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36.掃討戦 竜域

 時代の変化とともに文化、イメージも変わっていきます。

 昔、風〇いと言えば地、水はともかく火より強力な術者までいたものです。地上を覆う大気の力を使うのだから。カマイタチが人を切り裂くのだから風の魔術はもっと強力だ。

 そんなイメージがあったのですが。最近は質量の問題で風による攻撃は軽い。だから小細工を弄したり雷魔術を使おう。そんな術者が増えてきた気がします。

 『小飛竜』という術式がある。酸素を薄くした空気を使い魔と化して敵に吸い込ませる。それにより高山病と同様に酸素欠乏に陥らせる邪法に近い魔術式だ。

 何しろ高山病を知らない・手当ができない者たちにとって、呪いか毒ガスをばらまかれたに等しい妖術だ。あげくに解毒薬など飲んで体の代謝を変化などさせればさらに症状を悪化させてしまう。再起不能の頭痛、吐き気をもたらす悪辣な病毒攻撃である。


 これを邪法と言わずしてなんと言おう。



 しかし現実はより過酷で状況は盗賊たちが考えるよりはるかに最悪だった。加えてそれを知らせて降伏させる気など扇奈には一切ない。

 聖賢イリス・レーベロアの腹心にして忠実なる影。シャドウの長である扇奈にとって主と一族、両方のために悪徳都市の闇は殲滅しなければならないモンスターでしかなかった。


 「『竜域』発動❕」


 その言葉とともに使い魔の小規模な群れでしかなかった小飛竜が一気に増殖する。そうして増えた飛竜は離合集散してウァーテルの空を彩っていく。海沿いの貿易港にはありえない高山・天空の澄み切った風の蛇竜。それは清浄だがウァーテルの住人を殺戮する狂気をもはらんでいた。



 「何だ!?なにが起こっている!」

 「潮風とは違う匂い。この冷たい風はいったい?」


 とはいえそんな気流の正体を一般人が感知できるはずもない。彼らにとって恐ろしいのは支配者の横暴と闇組織の理不尽だ。よって竜域の発動に不穏なものを感じながらも避難するものはいない。

 空気の成分変化によって色の変わった空を指さし、妖術を観る野次馬に終始する。貴重な逃げる時間を無駄にしてしまった。


 「チィッ!やべぇぞ‼」

 「ここはまずい。建物の中ににっ・・・立て籠もるんだっ!」

 「解毒剤は飲むな!侵入者は風の魔術を使う。だったら屋内か地下通路ならこっちが有利になるはず」


 それに対し今だ権力争いの最前線で生きる闇の住人たちの行動は迅速だった。情報を共有し対策を考える。予想して勘を働かせ逆襲の一手に賭ける。

 うまくいけば見込みのある奴として富とのし上がるチャンスを得られ。失敗しても情報を奪取して周知させれば反攻の一歩となる。間違っても右往左往するチンピラどものようにはならない。

 何故なら自分たちは奪い取り、弱者をこき使う強者なのだから。





 「おおかたこんなことを考えてるんだろうな」

 「カワイイわね。仮にもボス猿を目指す程度の浅知恵はあるといったところかしら」


 そんな闇の住人たちを【下級シャドウ】たちは冷めた目で見ていた。嘲笑するものはいない。何故ならそんな価値はないからだ。

 気配を垂れ流し足音は騒音の域。あげく術中にはまったことに気付いてもいない愚か者たちと比べて優越感にひたる余裕など下級シャドウたちにはない。


 「無駄口をたたくな。そろそろ妹君イセリナ様が率いる騎士団が到着するぞ」

 「承知。では始めますか」


 その言葉に下級シャドウたちは手指をからめ印を結ぶ。さらに組頭は特殊な呼吸法と術式を組んで放った。竜域の発動している空に向けて。


 たちまち薄い空気の蛇竜が鎌首をもたげた。対流する巨大な頭ではない。その首皮が脱皮するようにめくれると収縮し多頭蛇と化してシャドウたちに襲いかかったのだ。


 「ぐっ」「くおっ」

 酸素の薄い高山の悪夢が下級シャドウたちを苛む。だが同時にシャドウたちを修行の仕上げを行った時の心身に立ち返らせた。低地でなまった体に活を入れて。

 身体強化の使用を仮にも認められたあの壁を超えた日々に立ち返らせた。


 『『『『『旋風閃』』』』』


 身体強化の術式を発動。その効果はただでさえ疾風の速さを持つシャドウたちに飛竜の牙と閃光の瞳をもたらすものだった。


   


 そこで風属性を復権をかけて扇奈という風シャドウを考えてみました。これなら遠距離攻撃が他より弱くても大丈夫でしょう。

 地属性にスピード勝負を仕掛け、火属性を暴発させる。そんなことをしなくても風属性はチョット強いとアピールできたでしょうか。

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