379.閑話~模擬戦闘の明暗
先日『十一人の賊軍』の映画を観てきました。
その感想は、人によって様々であり。
〔勝てば官軍〕という言葉を否定する。
組織の都合に翻弄される『十一人(の賊軍)』が、意地を見せて反逆する。
そういう〔一寸の虫にも五分の魂〕という、熱い時代劇をイメージしたり。激しい戦場のアクションに魅せられた人が大半でしょう。
しかし私が『十一人の賊軍』を観た感想は、それらの感動とは真逆のものになります。
それは『奮闘によって、殺された官軍が凶暴になっていった』と、いうもの。
『江戸城を無血開城して、日本の未来に希望を抱いている。そんな官軍が、戦場の兵士になっていった』と、いうものです。
『外交』:それは面倒なものです。
面従腹背を行い。左手で親愛の握手をしつつ、右手で”毒ナイフ”をかまえる。
他勢力を野蛮あつかいしながら、”悪辣な陰謀”を仕掛ける方が、賢人を気取る。
”弱兵”の分際で、そういう愚かな高圧外交を行う連中に対し。
魔王軍・黒霊騎士団に所属するC.V.の副団長は、心の底からうんざりしてきた。
〔弱兵の奇襲は、醜く不様でしかないわね〕
無論、そういう”賊”を、ナイキスたちは容赦なく殲滅してきたが。
自分を偽り、弱兵を踏み潰し、虚しい勝利を叫ぶ。
はっきり言って、『魂・技量』のどちらも穢れていく、苦行でしかない。
〔だけどっ…〕
『アルラウネプリズン!:!』
『双竜爪閃・・-・!』
『・・+・・…/:/ー』
そんなナイキスにとって、今夜の『模擬戦闘』は有意義なものだった。
地水火風・光闇の『属性魔力』を、同時に複合で操る『天属性』のC.V.ナイキス。その標準能力を活かして、蓄えた知識を放出する。
まるで書物の虫干し、倉庫の大掃除をしているような、清々しい気分であり。
死蔵を免れた『知識』を視た者たちは、ぜひとも有効に活用してほしい。
〔さあ、次よっ!〕
「‥‥`・」
「「「「「・・-・*:」」」」」
『テンペストブレスッ‼!』
本来なら闘技場どころか、街を破壊する『攻撃魔術』を放つ。
しかしナイキスの旦那様は、平静を保ち。
炎熱C.V.も彼を守るため、侍っている。
賢人・生兵法の拾得者は、それを”腰抜け”などと嘲るが。天属性C.V.からすれば、適切な距離感であり。
〔ナイキスを見守って、心情を想像してくれる〕と、いうユングウィルの方針を確認できたのが嬉しい。『魔力・戦闘力』において、只人どころか並みのC.V.とも、隔絶しているナイキスたちにとって。
〔まず(平静を装って)見ること〕と、いうのが最重要であり。味覚・趣味や『夜の営み』などは、ハーレムの手練手管によって、いくらでも解決手段がある。
何なら炎熱C.V.たちと分担してもいいし、『非常手段の魔術』もあるのだ。
ナイキスは『結婚願望』を満たせることに喜び。
「フゥ…どうやら外交用の装飾・儀礼では、貴女にとって役不足のようですね」
「お構いなく。さすがは黒霊騎士様の『高魔力』と、感動しております」
先ほどからほぼ『双竜爪閃』だけで、知識の披露をさばいている。
『魔術知識』の経験を積めるよう、全て異なる初見の『攻撃魔術』を放つナイキスに対し。
〔『初見殺し』など通じない〕と、ばかりに『風術』の冴えを魅せている。
アヤメ殿には、相応の『魔術能力』を披露する、価値があるとナイキスは判断した。それは黒霊騎士団の副団長として、『格』を伴うものでなければならず。
『天の災禍にして、雷氷の彩りよ
恵みの蛇体であり、勇士を渡す橋の色よ
地表の影、洞穴の常闇、夜の安寧に灯をもたらし
虚ろを破りし、脈動のつながりを、ともに唄え
デュラハンサークル!⁺!』
「・・・;・ー^」
「舎弟殿には、まだ早いでしょうから…
ここからは本当に手加減して参ります」
「ご配慮くださり、ありがとうございます」
こうして本番の『模擬戦闘』が始まった。
『槍の穂先』で火・水の流れを切り。『槍の柄』で風・衝撃波をいなし、受け止める。
大地が揺れれば、棒高跳びで中空に逃れ。『未知の術』に対しては、囮の『呪矢』を探り身代わりとする。
『旋風閃弓・・-!』
『長弓+双槍+高跳びの棒』を合わせた長柄で、風の足場を利用して戦闘機動をとる。そんな『身体強化』を全力で発動する。
そうやって四凶刃のタクマは、ナイキス様が放つ『天属性の魔術』を、必死にさばいていた。
単に自分の安全を確保する・・冒険者の訓練場を守るだけなら、必死になる必要性などないのだが。
『鎧影コール!』 『旋矢っ!』
『ガルルぅーーー!!』 『あぶねぇ//ー・』
『バルムンクダーク・・・/』 『妖鐘弓閃』
黒霊騎士たちを守るため・・・『狂戦士』の気配を持つ、黒霊騎士たちは『格上の攻撃魔術をさばく』などという任務は、初心者のようであり。
タクマは『腕は立つけど、攻撃魔術をさばくのは初心者』と、いうC.V.の皆さんをフォローするため、駆けまわっていた。
『魔術の標的』をC.V.さんから、割り込ませた『呪矢』へと変え。
『魔術』に捕捉された者を、『旋風閃弓』の急加速でかかえて、離脱させる。
そして『必殺の魔剣』を放つ、隙だらけになった者を、『魔力を浪費する大技』でかばい続け。
「「ありがとう」」「「「感謝するっ!」」」「貴男の『妙技』を称えます」
「ハハッhア…それ程でもぉ―‐;-」
黒霊騎士C.V.の集団に認められ、感謝された。その事実にタクマは嬉しくなり。
「ですが、もう私たちの意地は、充分に主張できました」
「このうえは増長した咎人として、ナイキス様の『魔術』に焼かれるのみ…」
「生き残れたら、銘酒を酌み交わしましょう!!」
黒霊騎士団の軍規に従い・・・タクマの知らないルールによって、無謀な突撃を仕掛ける、C.V.さんたちを呆然と見送る。
〔今までの苦労はっ?どういうルール?意地とか咎人って?〕
タクマの頭で複数の疑問が、何度も反響し続け。
「下がれっ…このバカっ!」
細身の腕に、引き寄せられた。
ネタバレ説明:『デュラハンサークル』について
『地水火風光闇』の6属性全てを、高レベルで操る。
攻防・感知能力に加え。複数属性の『魔術』を併用・融合させることで、魔力量・術の強制力などが桁違いに強い。
『天属性』のナイキスが使う『身体強化』であり。柔軟性・回復力なども含め、あらゆる面で隙がありません。
とはいえ、この状態でもナイキスは6割ぐらいの実力しか出しておらず。黒霊騎士団の幹部を選抜したり、実践訓練を行うための『魔術能力』にすぎません。
ちなみに『複合の攻撃魔術』を放っていた時は、4~5割くらいです。
本気を出すときは、黒霊騎士団長の狂化・暴走を取り押さえる、『特攻能力』を持っており。
ナイキスがイメージする『デュラハン』の能力が発揮される。
身体のどこが『核』かわからず。死神・死霊騎士なのか妖精霊騎士なのか、不明な『デュラハン』の『身体強化』が敵を・・・・・もっぱら団長を、取り押さえにかかります。
罪人は情報弱者ですし。兵士は上官の命令に従うもの。
だから『罪人・サムライ』たちが、必死に戦うのは当然なのですが。
平和裏にことを進める○○の官軍部隊を襲い。さらに罪人たちに戦いを強いるため、サムライが○○を殺害して。そして奇襲によって、官軍・・・薩長の兵士たちを次々と討ち取っていく。
賊軍・サムライたちが生き延びるため、必死なのはわかりますが。
薩長の兵士たちは『日本人』であり。少し前に『江戸城を無血開城』させた実績を持っている。降伏させた藩の都市に、今まで”略奪放火”など(ほぼ)していないはずですが。
最初は平和に降伏させようとしていた官軍が、賊軍の奇襲につぐ奇襲で、無惨に殺されていき。
〔これも戦場のならい〕〔たとえ殺されても、聖人のように罪を許すべき〕〔奇襲で討たれた戦友のことなど忘れ、怨恨などいだかぬように〕
こんなきれいごとを、薩長の兵士たちが受け入れられるはずもなく。
〔賊軍たちの奮戦によって、薩長の兵士たちが凶暴になった。奇襲に対抗するため、容赦がなくなったのでは?〕と、いうのが『十一人の賊軍』を観た私の感想です。
罪人・田舎武士で構成された決死隊の誰もが、『俯瞰できる神の視点』などありませんし。情報を知らず、外交のイロハも学んでないでしょうけど。
〔『聖人』・”悪鬼”のどちらでもなく、”殺戮の前科”もない、官軍は人間の日本人であり。
あれだけ殺しておいて、罪人・決死隊たちの未来が、都合よく保証されるわけないだろう〕と、いうのが『十一人の賊軍』を観た、私の感想です。
ちなみに賊軍の過ちは『官軍に奇襲を仕掛けた』こと以外にも、ちらほら有り。
どのみち政府軍から指名手配されると、愚考します。