382.閑話~表の囲い、裏の包囲
幕末、東北・北陸で『奥羽列藩同盟』が結成され、新政府軍と激戦を繰り広げ。その戦いの中で、『会津藩』は多数の犠牲者が出ました。
それは間違いなく悲劇であり、戦死した方たちのご冥福をお祈りいたします。
しかし、だからと言って死因を『武士の誇り』で讃えたり。
『攻めてきた新政府軍が非道を行った』と、決めつけるのは思考停止に等しい。『歴史』に学ばないで生き延びられるほど、世界は平和ではありません。
『会津藩』で死者が多かったとされる理由は三つ。
1)朱子学とやらで、自害した武家一族まで、新政府軍が殺したことになっている。他所の藩で新政府軍がやらかした”暴虐”が、『会津藩』で行ったことになってるなど。『歴史情報』が正確に伝わっていない。
2)『会津藩』の外交能力が低い。
『庄内藩・米沢藩』など、降伏交渉を成し遂げている『藩』はあるし。江戸城は無血開城して、御三家の尾張なども、殿様が助命されたうえで降伏している。
そんな中で『奥羽列藩同盟』を結成したのが、そもそもの間違い。
3)『会津藩』が被害を減らす、努力を怠った。
朱子学など『武士道』の教えで、”自害”を推奨した。『白虎隊』などに自害するよう指導した、オトナが被害を拡大させ。『タカ派を説得・成敗する』など、降伏する準備を藩の首脳陣が整えていない。
幕末は暗殺・攘夷討ちが横行しており。危ないタカ派が闊歩している状態で、新政府軍は危なくて交渉できない。
既に〔奥羽諸藩の攻略に協力する〕と、いう契約を『仙台藩』が破っており。新政府軍としては絶対に、その二の舞になるわけにはいかず。
タカ派を抑えられない。むしろ巣窟で元締めの『会津藩』と、平和な交渉はできないでしょう。
シグルスという街がある。
街道から外れた辺境にあり、周辺の村を取りまとまる。近くにあるのは魔物が棲む、森と深山のみ。それらに国境は隔てられ、戦争こそおきないが、同時に行商人もめったに通らない。
〔”盗賊ギルド”すら近寄らない〕と、言われている最果ての街がシグルスだ。
まあ実際のところ、強欲な”シーフ”が稼ぎ所を見逃すはずないのだが。
結果的にとはいえ、表向き穏健にコトは進み、治安も保たれ。
〔”盗賊ギルド”すら近寄らない〕と、いうことになっている。
『シグルス』イコール田舎街と連想されるぐらい、どうということないだろう。
しかし、その平穏は唐突に破られた。
「やっと…到着した・・」「これで依頼、達成だな!」
「まだだっ…馬車に乗ってない『証明』をするため、しっかり報告しないと」
旅装の冒険者パーティーが、シグルスの街にある冒険者ギルドを訪れる。
『宿屋』を探すのではなく、最初に冒険者ギルドを目指す彼らは、『巡回』と言われる依頼を受けた者たちであり。旅路・地域の最新状況を調べ、報告する任務を請け負っている。
混成都市ウァーテルの成立により、各地の『流通』が活性化し。
今まで裏社会から富を吸い上げていた、”盗賊ギルド”が壊滅状態になり・・・
”堕落した光神殿と、秘かにつながっていた””救いようのないレベルで無能だから、流通を阻害して、経済に寄生していた”と、いう汚名を着せられたあげく。
シーフ数人がかりでも、下級シャドウ一人にかなわない。
組織が一夜で、幹部シャドウに壊滅させられた。
そんな風に事実を、おとなしめにアレンジしたウワサが流され。
[実際には『魔導能力』による、情報操作に踊らされ、仲間割れをしたあげく。
財産を『魔導能力』で封じられ、破産させられ。無能の烙印を押されてから、”山賊”と一緒に討たれた。
”復讐の望みすら無い負け犬たち”と、言われている]
「シーフは大変だな~^-」
そんな風に他人事と考えていた時期が、冒険者ギルドマスターのネロウガにもありました。
〔依頼の仲介しかしない、冒険者ギルドは害悪に等しい〕
〔”無能”な冒険者は、”山賊”の予備軍も同然よ〕
〔”怪物誘引””封印破壊”行った罪をあがなう、覚悟はある?〕
控えめに言っても”盗賊ギルドを血祭りにあげた”、C.V.勢力から恫喝されれば。仲介所の冒険者ギルドに、抗う術などなく。
こうして表向きは【C.V.勢力の一つからの好意】によって、『脚部のケア』が行われ。それに伴う遊興・冒険者の活性化により、冒険者ギルドも収入が増大し。
『依頼料の分割払い』の時点で、混成都市は冒険者ギルドを、経済的に半ば乗っ取っていたものの。新しい企画が成功するごとに、C.V.勢力による冒険者ギルドへの『支配』は強まっていき。
「移動の最中に、”山賊”から襲撃を受けることは、ありませんでした」
「魔物との遭遇は3回だけで、死体は埋めてきました。これが討伐証明の『牙』になります」
「道中の天気は・・・ー:・」
三人組の冒険者パーティーがシグルスの街へ移動した、旅の道中について報告している。
その『情報』は混成都市でまとめられ、また何かの『企画』に利用されるのだろうが。一介のギルドマスターでは、報告書をまとめるのに必死で、『企画』に一枚かむ余裕などない。
もはや冒険者ギルドの掲示板で、『依頼書』の取り合いがされることは、少なくなり。
冒険者は『修行』『街道の巡回』『討伐依頼』などを、割りふられる。そんな依頼の調整・発注が、現在は常態化していた。
もちろん希望するなら、冒険者が『自由?に依頼』を選択しても、かまわないのだが。
それは掲示板の埃に同化しかけた、下水道の掃除など。厄介だったり、実入りの少ない依頼を選択するか。
多方面で実力を認められた、本当に腕利きの冒険者だけが、依頼を選択する資格を与えられ。その上で、限定的に依頼を選択する程度だ。
〔冒険者は自由だ!〕と叫べるのは、最果て辺境にある人材不足のギルドくらいであり。
〔冒険者は自己責任だ!!〕などと、下手に叫ぶと。
〔それは依頼に失敗した時、賠償金を全額払えると、いうことかしら?〕
〔貴方が死ぬのは勝手だけど…怪物を繁殖させたり、血の味を覚えさせたり、封印を破壊して逃走する。そんな自由な冒険は、迷惑どころか災厄でしかないわ〕
〔まあまあ、命がけでガンバッテいる冒険者に、きついことを言ってはいけませんわ。
だけど”賊”の共犯者になったり、堕ちたりしたら。どんないきさつがあろうと、きっちり地獄に落ちてもらう。その時はお仲間を惨殺してから、一番最期に嬲り殺しよ〕
恫喝の二文字がぬるい、それらの宣告がされ。
苦悶の表情で惨殺された骸が積まれた場所で、死体の焼却処分を命じられれば。
〔逆らう冒険者ギルドのスタッフは、『死』あるのみ〕と、いう無言の圧力がかけられている。そう否応なく理解させられる。
もはや冒険者には、発言の自由すらない。
C.V.勢力がもたらす『飴と鞭』に翻弄される、傭兵・・・・・・はっきり言って”チンピラ”に等しい。
〔そんな冒険者のプライドを取り戻す〕
シグルスの街でギルドマスターを務めるネロウガは、決意して覚悟を決めた。
この世界は物騒で、危険が多く、理不尽に満ちている。
いくら情報を集め、修練を重ね、戦う準備を整えても。
「「ギ、ギァ^Ⅰ・`!」」「「「ク、シャsya-―---!!」」」
「助けっ‥」「ひぃ^―-」「うわぁぁぁッー‐ー―」
他所の地域から襲来してくる、『はぐれモンスター』との遭遇は死に直結し。
ましてそれが『飛行する竜の群れ』ともなれば、逃走すら不可能だ。
「何で、こんなところに…」「口を動かす前に、脚を動かせっ!!」
「嫌だぁ;こんなところで死にたくNぁ~/ー/+」
せっかく冒険者ギルドが変わって、色々と始めたのに。
依頼の数が増えて、報酬が増額され、身体ケアで活力を取り戻せた。
「そんな矢先に、こんな目に遭うなんて・・・」
「こうなったら一か八かだ!!」
「焦るなっ…チャンスを待てば…」
「「「「「シャ、sh^⁺・ギュアァァァーー!」」」」」
飛竜・ワイバーンにレッサードラゴン。聞きかじった『モンスター』どものうち、どれだかわからない影が、逃げ惑う冒険者たちを取り囲み。
『/・/-~:・//---―・~/+hyu』
「「「「「キ!g?;~^!!∼:*ィ~ィィ―」」」」」
回転しながら、次々と地上へ墜落していく。
魔物の表情・言葉などわからないはずなのに、捕食者たちの目が、絶望の色に染まっているとわかる。
その状況に、冒険者たちは安堵をいだくよりも、さらなる理不尽が存在することを確信し。
『重鎌!×5』
『アラクネガイスト‥ガイストリムーヴ!・・・アラクネリムーヴ!!』
「「「「「/…*ッ」」」」」
地表にたたきつけられる前に、『魔物』たちの首が切り裂かれる。とどめを刺された巨体が、不自然な静寂とともに、地面によこたわり。
物言わぬ肉塊から大量の血が噴出する中で、無数の多脚モンスターが、それらに群がっていく。
「「「・・・-・」」」
「無事ですか?冒険者の皆さん」
「「「・-*・~;ッ⁉」」」
状況の変化についていけない冒険者たちに、絶対者が『お声』を発せられる。
その瞬間に、この場で生殺与奪権を握っているのが誰か、グリーズたちは認識させられ。
〔生き延びるため、何でもお命じください〕と、いう意思を冒険者たちは瞬時に固めた。
そんなグリーズたちに、穏やかな声がかけられ。
「貴方たちが『巡回』をしてくださった。モンスターの活動状況を知らせてくれたおかげで、『翼トカゲ』のはぐれに、対応できました。
シャドウ一族の侍女頭アヤメ・姫沙薙として礼を言います」
「「「・・-~;-ッ―-」」」
返答をしたいのに、渇いた舌は震えるばかり。言の葉を発せない現状に、心は〔情けない〕と叫ぶも、全身は硬直したままであり。
「貴方たち‥アヤメ様に無礼ではありませんかぁ?」
「黙りなさい霧葉。
街道・村落の安全に貢献する、働き手には一定の敬意をもつべきよ」
「失礼いたしました…」
〔俺たちは冒険者なんですけど〕〔これがウワサのシャドウ…〕
〔命を助けてくれたお礼に、有り金を全部ささげます…〕
お二人のやり取りを妨げないよう、グリーズたちは胸中で思考の堂々巡りを行い。
「せっかく『肉と素材』を得られたのだし。
街まで運ぶ人員を呼んでくるから、冒険者の皆さんには番を頼めますか?
もちろん正式な依頼として、ギルドには話をつけます」
「「「喜んでゴ依頼を、お受けます!」」」
アヤメ様が話しかけるまで、沈黙する樹木と化した。
人間に限らず、生き物は『精神的苦痛』を感じる。生存環境が悪化したり、死の恐怖を感じる時など。
加えて急激な変化に対し、『ストレス』を感じる者は少なくない。
現在、冒険者ギルドでは、様々な改革が強行され。
1)『依頼料の分割払い』によって、依頼する際の財政負担を軽減する。
1`)財政負担を軽減することで、問題が悪化する前の『早期』に依頼を出させる。加えて『大金を運んで、”賊”に襲われる』というリスクをなくす。
2)冒険者の身体ケアを行う。特に『脚』のケアを行い、『移動時』の疲労を軽減する。
2`)身体ケアを行う人員を雇用する。孤児・新米冒険者たちにケアの技術を教えつつ、『仕事をした実績』を作る。
3)冒険者ギルド訓練場で『興行』を行なう。『魔術・中型モンスター』との戦闘経験を積ませ。『初見で動揺して負ける』ことを、少しでも減らす。
3`)命がけで戦っても、狭いギルドの受付前で〔おお、すげえw‼〕で終わってしまう。そんな冒険者たちの名誉欲を満たすため、『興行』の中で称える。
2`)の雇用・技術教育を広げる。
これら改革・事業計画は、冒険者たちの様々な問題を、解決する力があるのだろうが。
冒険者ギルドの職員にとっては〔急激に知らない職務が激増した⁉〕と、驚愕したあげく。激務によって、ストレスがかかり。
一方の陸戦師団・シャドウ一族も含めた、C.V.勢力の本音を言うと。
〔手抜きな依頼料の中抜きで、冒険者を使い捨てにするな!〕
〔”死人に口なし”で、冒険者による被害を知らんぷり。事実上、”賊”の共犯者に等しいな〕
これが冒険者がもたらす”災厄”に遭い、それらの対処に奔走してきたC.V.勢力の認識であり。
〔冒険者・ギルド双方に、報いを受けさせたい〕と、いうのが本音だ。
しかしC.V.勢力には『次代の育成』を含め、重要な仕事が山ほどあり。
裁判官・正義の味方どちらでもないため、〔冒険者は利用したほうがいい〕と、いう意見でまとまっている。
これまでは・・・
〔貴男にとって、冒険者は邪魔ではないの?〕
〔そういえば重騎士になめた口をきく愚か者がいたわね…〕
〔罰則が降格だけなんて、冒険者は恵まれすぎ・・冒険者の罪を暴き、然るべき報いを受けさせるべきよ〕
混成都市ウァーテルの発展と共に、多数のC.V.様が来訪する。
それは冒険者にない魅力を持つ、重騎士・男性シャドウたちをめぐって、C.V.様たちが争奪戦を始め。
お目当ての殿方にアピールするため、迷惑冒険者は容赦なく切り捨てられ。
さらに冒険者の被害にあったC.V.様たちも招かれ、来訪することにつながり。
同時に犯罪行為を暴く『魔術能力』を使い、冒険者全体に報復を望む、C.V.様が襲来するということだった。
そんなC.V.様の気持ちも、わからなくもないが。
シャドウ一族としては冒険者の力を利用したい。ロクな教育・訓練も受けていない〔大半の冒険者に、多くを望むのは無理がある〕と、考えており。
「黒霊騎士団のC.V.様が企画する、『興行』に協力させてもらい。対価として、『冒険者の問題』を解決する『場』を提供してもらおう」
「わかった。聖賢の御方様への具申は、オレがやろう」
「シグルスの街へは、俺が向かう」
こうして『闘技場での戦い』は『”不良冒険者”の処刑場』と、なることが半ば決定し。
『依頼料の分割払い』に伴う膨大な激務は、”組織のため盗賊ギルドに協力していた、ギルドマスター”に担ってもらう。
そんな秘かな取り決めが、確定事項となった。
しかし、そんな流れに一石が投じられる。
「お前ら、報酬をたくさん欲しいかぁーーー‐―!!」
「「「おおぉ~ーーーー!」」」「「・・・-⁉:・」」
「(貴族よりも)うまい酒を飲める、宴会を楽しみたいかー^!!^!」
「「「飲みたいぞーー―!!」」」「「おぉォ―ー・!」」
「異性にもてたいかっ?結婚して、一生楽しく暮らすぞぉーーー‐^―!!」
「「「「「「「「「「「ウォォォーー・―-ー!!」」」」」」」」」」
シグルスの街にある冒険者ギルド。
そこで騎士モドキで交渉を担当する、ユングウィルが冒険者・ギルドスタッフたちを扇動する。魂の叫びを集め、聞き耳を立てるC.V.勢力を驚愕させ。
「偉大なシャドウの侍女頭様~^ー
少しばかりお得な話があるんですけど、お時間を頂けないでしょうか?」
「・・・ー・いいでしょう。翼トカゲを引き付けた、冒険者に免じて、少しばかり話をしましょうか」
「光栄でございますー^~」
こうして『模擬戦闘』に、多大な外交の効果が加算されることになった。
”忠臣蔵の赤穂浪士”も、そうですけど。
〔一地方を治める『藩』のルールを肥大化させて、デマを流すな〕と、申し上げたい。
『新政府軍が会津藩で、非道を行った』と、主張するなら。
被害者の数だけでなく、『死因』の数字も要求します。
そして『徳川幕府は260年以上』にわたって、平和をもたらしましたが。
同時に『藩の取り潰し』『財政負担になる普請の命令』を行ってきた。藩主を切腹・蟄居させたり、大勢の武士を路頭に迷わせてきた。
浪人の家族を、『苦界』に身売りさせてきました。
それら犠牲者の数字を考えれば。
徳川家に連なる、『会津藩』松平家が『奥羽列藩同盟』を結成したあげく。
〔被害が大きい〕と、恨み言を述べるのは、いかがなものでしょう?
祖先を尊ぶ『会津藩』が〔都合の悪いことを、棚に上げている〕と、言わざるを得ず。
それでも新政府軍による”悪行”を非難したいなら。
〔信用できる証拠のある、『死因』の正確な数字を出してください〕と、申し上げます。