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378.閑話~黒霊メイドの誘い:コロッサストーク:コロッサスゲーム

  365.から始まった『ギリシャ神話のスフィンクス』について。だいぶ長引いてしまったので、最後は短くまとめましょう。


 結論を言うと『スフィンクス』と『イオカステー(オイディプスの母親)』は、『女王神ヘラ』を通じてつながっていた。

 『スフィンクス』と『イオカステー』が同一の存在とは言いません。


 しかし両者とも『権力・結婚の女神ヘラ』の命令を受けていたと、愚考します。

 シグルスの街を領有するザリウス。

 彼らは闘技場に招待され、貴賓きひん席でもてなされ。


 その後、空恐ろしい魔術戦闘・・・・C.V.勢力の申告では『模擬戦闘』という、『大魔術の乱舞・・』が行われたあげく。

 貴賓席がその魔術による一撃(アシッドアクエリアス)で破壊され、避難している。


 領主シグルスを接待する催しは、大失敗に終わったと言えるだろう。



 〔接待に呼んでおきながら、最低限のもてなしもできんのか!〕

 〔所詮は魔女・・・『魔術』の端女はしためにすぎん…〕

 〔この失態は必ず償ってもらうぞ!!〕



 にもかかわらず、貴賓席から逃げ出した者たちは、誰一人として胸中にある不満を述べない。


 不満・陰口を『貴族の話術』と考え、新任領主のザリウスから甘い汁を吸おうとする。欺いて、財を奪い、失態を犯せばそこに付け込む。


 きれいな服を着ている厚顔無恥な、親族?の貴族(強盗)どもは一言の不満も述べることなく。黙ってC.V.からの避難指示に従っていた。


 それはザリウスにとって、不気味な状況であり。



 『無力な私をお許しください、ザリウス様』


 「っ⁉」 


 ザリウスの頭に『言葉』が響き、怯えている場合ではないと判断する。両耳を通さない『声』は『未知の魔術』だが、安心感を同時にもたらし。ザリウスは領主貴族になってから、ほぼ初めて他人の言葉に対し、まともに耳をかたむける。


 そんなザリウスの頭に、穏やかな女性の声が響き。


 『魔術の会話で失礼いたします。

  改めまして、7級闇属性C.V.のメリダ・フロートス。黒霊騎士団において団長(シャルミナ様)付きメイドを務めております』


 『魔術の会話』と同時に、ザリウスの頭へ様々な情報が流れ込んでくる。

 武術・魔術を併用するC.V.種族について、魔王に仕える黒霊騎士団に関して。


 そして親族たちが沈黙して、この『魔術の会話』を成り立たせる。

 『コロッサストーク』という『魔術能力』についても、不思議に理解していく。


 

 『コロッサストーク(巨人像の談話)』:至近で内緒話をするために、『精神感応』を行う『魔術能力』。

 内緒話を行うために必要な、『基本情報』を送付して会話を行う。

 さらに代表者(ザリウス様)と会話をスムーズに行うため、従僕(親族)たちに『催眠ヒュノプス』をかけている。



 〔おいおい『催眠ヒュノプス』とは、穏やかではないな~^:^〕


 〔『ヒュノプス』と言っても、あくまで『心理誘導』の範疇はんちゅうに過ぎません。

  副団長ナイキス様の『攻撃魔術』から安全に逃れることを条件にして、黙って従い避難するように・・・と、いう程度の命令しか行っていませんわ〕


 〔ふーん、それでいったいオレと、どんな話をしたいんだ?〕


 浮遊する脚無し『リビングメイル』に覆われて運ばれている、消耗したメリダのイメージが、ザリウスの心に流れ込んでくる。その怪奇な体験に警戒しつつも、先ほど『巨人像の魔術(コロッサスポリス)』で、ザリウスたちを身を挺して守ったのも事実であり。


 ザリウスは半信半疑で、メリダの言葉を待つ。


 〔ザリウス様が『真の貴族』になれるよう協力します。

  その代わり、私を愛妾にしていただきたい。お側において、夜の世話をさせていただきたいのです〕


 〔・・・・-・…・〕


 何かの『隠語』か、誤訳か。解釈違いではないのか?

 『コロッサストーク』による情報提供を、ザリウスは待ったものの。


 〔無論、ザリウス様の恋愛観は尊重いたします。

  まず私と一夜を共にしていただき、気に入らなければ…〕


 「そんな”ヒトデナシ”じゃねぇー‐ー・―ー」


 ”ポイッと捨ててかまいません”と、いう『魔術の会話』をザリウスは言の刃で断ち切り。


 ザリウスは政略結婚(・・)の交渉に取り掛かった。





 貴族に限らず、権力者たちにとって。

 『政略結婚の交渉に取り掛かる』と、いうのは『政略結婚が確定した』と、いう意味であり。


 当然、つきあいかたも、それ相応になる。

 よって『攻撃魔術』が乱舞する、”物騒な闘技場”から避難した後に、ザリウスはメリダ殿に声掛けを行い。


 「今日は、もう遅い。よければ屋敷に(泊まる)部屋を用意しますが」と、問いかけを行う必要があった。無論、マナーの範囲内であり、婚前交渉のお誘いではないのだが。


 「ありがとうございます。

  随伴の者(黒霊騎士)たちが泊まる部屋も、用意していただいてよろしいでしょうか?」と、質問口調で要求されれば、断るという選択肢はない。


 そうしてザリウスは屋敷に戻り、親族・側近を帰らせ。


 〔今日は疲れた。もう一休みしよう〕と、ザリウスが思ったところ。


 「お疲れのところ、申し訳ありません。

  ですが監視の目がないところで、重要事項(C.V.の事情)を伝えたいのです」


 「・・・・・:・」


 無論、ザリウスがメリダ殿からの、お願いを断れるはずなく。

 『鎧影(怪奇)』の運搬から降りた彼女は、深い闇色の瞳でザリウスを見つめ。



 〔まずは軽く事情説明をいたしましょう〕と、いう一声から始まり。



 この世界の結婚には、それに伴う利益が求められ。その一つに『血統の強化』というのがある。


 品種改良と同様に、優れた才能の持ち主二人を結婚させることで、次世代に優良な血統を継承していく。

 『遺伝』による才能の強化を目指す、『結婚(交配)』は戦争種族C.V.にとって、極めて重要事項であり。


 『優れた力を持つ勇者とハーレムを作ればいい』と、いうほど単純ではありません(・・)



 「戦()種族には〔自分より強い者と結婚する〕と、いう習わしを持つ者が少なくありませんけれど。

  下手にそればかり(・・・)を続けると『生殖能力』が下がってしまう。寿命が長く頑強な『竜・エレファント』と同様に、子供を求める『衝動』が少なくなってしまい。

 最悪、魔力至上の”ヒトデナシ”・”暴走魔”が産まれかねず。


  今代・・の黒霊騎士C.V.はそれを望みません」

 

 「・・・それでザリウスやユングウィルに求婚していると?」


 「おおむね、そのように考えていただいて、よろしいかと」


 『種馬』とも微妙に違う、『衝動(性欲)』を求めて、ザリウスの愛妾になる。

 そう告げているに等しい侍女C.V.(メリダ)の言葉は、ザリウスにとって嬉しいものではなかった。普通の男ならば屈辱にふるえ、激怒しているだろう。


 しかし領主貴族であっても、爵位を名乗らないザリウスにとって、興味深い情報の一つでしかない。少なくともメリダたちにとっては死活問題であり、侮辱の意図はないのだろう。

 そして人間とC.V.勢力の『戦力比』を考えれば、ザリウスが怒ることはデメリットが多すぎる。


 「・・・それで、貴女メリダが愛妾になったら、オレにどんな利益があるんだ?」


 「そうですね…まずは誠実には、誠意をもって応えましょう」


 「・・・・:・」


 昔のザリウスなら〔嘘をつかないで、正直に生きましょう〕と、いう道徳(偽善)のオハナシと解釈するが。

 『コロッサストーク』による情報伝達を受けている、領主貴族ザリウスは顔を引きつらせる。



 〔複数の勢力が、黒霊騎士団へ刺客を送りこんでおりますが。

  それを交渉材料(弱み)として、ザリウス様をゆすったり。治安を守るべき領主の責任を、追及して圧力をかけたりしません。


  ザリウス様に制裁を行うのは、あくまで貴男が不誠実な(裏切った)ときだけ。

  刺客を送り込んだ者たちには、別個に報復を行います〕

  


 〔C.V.勢力の報復を受けなくてよかった!〕などと到底、ザリウスは喜ぶ気になれない。

 親族どもの口先嫌がらせではなく、刺客が闊歩する陰謀の世界に放り込まれ。

 ザリウスは暗たんな気持ちになったものだが。


 〔どのみち親族?どもの”貴族ルール(理屈)”では、俺を使い潰して一族(自分たち)を守るのが正義となっている。

  だったら黒霊メイドに賭けて、”男娼”になったほうがマシだ!〕


 そういう捨て鉢な意思を、ザリウスは伝えようとして。



 『・*// -*ー~^=…ーーーー』


 「ッ!*:!」


 「あら…どうやら始まったようですね」


 〔ナニがっ!!?〕


 『模擬戦闘』が続いているのに放置した。

 闘技場から放たれた『波動』に、ザリウスの心身は凍り付いた。 













 ネタバレ説明:『コロッサストーク(巨人像の談話)』について


 『コロッサスゲーム(巨人像の魔導)』に属する、『精神干渉の魔術能力』です。


 その効果は会談・会議を円滑に進めるため、『精神感応テレパス』のサービスを行い。

 『テレパスサービス』を対価として、交渉を成立させる『催眠』をかける。


 段階を踏んで『心理誘導』を行う、面倒くさい『魔術能力』です。

 そのうえ源の魔導『コロッサスゲーム』自体も、発動条件に手間コストがかかり。


 〔もう魔力量のゴリ押しで、『催眠』をかけてもよいのでは?〕と、いう声も少なくない『魔術能力』ですが。

 今回のように、それなりに親しくなる人間組織(結婚相手)に対し、話を通す時などに使用される。


 ぶっちゃけ黒霊騎士団という武闘派(物騒)C.V.軍団が、婚姻外交?などのデリケートな交渉をまとめる。その際、交渉が決裂・破綻して、開戦になら(虐殺が行われ)ないよう貢献する。


 不誠実チートではあっても平和をもたらす、わりと『穏健な催眠』の魔術能力です。



 ちなみに今回の闘技場では・・・・・


1)『コロッサスゲーム(基礎となる魔導)』を闘技場で発動する。


2)ナイキス様の『攻撃魔術』を見せて、ザリウス殿の親族を脅かす。


3)『コロッサスポリス』で攻撃魔術を防ぎつつ。その威力を至近でザリウス殿たちへ、五感に刻み込む。


4)ナイキス様の『攻撃魔術』に怯える観客・親族を、安全に避難させる。そうやって命を保証する代わり、余計な口出しをしないよう『暗示』をかける。


5)4)の『暗示』に加えて、ザリウス殿と密談をする『コロッサストーク』のテレパスを発する。

 『愛妾にしても怖くありません。メリットが多いです』と、いう情報・イメージをメリダの『命をすり減らして』ザリウスに送る。


 

 大まかに、こんな流れでメリダは『コロッサストーク』を発動していました。


 たかだか交渉を行う『テレパス』を発するのに、『命をすり減らす』など非常識ですが。


 〔勝利を得る『魔剣』をふるうため、『命数』を消費するのも戦士の役目。

  ならば失敗すれば、多くの血が流れる。

  そんな『交渉』を成立させるために、消耗の激しい『テレパス』を使うのは当然のことでしょう〕


 〔〔当然・・ではないですわ(わよ)!)〕〕


 〔でしたら狂化して、暴威をふるうのも控えてくださいませ〕

 

 〔〔はい…〕〕


 『交渉』の苦手な黒霊騎士団が、無駄な血を流さなくてすむよう。

 〔チートを使ってでも、早く(・・)和平を成立させたい〕と、いうメリダの願望が編み出した『魔術能力コロッサストーク』にすぎません。


 以上、『コロッサストーク』のネタバレ説明でした。






 ネタバレ説明:『コロッサスゲーム』について


 黒霊騎士団に所属する、団長シャルミナ付きのメイドC.V.メリダが使う。

 『巨人像の魔導』が『コロッサスゲーム』です。


 発動条件として、『魔導能力コロッサスゲーム』を使う拠点・都市や範囲を設定するのに加え。

 速さを捨てて、準備に時間がかかるという『デメリット』を受け入れ。


 7級C.V.で器用とは言えない。メリダでも『多めの魔力量』を操り、それなりに多彩な『術式』を行使できる。

 『巨人像を建設するように、ゆっくりでも多彩な術理を操ろう』と、いうイメージで編み出された『魔導能力』であり。


 どこかの『動く巨人像』のような、攻撃向きの『魔導能力』ではありませんし。『クリーチャー』を操ったりもしない。

 拠点防衛・建設に向いているのが『コロッサスゲーム』です。



 ただし『狂戦士』の文化が息づく、黒霊騎士団の側近C.V.が使う『魔導能力』だけあって。


 命数を吸い取り、破滅をもたらす『魔剣』のように。効率的で有用な『自爆』で、戦局をひっくり返す『怖い術式』を秘めており。

 なめた口をきく、愚かな黒霊騎士は一人もいません。


 〔『魔力・戦闘力』によって団長(シャルミナ様)を押しとどめるのは、副団長ナイキスの役目。

  『おっかない術』で団長を、おいさめするのはメイド長(メリダ)の担当〕と、いう不文律は黒霊騎士団にとって重要な共通認識です。

 そう考える根拠は一つ。『都市テーベ(テーバイ)』の平穏です。


 『スフィンクス』に主要な道をふさがれ、『イオカステー』が暮らしていた。『オイディプス』が王になってから不作・疫病に苦しめられた。

 それがギリシャ神話の『都市テーベ』なのですが。


 ギリシャ神話を読むと。不作・疫病よりも、『戦争』のほうが悲惨な出来事に感じる。

 『イオカステー』が自害して、『オイディプス』が自らを罰した。

 それなのに全く平和になっておらず。むしろ後継者争いで、おびただしい血が流れている。


 『スフィンクスが道を封鎖して、王が旅に出た』あたりこそ、平和であり。

 『オイディプスによる親殺しの穢れ』をはらった後こそ、悲惨な情勢になった。


 このことや『スフィンクス』『イオカステー』の不自然さから考えると。

 『女王神ヘラ』の加護・制約によって、『都市テーベ』の平和は保たれており。


 もっと言うなら『親殺しの穢れは、犯人を追放することで、祓われる』と、いう神託がくだされたのですが。

 『追放』と神託されたのに、『オイディプス』が先に目をえぐり。娘たちと共に『放浪』したので、『神託』が達成されず。

 結局『都市テーバイ』の穢れは祓われず、不作・疫病より恐ろしい戦争になってしまい。


 そもそも本当に恐ろしい『不作・疫病』ならば。『イオカステー』が二男二女を設けることなど、できないでしょうし。


 以上のことから、『都市テーベ』の平穏は『女王神ヘラ』によって守られ。

 その制約をことごとく破っていったから、『都市テーベは血生臭い神話の舞台になった』と、愚考します。

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