371.閑話~弓兵シャドウの凶刃:妖鐘閃弓
ギリシャ神話の『スフィンクス』が出した、謎かけに答え。事実上のスフィンクス退治を行った『オイディプス』は都市テーバイの王に就いたものの。
知らぬこととはいえ、実の父親を殺し、母親と交わる『禁忌』を犯した。
そのためオイディプスは『自裁』して、破滅していくわけですが。
〔ちょっと待て〕と、申し上げたい。
何故なら都市テーバイはオイディプスが、禁忌を犯す前から問題だらけであり。
『オイディプスが王になって、都市テーバイは飢饉や疫病に見舞われた。
その理由は前王が殺された穢れがあるから』と、のことですけど。
この前王ラーイオスが色々とやらかした時点で、テーバイの穢れはたまっていた。
『穢れの原因をオイディプスだけのせいにするな!』と、思うのです。
聖賢の御方様に仕えるシャドウ一族。その役職に『四凶刃』というのがある。
他所の組織なら『四天王・四騎士・四傑』など、栄えある武人のトップなのだろうが。
シャドウ一族の『凶刃』には、いくつか『義務』が課されており。
1)勇者のように、強大な敵を倒す刺客となれ。
2)次代のC.V.を育むため、(一夜妻ならぬ)一夜夫となれ。
(3:男性シャドウの模範となり。シャドウ一族をC.V.様の”魔手”から守るため、死力をつくすように)
こういう理不尽かつ、どう考えても不可能な命を受けており。
〔下級シャドウに潜り込んでいた時は、気楽だったな~〕と、タクマは心の底から思いつつ。
「…よっ`と」
『ッ**…』
『矢』を放ち、おそらく偵察をしている”賊”へと『死』をもたらす。
『弓矢で狙撃を行い、標的の偵察兵を射殺す』と、いう神技とは異なり。
あらかじめ『目印の術式』で魔術陣を組み。その場所に偵察を担う”賊”が侵入したら、『魔術陣』に届くよう、遠方から矢を放つ。
それによって物見の”賊”に当たり、運よく始末できたらよし。
できなくとも『狙撃』を恐れた”賊”が撤退したり。奴らが狙撃を行う『弓士』を探し、周辺を警戒すれば。
本当に腕の立つ『偵察役』を捕捉し、”盗賊ギルド”の耳目を潰すチャンスが得られる。
そう思ってタクマは山肌から『矢を放って』いたのだが。
「面白い仕掛け・・・遠距離から人力で矢を放つ、『矢射ちの罠』というところですか。
『狙撃』や仕掛け細工だけの『アロートラップ』を、警戒している”賊”にとっては、探すだけでも一苦労ですねぇ」
「ハッハーー、お褒めにあずかり、光栄でございます^・^」
「イヤだわぁ。
ザコの山賊狩りしかしてない。『竜爪獣』使いごときに、四凶刃のタクマ殿が敬語を使う必要など、ございませんよ…」
〔できるかぁーーーー❕〕
正確にはザコ狩りしかしていない…ことに、霧葉さんはなっている。
しかし四凶刃に戻ったタクマは、幹部として機密資料を閲覧する義務があり。
その中には”盗賊ギルド”の実力者⁇ともあろう者が、自ら拠点に仕掛けた『罠』に引っかかり⁈情けなくも自滅したという、不幸な事件が頻繁に発生したあげく。
”盗賊ギルド”は犯人捜しに、拠点の『罠』を点検し、必要なら『罠』を新しく設置して。さらに拠点を売却・再建したり、亡くなった者の後釜をめぐって争い。
聞くだけで莫大な労力・資金に犠牲を払ったとわかる、争いを経て。そこから対策を立て、不動産の大仕事を行ったにもかかわらず。
再び『不幸な事故?』が引き起こされ。”盗賊ギルド”の要人・腕利きたちが、誤作動?した『罠』によって惨殺された。
一連の『不幸な事故』に伴い。
C.V.のイセリナ様が土地・建物の売買(+裏取引)で、莫大な戦果と利益をあげたそうだが。
四凶刃にすぎない、タクマが深入りしていい案件ではなく。
〔より一層の忠節に励み、日々の努力を怠りません〕と、しか言いようがない。
そうしてタクマは『ちょっと遠征』をしてから。四凶刃の責務を果たすべく、シグルスの街へとやって来たのだが。
〔義姉になる者として、タクマ殿の弓術を見せていただけませんか?〕
〔許可する〕
こうしてタクマは”盗賊ギルド”の偵察兵を間引く、『矢』を放ち続けた。
「何だっ…ナンなのだ、あいつはァ―――!!」
〔〔〔〔バケモノだろう・・・*・〕〕〕〕
山賊は獲物を物色するため、偵察を行うが。
人狩りは状況にあわせて、硬軟自在に人買い・誘拐を行う。そのため求める情報の質・量も、必然的に高くなり。偵察役の『実力』に対し、安くない報酬を払い、その維持管理を行ってきたのだが。
「何故っ⁉どうして”囮”に引っかからない・・」
そもそも旅人を装っている偵察役を、どうやって見破っている?普通の旅人を何故、誤射しないのだ?
死体が消えることも多く、死因を調べるのも一苦労という有り様が続き。
〔いっそ”裏切り者”が、情報を流しているほうが、対処のしようもあるんだが〕
メンバーにバラバラの情報を与え、どの情報が洩れているか調べる。次に情報を知っている者を、裏切り者の候補として、調べたり監視をつけたり。
多大な時間・労力に人員を動員したのに〔裏切り者などいない〕と、いう結論が出たあげく。
同時に第2波の”不幸な事故”が発生し。
〔見当違いの”裏切り者”探しを行い。結果を出せなかったバーゾは、損失の穴埋めをしてもらう〕と、いうことになり。
人身売買を担う幹部のバーゾは稼ぐチャンスのある、シグルスの街へと向かっていたのだが。
次々と有用な駒が行方不明になり。遺体を探すことすら苦労したが。
〔『矢』による『狙撃』だと?〕
〔おそらくは…『残留魔力』はありませんし、傷を見る限り・・・〕
〔・・・だったら、狙撃地点を襲撃すればいいだろうが!〕
〔それが、それらしき場所には、全く人がいた痕跡すらなく…〕
有り得ない、許されないことが起こっていた。
盗賊ギルドの中でも、稼ぎ頭でパワーバランスすら操る。人狩りのバーゾともあろう者が、羊のように見えない敵に翻弄されている。
衛兵の”推理ゴッコ”を横目に、昏い所の情報を得て利益をむさぼる。そんな盗賊たちを束ねるギルドが、敵の正体を暴けないなど”屈辱”でしかなく。
「敵の罠を食い破る…『宝物庫』を開けるぞ‼」
「「「「ハ、ハァーー」」」」
金に糸目をつけず人員・魔法の装備をかき集める。その『隠語』を発して、バーゾは雌雄を決すべく、決戦にのぞんだ。
『雲間を駆け 雷鳴をささやき 猛禽よりも、狡猾な矢じりよ
戦場を荒らす、風槌の連打を鳴らし
盾を飛び越え、武具をも射抜く 慈悲なき驟雨の矢弾と化せ
旋矢群衝!!!』
「「「「「・*/:*ーーーー」」」」」「「ぐぅッ*…*:」」
「「「「「「「「「「ギャ*ーーーー*…」」」」」」」」」」
山なり曲射に『矢』を放ち。その降下する『矢』を風術で操り、防壁・障害物をよけて標的を射抜く、『旋矢』という『術式』がある。
その『旋矢』を連射・速射したり。空中の『風術結界』に無数の『矢』を停滞させ、戦況に応じて『旋矢』を放つ。
それが『旋矢群』『旋矢群衝』の術式であり。面制圧ができるわりに、『魔力』の低い便利な術式だ。
「ひるむなァっ・・矢を防ぐ『風のけ/・*…
「「ヒッ*ーー//」」
『旋矢』の威力が高いのか。空から強襲する『旋矢』を想定した、『風術』を展開できないからか?
『風術の防御』を貫きながら、タクマは戦況を見つめ。
そろそろ敵弓兵からも『弓矢』を射かけられる、射程に入ったことを認識し。
同行している霧葉さんに問いかける。
「このぐらいの奴だと、『旋風閃の改良版』で片が付くと思うが・・・」
〔桐恵さんの婚約者にふさわしいか、試験中なことを考えると・・
『不幸な事故』を閲覧したことも考慮すれば、俺も『切り札』を見せたほうがいいんだろうな~〕
「・・・・+…・」
霧葉さん、桐恵さん姉妹には、かわいがっているウェアルという弟がおり。そいつは戦闘以外の面で優秀だが、弓兵部隊に待ち伏せされたことが、あったとか。
そんな記録ことを思い出した、タクマは点数稼ぎをすることにして。
『昏き夕闇の囁きにして 闇夜に誘う羽根たちよ
悪鬼の弓に弦をはり 邪妖の影を侵して、混迷を奏でよ!
侵略の火は灰塵に埋もれ 弓射の誉れは等しく堕ちる
妖鐘閃弓!!』
「なっ…何をォーーー/*+*
「「ひィ:;ee*」」「「「「「*:* //-ー…ーーー 」」」」」
「ナンだkツ*:/…;」「*/ギy-ーーー」
「ほー・・普通の矢ならさばけるし。『魔弓』での遠距離戦も、こなしている。
”盗賊ギルド”にしては、なかなかの腕利きを集めたか?」
「き、キサマa...・・」
そうして血の海に沈んだ連中に、とどめを刺しながら。タクマは見届け人を狩るべく、『弓』で狙撃を行う準備をはじめ。
「どういうことか、説明してもらえませんか?」
家族思いの霧葉さんから、厳しい詰問を受けることになった。
ネタバレ説明:『妖鐘閃弓』について
タクマにとって、二番目に重要な『魔導能力』です。
一夜だけ『ゾンビ』を操る『灰鳴閃弓』に、容量を喰われていたため使えませんでしたが。
”盗賊ギルド”との外交によって、『灰鳴閃弓』が永久に封印されることになり。めでたく本当の『魔導能力』が使えるようになりました。
その『術式』は敵味方を問わず、『矢』を操ること。主に・・・
1)放たれ地に落ちた敵味方の『矢』を、空中に舞い上げ『旋矢』として再利用してしまう。
2)倉庫・矢筒にある『矢』を付与術式で侵蝕し、怖い音を鳴らさせる。
3)タクマが放った『矢』と交叉した、『敵の矢』を侵蝕して落下させる。
主な使用法は、この三つになりますが。
『不可視の矢』『術式の矢』『遠当て』『幻影の矢』などを併用し、かなり多彩な弓術をふるいます。
とはいえタクマの『魔力量』では、『魔導能力』の乱用などできるはずもなく。
現状、『待ち伏せ』を行う『場所』に結界をしき、『魔力』を蓄える。
『静音詠唱』を奇襲の前から長時間、行うなどして。『魔力不足』を補っているのが現状です。
「まあ『弓聖』どころか『弓士』のC.V.様なんて、いるわけないし!
『魔力量』の少ない四凶刃として、お気楽にザコ狩りでもしているさっ!!」
「「「「・・・-・…◎」」」」
「ひっとり~、ふーたり~・・た~くっ三―――」
「・・・こういう時は〔お気楽でけっこうですねw~〕と、言うとこだよな⁉」
「まあ、四凶刃に戻って、しばらくは幹部の役目もこなさないといけないし。
大丈夫だよ^・^『ミミックキューブ』の藤次君も、既に通ったハーレムへ(絶対に)至る道だから!!」
「・・・・-;…」
以上、『妖鍾閃弓』のネタバレ説明でした。
そもそもラーイオスは『子供を作ると殺される』と、いう『神託』を、既に受けていました。
それなのに子供を作ってしまい。その原因は『酔った勢い』との説があります。
もっとも『酔って』いなくとも。今まで跡継ぎを作るという『王の責務』を放棄していた、ケダモノがいたしたこと。
さぞかし”乱暴”だったでしょう。
そしてラーイオスは『スフィンクス』に対抗するため、神託を受けに旅立ち。そこでオイディプスといさかいになり、殺害されるわけですが。
〔そもそも跡継ぎがいない王が、のこのこ都市テーベの外に出るな〕と、強く言いたい。
あるいは〔せめて自分に『もしも』があった時に備え、後継者を決めておけ〕と、言うべきでしょうか。
死ぬのが怖いから、王の責務を放棄する時点で、問題のある王ですけど。それならそれで、『養子』をとるなり、跡継ぎを指名しておけば。
何等かの対策をしていたなら。『スフィンクス』を退治したとはいえ、ぽっと出の『オイディプス』が王になることもないわけで。
これら色々と思慮が足りないラーイオス王が、まともな治世を行っていたのか?私は甚だ疑わしいと考えており。
〔オイディプス王の治世で、都市テーバイが災厄に見舞われた原因って。
ラーイオス王が色々と失政をやらかし、その膿があふれたせいなのでは?〕と、愚考します。