閑話~決闘を観る者:フレイムバイザー+α
『双頭犬』という怪物がいます。
ギリシャ神話における地獄の番犬『ケルベロス』の弟であり。
『母親の女怪エキドナと交わった』『巨人に仕え、牛の番をした』『大英雄ヘラクレスに瞬殺された』などの神話がありますが。
『エキドナと交わる近親相姦の神話』があるため、子供には語れない物語であり。兄の『ケルベロス』と比べると、マイナーな『魔獣』と言えるでしょう。
もっともギリシャ神話の神々は、文明を神格化したという面もあり。
『戦女神アテナが、海神ポセイドンと領有権の勝負に勝った』
『メドゥーサの革を、アテナは自らの鎧にした』
『竜の牙からスパルトイを創り。それらを争わせ、生き残った勝者を王?都市長にした』と、いうような感じに。
文化・勢力の興亡を『比喩表現』した、ギリシャ神話は多く。
『オルトロスの近親相姦』も、それらと同様であり。
『母体となる女系文明に、分かれた文明が再統合した』と、いうのを暗喩したギリシャ神話にすぎず。
〔オトナが騒ぐお話ではない〕と、愚考します。
戦争種族であるカオスヴァルキリー。
そんなC.V.であるフレイシアたちにとって、上官C.V.の命令は絶対であり。
他にも様々な上下関係が存在する。
とはいえ伊達に『混沌』の名を冠しておらず。いくつか条件を満たせば、”無能な上官”には地位を退いてもらうし。『勝利』に必要と判断すれば、作戦指示に逆らうことも皆無ではない。
そしてフレイシアたちは脅威に対抗するため、藤次様に『魔術能力』を伝授していただき。その結果、命令違反を犯し”不本意な任務”を課されることになった。
その件に関して、フレイシアは後悔の欠片もないが。
同時に一つの『誓い』を立てており。
それは〔けっして藤次様に迷惑をかけない〕と、いうものであり。その『誓い』は、あらゆる事柄に優先する。少なくともフレイシアたちの名誉・願望などより、はるかに優先すべきことなのだが。
〔何をしている、フレイシア!!フィニー、フルル、フリスにフラミア!!!
それが四凶刃の一員に師事したC.V.の実力なの⁉
本気を出せ…出し惜しみするな!!!〕
訓練場の空気、全てを震わせる一喝が響く。
上官でも師匠ですらない、その人物が発した命令口調に、フィニーたちは顔をしかめるも。
フレイシアはリーダーとして決断を下し。
「全員、『フレイムバイザー』の制限を解除しなさい。ここからは全力でいくわよ」
「「ッ⁉」」「…待ちくたびれたわ!」「・・・よろしいのですか?」
驚愕する二人、くびきから放たれた前衛。そして副リーダーのフラミアたちは、それぞれの反応を返してくる。
それに対し、フレイシアはもっとも雄弁な『返答』をした。
『フレイムバイザー setup●-●イグニッションキューブ!! 』
『火属性攻撃魔術』を単に増幅させる、普段の『フレイムバイザー』とは違う。
炎熱C.V.班にとって、『切り札』を発動させたことにより、メンバーの意思が瞬時に統一され。
『『『『フレイムバイザー setup●-●イグニションキューブ!!』』』』
メンバー全員が『フレイムバイザー』を発動し、『火箱』のイメージを共有する。それは組み合い、重なり、『炎熱箱』と化していき。
『身体強化』『照準補正』『耐火眼甲』など。
複数の『魔術』が『フレイムバイザー』を介して制御され。
「そろそろ再開でいいかしら?」
「ええ、お待たせしました…『バーンスライダー』」
『バーストフレアッ!!』『ブレイズカノン!』『『:〇+・〇:‐-!』』
こうして第三ラウンドの幕が切って落とされた。
『作法』とは面倒なものだ。身分の高い者は、不用意に発言できず。
可愛い娘たちに、声援を送ることもできない。
それなのに侍女頭のアヤメが、彼女たちの名を呼んだのは『声援』を送るため。藤次の上官であるアヤメが〔炎熱C.V.たち、個々の名を呼ぶほど『親しい』〕と、観衆に宣言することにより。
〔フレイシアたちの”不様な敗北”は、『親しい』シャドウ一族及び四凶刃の”不様”につながる〕と伝えた。そういうリスク付きの『声援』を、アヤメは送り。
その意図を正確に理解したフレイシアは、限界を超えた力を発揮する。
『バーンスライダーッ!』『フレイムロッド!!』
「くっ・・やるっ⁉」
『バーンスライダー×2』『『・・-・~:・』』
「調子に乗るな…
『デュラハンヘルム!』[シャドーソード]」
『バーンスライダー!!!』『ブレイズカノン!!』
地面を滑走する灼熱板、『焦熱動床』が複数枚、闘技場の表面を走り回る。それに炎熱C.V.のメンバーたちが乗降し、時には飛び移り。
一撃離脱の戦法で、妖精霊騎士を翻弄しつつ。前衛・後衛が本命の攻撃を行い。
その間隙を、リーダーで防御術士のフラミアが埋める。
その連携はなかなかのものだったが。
あいにくフラミアたちは3人一組ではなく、5人一班であり。
「位置についたよ!」「魔力の充填も完了済です」
「・・ッ!!」
フルルとフリス、メイガスメイド二人が、それぞれナイキスの左右に位置取りする。
包囲・挟撃に至っていない。両翼から包むような、半包囲のポジションを二人はとり。
それを察知したナイキスが、両翼から逃れるようと後退を始めるも。
「まだっ…『デュラハンフェ`-・
『同調開始・・-●』『戦域を設定:●』
・ス』緊急離脱を!!」
『『烈火弾の戦域!!!』』
「ッ!!・`:*!/*/⋆/*ー‐~」
鶴翼の左右に位置した、メイガスメイド二人から『烈火弾』の掃射が始まる。
横殴りの雨のように『小火弾』の連射が、ナイキスの全身にたたきつけられ。
左右から交錯する『バルカン』が、彼女の動作を封じ。さらに装甲を着実に削っていく。
「やった‥!!」
「まだよっ‥-フィニーは背後に回って、フラミアは…」
フレイシアが矢継ぎ早に指示を出す。絶対に勝たなければならなくなった、『決闘』に彼女はチームの全力をつぎ込もうとする。
だが決闘・『騎士C.V.』との交戦も初めてな、炎熱C.V.たちの反応は、刹那の間を刻んでしまい。
決闘・教導戦闘に格上C.V.との戦闘に慣れている。様々な修羅場をくぐり抜けたナイキスにとって、その刹那は充分な勝機だった。
[『(ハーフホイール)』]
「なっ⁉」
『両輪の魔術』を構成する、『片側輪』を三重の起動式によって、強制的に停止させる。それによって発動していた『戻りの車輪』も半壊し、移動していたナイキスのバランスも崩れ。
『『バルカンゾーン・・:`⁉ー』』
交錯する『小火弾』の豪雨が、その身体を吹き飛ばす。鎧が割れ、血しぶきが飛び散り。
顔と急所をかばう妖精霊騎士が、外れた車輪のように転がり続け。
[・+〇^◎デュラハンヘルム・*・]
彼女の片手から『首の入ってない兜』が転がり落ちる。
妖精霊騎士にとって『魔術の杖』に等しい、『ソレ』は大っぴらに周囲の魔力を集め、体積を増していき。
[ガァG`ーィ;*g―‼/~◎*!]
異形の叫びをあげて突進を開始する。
『インフェルノボール!』『バーストフレア!!!』『バーンキャリー●ー』
フレイシアたちが必死に迎撃の『魔術』を放つも、『デュラハンヘルム』は止まることなく。
フレイシアたちを飛び越え、『デュラハンヘルム』は観客席のシャルミナ様へと向かっていった。
「これは、困りましたね・~・」
隣に座るシャドウの要人をも巻き込む勢いで『魔力の塊』が接近してくる。
それに対し魔王の黒霊騎士様は、普段は浮かべない種類の『笑み』を浮かべ。
『反乱の大剣 反逆の大斧 反抗の矢を射る、大弓を持つ者よ
貴様の靴は、誇りと歩み 貴方の手袋は、豊かを作る
されどその矢は、恐慌の兜を射抜き
安寧と安息の帳で、恐怖を覆う
貴女に幸を・・・ヴァルキリーチャーム!』
不可視の斬撃・衝撃の連打が『デュラハンヘルム』に殺到する。徹底的な『破壊の魔力』が、大きな質量を粉微塵になるまで砕き。
その破壊音が途絶えても、観客の冒険者・炎熱C.V.たちは、しばらく沈黙を強いられ。
だから『淡い魔力の影』が、ナイキスに吞み込まれていく。その瞬間を『感知』したのはアヤメを含め、ごくわずかだった。
ネタバレ説明:『フレイムバイザー』について
炎熱C.V.のフレイシアたちが所属するC.V.軍団へ、四凶刃の藤次が教導・贈与した『魔術能力』であり。
本来は火属性C.V.が、自らを焼きかねない『高威力の火術』を制御する。
『火属性魔力を、より詳しく認識する』
『火術の反動に耐えるため、身体強化を行う』
『魔術の高熱・余波に耐えるための耐火術式の眼甲』
大まかにこれら三つを併用するのが、『フレイムバイザー』の効果です。
ただしフレイシアは『焦熱動床』によって、チームメンバーを移動・位置替えさせることが可能であり。
その際『バーンスライダー』から滑り落ちたり、飛び移るのを仕損じる、事故が起きないよう。
チームメンバーのC.V.たちが『バーンスライダー』を認識・把握できる効果が、『フレイムバイザー』に追加され。
その後、チームメンバーが使う『攻撃火術』をも共有するようになった。
魔術の技量に優れた創魔導士は、他のメンバーが得意とする『火術』も一応使えるようになり。魔力の少ないメンバーが『共有している火術』を使う際、限定で魔力補充などのサポートを行う。
前衛・防御術士のように、身体を動かすメンバーは『身体強化』が巧みになったり。『バーンスライダー』に乗降するなど、他のメンバーが使う『火術』を察知する。
より高度な連携ができるようになるなど。
フレイシアたちが使う『フレイムバイザー』は、集団の戦闘力を高めています。
そこに『本日』『今回の任務中』など制約をかけて、さらに性能を増すと。
「もう、ほとんど別物な『魔術能力』じゃないのか?」と、いう感じになっていますが。
敬愛する藤次の名声を高めるため、彼女たちはそれを認めず。
「あくまで師匠の藤次様から習った『デザイン』です」と、主張しています。
なお、あまりに巧みな連携のため『精神同調』『データリンク』をしていると、誤認されますが。あくまで互いの『火術の術理・性能』を把握しているだけであり。
『通信・テレパス系』の術は、『フレイムバイザー』に組み込まれていません。
メイガスメイドの二人は、それっぽくふるまい、ブラフをしかけているだけです。
ネタバレ説明:基本的な『ヴァルキリーチャーム』について
『北欧神話』のヴァルキリーにまつわる伝承・イメージを、『魔術』に取り込み『魅了』を行う。
『ヴァルキリーが戦死者の魂をヴァルハラに誘う』
『昼間に戦ったエインヘリヤルたちを、夜の宴でヴァルキリーがもてなす』
これらの伝承をもとに『C.V.が好む戦士・勇士を魅了』したり。
『互いに争う集団を、酒の力で反目を和らげさせる』などの催眠を仕掛ける。
これが原典であり、本来の『ヴァルキリーチャーム』なのですが。
黒霊騎士団長で、魔王の側近(側室)を務める。
シャルミナが行使する、『ヴァルキリーチャーム』は完全に別物であり。
そちらのネタバレ説明は、次回に行います。
以上、『フレイムバイザー』+αのネタバレ説明でした。
ちなみに『戦女神アテナ』の神話三つも、『文明興亡を暗喩したオロトロスの神話』と、同様であり。
『アテナとポセイドンの争い』→『農耕文化と海洋文明の勢力争い』
『メドゥーサの皮で、アテナが鎧を造った』→『巨大な宗教勢力が、分裂した派閥を強行手段で取り込んだ』
『竜の牙からスパルトイを創り~中略』→『巨大な国の都市が分離独立し、戦争をして数を減らした』
こんな感じではないかと愚考します。ファンタジー的には、風情のない分析ですけど。
たまにギリシャ神話を”誹謗中傷”して、”残酷神話”あつかいする連中がいますので。
〔血みどろの戦争をする奴らに言われたくない〕と、考え。
『エキドナとオルトロスの▲〇✖』は、分かれた文明?勢力が、穏健に交流した。『婚姻外交』を比喩表現した神話だと愚考します。
もっとも古代ギリシャの人々にとって、『エキドナ』は忌むべき怪物を産み出す『文化圏』であり。
〔古代ギリシャの人々も、『敵対文明』を悪しざまに言っていた〕と、推測しています。