384.閑話~混成都市という大乱:アルゴスカフス:アルゴスゲーム
先日、美術館で『日本の弓矢』が展示されているのを見学してきました。
『弓道』も『戦場弓術』も、全く知りませんけど。
映像で観る『弓道の矢』と比べ、『戦場の弓術』で使われる『矢』はずいぶん太く重そう。鼓笛隊を彩る『バトン』よりも、重く太そうであり。
〔あんなのが降ってきたら、安物鎧で防げるわけがない〕と感じました。
当然、弓も強弓であり。稀に『弓+槍』が出てきますが。あの『強弓』ならば、そういう武器が登場するのも納得です。
冒険者の待遇を、さらに改善するべく。
冒険者ギルドの交渉役を務めるユングウィルは、侍女頭のアヤメ様との会談を設けた。
しかし、アヤメ様は混成都市で行われる、『資金洗浄』に伴う大きな資産運用について話し。
〔そのために、シャドウ一族と”盗賊ギルド”の仲介を、お願いしたい〕と、いう依頼をしてきた。
かなり難易度の高い依頼だが。これを成し遂げれば、ユングウィルの立場も上がり、信用も得られるだろう。
そうして『依頼料の分割払い』に冒険者ギルドを関わらせて・・・
そんなユングウィルの野望とは遠い所で、事態は進行していた。
「面会の機会をいただき、ありがとうございます。
8級C.V.ナイキス改め・・5級天属性C.V.ナイキス・ルト・ハノーヴァと、申します」
「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。
姫長の扇奈様に仕える最側近・風属性のアヤメ・姫沙薙と申します」
礼儀正しい会見前の名乗りが、C.V.の作法で行われ。同時にナイキス様から、『威圧の魔力』が放出される。
突風・濃霧の形態とは異なる『電流の魔力』は、アヤメの感知能力を妨げる力を持ち。C.V.勢力で高位とされる『天属性』の名乗りとともに、人間に身分の差を突き付ける。
その威圧に、アヤメは耐えるしかなかった。
「先日は私の旦那様と会談を設けたとか。
多重婚に参加するC.V.として、嫉妬してしまいます」
〔C.V.の夫に対し、全く配慮をせず。”盗賊ギルド”との仲介役を強制するなんて、どういうつもり?覚悟はできてる?〕
口から発する、言の葉とは異なる。開戦前の恫喝に等しい、ナイキスの意向が眼光と共に、アヤメへと放たれる。
それに対し、アヤメは『言い訳』をしたくなるが。シャドウ一族の利益のため、ひるむわけにいかず。
「まあ・・ナイキス様はユングウィル殿の妻だったのですか⁉
炎熱C.V.の焔に囲まれ、気付きませんでした」
「ほう…私がハーレムを形成していたのを、知らなかったと?」
「〔8級闇属性C.V.のナイキス・ハノーヴァ殿が、殿方を気にかけている〕と、いう程度の認識でした」
真っ赤なウソである。
黒霊騎士団の戦力・それを束ねる騎士団長の狂猛な力から、比較して推測すれば。幹部であるナイキス様の正体も、大まかに予想できる。
5級天属性なのは少し驚いたが。8級C.V.などではないことを、アヤメたちはほぼ、確信しており。当然、要人の好悪・交友関係を、最低限は調べていた。
そんなナイキス様は、アヤメがタクマたちを呼び寄せて挑む、任務の『標的』でもある。
同時に〔厄介事になるから、近づきたくない〕と、思っていた。
〔身分の高い者が、あらゆる面で優先する〕などと、言いたくないが。
〔命がけで、激務・激闘を繰り広げている者が、貧乏くじもひく〕と、いう状況を肯定する気など、アヤメには欠片もない。
平民・下位C.V.なら〔先手を取った方が、恋愛で有利になれる〕と、いう考えが一般的なのだろうけど。
平和な住人と同じ恋愛を、戦場で命をかける勇士が行える。そんな環境・戦況は極めて稀であり。
『狩り』という戦いをする猛獣と同様に〔育児は協力して行うべき〕と、いう意見をアヤメたちは持つ。
いつ来るか知れたものではない、敵に備え。激務に忙殺され、戦場へと征く。
加えて『身体強化』の魔術による負荷で、月の巡りがままならない。
そういう多芸万能すぎる、ヴァルキリーの結婚生活は、周囲から支援されるべきであり。
親友の扇奈が『一族の利益と結婚』と、ならないようナイキス様の恋愛から学ばせてもらいたい。
もっともアヤメは黒霊騎士団のメイドC.V.から、天属性C.V.様の情報を、既に知らされており。
〔シャルミナ様の援護・部隊の指揮・外交など、黒霊騎士団の運営、全てに携わるだけでなく。魔王ハーミュルズ様の軍団では、中堅幹部として上下両方の対応に追われ。
四大明暗を操る、稀少な『天属性』ともなると、六属性C.V.+αの修練・研究に関わる義務まで発生します〕
そんな重要機密を伝えられたあげく。
〔不慣れな混成都市の領域で、誰かの結婚生活がうまくいくよう。シャドウの皆様には、ご協力をお願いしたい。
そのためなら【依頼】を喜んで手伝いますし。冒険者の利権など、丸ごと進呈いたします〕
こういう断れない取り引きを、アヤメは半ば強制されており。
タクマ、桐恵に霧葉たち部下を送り込み。『呪いのアイテム』を勝手に破壊して、左遷の形をとってまで、アヤメはシグルスの街を訪れ。
この状況で『恋愛は早い者勝ち!』『ハーレムの女性は全員公平にあつかおう』と、いうのはナイキス様だけでなく、全員に不幸な未来をもたらす。
せめて天属性C.V.様が求めて、喜ぶ『報酬』を得ていたならば、ともかく。
使わない莫大な財貨を、信用できる者に委託して、各所に投資・寄付したり。
魔王軍の危機に、奮闘したことも数知れずで、貸しばかりたまっていく。
そんなナイキス様の結婚願望をかなえるのは、狂猛騎士も含めた黒霊騎士団にとって、最重要事項であり。
「魔王様にご無礼を働き、天属性の血統を”共有財産”にしようとした。
そんな火属性C.V.の拠点には、もう一度決闘裁判を行い、今度こそ引導を渡すべき・・・という意見もございます」
〔「男性C.V.は、C.V.全体のため『種馬』となれ。優れた天属性の血統を継承し、増やすために、性業な勇者と結婚すべき」
これらを主張したC.V.派閥どもは、叩き潰して”弱小勢力”の烙印を、きっちり押しました。
しかし、そんな弱者C.V.を憐れんで、醜聞を知らない四凶刃は火属性術式を教授したそうですね。
それはシャドウ一族が”不届き者”たちと一緒に、魔王軍と敵対するということですか?〕
無論、藤次とシャドウ一族、どちらもそんな気はない。
そして事態が解決するならば、アヤメは容赦なく炎熱C.V.たちの故郷を壊滅させるつもりだ。
血筋に執心するC.V.は、高確率で人間を見下すヴァルキリーであり。実力を示せば、交渉相手と認める魔王軍のほうが、シャドウ一族の取引相手にふさわしいと考えているのだが。
〔だけど炎熱C.V.は、先にユングウィル殿と会ってしまった。
彼女たちを排除すれば、殿方に非常識と認識されてしまう〕
だからアヤメたちは、ナイキス様の恋愛サポートだけでなく。
ユングウィル殿のハーレムも、フォローしなければならなかった。
混成都市ウァーテル。その中心部にある政庁で、謁見が行われていた。
「このたびは、拝謁の栄を賜りありがとうございます」
「「「「・・ー・^・」」」」
「「「「「「「「「「・・・ー・」」」」」」」」」」
”盗賊ギルド”から奪った財貨を担保にして、巨大組織からC.V.勢力が金を借り。
その金を返せなければ、担保にした財貨は”巨大組織”のモノとなる。
そんな取り引きが行われることになり、謎の新興商会の代表者と契約を結ぶ。
そのための謁見が行われるのだが。
「は~い、まどろっこしいのは面倒だから、とっとと本題に入ろうか。
手紙に契約書、何でもいいから持ってきて~^ー」
「‥ハハッ、これをご覧くd*ぁ‐*:s/!?」
そしてすぐに茶番と化した。
”盗賊ギルド”からさし向けられた、使者は刺客の正体を現し。書類の代わりに、ナイフを取り出し跳躍の動作に入る。
そして滑って、転んだあげく、手に持った凶器を床に落とす。それは素人でもまずしない、醜態の連続であり。
大きな赤子も同然に、床に這いつくばって体勢を立て直せない。まさに不様で”醜悪”な狼藉者であった。
「これはッ⁉・・・Eっtaiイ俺Ne何woし;da~-!」
「『百眼巨人の縛錠…様々な『光付与』で、敵の動きを制限する術式だよ。
顔面の七穴に付与して、感覚を遮断したり。小指の関節に付与して、握力を下げたり。『経穴』を押したり、身体の体重バランスを崩す。
色んな手段で動作を妨げて、ロクでもない『スイッチ』を故障させる、小手先の『術式』だよ」
混成都市を支配するC.V.の説明と共に、護衛のシャドウが狼藉者を、完全に取り押さえ。
同時に同席していた魔導師団長のC.V.クララ・レイシアードが、『幻術』を解除する。
「これはっ…」「「「「・・・…・」」」」「「‥・・~・」」
「これでは、とても契約など…」「「「「「・・・ー・:・」」」」」
そうして文武官の代わりに、謁見の間に商人たちが現れた。
使者を装った、刺客だけを欺く『幻術の壁』が消え。立ち上がることすらできない”シーフ”の醜態が、豪商たちの眼前にさらされる。
「ああっ!せっかく哀れな”盗賊ギルド”に、救いの手を差し伸べたのに…
使者に化けて、刺客がやって来るなんて、ボクは悲しいよっ!」
「「「「・・・-・」」」」
そうしてイリスは茶番のセリフを言いつつ、刺客の傍に近寄り。
「くそっ…どうして『仕掛け』が作動しない!」
「まあ、”シーフ”や”盗賊ギルド”に組する魔術師の技量ではねぇ…?」
嘲りのセリフとは裏腹に、イリスは『制約』を解除したうえ、本気で『透視の瞳』を行使していた。
配下・真っ当な民ならば、プライバシーを尊重して、『透視・遠見・盗聴』を禁じる『制約』をかけるが。
”盗賊ギルド”のメンバーに、尊重してやる個人情報などあるはずなく。
商人たちを呼び寄せた、使者を偽っていた、現状ならばなおさらだ。
そのため『細工職人?』が製作したであろう、猛毒散布の『仕掛け』を、イリスは透視しており。術式ではないため『術式干渉』で掌握できない、『仕掛け』を透視によって捕捉し、その作動を『光付与』で完全に封じていた。
「おのれっ…オnoれレレr―-~∼ー;」
謁見の間に敗者の声が響く。
しかしイリスたちの認識では、戦いは継続中であり。強欲な商人たちを呼びつけた、目的を達成してなかった。
「ハイハイ、キミは頑張ったね。
だけど雇い主に裏切られ、惨めに敗北する。同情だけは、してあげるよ」
「なにぃ…それはいったい・・」
「こういう事だよ。
『闇よりい出来て、影を照らすもの
光に憩いをもたらし、強大に成る影よ!
閉じた瞼を照らして、透し 開く瞳に、星と安寧をもたらす
されど瞬く目は、混沌を映し 護りの巨人は、戦塵を浴びて眠らず
アイズ…ドゥーム・・・プリズム! ディザイア…ウィンドウ!!
護法は逆巻き、秩序と悪徳をゆらせ アルゴスゲーム!!』」
謁見の間に、膨大な光の魔力が放出される。
しかし、その『光』は神聖ではなく、熱量も乏しかった。
ネタバレ説明:『アルゴスカフス』について
『百眼巨人の縛錠』の名を冠する、束縛の『術式』です。
作中でイリスも言った通り、様々な『光付与』によって、行動を封じる『術式』であり。
皮膚の触覚を含めた、全身の感覚器に『光付与』を行い。感覚の鋭敏さを阻害したり、完全に封じるのも思いのまま。
関節部に『光付与』をタイミングを狙って行い、大技を失敗させたり。柔軟性を失わせてから、投げたり、間接をへし折ったりします。
ちなみに『経穴を光付与で押す』のは、『透過する光によって、内臓を押す』のも含まれており。
これらが無詠唱でかけられるため。のんきににらみ合いをしたり、平服したり、隠形をしていると。
いつの間にか『アルゴスカフス』に拘束され、詰んでしまいます。
これらを聞くと、チートな『術式』で、達人の技だと誤認されますが。
本来は修練・訓練のために使われる、低レベルな『術式』にすぎず。平均レベルなC.V.の実力があれば、防げる・・・ハズの拘束術式であり。
作中でかけた『アルゴスカフス』は、刺客に恥をかかせるため。
くだらない策を弄する、刺客・その命令者をバカにしている。イリスの意向が、大いに反映されています。
以上、『アルゴスカフス』のネタバレ説明でした。
ネタバレ説明:『アルゴスゲーム』について
『百眼巨人の魔導』という、C.V.イリスが主に使う『魔導能力』です。
『術式』の集合体であり。妹・弟子や配下のため、『術式』を産み出すための『魔宝石』であり。さらに『術式』を併用・連鎖させて、大魔術を発動させ、多大な戦果をあげる。
『魔導』の要素三つを併せ持つ、上位魔導が『アルゴスゲーム』です。
なおイリスは『グローリーゲーム』という、『名声』を『魔力』に変換したり。”闇討ちを美化した誤情報”を、デマだと暴露する。自分の名声を矮小化させるなど、『名声・栄光』をコントロールする魔導能力も十全に使いますが。
イリスの魔導能力は、あくまで『アルゴスゲーム』がメインであり。
『グローリーゲーム』は敵勢力を叩き潰すときに、効率がいいから使っている。デマを流し、功績に執心して、凶行に走る連中を破滅させたい。
その願望が『グローリーゲーム』を産み出しており。
様々なC.V.・人物や資料から学び。
修練を行い、研ぎ澄ませた『アルゴスゲーム』に、『グローリーゲーム』は遠く及びません。
なお次回、少し面倒な儀式を行うため、今回は詠唱を行いましたが。
実戦では『まばたき・眼球運動』による静音詠唱で、『アルゴスゲーム』を発動させます。
詠唱にあった『眼球』『魔鐘』『魔宝石』『欲求』『視野』は、『アルゴスゲーム』の柱となる術式であり。
『ゴールド』は格下の魔術に干渉する『術式』にすぎず、たくさんある術の一つです。
1)アイズ:視覚をメインとした感知能力
2)ドゥーム:『呪術』・『リスク』と『共振』
3)プリズム:可能性・多様性の術式であり。妹分・配下に『術式』を与える
4)ディザイア:よく言えば臨機応変・・・はっきり言えば魔力量でゴリ押しする
5)ウィンドウ:仲間・配下の事情を理解して、配慮する。
同時に敵の覗き見を『逆探知』して反撃を行う。ちなみに妹分たちの情報を盗んだら、絶対に逃さず。手段を選ばない、苛烈な報復を行うとか。
以上、『アルゴスゲーム』のネタバレ説明でした。
・・・・・とまあ、ここまではど素人による、展示物の感想ですけど。
ちょっと『知識』の連結をしてみます。
英雄大戦・アーサー王の伝説において、『聖剣の鞘も大事だ』と、言及されており。日本でも貴族系・宮中に上がる武士は、飾った『鞘』に刀をさしていました。
一方、戦場の武器である弓・槍には、『刀の鞘』に該当する覆いがなく。あっても安物で、時代劇などでは”存在しない物”と、扱われている・・・と、思っていました。
ウソです、”全く考えてすらいません”でした。
英雄大戦のアーチャーみたいに、念じると『矢』が手元に現れる。私にとって、弓・槍の保管方法は『道場・武器庫』の壁に立てかけているもの・・・というイメージであり。
銘のある『弓・槍』すらロクに知らないのに、その『覆い・鞘?』について知ってるはずがありません。
そんな私ですが、美術館で『矢筒』を拝見し。
〔聖剣・刀剣の『鞘』と同じくらいに。『矢筒』についても、考えるべきなのでは?〕と、愚考します。