380.閑話~微風の外交:遠当て
幕末の東北・北越において、新政府軍と奥羽列藩同盟の間で、激しい戦が行われました。
『そして敗北した会津藩は、新政府軍によって厳しく処断された』と、のこと。新政府軍による”暴行・殺戮”が行われたそうですけど。
それは信用できる『資料』に記されている、『歴史の真実』なのか?
会津びいきな教授の学説ではないのか?・・・という疑問をいだいています。
まあ私は検索で調べる歴史素人なので、この点に関しては疑問をいだくだけに、とどめますけど。
しかし歴史素人でも、はっきり断言できることがあります。
それは『刑罰は判例によって決まる』と、いうこと。
『会津藩』が苦難の道を歩むのは悲劇ですけど。
〔その原因を新政府軍だけのせいだ〕と、断じるのは狭量で虫が良すぎる。
『江戸時代の歴史を(都合よく)忘れている』と、愚考します。
『模擬戦闘』が始まる少し前、アヤメ視点です。
『外交』とは厄介なものです。霧・水の中を進み、迷宮を探索するのと同様に、様々な困難があり。
同時にそれを成し遂げた際に、得る物も大きい。
道・水源や財宝に匹敵する、『平穏・取引』がもたらす利益は莫大です。
「それじゃあシャドウ一族は黒霊騎士団と『外交』を行ってね~」
「・・・・・-…」
だからと言って・・・戦争屋のシャドウ一族に対し〔魔王軍と『外交』を行え〕と、命じられても困るのですけど。
そう侍女頭のアヤメは思ったが。イリス様によって、事態は容赦なく進められていく。
「現在、シャドウ一族が得ている『収入』は、ボクの『資産』から出ている。
それはボクが健在な時はいいけれど、姿を隠した時は失われる不確かなモノだよ(だからシャドウ独自の財源・人脈を持ってね)」
「・・・-・」
理屈では、イリス様の仰る通りですけど。
それは〔明日、天が堕ちる〕と、いう心配をしているに等しい。
そんなことを案じるなら。〔”愚王”の国を滅ぼして、死蔵されている財貨を奪う『算段』をつけたほうがマシよ〕と、アヤメは思う。
「・・・何か不穏なことを考えていないかな?」
「めっそうもございません」
「混成都市ができても、いまだに”盗賊ギルド”を滅ぼせない。戦うどころか”傀儡になっていた権力者”なぞ、君たちの敵ではないだろうけどね~
だからと言って、それをやったら”暴力の魔界”になってしまう。
何より戦闘重視のC.V.が、これ幸いと介入してくるよ」
「・・・既に介入していませんか?」
魔王ハーミュルズ様に仕える騎士団長にして、側室C.V.シャルミナ・ヴァイ・ローウェル様。
黒霊騎士C.V.を率いるシャルミナ様は、『暗黒球?』などで”狂信者”どもの拠点を『消滅』させている。
正直、穢れに満ちた”瘴地”を、滅却してくれるのは助かるが。
手慰みの『魔術』が、あの威力だと。本命の接近戦?凶戦士の実力が、どれほどなのか予想もつかない。
「心配しなくても、あんなの介入のうちに入らないよ。
むしろ『中の下術式』だけで”賊”を圧倒して、大剣を抜いてすらいない。魔王軍の武闘派からすれば〔傭兵仕事を受けるから、保養地を貸してください〕と、いう遠慮深い『外交』をしている最中かな」
「・・・・・なるほど。
そういうC.V.様独自の『外交ルール』は、ぜひとも事前にお教えください」
「え‐ー―、でも、これはあくまで魔王ハーミュルズさんの外交ルールだし。
北欧の”陰謀神”に連なるC.V.系譜だと・・即座に迎撃しないと、ロクでもない決闘ルールを押し付けられるよ?」
「・・・・―:…・」
外交とは厄介なものだ。霧・水の中を進み、迷宮の中を探索するのと同様に、様々な困難があり。
同時にそれを成し遂げた際に、得る物も大きいのだけど。
難所・迷宮とは異なり、アヤメたちの動きを待ってなどくれない。
仮にも『環境』として成立する静態だけではなく、『外交』の相手は動き変化して、仕掛けてくる。
アヤメは、そのことを思い知り。厄介な外交に取り掛かった。
「戦いは『情報戦』だ・・・そして戦術は常に変化するっ!」
「「「「「「「「「「・・・:・」」」」」」」」」」
裏路地を進んだ、スラム街の奥に建物がたたずみ。
その地下室の隠し部屋で、昏い陰謀が企てられていく。
「狂猛な”シャドウ一族”に従来の暗闘を仕掛けても、通用しない。
ならば今は、相手にしなければいいのだ!
奴らの行動範囲外で、奴らと関わりの薄いモノを標的にする。
欺き、惑わせ、時間をかけて甘い汁を吸い上げる。
そのために『流言』を流シs^//***・.ー―」
「「「「「ッ⁉*//:~ーー」」」」」
「「「「「ナnMぉ‘://*-**」」」」」
そして”陰謀”は唐突に終焉を迎える。
『毒』への耐性を持つ者たちも集う部屋で、全員が呼吸を阻害され。
「「「「「「「「「「「Hyゥーb!―p‘qーp`ー*~」」」」」」」」」」」」
『壺の中、籠の内、小箱の隅
領域は小さいけれど 泡がはじけ、旋風にゆれ、塵が眠る
ならば魔響の鈴も鳴り響き 無恥と安息を等しく奪え
魔響鳴鐘!』
『空気』を求める者たちに、容赦のない『魔響鳴鐘』の追い打ちがかけられる。
地下の地面ごしに、隠し部屋の空気に『呪縛』がかけられ。アヤメの『魔力を帯びた酸素』は、”賊”どもの『肺』に吸収されず。
その後、”賊”たちが最低限、生きられる『酸素』は与えられるも。それは『脳』へ充分な『酸素』がいきわたらない、『呼吸法』の強制であり。
「「「「「「「「「「・p・*…;」」」」」」」」」」」
「ひヒィ*;…!ー―」
「あら、まだまだ元気そうね。もう少し(酸欠の)『呼吸法』をガンバッテみる?」
「やっ、ヤメR◎ぉーー?!ー」
「心配しなくても、一人で苦しませる”拷問”などしないわよ?」
「・ッ!?」
「私も一緒に高山の地獄に落ちてあげる。
旋律に共鳴し、魔響で心をかき乱す。”禁忌の唄”を楽しみましょう…」
「@*ー*/;”:‥~p%‘:`&ぉ~」
その後、ニンゲンが出していけない、絶叫が吐き出され。身体は生きたまま、断末魔が響き続けるも。
密談が交わされる隠し部屋で、空気の振動が止められれば、人間の耳に『声』が届くことは一切なく。
”陰謀”という”生き血をすすり、犯罪を無作為に広げ、他者の破滅を快楽にする”と、いう企ては徹底的に潰されることになった。
「この度は、大変ありがとうございました」
「お役に立てて嬉しく思います」
『権力を守る』ことはは綺麗ごとですまない。
だから戦略上、有効だと判断すれば”盗賊ギルド”は無関係の者を捨て駒にして、”流言”を流すだろうし。
侍女頭のアヤメは『”流言”を流す現場を抑える』と、いう作戦が行われる以前に、”盗賊ギルド”を『酸欠の地獄』に堕とす。
”貴族が平民の無礼をとがめて、処断する”ような、『警告』すらなく”盗賊ギルド”の尊厳を破壊し。
そして、その戦果をもって、黒霊騎士団というC.V.勢力と『同盟』を結ぼうとしている。”ヒトの生き血をすする賊”どもと、変わらぬ凶行にアヤメは手を染めた。
「私たち武闘派のC.V.では、こういうことに疎くって・・・アヤメ殿のご助力に感謝いたします」
「シャドウ一族として、当然のことを成したにすぎません」
もっとも今後、何十回と同じ『状況』になったとしても、アヤメは何度でも”賊”を地獄に落とすだろう。
何故なら黒霊騎士団の副団長とアヤメによる『同盟の成否』は、まっとうな人々の生死に直結しており。”賊”一人が生きるために、複数の善人を貪る、『数字』の問題に加え。
黒霊騎士団は人間の領域へ、『次代を育むため』に来訪しており。
それを妨げる”流言・中傷”は、彼女たちに有効なダメージを与え。
同時に『妊婦・赤子』を、集団ヒステリーによって害する、”流言は凶悪行為”と黒霊騎士たちは認識しており。
〔決闘・訓練で奇襲をかけるくらいなら、受けてもいいのだけど…(”流言”をばらまく”賊”は、手段を選ばず粉砕してよい。むしろ容赦なく破砕すべき)〕と、いう思考文化を持っている。
そのため”賊”が賢しげに策謀をめぐらすと、凶暴化した黒霊騎士は街ごと滅ぼす、攻撃を仕掛けかねない。
そもそも武闘派の黒霊騎士は、苦手な諜報戦に付き合わないし。万が一にも黒霊騎士団が敗北しそうになれば、『別の魔王軍団』が援軍に来て、消耗したシャドウ一族を滅ぼすだろう。
〔そんなリスクを、絶対に負うわけにはいかない。黒霊騎士団との同盟は、必ず成立させてみせる〕
そんなアヤメの内心を知ってか知らずか、ナイキス様は親し気に話しかけてこられる。
「賢き魔王ハーミュルズ様に、領土的な野心は一切ございません。
そして【依頼】に協力することで、黒霊騎士C.V.が多重婚・育児を行う土地を、貸してくださるなら。
黒霊騎士団は喜んで、その大剣をふるいましょう」
「その言葉を聞けば、我が主もお喜びになるでしょう」
なごやかな会話で、友好的な空気が流れる。
しかしアヤメとしては、この状況を手放しで喜ぶわけにはいかない。
黒霊騎士団の詳細な『外交ルール』は不明だとはいえ。
騎士団長はシャルミナ様であり、副団長ではない。
そして魔王軍の武闘派が重視するのは、机上の言の葉ではなく。
戦友にふさわしい『戦闘力』だ。”鼠賊”を狩れる程度な、『小型魔物』の爪ではないし。穏健な一族の者へも敬意を求めるなら、隠れた”賊”を始末した『戦果』では全然、足りないでしょう。
そう判断したアヤメは、口先の外交辞令を打ち切り。
「そう言えば、黒霊騎士団長様はシグルスの街で『興行』をなさるとか。
私にも、その『花型』を教えてくださいませんか?」
「・・・アヤメ殿?仰ってる事の意味が、お分かりですか?」
「無論です。”鼠賊”を叩き潰して満足する、二流で終わりたくありません」
「そこまで言われるなら・:・●・」
ナイキス様の合図で、黒霊騎士の一人が進み出る。『全身鎧』をまといながら、流れるような動作で大剣をかまえる。その黒霊騎士は8級C.V.でも、実力者なのだろうけど。
『・/-ー・…・重ね鎌っ!』
「軽いっ・・無Dぁd!*」
一撃目の『遠当て』で、緊張を強いて身体を硬直させ。二段攻撃で、硬直した身体のバランスを崩す。
〔『風術』で柔の技を⁉〕と、いう驚愕の視線と共に『黒鎧』が宙を舞い。
「それまでっ・・貴女と私で『模擬戦闘』を行いましょう」
ナイキス様の判定が出され、アヤメの『外交』は進められていった。
ネタバレ説明:『遠当て』について
アヤメにとって『フック、アッパー』の感覚で放つ、ほぼ通常攻撃です。
端的にいうと『風属性の衝撃波』を、タイミングよく標的に放ち。
同時に『風術』で感知・干渉できる、『五感』のどれかに衝撃を与える。
音・香り・皮膚感覚と『体内電流』に、『風術』の猫騙し?を仕掛ける中~遠距離攻撃です。
『遠当て』を受けた者を、大きく動揺させたり。
『感覚』の精度を乱したり、体幹を崩す。『魔力』のタメを消去する、いわば遠距離攻撃の『合気』が、『遠当て』の正体です。
格下相手だと、鎧通し・浸透頚のように、敵の防御を透過することも可能であり。
これは敵の未熟な『気配感知』に、欲しい情報を与え。その隙をついて、『惑わしの風』を送り込むという術理であり。
正確な『鎧通し』とは異なるような・・?
ちなみにアヤメは『遠当て』で一撃必殺を狙うことはなく。
肩・肘・膝・足首につま先から『遠当て』を放ち。戦闘動作中のフェイントに放ったり、敵の動作を崩す。そうして二撃目で確実に仕留める、『はめ殺し』を行う傾向があります。
「”暴行亜人”の顔の感覚器官に干渉する。
血涙を流させるのは、通常攻撃じゃねぇーーー!」
「それなりに成長株の黒霊騎士を瞬殺するのは・・・・…」
「ヤメテッ・・手合わせで近接から『遠当て』するのやめT//*ーー;~」
以上、侍女頭の『遠当て』ネタバレ説明でした。
『江戸時代の歴史』:それは独川幕府の権力によって、”目障りな”諸藩が取り潰されてきた。参勤交代をはじめ、治水工事を命じられた諸藩が”財政の窮乏”に苦しめられてきた。
”略奪放火”の戦国時代より、はるかにマシとはいえ。
徳川幕府への怨恨が、250年にわたって蓄積されてきた時代でもあります。
(昔の時代劇で『徳川幕府こそが正義!』という物語では、絶対に認めないでしょうけど)
そして江戸幕府が諸大名に行ってきた、転封・取り潰しと。明治政府が全国に等しく行った『廃藩置県』を比較する。
あるいは徳川家康が、石田三成・豊臣秀頼に行った。
”罪人あつかいして、引き回しのうえに斬首”
”領地を大きく削る圧力をかけてから、攻め滅ぼす”
これら蛮行と比べれば、明治政府が徳川家・会津藩に行った処分は、紳士的とすら言える。むしろ当時の世界史における戦争と比べ〔かなり温情がある方だ〕と、愚考します。