395.閑話~乗っ取り+闘技場の『山崩し』
昨今、歴史研究が進み、色々と異説が発表されるようになりました。
その中の一つに『徳川綱吉は名君だった』と、いうのがあります。
『生類憐みの令』は命を大事にする法律だったとか。大火事・浅間山の噴火など、災害が続いたので、天に罰せられた暗君扱いされた・・・などなど。
『徳川綱吉』を擁護する説が、いくつかあるようですが。私は『結果』が全てであり。
『経済』を傾け、混ざりものの多い”悪貨”を鋳造したり。
死後に”生類憐みの令”が、すぐに廃止されたことを考えれば。
『就任当初はともかく、総合的には完全に”ダメ将軍”だった』と、考えます。
『目つぶし術式群』によって、フォルカは盗賊ギルドの遊撃部隊を壊滅させる。 それによって求める戦利品を得た下級シャドウたちは、続けて貴族家の乗っ取りを企てる。
「頼もーーーう‼」
「何者だっ!ここはポロス男爵の屋敷であるぞ!!」
それなりに身ぎれいにしているものの。大きな袋を担いだ怪しげな一団に対し、門番が誰何の声をあげる。
「我が名はフォルカ・浦須羅。
混成都市の支配者にして、類まれなる叡智をふるわれる。
偉大なる女王イリス・レーベロア様に、お仕えする配下の一員だ。
今日は男爵家の今後について、会談を設けたいと思い、来訪した」
「なにぃ!?あの魔女シ…」
『・・・・・』
「y・*/ーー∼-ギュあア;・*」×2
まぶしい光を放つだけの『フォトンショック』が、瞬時に眼前で炸裂して、門番の不遜なセリフを断ち切る。
使者としては無礼な行いだが、シャドウとしては温情をかけてやった。
”魔女”から続けて『C.V.様』までセリフを告げれば、半殺しで済まさないところだった。
「な、何を…」
「無礼者っ!キサマの不用意な発言で、ポロス男爵家が不利な外交を強いられたら、償えるのか?とっとと主に取り次げ!!」
まあ実際のところ、ポロス男爵の命運は確定しているが。門番たちとて、少しでも穏やかな転職をしたいだろう。
そんなことを考えるフォルカたちのところへ、屋敷から家人が走り寄る。
かくして穏やかに遠い外交が始まった。
「それで使者殿は、どのような御用向きで?」
「・・・…」×2
「急な訪問になって申し訳ない。だが”賊”に関することは、秘かに事を運ばねばならなくてな。
このような形になった」
一応の礼節をもってフォルカは話しているが。対面でソファーに座るポロス男爵の両脇には、武装した騎士が護衛につき。
一方のフォルカというと〔いまだに”賊”へ協力している、愚か者にかける情けは無い〕と、いう本音を隠そうともせず。視線は侮蔑の色を帯びていた。
当然、穏やかな交渉になるはずもなく。
「暇ではないので、単刀直入に言おう。
速やかにウァーテルの軍門にくだり、領地を明け渡せ」
「キサマァ…正気か⁉」
「聖賢の御方様の名前を出して、戯れを行うなど。万死に値する行為だろう」
本来、領地を治める貴族を、武力で排除するのは悪手だ。
理由はいくらでもあるが。一番の理由は、『領主(の武力)が侮られると、際限なく殺し合いが起こる』ことであり。
〔”アイツが武力・”非合法な手段”で、権力を得たのだから。オレも同じことをしよう〕と、いう”殺戮の連鎖”が続く。そのため多少のバカでも、領主の権力をふるうことが認められ。
個人の能力よりも、『血統』など伝統の仕組みによって、貴族の地位は保証される(ことになっている)。
ただしモノには限度というものがあり。
”下劣でバレバレな陰謀?をして、無事で済む”と、いう誤認には破滅してもらうべきだろう。
「まず、”コレ”について説明してもらおう」
そう告げて、フォルカは担いでいた袋の中身を、床へと転がす。
「・・・:-?」「・・-・ッ」×2
「‘◎`…:-」
床に這いつくばった者は、”盗賊ギルド”に属する遊撃部隊の一員だ。
一見、拘束されてないようだが。長時間、袋詰めにされた圧迫感に加え。
『光術』を瞼・鼓膜に付与され、重要な感覚器を封じられ、荷物以下のあつかいを受けており。
心身の消耗は大きく、”賊の精兵”は力なく床に突っ伏す。
そんな男を見下ろしつつ、フォルカは通告を行う。
「先日、こいつらと交戦したんだが・・・その際、『ダークグラス』という拙いながら、『ライト』に対抗するモノを確認した。
こちらの男爵家で、それについて何か知らないか?」
「「「・・・-・*」」」
答えたら破滅しかねない問いかけに、男爵家の者たちは沈黙で応じる。
しかしフォルカは立場の弱い冒険者ではなく。シャドウの一員として、容赦なく言の刃をふるう。
「沈黙して、追及の手が緩むのを待つのは、勝手だが。
このままだと、良くて破産。最悪の場合は汚名を被せられて、破滅だろうな」
「っ…」
「『ダークグラス』程度の魔道具は、とっくの昔に対策されている。
はっきり言えばC.V.様たちにとって、子供の遊具以下であり。『術式』の未熟な、俺たちの訓練道具だ」
「な、なっ‥」
つまり”C.V.様の『術式』に対抗できる、高価な魔道具だ!!”などと、誤解したあげく。大金を払って『ダークグラス』を購入した場合、多額の借金をかかえるだけで、すめば御の字であり。
他の貴族・上位の貴族に対し〔とても有用な魔道具があります〕と、外交を行ったりすればどうなるか?
〔役立たずの魔道具を、賢し気に紹介する愚か者〕と、いう嘲りだけでもポロス男爵の面子はつぶれるが。
〔キサマを信じて魔道具を購入した、当家の面子まで潰れた。ただで済むと思うな!∼!!〕と、怒鳴りこまれたり。普通に恨まれ、報復されるか。
上位の貴族が痛手を受ければ、配下・寄子への威厳を保つため、徹底的にポロス男爵家を潰しにかかるだろう。
「キサマ等ぁ・・‐…;」
「言っておくが、C.V.様たちは”詐欺師”を嫌悪なさっている。
本来、『ダークグラス』は火花が飛ぶ作業場で、鍛冶師の『目』を保護するための『魔道具』を造る。他にも技術者の『視覚』を守る『素材』として、売られたはずなんだが。
愚かしくも、”C.V.様の『光術式』に『ダークグラス』で対抗できる”と、妄想する奴が現れるなど。驚くのを通り越して、あきれ果てたな」
もっともC.V.様は戦争種族であり。外交のネタに、今回の”不幸な事案”を利用するぐらいはなさっている。
それなりに友好的な権力者には、『ダークグラス』を本来の使用目的で使えるよう、技術交流を行い。敵対的な連中からは、しぼり取ったり放置している。
『光術の目つぶし』を使う、神官・モンスターに対し。『ダークグラス』はそれなりに有用な防具となるが。
光神殿は斜陽の一途で、強硬派は隠れ潜むことすら、困難な有り様だし。
『目つぶし』を行うモンスターなど、ウァーテル近郊には棲息していない。
つまり放置される貴族は、『ダークグラス』と『購入費用』という二重の負債を抱えたままになり。
『二重の負債をかかえ、どんな墓穴を掘るか、見物されている』と、言っても過言ではない。
ただし黒よりグレーな俗人フォルカとしては、〔”連中”は負債を他者に押し付けるか。迷惑な賭けに出る〕と、確信しており。
「さ・て・と…ここまで詳しく、貴重な話をしたんだ。
当然、礼はしてくれるんだろうなぁ?」
「なにを…+;」
「この状況を脱するべく、何か策を考えているんだろう?
とっとと、吐け!!」
既に発動している『ダークグラス』に伴う作戦で、ポロス男爵家を乗っ取ったとしても。
恐ろしい調整役を、お断りした代償である『貴族家の乗っ取り』を達成したことになりはしない。
〔さて、どう動いてくるか〕
既に、いくつかの作戦許可はいただいている。
そんなことを考えながら、フォルカはポロス男爵の表情を注視した。
闘技場と訓練場を兼ねる施設が、冒険者ギルドに併設されたシグルスの街。
そこでは今、一つの戦いが終わろうとしていた。
「そこまでっ・・勝者レッドヘルム!!」
「・・・^:^」
「ちょっと待てぇー―い!」
そして新たな争いが始まった。
「何かな?仲裁役を断った、キドニスさん」
「なにが仲裁役だっ…闘技場の『審判役』とか、聞いてねぇ∼ぞーー!!」
冒険者ギルドに務めるユングウィルは、『仲裁役』を務める者を求め。
経験は積んでいるが、年かさの冒険者を、闘技場の『審判役』に採用した。
冒険者にとって、武力を示しつつ報酬を得られる。そんな闘技を仕切り、間近で観られる。
そんな『審判役』は重要な役目で、報酬もなかなかに高く。闘技場の運営職員としては、上級職員と言える。
当然、最初から〔求む、審判役!〕などと、求人をかけていたら人が殺到したかもしれない。
「そりゃあ、聞かれなかったから、言わなかっただけだ」
「なんでだっ!なんで、そんなことを…・⁺」
「もちろん『仲裁役』なんて、面倒な依頼を受けてくれる人に、ご褒美は必要だろう^?^」
ウソである。
闘技場の利権に群がる連中を欺き、うるさい冒険者の干渉を減らすため、黙っていただけだ。
もっと言うならば、暴力が横行する世界において。
口八丁だけの若僧では、『仲裁』などできはしない。しっかり学び経験を積んだ年長冒険者に、最初から『仲裁役』を、ユングウィルは頼むつもりだった。
そして闘う闘技者に挟まれ、観客の声援・罵声が響く。そんな中で公平感のある裁定を、臨機応変にできる。視野が広く、分析・判断に交渉ができる人物を選出しなければ。
ユングウィルの求める、C.V.様たちの争いを仲裁できない。
まして〔火に油を注ぐ〕事態となれば。ユングウィルの首を差し出した程度では、償いにならないだろう。
よって仲裁役を育て、人員を確保しつつ。『審判役』という、役職の給料・権威によって、立場を安定させる。それが『闘技場の審判=C.V.様専用の仲裁役』という兼職であり。
「うるせぇ、ウルセェ、黙りやがれっ❕‘!;
ひいき、してんじゃねぇぞ…横暴だろうがぁ!!!」
間違っても目の前のバカに任せられる、役職ではない。
とはいえ口で説得するのは難しく。
「そこまで言うなら・・審判役の試験を受けてみるか?」
「ハァッ!:⁉・・・・・」
ガキの駄々こねと同レベルを、『交渉』と誤認しているアホに、ユングウィルは問いかける。
「ちょうとこれから、俺も『審判役』の採用試験を受ける。
そこで同時に、同じ条件で点数を競い。勝ったほうが『審判役』を務める。
それならば、いいだろう」
こうして適正の無い者を、ふるい落とす舞台が作られた。
「・・・・・…・どうして俺を縛り上げるんだ?」
「落ちたり、吹っ飛んだら危ないから」
「・・・…・なんで俺を(柱サイズの)棒にくくりつけるんだ?」
「試験の内容が、『大きな棒倒し』だからな」
「・…・なんか、完全武装の騎士が素振りをしてるんだが」
「無論、彼女たちに試験への協力を、依頼したためだ」
シグルスの街に建てられた闘技場は、冒険者の実力アップを目的としている。
コロシアムで死ぬまで戦わせられる、奴隷闘士とは違うし。
大勢の観衆を沸かせて、『賭け』の興行を行う闘技場とは異なる。間違っても、他都市の闘技場と競合して、利権争いを行う時間などない。
「そういうわけで観客が喜ぶように、事前に勝敗を決めない。大仰な動作をとったり、大技を放つ練習もしない。
『審判』が多少の調整は行うが、実戦に近い模擬試合を行う。
とはいえ、それだけでは退屈して、テンションが上がらない者も多いだろう。C.V.様の『魔術』によって、蹂躙されてばかりでは、やる気も出ない」
そこでハンデをつけて、対戦相手の実力を調整したり。『創作競技』を作って、思考・対応力で勝敗が決まる興行を行う。
『砂山に棒を立て、プレイヤーは互いに砂を、手で削り取っていく。そうして砂を削った時、棒を倒した者が負ける』と、いう『山崩し(別名、棒倒し?)』というゲームがある。
「そんな『山崩し』を、巨大化して人間サイズで行う。
とはいえ単なる大きな棒・大量の砂を、使うだけではつまらない。
そこで普段、大口をたたいている者を縛り、棒にくくりつけて・・」
『ダークスラッシャー!』
『ガイストピアッシング!!』
「:・威力が強すぎる・・来たれ!『ガイストシャドー』」
黒い『風刃?』が空を切り。妖気を放つ槍が、ねじくれた軌道を描く。
それらを『鎧の上半身』が、浮遊して受け止め。
鋼か巨石か暴威がぶつかり合う、『異音』が闘技場に響く。
「・・・-;…あのっ⁺、これって:」
「砂を削るための、『魔術の攻撃』だ。
『棒』に直接、攻撃をあてて倒したり。吹き飛ばしたり、砕くのはちゃんと禁止にしている。
あくまで棒をさした、『砂山』だけを崩して競い合う。俺たちが一体化した『柱』を傷つけることなく。棒が倒れるギリギリまで、砂山を削った方が勝ちという。
とても勇猛な黒霊騎士様でも、穏健に勝負ができる画期的なゲームだ!」
古代書に記された、本来の『棒倒し』は危険すぎる。
武器など持たずとも、黒霊騎士様による『重量鎧』の機動がかすっただけで、人間の兵士は強い衝撃を受ける。『魔術』の撃ち合いともなれば、たとえ身体が無事でも、見た者の『心』が死にかねない。
そこで粘り強く交渉を行い。『本来の棒倒し』を、『巨大山崩し』に置き換え。黒霊騎士様の人外バトルの開催を、ユングウィルはアトラクションに替えた。
〔とはいえ、本当にお遊戯な『巨大なだけの山崩し』をさせたら。黒霊騎士様の不満が爆発しかねない〕
そこでユングウィル自身を、まず棒にくくりつけて、黒霊騎士様の『攻撃』に身をさらす。
〔オレは危険な闘技場に出ているぞ!〕と、アピールすることで、荒くれ者に睨みをきかせ。
態度が悪くて、騒々しい冒険者も、柱サイズの『棒』にくくりつけて、反抗心を折る。C.V.様が怒れば、審判・仲裁のどちらもできないことを、身をもって知ってもらう。
〔どうせ俺のような軟弱者は、ガキに押されただけで転落死する。眠ってる時に放火、隠し味に毒を盛られれば、人生終了だ〕
そう考えれば、覚悟??も決まり。目をつぶって黒霊騎士様の攻撃を、視認しなければ。嵐の音に耐える程度のストレスで済むというもの。
そんな”思考停止”によって、ユングウィルは『巨大な山崩し』を企画して。
「御主人様・・・とっても楽しそうですね」「ええー、普通に危ないよ●ー●」
「それで、黒霊騎士様に挑めば、この危険行為を止めてくれます〇ー〇」
「あらあら、フィニー。最初はオハナシアイから始めないと」
「それで・・どういうことか説明をしてくださいます?」
最重要事項の存在を、きっちり思い出した。
そして”徳川綱吉”が経済を傾けた元凶は、完全にその政策が原因でしょう。
その政策とは『大名の取り潰し』を、家光と並んで多数、行ったためだと推測します。
”忠臣蔵”において、取り潰された赤穂藩は〔『藩札』を何割返すか?〕と、いう問題に見舞われました。
『藩札』というのは、『藩』独自の地方通貨であり、借金証文を兼ねる。
『藩札を払うから、銭・小判での正式な支払いは後日に行う』と、いうように使う。要は諸藩がツケ払いをしたという、お札っぽい『証文』です。
そして忠臣蔵で赤穂藩が改易される際に、『藩札を6割も返した。普通は4割返しなのに⁉』と、感心されていましたが。
要は大半の『大名家』が取り潰しになるたび、『借金が踏み倒されていた』と、いうことにほかならず。
算定基準によっては3割どころか、2割以下しか返済しない。事実上の踏み倒しをやらかしていた。
さらに武家の面子を守るため、”ねつ造”に近い算出方法を行い。
『取り潰された藩における、藩札の支払いは4割が相場』と、いう数字も怪しいものです。例えば”どうせ藩が取り潰されるのだから、後は野となれ山となれ”と、いうのはノーカウントにするとか。小さな商人が泣き寝入りして、記録が残らなかったなど。
武士のプライドばかり無駄に高く。財政の記録を怠り侮り、予算・人員をさかなかった。そういう藩が取り潰される非常時に〔藩札の4割を返した〕と、言いふらすのを信用できるでしょうか?
おもいっきり、無理があります。
商人のほうも”借金を踏み倒された”と、いう恥が知れ渡るのは、店の面子がつぶれる。そうなると『藩札の保証は4割が相場』と、いう『風潮・ウワサ』を作るほうが得であり
その結果、『大名家の取り潰しによる被害・借金踏み倒しは、もっと大かった』と、考えるのですがいかがでしょう?
もしくは『藩札』が紙くずになった、損害を取り返すため。某時代劇も真っ青な、あくどい商売に手を出すようになり。困窮して世間知らずな、浪人・弱者を食い物にしたり。平和な太平の世なのに、守りの商売をして、経済活動が鈍化した。
諸藩も取り潰しを防ぐため、”賄賂工作”を行わねばならず。重税・臨時課税に労役を課すなど、事実上の悪政を行うようになっていく。
そこに徳川綱吉が”忠臣蔵”でやらかした、”暴君の司法”を行う。『判例』を無視して、独善的な判決をくだすとなれば。
ただでさえ大名取り潰しで、浪人があふれているのに、治安はますます悪くなり。”冤罪被害”も、さぞかし横行したでしょう。
これだけやらかせば、経済が傾くのは当然であり。災害に対応できるはずないでしょう。
以上、誰もが認める『大名が取り潰された数字』から、”徳川綱吉”が暗君・暴君であることを主張しました。