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ヴァルキリーズ・シティ~混成都市ができるまで、あるいは盗賊連合の滅亡記  作者: 氷山坊主
閑話~混成都市の渦+シグルスの模擬戦闘
385/422

385.混成都市での謁見:アルゴスセイバー:干し肉の作り方

 『剣道』『弓道』は神聖なもの。

 当然、その修練を行う『道場』『道具』も大事なものですが。あまり使われ(認識され)ない〔『矢筒』に、神聖さを感じて〕と、言われても困るでしょう。


 ちなみに私は博物館で大まかに、二種類の『矢筒』を観ました。


 時代劇などに出てくる、円筒・直方体型の『矢筒』が一つ。そこに格子状に紐・木枠をつけて、『矢』が束にならないようにしている。


 もう一つは『扇状の矢筒』で、かなめの部分が『矢筒』になっている。一本ずつ収納した『矢』を、扇状・孔雀の羽根のように開いて、収納している。

 面白い『矢筒』だなーと思いました。


 もっとも構造が精緻なため、製作コストが高く。さらに雨でぬれたりしたら、矢を収納できなかったり、整備に手間がかかる。

 〔おそらく戦場で使うのは、難しいだろうな~〕と、推測する『扇状の矢筒』でした。

 使者を装い、やって来た刺客を、イリスは一蹴し。

 『自爆』すら封じたその刺客を、家臣に化けた(幻術で覆った)大商人たちの眼前にさらす。


 しかしイリスが率いるC.V.勢力は、刺客の不様(醜態)をさらさせる程度で、終わらせる気は全くなかった。



 「・・・・・アルゴスゲーム!!』


  さて…哀れな刺客(捨て駒)よ・・・オマエに課せられた、役目を果たせ」


 「なにぃ⁉Iっtい」ナナw言っDぇー・-ー」


 「「「「「「「「「「・・・:…?~・」」」」」」」」」」


 『百眼巨人の縛錠(アルゴスカフス)』によって動きを封じられ、呂律ろれつの回らなくなっている。

 シャドウに取り押さえられ、完全に無力化されたはずの刺客に、何ができるはずもない。


 商会長たちも、刺客自身も、そう思ったところで”邪気”が漂い。刺客の背面が、血を吸ったしらみのごとく、膨張し始め。


 『シ・ズ・マ・レ(ディザイア)・・・そして着衣に宿り(ドゥーム)影を作り(アイズ)・・・・・』


 既に発動している『百眼巨人の魔導(アルゴスゲーム)』が、刺客の着衣に仕込まれていた『呪力』に干渉する。

 『発動条件』を狂わせ、あえて『大量の魔力(光属性)』で抑え込み。


 『ギGン,gアァァーーーー』


 『影はめぐり、安らぎの闇(プリズム)と成り…傲慢ごうまんにお前を観る客から対価を奪え(ウィンドウ)!!!』


 『呪力』が『光属性(アルゴスゲーム)』に反発し、『闇属性』を帯びる。

 だがイリスはその闇(呪力)を認め、増強するにとどまらず。


 謁見の間にいる者たちへ、その波動を拡散させた。


 「「なぁっ…⁉」」『『『・・-!;・;!』』』「くっ…」

 「「「ほgぇ・!!」」」「『「『オッ;⁺:ぉ‐*ー』」』」


 「とりあえず我の後ろに…」「はい、旦那様」

 「働きなさいよ、魔導師クララ…」「・・・-・」


 『呪力』の波動は、怪奇を呼ぶ。


 謁見の間に立ち並ぶ、商会主たちから様々な『呪力』がにじみ出て。

 それらは混じり、迷走しつつも。この場で最も高い『呪力』を発する、イリスのもとに這い寄り、集まり。


 〔できれば、『魔鐘ドゥーム』に呪いを蓄えたいけど〕


 〔ア*ネ*ウ*エ~*ー〕


 〔もちろん、公の場で、そんなことするはずないよー・・〕


 誘い出された『呪力』と違い、確実に呪い殺す『眼光』を放つ、妹分イセリナからイリスは視線を外す。そうして彼女イリスにとっては、安全な処置を行うべく『剣』をかかげ。


 『鍛冶場の煉獄…:剣士の命脈・・:()は我の現身と成り


  毒酒の霞、塔の破片、さかずきの血脂


  諸々、陰の災いを受け、宿り、切り裂け・・・アルゴスセイバー!!』

 

 イリスが構える『剣』へと、歪んだ魔力(呪力)が引き寄せられていく。

 それらは刀身を汚すと同時に、『剣』に魔力を宿らせ。次にやって来る『ナニか(呪い)』を切り裂く『刃』へと、一瞬だけ成る。


 「さあ、くるなら来なさいっ!」


 本来、『百眼巨人アルゴスが持つはずのない(・・)聖剣セイバー』を、イリスはふるい続ける。

 速く、力強くふるいながら、時折いたわるように『鞘』へと納め。『魔術能力アルゴス』を付与した、一時的な『聖剣』によって『吹き出た陰(正体不明)』を霧散させていき。


 「マタネ、陽と対になり回るモノ…今度は神聖じ(イリス・)ゃない光(レーベロア)として歓迎するよ」


 〔・*・*・*…・〕


 〔団長閣下(イセリナ様)⁉どうか、お怒りをぉ…〕


 陸戦師団の主従二人が、そろそろ危険なことになるのを、イリスは視界の隅から外し。

 改めて、招待した商会主たちに話しかける。


 「皆さん、気分はどうですか?『胸やけ』がしたり、『五感』に不自由はありま(アルゴスアイズ)せんか?」


 「「「「・・-*・」」」」「「「「・・・:…~?」」」」

 「「これは、いったい…」」


 口で問いかけつつ、イリスは商人たちの『眼球』を『アルゴスアイズ』で解析して、健康状態を調べていく。

 『呪いに対処』する前と、現在の『眼球』にどのくらい差異があるか。充血を調べる以前に、目を保護して覆っている、『水気()』の質・量を解析し。目の張り・『虹彩』など、『眼球』の表面を調べるだけでも、健常さを計る『情報』はいくらでもあり。


 「どうやら皆さん健康な様子。

  それじゃあ、催し(茶番)も終わったし、帰っていいよー」


 「お待ちください、イリス様!!いったい何が今、起こったのです!?」


 刺客が捕らえられ、強力な『魔術』が行使された。

 そこまでは商人たちも認識できたが、不気味なナニかがわからない。何もないところに、小娘イリスが剣を振って、不可視のモノを切り裂いて?いたのは推測できるが。


 詳細を語られず、詳細を知ることができない。それは不快と不満をもたらし。

 商人たちからすれば・・・


 〔〔〔〔〔何があったのか、真相を話せ〕〕〕〕〕と、言いたいだろうけど。


 

 「教えっなーーー~い!」


 「「「「「・・ー・…・」」」」」「「「「「・!-・・・」」」」」

 

 イリスのふざけた返答で、謁見の間に沈黙が落ちる。


 「ここで『歪んだ魔力(呪力・呪術)』について、話すことは簡単だけど・・・

  その『情報』に、商人として適正な対価を払えるの?


  もう一つ、ボクは”光神殿(生臭)”を叩き潰したけど…奴らの後釜に座る気は、欠片もないからね~

  皆さん、冷静な判断ができると思うけど。万が一があるから、詳細は話せないかなっ⁉」


 「「「「「「・・・・・ッ」」」」」「「「「「・・・-・…」」」」」


 『魔術』すら扱えない商人たちに、もっと危険な『呪術』を教えるなど論外だ。たとえ今は『呪術』を使う気が全くなくとも。商売敵と争い、傾いた店を立て直すため、『呪術』に頼ってしまう。そのリスクを、イリスは少しでも減らしたい。


 だったら秘かに『百眼巨人の魔導(アルゴスゲーム)』『百眼巨人が持たぬモノ(アルゴスセイバー)』を使い、”たちの悪い呪い”を解くべきなのだろうけど。


 「とはいえ高額の税金を納めてる君たちに『刺客退治を見せるためだけに、呼び出した』と、いうのは時間の浪費が過ぎるし。

  特別に『ヒント(情報)』ぐらいは、あげようか」


 「「「おおっ、ありがとうございます!」」」「「「感謝をっ・・」」」

 「「「「・・・^⁺・」」」」


 もったいぶったイリスの『言霊(ヒント)』に、商人たちが飛びつく。それは『呪いのくさび』と化し、『金輝の魔導(ソロモンゴールド)』を呼び込む『裏口』を形成していき。


 「それじゃあ、ここからはイセリナに任せようか」


 「承知しました、聖賢様(姉上)


  残虐な盗賊ギルドは端金のために、他人を殺し


  無知な奴隷商人は人を活かすことなく、浪費するのみ


  そして秩序を唱え、生き血をすする愚劣(神官)に弔いはできず


  かの者たちの死臭は、如何にして消されたか。


  貴方たちは、考えたことがあるのか?」


 『魔導王の黄金(ソロモンゴールド)』をイセリナに発動させるふり(・・)をして、商人たちの反応をイリスは探る。

 正直、『情報を抜き取る魔導(ソロモンゴールド)』を使えば、手っ取り早く商人たちの胸中を探れるのだけど。


 最近、『透視・遠見』で”盗賊ギルド”の拠点を、見透(殲滅)したばかりであり。

 『魔術の制約』がだいぶ緩んでいる。

 そのためグレーな商人たちに、読心に等しい『ソロモンゴールド』を乱用するのは、イリスのルール的に許されず。


 イセリナには『魔導能力ソロモンゴールド』の偽装発動を行ってもらい。

 

 イリスは”少し怖い話”を商人たちに伝えた。 






 この世界の『魔術』は物理法則を無視できない。


 だから物理的に不可能な『死者蘇生』は論外であり。

 不滅不壊の『マジックアイテム』『空間魔導』も存在しないし、行使するのは不可能だ。


 それは『死霊魔術ネクロマンシー』も同様であり。

 石が水の流れによって、削られるように。『霊体(歪んだ魔力)』は大気中の『魔力』により、損耗・浄化?されてしまう。


 『ゾンビ』のような『屍操術』も、『ネクロマンサー』だけが低コストで数を従えることは、不可能であり。『魔人形ミスティー』『ゴーレム』1体を操るのと同様に、魔力コストがかかってしまう。

 『術者ネクロマンサー』の技量が未熟なら、相応のスペックにとどまる。体がちぎれても動き続ける『ゾンビ』を使役するなら。武装させた方が戦闘力を、上げられるだろう。



 「・・・とまあ、ここまでは『ネクロマンシー』の基礎なんだけど。


  風が凪ぎ、よどむことがあるように。

 大気中の魔力が循環しないと、『ネクロマンシー』のコストが下がったり。強制力が増して、通常では有り得ない『不死者アンデット』を使役してしまう」


  「「「「「「「「「「・・・:…・」」」」」」」」」」


 「戦場・スラムの遺体を、ろくに埋葬しなかったり。

  ”囚人・奴隷を安直に殺したり””下水道に放り込めば、しかばねが消える”と、いうことを大都市の人口で行えば。


  死臭が漂い、『ネクロマンサー』が身の丈に合わない『力』をふるえる。そういう”冥界モドキ”になるんだけど・・・」


 実際のところ、イリスたちが悪徳都市を落とすまで、”盗賊ギルド”が幅をきかせていた。魔術シロウト(無学のバカ)たちが、王様気分を味わっており。

 『ネクロマンサー』たちは、『魔導の片鱗』にすら至れてなかった。


 「この”フシギ”が、どうして発生したか。商人の情報網で、何か知らないかな?」


 「それは、天上の『神』が加護を…」「・:⁉・バカっ」

 「「「・・・*ー・」」」「「「「「・・・-;+!」」」」」


 商会主の発言で、謁見の間に流れていた空気が一変する。

 ここは”光神殿の本山”を壊滅させた、C.V.勢力の中心部だ。いくら善政をしいていても、その発言には注意が必要であり。


 「やだなぁ~:ー”光神殿の生臭(神官)”なら、ともかく…

  たかだか信者を弾圧するはず、ないじゃないか。どこの暴君なのかな~^~」


 「そうですよね…ハッハッハ.ァ⁺:・`;」

 「「「「「「「「「ッ*/:h…#;―-ーЖ」」」」」」」」」


 年輩な商人たちの『受け』がいいように、イリスは友好的な口調で話していた。

 

 それなのに”暴君”を見る視線を向けられ、謁見という『情報交換』の場は、半ば強制的に終了し。

 

 謁見している間は、動揺していた(を装った)くせに、最後に尻尾を出した。『質問』の答えを既に知っている”奴”を、イリスはしっかり捕捉した。

 


 








 現在、不自然なくらいにぎわっている。

 黒霊騎士C.V.をはじめ、少なくない冒険者たちも訪れているシグルスの街。


 そこで最近、改装された高級酒場の一室で、ユングウィル(冒険者ギルド職員)は彼と面会していた。


 「よう、兄弟っ!アヤメ姐さんにしぼられて、大変だったなぁ」


 「どうも…タクマさん(四凶刃)


 安くない料金を払った部屋に、高い酒・料理が所せましと並べられている。

 本来なら仕事中だろうと、『接待』を理由にして、楽しむところだが。


 ユングウィルの目の前に座る相手シャドウに、欠片も隙をみせるわけにはいかず。

 ユングウィルは借りてきた猫のように、縮こまって着席の許しを待つ。


 「おいおい、遠慮するなよ。さあ、仕事を忘れて、食べて飲め!!


  アヤメの姐さんと面会をして、無事に帰ってきた。余所の人間(ギルドスタッフ)が、それを成すなんて、ちょっとした勇者あつかいだぜ?」


 〔そんなところに、アポ無しで放り込むな!〕と、ユングウィルが告げるためには、対等な立場が必要であり。タクマ(当然、)さんとユングウィル(シャドウの幹部が)の立場は(平職員より)隔絶している(上に決まっている)


 しんなユングウィルの不満を察したのか。タクマさんは、まず謝罪してくる。


 「・・・悪かったって。別に殺されそうになったわけじゃないだろう?」


 「・・・・・〇:〇(オレ、文官なんだけど)


 恐怖にふるえ、格上と戦い、命をすり減らす。

 そんな戦場に等しい交渉を、年がら年中したくない。


 ユングウィルは不毛な争いを調整する。あるいは”性悪な駄々こね”をしている、特権持ちの足元をすくうのが、せいぜいであり。

 他人より珍しい功績だから〔大手柄を立てた〕と、周囲に錯覚させたにすぎない。


 〔そして炎熱C.V.やナイキスさんを、呼び寄せると知っていたら・・・〕


 果たして冒険者ギルドの交渉役など、務めていただろうか?


 C.V.様たちに依存する、男娼まがいのことをしていたか。あるいは〔家名を取り戻す〕と、いう夢を達成するため、別の道を模索したかもしれない。

 何故ならC.V.勢力とのつきあい(ハーレム)は、”貴族に返り咲くのを阻害する”と、ユングウィルは感じているから。


 

 そんなことを考えているユングウィルに、タクマさんは明るく話しかける。


 「しゃ~ねぇなあ・・・それじゃあ、お前に儲けの種を教えてやる。


  下級シャドウ?(サヘル)に頼めば、一発で財源の一つになるんだろうが。

  今でも忙しい、あいつの『錬金光術アルケミックライト』を、こき使ったら。(間違いなく、ぶち殺されるからなぁ)」



 不穏なささやき(ぶち殺される)と共に、ユングウィルに伝えられたこと。

 

 それは『干し肉の作り方』だった。











 ネタバレ説明:『アルゴスセイバー』について


 作中にも書きましたが。


 本来、『剣』の逸話などない『百眼巨人アルゴス』に、『護法?剣』を持たせて、今生の『呪い』に対抗する。(『アルゴスゲーム』を発動した、イリスの認識では)軽度の『呪術』を、消去する呪術系の『魔術能力』です。


 『神聖・聖なる力』を使いたくないイリスが、不幸をもたらす『呪術』を破壊したい。


 そういう願望から編み出された『魔術能力』であり。

 『術式干渉アルゴスゴールド』と同様に。『呪術』の対象・向かう方向を、イリスのふるう『剣』に変えて。

 『刃に帯びた呪力』を、一時的に『光刃に錬成』し。次に寄ってきた『呪術』を破壊する。


 〔効率とか、リスク計算とか、色々とおかしい〕と、忠臣たちから非難の大合唱をされている。頭のおかしい『魔術能力デザイン』です。



 イリスとしては『アルゴスゲーム』で場を支配したうえで。


 〔格下の『呪術』を解呪してるだけ〕〔解析した『呪術』だし、安全マー(余力は)ジンは(かなり)とっている(残している)〕と、言っています。


 ちなみに、この申告の信用性は半々であり。


 混成都市などイリスの拠点で、高額な納税者(グレーな商人)を保護する場合は、余裕をもって使いますが。

 戦場で仲間・配下にかけられた『呪術』に、対抗する際は『安全マージン』など、完全に度外視であり。

 

 『イリスが最も得意とする、剣技で解呪を行う』と、いうイメージを通すため。『アルゴス』にありもしない『呪いを受ける邪剣』を造り。解呪をする『一瞬だけ聖剣』にする。


 〔普通に『解呪』をすると、妹たちがうるさいから。激戦を繰り広げる、どさくさに『危険な解呪』をやってしまおう〕と、いう。

 心底、頭のおかしい考えで、編み出された『デザイン』であり。


 敵の呪術使いにとっては、『悪夢なデザイン』です。『剣技』で解呪をするのは、まあともかくとして。

 心をすり減らす大激戦の真っ最中(どさくさ)に、『解呪?』を行う・・・と同時に『呪術干渉アルゴスセイバー』を並列(双剣で)発動し。『呪術返し』どころか、『呪術暴走』を引き起こし、大混戦に引きずり込む。


 〔〔〔〔〔あいつ(イリス)は絶対に頭がおかしい〕〕〕〕〕と、敵から完全に”狂姫”あつかいされてしまう。

 それが『アルゴスセイバー』の正体であり。

 今回の使用は『試し斬り』をしたにすぎません。


 以上、『アルゴスセイバー』のネタバレ説明でした。






 少し説明:シャドウ一族による『干し肉』の作り方


 『干し肉』:『衛生』・『魔術関連』をのぞき。ほとんど西洋中世の文明レベルなケイジアスにおいて。『干し肉』は貴重な保存食であり。同時においしくない、塩辛い食べ物にすぎません。


 水・火(燃料)を食事に使う分だけ、自由に使える環境なら。

 干し肉から、塩分をとり出してスープを作る。他の料理に、その塩分を流用することも可能でしょう。


 (ちなみに”某ギルド”は”かまど税””井戸税”など、”重税”をかけており。

 混成都市が成立した時点で、きっちりオハナシして、それらの”重税”は撤去されました。

 乱用・浪費はダメですが、常識の範囲で『水道・かまど』は使えるようになり。


 ”某ギルド”は、住民から総スカンをくらったとか)



 とはいえ旅人・冒険者たちにとって、『水』は貴重であり。料理を作れる『火』をつけるのは、けっこうな手間がかかります。


 そのためシャドウ一族は、二つの方法で『美味しい干し肉』の作り方を模索しました。

 それは『風術』によって、下処理を行う。『錬金術』によって、加工を行うというものです。



 『風術による下処理』は、以前に少し書いた『獲物の血管に、風術球を通して血抜きをする』と、いうものであり。

 

 肉が臭くなる原因となる、『獣の血』を風術球で押し出し、排出させる。血の匂いを『風術で感知』して、迅速かつ精密な『血抜き』を行う。圧縮空気を送風して(コンプレッサーで)、血を飛ばす。

 

 〔そうして『質の良い肉』を素材にして、『干し肉』を作ろう〕と、いうのが下処理であり。


 ほぼ『水術』でも代用できます。

 ただしイリスの定めた『制約』で、『水術によるミイラ化(乾燥)』は絶対禁止になっており。干し肉の製造で、水分を抜くのに『水術』は使えません。

 


 続いて『錬金術』による、『干し肉』作りについて。


 忙しく、他にいくらでも儲かる『アイテム』を錬金できる。そんな『錬金術師』が、干し肉を錬成するはずありません。

 そのためシャドウなど、他職業と兼用で『錬成』を行う。三流どころの『錬成』を行うわけですが。


 『塩』『獣肉』以外の素材だけで、干し肉を作らないと赤字になる。今までの干し肉と同程度の『コスト』しか、かけられません。


 そのため干し肉を作る、作業部屋に『結界』をはる。肉に『付与術』をかけ、適量の塩しか獣肉に含まれないようにする・・・などの方法は却下されました。


 

 そうして採用されたのは『塩の錬成』であり。

 干し肉を作るのに特化した『塩を錬成』する。しょっぱい干し肉から、『錬成して塩』を分離する。

 殺菌作用のある薬草を『塩に錬成』して、少量の塩で(塩辛くない)干し肉を作りやすくする。


 肉のほうも燻製にする。食糧を入れる袋・包む布に、雑菌が入らないよう、浄化の付与を行う。『塩の錬成』を大量に行い、コストを下げる・・・など。

 『塩の錬成』以外にも、様々な作業が必要ですが。少しは雇用に貢献し、一般人と協力するプランがあり。


 多少、値ははりますが、士気を高める経費と割り切っています。


 

 以上、シャドウ一族による『干し肉』の作り方を、少し説明しました。

 博物館に展示されていた『矢筒』。

 一見、弓矢の付属物であり。展示物としては、刀・鎧と比べ地味に見えます。


 しかし〔街道一の弓取り〕という言葉が、戦巧者の名将を示すように。

 『弓矢・弓兵』を、どう運用するかが、軍勢を指揮するうえでかなめだった。

 もっと言うならば、弓兵をどこに移動させ、待ち伏せさせるか?それが戦の勝敗を決したと愚考します。


 そして『馬は山を移動・登るのが苦手だ』と、いう歴史研究から考えると。弓矢をあつかう兵士・武士たちは、和弓・太矢の重量物をもって、山の傾斜を移動しなければならず。

 矢を収納する『矢筒』の重要性は、高かった。抜刀術のように、矢筒から矢を取り出し、弓につがえるのも、訓練が必要であり。ひょっとしたら速さを優先して、矢を弓につがえる技術も、存在したかもしれない。


 そんな風に『矢筒』を見学して、色々と想像してしまう。博物館で楽しい見学を、させてもらいました。

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