377.閑話~模擬戦闘の表裏:重鎌:コロッサスポリス
申し訳ありません。更新、遅れました。
現代ファンタジーには『モンスター娘』と言って、あらゆる『女怪』を可愛くするジャンルがありますけど。
西欧中世の『美しい女モンスター』には、現代より制限がかけられており。
『ニンフ』『メリジューヌ』など、人間の男と道ならぬ恋をした者もいれば。『スキュラ』『メドゥーサ』など、まったく可能性のない女怪物もいます。
そんな中で、『スフィンクス』は『オイディプス』と距離の近しい、『絵画』が中世に描かれており。
現代人の私が考えるより、ギリシャの『スフィンクス』は人間寄りだった。
男性で岩山な、『エジプトのスフィンクス』と混同されて。(謎かけの神話をパクられた)
ギリシャ神話の『スフィンクス』は〔風評被害を受けたと言っていい〕と、愚考します。
魔王軍の黒霊騎士団を、とりまとめている副団長のナイキス様。
シャドウ一族の侍女頭を務め、要となる術式『旋風閃』を教えるアヤメ様。
自他共に実力者と認められている。そんなお二人が条件付きで『模擬戦闘』を行うことには、『外交的』に様々な意味があるとのこと。
もっとも戦闘特化の女シャドウであり、自他共に『殺し屋』と認識されている。
物騒な世界で生きる桐恵にとって、人死にの出ない『模擬戦闘』は場違いな世界であり。
疑似モンスターを訓練場に放ち、冒険者どもに怪物との戦闘経験を積ませる。
そんな出向を命じられたとはいえ。
桐恵にとって、『模擬戦闘』の余波を受け止める。『結界』代わりの円陣要員は、専門外な任務なのだが。
「『双竜爪閃』・・・-『重鎌!』×4」
「やるっ・・・ならば『クラウドシェード』」
「見えないッ!*?」「落ち着け…雷光Gぁgア;ーーー*」
「こnのー//+;*/./oーーー*」
アヤメ様の『双竜爪閃』が、闘技場に渦巻く『風』に干渉する。
それで発生した『ゆらぎ』に、『重鎌』の黒い風が食い込むことで、『範囲魔術』にほころびを作り。
その間隙をアヤメ様が駆け。
「「「Kyャ*/:・…ーーー」」」
「…『マンティスサイズ!!』」
わずかに変化した『大魔術』の一薙で黒霊騎士たちの一組が倒れる。その穴を埋めるべく、桐恵は『竜角鬼の大鎌』をふるい続けた。
正直言って、C.V.騎士たちの安否など、桐恵は知ったことではないが。
「・・・^:^」
「・・・-・」
ナイキス様の興味深そうな視線、風術師範の冷たい表情が、桐恵の怠慢を封じこめる。
〔任務を手抜きした〕と、お二人に判断されれば。未知なる『攻撃魔術』が乱舞する、舞台に呼ばれかねない。
そう考えて桐恵は、『模擬戦闘』の結界壁代わりを務め。倒れたC.V.騎士を、『竜角鬼』に運ばせる。普段はありえない、模範的な兵を演じる
そんな黒霊騎士たちは、降格・懲罰になるほどの失態を犯していない。だが増長して傲慢になり、早晩マズいことをやらかす不穏分子がおり。
そういう小娘たちの自惚れた心を折り、再訓練を行う契機にする。
〔貴女たちの実力では、軍用の『攻撃魔術』に耐えられない〕
〔そもそも(副長二人が模擬戦闘を行った)『余波』にすら耐えられないようでは、お話にならない〕
〔実戦では、これ以上?の理不尽が横行するのだから。その程度の実力で無駄に争い、戦端を開くようなことはするな!〕
こんな風に敵味方、両方の兵士を戒められる。
〔二大勢力の『連合』で内輪もめをすれば、『模擬戦闘』が『実戦』になるぞ!〕と、強硬派を脅かす『攻撃魔術』が乱舞する。
その舞台として『模擬戦闘』は極めて有用なのだが。
『…ドラゴンホーン!・・ツインホーン‥-・ツイングレイヴ!!』
『竜角鬼』を造る『術式』をアレンジして、桐恵は双剣ならぬ『双鎌』を造る。そうして広範囲の『魔力の余波』をいなし、受けて、切り裂き。
〔完全なバケモノね…〕
『アシッドアクエリアス・・・』
直接、『攻撃魔術』を受けていない。『余波』をさばいているだけで、桐恵の『鎌』がきしむ嫌な音をたてる。その劣化した『鎌』を投げ捨てた先で、再び『大魔術』が構築され。
『フェイス・・スカル…:・ブレイン・・~・ガイストヘルム!!』
〔この女っ・・〕
『竜角鬼』の詠唱リズムを奪ったような、『呪文』が唱えられる。『巨人サイズの兜』が具現化して、地表の『双竜爪閃』を全て吹き飛ばし。
『重鎌弓!!』
侍女頭が迎撃に放った『重鎌弓』に、何故か桐恵の胸がざわついた。
〔闘技場の催しに、招待いたします〕
そんな書状に呼ばれ、冒険者ギルドの訓練場を訪れたのは、何時のころだったろうか?
本当に美味い酒を出され、趣味の良い豪奢なイスに座り。
男爵にすぎない若輩領主のザリウスを、洗練されたスタッフがもてなす。それはザリウスが初めて体験する、自尊心も満足させる宴であり。
野蛮な闘技場での『興行』を認めてもらう、『接待』であることを忘れる楽園だと誤認した。
『ファイアディザスター!』
「その程度・・・甘いっ!!」
そしてザリウスの楽園は破壊された。
「な、なっ…!;?」「!!ー:ッ?」「「「hー―…ーーーw」」」
側近、街の有力者に、獅子身中の虫。
ザリウスと同様に招待され『宴』を楽しんでいた。様々な身分の者たちが、狂乱の魔境へと突き落とされる。
攻撃魔術の『知識』しか知らない者たちにとって、『ファイアーボール』一発だけでも、大きく動揺する現象だろうが。
『目の前の火炎魔術』は、そんな『小粒の魔術』ではなく。地面が赤熱の濁流と化し、『死』を確信させる熱気が渦巻く。
興行・殺試合どころではない。
人を威圧して、心を折る意図を帯びた。『魔術』という”暴虐”が、ザリウスたちの眼前で開放され。
『トルネードシンフォニー!!』
「「「「「・・・;…:・・」」」」」
認識が大甘なことを、理解させられた。
術者⁇までも巻き込む、『不協和音を奏でる竜巻』が夜空に伸び。闘技場どころか街まで破壊しかねない、『大魔術』という恐怖にザリウスたちは凍り付く。
〔さすがにこの程度でダメージを期待する・:…/〕
〔I・・e・m-・:・・・・-・〕
「ッ⁉」
ザリウスは『読唇術』を停止して、意思の力で『聴覚』をふさぐ。
空恐ろしい”会話”が飛び交う、『怪物の巣』に関わるよりも。自分も含めた要人たちの安全を確保すべき。
領主貴族の経験が命ずるままに、ザリウスは速やかに撤退を決断し。
「皆様、大変申し訳ございませんでした」
「「「「「・:…;ーーーッ」」」」」
出現した『闇色の髪』に、全員が怖気を感じる。
いつの間にか、もてなし役の給仕たちは姿を消し。
フードで顔を隠した『妖術師』二人とメイド一人が、ザリウスたちを囲むように立ち。
「おまえは・・あの時の使者かっ…」
「おひさしぶりでございます、領主様。
できれば話の続きをしたかったのですが…まずは皆様の安全を確保します。
ノイル…ノアム‼」
「「お任せください、メリダ様」」
フードをおろし、銀髪と素顔をさらしたC.V.二人が『呪文』を唱える。
初対面の魔女が『未知の魔術』を使うことに〔警戒しなければ〕と、ザリウスの理性が訴えてくるが。
『hi―-/…ー-kーー・‐』
「・…^ー・ー・・-・」
想像したこともない『大魔術』が放たれ、それを影の斬撃が迎え撃つ。
人外の表現すらぬるい。闘技場の二人こそが、ザリウスたちを危険にさらす『脅威』なのは、もはや明白であり。
「『ガイストシャドー』を緊急で発動‼」
『双影は並び、門柱に・・・
『門の柱は、扉を支え 富が行き交い、栄枯はめぐる
城壁の起点は、終点を兼ね 守備の要は、侵略の魔手を誘う
されど、この場、この時、この者たちを守るため
都市の備え、巨人の影は 籠手を構えて、未知に抗う
コロッサスポリス!⁺!:!』
「「「「「・・-/-/;・・」」」」」「「「「「ッ*;…ー」」」」」
二体の鎧魔物をすね当てにして、闇の巨人像が出現する。
その右手はザリウスたちを守り、左手は『攻撃魔術』の狂乱を圧しとどめ。
『アシッドアクエリアス・・・』
『『『ー―‘;*:・;ーーーー…ー』』』
『巨人像』(の術者たち)が悲痛な声をあげて、もだえ苦しむ。
〔もっと、ガンバレ〕などとは、誰も言えない。
文字通り身を削り、ザリウスたちを守護した『闇色の巨人像』は、左半身を無惨に溶解され。
「もう‥・Ðァ`・ⅿ」「ノイルっ⁉」
「二人とも下がれ・・あとは私がっ‼*/.Aア『アダマス!!!』」
『フェ・・・Sゥ・-:ブレI…+・・-・ガイストヘルム!!』
『重鎌弓!!』
霧か煙なのか、わからないモノがメイド服から、大量に噴き出す。
焦げ臭いそれが周囲を覆う中で、複数の靴音が接近してきて。
「おい、大丈夫かっ⁉」
「お静かに、領主様…安全な場所に、ご案内します」
ザリウスは有無を言わさず、移動を強制された。
ネタバレ説明:『重鎌 その1』について
名称の『重鎌』からして、敵を欺き駆け引きを行うことを狙っている。
あえて正式名称を定めるなら『重ね鎌鼬』と、言える『魔術能力』です。
その効果は初撃の風刃・カマイタチに続く、重ねて放たれる『風刃』であり。
『初撃の風刃で体勢の崩れた相手に、威力のある追撃の風刃を放つ』と、いう運用を行い。三体一組な妖怪『カマイタチ』を真似た、使い方もできますが。
それらの説明は完全に”詐欺”であり。そもそもC.V.ナイキスが放つ『天属性の魔術』を、まっとうな『風刃』でさばくなど不可能です。
『重鎌』の正体。
それは初撃の『風刃』によって、『狙い・標的』を定め。その『目標』を任意の場所・タイミングで、二撃目の『風刃』により切り裂く。
トラップであり、カウンター攻撃であり、『合気』にもなり得る『風刃』です。
間断なく使えば『妖怪カマイタチ』のごとく。初撃で体勢のくずれた相手に対し、本命の二撃目・強力な『風刃』で追撃できますが。
主な使い方は、初撃で『目印』をつけた相手が油断している時に、不意打ちの『風刃』で切り裂く。
初撃の『風刃』をさばき防いだ、獲物が油断しているタイミングで、二撃目の『風刃』による奇襲を仕掛ける。駆け引きというより、悪意をおびた『風刃』を放つ、呪力のこもった『魔術能力』です。
『風刃』の長所である『速さ』に制限をかけることで、いくつか『特殊能力』を付加しており。
『旋矢』『双竜爪』のように、多角から攻撃を仕掛けたり。『魔力』に干渉して、『魔術』の構築を妨害したり。
『敵が転倒するのを条件に、遅延で風刃を放つ』と、いうように。様々なアレンジを行い、駆け引きを行う『風刃』を放てます。
〔悪意しか、感じねw~〕と、いうのが某弓兵の感想ですけど。
予定では『倒れた相手に、とどめを刺す風刃』という説明で、黒霊騎士団と術式の交換を行うはずでしたが。それは黒霊騎士団の副団長を、なめすぎというものであり。
単に『風刃』の威力を増し、『魔力の重さがある風刃』などと誤認させることも可能ですけど。
正面から放つ『風刃』では狙いにくい、急所を『重鎌』の不意打ちで切り裂いたり。
ナイキスがふるった『複合・広範囲魔術』の交わる、反応地点に『初撃の風刃』を仕掛け。『魔術』を分解するという、絶技をアヤメは行使します。
止まった物体を破壊する『重鎌』なら、並みの術者でも使えますが。実戦で使うとなると感知能力・風刃の制御など、様々な技法が必要になり。
他者の『魔術』、それも格上な天属性の『魔術』に干渉となると、難易度は跳ね上がってしまいます。
なお本来の術理は、弓兵シャドウが編み出し。初撃の矢を『目印』にして、二撃目に『風刃』を任意のタイミングでたたきつける『術式』だったのですが。
いつの間にか風術師範が改良して、『風術の魔導』に取り込んでしまい。編み出したタクマは、全く使わなくなっています。
以上、シャドウ一族が使う『重鎌』のネタバレ説明でした。
ネタバレ説明:『コロッサスポリス』について
『巨像の都市』『巨人像の衛士』という、意味を持つ。この世界ではかなり珍しい『防御魔術』の一つです。
準『魔竜鬼』と言うべき、『魔力の巨人像』を具現化する。戦況・『攻撃魔術』や”理不尽”に合わせて、『魔力の巨人像』に防御の構えを取らせる、『魔導能力』に近い術です。
従来の『盾・障壁』や半円状の『結界』などを、瞬時に破ってしまう。
削り、えぐり、貫いて透過したあげく、防御術に『負荷』をかけて破壊する。
そんな上位C.V.⁇の攻撃を防ぐため、開発されたのが『コロッサスポリス』だったのですが。
〔神獣・上位竜を倒すため、『シールド破壊』は標準装備でないと!〕
〔その神獣とやらは、『牙』を折られて泣いてる、被害者のことですか?〕
残念ながら『コロッサスポリス』の防御陣では、凶悪C.V.の攻撃を防ぐことはできず。
戦略・『模擬戦闘』や実践訓練など、本来の用途から離れた目的に使用されています。
固体・固定化された『防御魔術』と違い。『魔力の巨人像』の巨体が、緩慢ながら動くことで、数種類の『攻撃魔術』に対応する。
『魔力の巨人像』が削られ、消耗することを前提に、時間制限アリで『攻撃用の魔術』に対抗する。現状の『コロッサスポリス』は、そういう運用をされています。
ちなみに大人げないナイキスの『アシッドアクエリアス』に、あっさり破壊されましたが。
『ファイアーボール』なら無傷、『ファイアーストーム』は制限時間内なら無傷という魔力抵抗を、『コロッサスポリス』は持ち。
炎熱C.V.たちが放つ『インフェルノボール』を防ぐには、駆け引きがいる。
『バーストフレア』だと4,5発が限界というかんじであり。
相性のよい散弾の『バルカンゾーン』には、かなり耐えられます。
正直、侍女頭のアヤメたちレベルには、通用しない『魔術能力』であり。
『闘技場の貴賓席』『時間制限アリ』『半日前から詠唱を行う』など、様々な『制約』で『コロッサスポリス』を、メリダたちは増幅していたのですが。
やっぱり”理不尽”な実力には、通用しなかったです。
そもそも〔謎かけに答えられ、スフィンクスは自殺した〕と、いう話が不自然です。
古今東西、『謎かけに答えた者は、その知恵を称えられ。何らかの贈り物をされる』と、いうのが定番のストーリーであり。
何らかの『呪術縛り』で、スフィンクスが自害するのは、ともかく。
褒めたたえること無く。宝物も、新たな『知恵』を与えることも無く、神魔獣の骸を残すことすらない。
何より『ギリシャのスフィンクス』は、立派な『翼』が生えており。
もし本当に谷底に転落死したなら、『翼』に対する冒とくに等しい。
『食を絶つ。自責の念でショック死する。岩に頭をぶつける』など、スフィンクスが自害するなら、いくらでも他の手段があるわけで。
『翼』を冒涜することになり、骸も残ってない。『謎かけ』をできる知恵ある存在に、ふさわしからぬ、谷底に転落して自害する。
そろそろ『ギリシャ神話の女スフィンクス』は、偽装死を疑ってもいいと、愚考します。