閑話~魔王の黒霊騎士~スラム街の騒乱:ガイストの魔竜鬼
〔蛙の子は蛙〕であり。〔トンビが鷹を生む〕と、いうことは滅多にありません。
しかし『蛇系女怪?+双頭犬』の子供は、『ネメアの獅子』『ギリシャ版スフィンクス』であり。『蛇+犬』の血から、スフィンクスも含め『獅子』の怪物が生まれている。
『怪物を産み出す、エキドナのチート』と、言ってしまえば身もふたもないですけど。
検索すると、紀元前~西暦100年?ぐらいには、ヨーロッパにも『ライオン』が棲息していたとのこと。
それを魔獣化した、貴重な一例であり。
ヨーロッパ・ギリシャ文化圏で〔『ライオンを信奉する民族』がいたのかな~〕と、愚考します。
少なくとも『ローマ人の祖先はトロイア人で、軍神マルスの子孫だ』と、いうファンタジー歴史よりは、可能性としてあると思うのですが。
黒霊騎士団に所属するC.Vメレーネが、闘技場に関わるC.V.・桐恵殿の両者と相対する。そのしばらく前。
彼女は同僚C.V.から、不可解な指令を受けていた。
「スラム街を破壊しろですって⁉しかも私の『魔竜鬼』を使って…」
〔シャルミナ団長は、いったい何を考えているの?〕
うっかり出そうになった失言を、メレーネは呑み込む。
黒霊騎士団の中でも参謀・政治に携わる、『嘆きの妖精霊』は常に冷静でなければならない。
それに黒霊騎士団長の人格的に、悲惨なスラムに追い打ちをかけるのは、不本意なはず。
メレーネは平静を取り繕ってから、指令を持ってきたC.V.『黒犬の妖精霊』を問いただした。
「しばらくしたら妖精霊騎士様と侍女頭のシャドウとの間で、取引を行う。
それを探られないよう、『陽動作戦』としてスラム街を破壊する。
どの道、闘技場で街が大きくなれば、スラム街の建物は取り壊すのだ。
今、有効に利用しても、かまわないだろう」
「〔有効に利用〕ですって・・・⁉それはっ…」
不満を述べようとするメレーネに対し、同僚のディアミルは手をかざし、セリフを押しとどめる。
「メレーネっ!悪いが〔罪のないスラム街の住民を・・・〕などと、いう議論を我にさせるなよ。
”人買いシーフ”が牛耳っていたスラム街だ。その”共犯者”も掃討するのは当然だろう。
ついでに闘技場に参加する者に害をなす。闘技者の家族を誘拐する不穏分子にも退場してもらう。
それに正確には貴女が『バンシーロンド』で無力化した、〔”人買い盗賊たち”の関連施設を破壊しろ〕とのご命令だ」
〔ただし、その結果スラム街に多少の被害が出てもかまわない〕
「・・・-・*」
黒犬の妖精霊が伝達した、荒っぽい指令内容をメレーネは胸中で考察する。
スラム街に限らず、建物を破壊するほどの『攻撃魔術』を放てば、確実に人死にが出る。無論、”賊”ではない者に『攻撃魔術』を直撃させるほど、メレーネは未熟でないが。
『魔力』の見えない人間は、『攻撃魔術』の余波だけで死亡する。
怯えて、すくみ、逃げ出さなければ、建物の崩落にまきこまれ。驚き、パニックに陥れば、転倒するだけで頭が割れる。
否、過酷なスラム街では、ケガしただけで弱者とみられ。自称強者・生きるのに必死な者の、糧にされかねない。
”私は直接、手を下していない。自らの行動によって、間接的に人死にが出ても、知ったことではない”と、いうような。”賊・権力者”と同じ世界で生きる気など、メレーネにはなく。
「ご命令は、確かに承った。”人買いシーフ”の建物を破壊すればいいのね」
「・・・ああ、確かに伝えた。それと念のため、我がメレーネの護衛につく!」
「そう…好きにするといいわ」
こうしてメレーネの破壊活動が始まった。
『魔竜鬼』という魔術がある。『精霊竜』と『業魔鬼』を掛け合わせた、魔術用語であり。
他種族からは『魔力の塊でクリーチャーを作る』と、誤認されている。ほぼC.V.専用と言っていい『魔術能力』だ。
確かに『魔竜鬼』を構成・使役するには『多大な魔力』が必要だが。
100%魔力で構成されている『ドゥーガ』ばかりではない。分身・守護霊のイメージだったり、使い魔・装備品・騎獣を想って創られる『ドゥーガ』もおり。
食事など、C.V.術者以外から『魔力供給』を受ける『ドゥーガ』も珍しくない。使役・操作のルールも個性が表れており。
『混沌+秩序が入り混じっている、C.V.のクリーチャー』が、『魔竜鬼』という存在だ。
そして、それはメレーネの使役する『魔竜鬼』も同様であり。
『悲愁の衣 悲嘆の響き 悲哀の仮面をいだく鎧霊よ!
嘆きの妖精霊と共に立ち 享楽と騒乱に、等しく静謐をもたらせ!
されど静謐に、無言はなく 命脈と清浄のせせらぎを唄う
出でよ!! 鎧霊ノルスターヴ❕』
メレーネの呼び出しに応じ。脚部のない、腰部から上だけで構成された『鎧霊』が現れた。足無しで、浮遊する『全身鎧』という外見を持つ、『鎧霊』はメレーネの護衛であり。
『続いて陣を展開・・・魔力柱を構成…魔術の起動準備を三合、開始せよ』
『魔術書』であり、『魔石』であり、『防御術士』を兼ねる。
『魔力供給』まで行う、半浮遊の『リビングメイル』が『鎧霊』だ。
とはいえ”人買いシーフ”の拠点を破壊するには、準備が必要であり。
「では、キサマたち…この地図を見なさい」
「なっ;ぁ⁉」「これ以上、いったいNァ;*;+」
「くそっ、こ:なm;の見な*れバ;bbbィ~`‐ー」
「また『バンシークライム』で泣き続けたくなければ、しっかりとスラムの地図を見つめなさい。
『よく見て、視界に入れて、(アジトへの)道順を考えなさい』」
「「「「・・;*ェー;eee~~Nーーっ!;!」」」」
『使い魔』へと変えた、被術者の『涙』から魔力を通し。そこから『脳→精神』へと干渉する『バンシークライム』と、いう『魔術能力』がある。
実際に『脳』に魔力を流し解析などすれば、”廃人”ができあがる惨事になるが。『泣かせて』心が弱った者を威圧して、自白させるくらいは造作もなく。
「素直に白状すれば、その『落涙』を今日で止めてあげましょう。
だけど逆らうならば・・一生…」
「Hィ・;ーッ~」「ハなす、話シMっ`ーー」
「イヤだぁ~;-koンな泣きg顔はー;--」
メレーネの未熟な尋問でも、情報を得ることは可能であり。
「・^・:だいたいアジトの場所は、わかったけれど。
一応、念のための確認をしましょう。私の質問に答えなさい」
「あァ;アー・・…」「ShァBeっ・・・しゃBルぅ!」
「・・・W・w~エg-ー;ー」「もう好きにしてくれぇ…;+」
そうやってメレーネは”シーフ”たちのアジトを割り出していき・・・・・
『ガイストノッカー!』(ゴーストウィスパー)[バンシースモッグ…]
スラム街の中心で『魔術』の咆哮が響く。
『鎧霊』の両手から衝撃波が放たれ、『亡霊』の群れがささやき。陰鬱な『煙霧』が住民たちの気力を奪っていく。
その元凶はメレーネという、『嘆きの妖精霊』をイメージしているC.V.の仕業であり。フードをまとい『ガイスト』を率いる姿は、まさに『魔女』そのものだった。
〔悪く思わないで・・・この”破壊活動”が終わったら、賠償はいくらでも行う…〕
胸中で謝罪しつつも、『鎧霊の魔竜鬼』に容赦はない。
『亡霊のささやき』による不気味な旋律が、住民たちの危機感をあおり。『嘆きの煙霧』が視覚をふさぎ、不快感を増大させる。
「くそっ…逃げるしかねぇ!」「クソっ…俺たちに、何の恨みがある」
「チクショウ、チクショ;ーoーー!」「逃げるって、どこにだよ・・;」
『H~;H.w-^H;ooー;~*』
一個小隊の騎士・兵士を圧倒する、8級C.V.のメレーネにスラム街のゴロツキたちが、対抗できるはずもなく。
こうしてスラム街の建物は、ゆっくりと破壊されていった。
ネタバレ説明:『鎧霊の魔術能力』について。
創造・操作に『魔力』を消費するけど。創造の術理・操作の仕組みについては、C.V.個々の特徴が表れる『クリーチャー』が『魔竜鬼』です。
ただし一から個人で『創造』するわけではなく。
『式鬼』『ホムンクルス』『合成獣』など、様々なクリーチャーの製作技術も転用されており。
C.V.騎士団に所属する、術者タイプのC.V.が使役する。戦場で術者を守る『盾』・『術式サポート』を兼用する『ドゥーガ』が『鎧霊』です。
その名の通り『浮遊する全身鎧』の外見を持っており。加えて『武装無し・両脚無し・中身無し』で、『亡霊鎧・リビングメイル』のような雰囲気を持ちます。
ただし『魔術は物理法則を無視できない』と、いうこの世界において、『霊魂』をたやすく操るなどC.V.には不可能であり。
創造の術理は『ほぼ100%魔力で動く盾人形・浮遊魔杖』と、いうのが『鎧霊』の正体です。
基本、盾もふくめ武装してないのは、身体の左右バランスを取るため。
両脚がなく浮遊しているのは、腰部から『魔力の補給』を受けるためであり。『ゴースト?』のように、空高く浮遊できない代わり。術者はもちろん、拠点・地脈の『魔力』を吸い上げ、稼働時間を伸ばすことが可能です。
なお『ガイスト』の特徴として、『複数の術式・魔術』を併用できるというのがあり。
兜・四肢や胴体など、複数のパーツで構成されている全身鎧をイメージして。各部鎧のパーツに『術式』を焼き付ける。
それらを『魔竜鬼』の術者が、『起動術式』を発動している。
例えるなら『魔術書の複数ページを同時に開いて』、術者が『魔術』を使っている。全身鎧の内側に『呪符・魔晶石・魔杖』などを仕込み、魔術の『起動』のみ術者が行う。
このように複数の魔術併用をサポートするため、『ガイスト』はとても人気のある『魔竜鬼』ですが。本分は『防御術士』であり。『鎧霊』の胴体部分に『盾・結界』の魔導具を仕込み、術者の盾役をさせる。
全身鎧の外見も相まって、護衛のプレッシャーを敵にかけつつ。『肩・腰・腕』に様々な『術式』を焼き付ける。
『ディフェンスをメインにした魔術砲台』というのが、『ガイスト』の正体であり。機動性はほとんどありません。
このように便利な『ガイスト』ですが、製作コストが莫大にかかり。
まず個人のC.V.では創造できません。そもそも『全身鎧』の外見・防御力をイメージするため、『たくさんコストをかけた』という『儀式+暗示』が必要であり。
使役する『ガイスト』と同じ外見・硬度の『全身鎧』を製作し。『術式』を装甲の内側に焼き付け。
その高額な『マジックメイル』を破壊して、意識に『ガイスト』のイメージを刻み込む。
もし失敗したら一から作り直しという。下手な騎士団を編成するより『膨大なコスト』がかかり。
8級C.V.にすぎず、『鉱物・鎧』と相性がよくない。『嘆きの妖精霊』の術を使う、メレーネは本来、『ガイスト』ユーザーとしての適正が低いのですが。
〔黒犬・黒霊騎士たちに『バンシー』の護衛をさせるのは、不安すぎるわね〕
〔大事な支援術者に傷がついたら。私、少しだけ狂猛になってしまいますわ〕
〔魔王様の護衛に流用できるから、予算を出してください〕
これら各種の説得により黒霊騎士団、及び魔王城の警護に『ガイスト』は使われ。量産した『全身鎧』と『ガイスト』のノウハウを、他のC.V.拠点に販売し。
〔よかったですわ。”赤字”にならなくて〕
〔〔〔〔・・・うゥ…・;*;〕〕〕〕
〔ヨカッタ…良かっタ・*;本当ー‐ーにヨかったよぉ・;+;*・〕
以上、『ガイストの魔術能力』についてのネタバレ説明でした。
『双頭犬』の血をひく、『ネメアの獅子』『ギリシャ版スフィンクス』の二体の怪物?神獣?ですけど。
『双頭』のオルトロスから、『二頭』の怪物が産まれた。この『2』という数は、稀少であり。
『三位一体の神々』・『地獄の番犬』『阿修羅』など。三頭三面を持つ、『神秘の存在』は世界中に多くいますけど。
『双子座』『両面宿儺』など、二頭二面を持つ『神秘の存在』は少ない。非主流派であり、疎まれてすらいると愚考します。
それはまあ『光と闇』『表裏の神秘』は、たくさんいますけど。あれは敵味方によって、見方が違うだけの二面性であり。『信者にとっては正義』『敵対勢力からは邪悪』と、いう話にすぎません。
それに対し『双頭獣』『両面宿儺』は、しっかり『二つの顔・頭』を持つ怪物?神秘であり。『三位一体』タイプのファンタジー文化とは異なる、稀少な文化の名残であり。
『ネメアの獅子』『ギリシャ版スフィンクス』は、『武力』『知恵』を暗喩している。
〔私が想像するより、神秘的な文明の末裔なのかな~〕と、妄想します。
そもそも『テュポーンに愛想をつかしたエキドナが、別の相手を探し。オルトロスと交わった』という神話が不可解であり。
『ケルベロス』『神滅の毒水蛇』『百頭を持つ超魔竜』など、『オルトロス』よりはるかに強力な怪物が、他にいるにもかかわらず。
たいした神話もなく。創作の世界でもマイナーな『オルトロス』を、何故『エキドナ』が選んだのか?神秘・魔術的に『謎』であり。
『文明の興亡』『失われた神話』などが、あったら面白いと愚考します。