をして歯止めをかけています。
しかしリアベルには、その歯止めがほとんどなく。
”盗賊ギルド”が、いかに悪辣な組織だろうと。滅ぼすには手順・段階というものがあり。
リアベルの望むまま、”誘拐魔”ごと惨殺させるわけにはいかない。
そういうわけで、黒霊騎士団はリアベルから『獣の魔術』を、教えてもらってますが。同時に彼女の本当の上司から〔タクマ殿と結ばれるまで、『キラーゲーム』を抑えてください〕と、いう『契約』を結んでおり。
シグルスの街に来たのも、その一環です。
そして黒霊騎士団の幹部たちは、ものすごく苦労しており。大変な労力をかけて、リアベルを封じていたのです。
とはいえタクマの来訪によって、事情が変わり。
〔〔〔〔〔”誘拐魔”どものために、これ以上やってられるか!!〕〕〕〕〕・・・という意見でナイキスたちは一致しました。
かくして経済が混乱し、賄賂が横行する。モラルは低下し、”綱吉”は衝動のまま裁定をくだし、司法もおかしくなり。上が”朝令暮改・二重基準”な判決をくだせば、下も真似をしてしまう。
この状況下で”生類憐みの令”など出せば、混乱に拍車がかかるばかり。
まともな治世の時ならともかく、”綱吉”のせいで空気が悪ければ。”生類憐みの令を破った”と、する”強請りのネタ”をばらまくに等しく。
『命を大事に』という意思があろうと、結果は大惨事であり。
6代将軍の時代になって、即座に取りやめた”悪法”。それが”生類憐みの令”であり、”綱吉という暴君”への評価だと考えます。
そもそも『獣肉を食べてはいけない』と、いう時代に漁・釣りを禁止するなど。『魚のタンパク質』という重要な『栄養素』の没収であり。
”忠臣蔵で庶民の不満をガス抜き”する前に、『御馳走の魚』を食わせろ!・・・と、いうもの。
貧しく、現代ほど食糧保存ができない、江戸時代において。魚という『たんぱく源』を奪うのは、心身両面を不健康にする”悪政”でしかなく。
”江戸幕府15代将軍の中でも、徳川綱吉は最低の暴君だ!”と、言いたい。”生類憐みの令”にも利点があるのは知っていますが、害悪のほうが大きすぎる。