閑話~魔王の黒霊騎士~ナイキスの事情:デュラハンチャレンジ
”忠臣蔵”の被害者。その最大の被害者は、赤穂浪士に斬殺された吉良家家臣たち、および用心棒たちでしょう。
〔浅野内匠頭を即日、切腹させるなんて酷い。不公平だ!〕と、言った口で”討ち入り”を行い。屋敷を強襲され、”首を切り落とされた”吉良上野介公も充分に被害者ですけど。
権力の世界で生き、理不尽に破滅・殺害させられた藩主・武家は、他にも大勢いるとはいえ。
藩主の遺恨で、家臣まで惨殺された例は、極めて稀であり。(実際のところは、知れたものではないですけど)『史実』で皆殺しにまでされた。
吉良家家臣とその家族たちこそ、忠臣蔵における最大の被害者たちでしょう。
現代人にとって〔罪人の血縁を罰する、連座制は酷い〕と、考えますけど。
裁判無しで、それをやったのが赤穂浪士たちであり。
〔吉良上野介公を討つのが目的なら、吉良屋敷の男性を皆殺しにする必要などない。まっとうな理由で、赤穂浪士が無傷なほど、戦力差があったなら。
やましい”ねつ造”がないなら、吉良家の家臣を捕縛して助命してもいいのでは?〕と、愚考します。
『マグマゾーン』×2『バーンスライダー!』
闘技場の『地面』に干渉する、主導権を奪い返すべく。フルル、フリスの二人が、『溶岩地帯』の魔術を発動し。
続けてフレイシアが『焦熱動床』でフラミアを移動させる。それによって中級の『攻撃魔術』を詠唱していた、創魔導士は不規則に移動し。
『・・-・ブレイズカノン!!』
『灼熱火砲』の狙いまで、不規則に乱されたが。
「無駄よ…『デュラハンチャレンジ!』」
本来、『鎧』に防御と重量を付与する『デュラハンチャレンジ』が、闘技場の地面を浸食していく。広域にかけられた『妖精鎧への挑戦』が『火属性の魔術』を侵し、『火の魔術能力』をもはねのけ。
「そんな・・・『ブレイズカノン』までっ⁉」
地面に付与された『デュラハンチャレンジ』ごとえぐり、焼こうとした。『ブレイズカノン』の赤熱した軌跡が、『魔力を帯びた地表』にはじかれ、曲げられる。
『魔術』を撃つフラミアの位置を、『バーンスライダー』によって移動させ。
〔標的はナイキスだ〕と、フェイントをかけた『ブレイズカノン』までもが防がれてしまい。
「「・・・ー;」」
「もう、時間切れよ。
今回の戦いで、貴女たちの『火属性魔術』は、もう私に通じない。負けを認めて、おとなしく降伏しなさい」
「まだっ…」
強がりの言葉とは裏腹に、『魔術』を主体とする炎熱C.V.フラミアたちの士気が、大きく下がっていく。
〔衆目がある決闘だ〕〔格上のナイキス様に対し、善戦できた〕
〔そもそも『身体強化』を得意とする、C.V.の騎士団にかなうはずがない〕
そんな敗北を受け入れる意向が、炎熱C.V.班に広がっていき。
その隙をついて、言の葉にまぎれた『デュラハンフェイス』が魔力を吸収していった。
この世界の『魔術法則』は『物理法則を無視できない』と、いうものであり。
その結果、ごくわずかな例外を除き。
『同格の術者なら、遠距離魔術より身体強化のほうが有利だ』と、いう傾向がある。
無論、戦闘において射程は、極めて重要な要素なのだが。
『攻撃魔術』は『溶解液・火炎瓶』を射出するのと同程度に、『暴発・自爆』のリスクがあり。
加えて『魔力を発する術者』から離れれば、離れるほど。『周囲の魔力』によって、『魔術』の威力が減衰する。制御までもが『周囲の魔力』に妨げられ。
これに『必中』『必中モドキ』の効果を付加すれば、ますます『攻撃魔術』のコストは増大していく。そのため同格の相手に対し、実戦で通用する『攻撃魔術』は事実上、存在しないと言ってよく。
一方の『身体強化』は、おかしな『破戒の増強』をしない限り。魔力源である『術者』から密着して、魔力が供給され。『生存本能』までもが、多大なサポートを行う。
『身体が病毒に耐性をつける』ように。『敵の魔力干渉・攻撃魔術』に対し、『身体強化』は『耐魔能力』を高めていき。しまいには『暗示・追尾・命中率アップ』などの『必中モドキ』を、完全に無効化してしまう。
そのため『魔力を五感で感知する』『優れた魔術文明をもつ』カオスヴァルキリーという種族にとって、『身体強化』こそが主流であり。
〔雑兵よりはマシ〕と、いう程度の炎熱C.V.班たちは、魔王様に仕える黒霊騎士団と比べ。魔術・戦闘力で大きな差があるのは、当然のことだった。
〔ナイキス様は術者タイプだから、私たちでも勝てると思ったのに・・・〕
そんなことを考えているであろう、炎熱C.V.のフレイシアは仲間たちの体力を計算し。逆転の一手を考えているのだろうか?
確かに術者タイプのC.V.なら、『魔力切れ』で戦闘力を失い。冒険者たちをけしかけて本当に消耗させれば、フレイシアたちにも勝算はあった。
〔だけど私は『魔王様』に仕えている、黒霊騎士団なのよ〕
世界征服・弱小国を侵略することに、興味はないけど。
シャルミナ様たち上位C.V.様で多重婚を形成しておられる、魔王様は不届きな同族に『種』を狙われる。男性魔女とでも言うべき御方であり。
黒霊騎士団は、血族の存亡をかけた同族と戦い、撃退して、和平を結ばなければならない。下手に血を流し、さらに追い詰めると『凶戦士』が出現しかねず。
ナイキスたちは、大っぴらにできない戦いを、何度も繰り広げてきた。
〔だから同族との変則的な戦闘経験は、珍しくないし。
意図的にC.V.の等級を偽ったり、魔術戦の駆け引きもこなせる〕
それこそナイキス自身の婚期を忘れるくらいに、連戦を繰り返し。
ようやくユングウィル様という、伴侶を見出したのだが。
〔私がユングウィル様の婦人となる・・・一夫一妻制になる⁉〕
その選択肢をシャルミナ様に提示された時、ナイキスの胸中に膨れ上がったのは不安と恐怖だった。
〔シャルミナ様ほどの御方が、第5婦人以下なのに…私ごときが正妻になって、殿方を独占するですって⁈〕
〔現役の今はともかく、『種』を得て…妊娠した後に子供と旦那様をお守りする。単独でそれができるほど、私は優秀なC.V.ではないわ〕
〔仲間に頼って…ユングウィル様が真の勇者になって・・-・蓄えを放出しつつ、魔王城にこもれば・・・・・有り得ない!!〕
騎士団長閣下が側室なのに、ナイキスが一夫一妻の幸せを謳歌する。
そんな大それた願いを抱くほど、騎士団の魔導師範は無謀ではなく。他にも懸念ばかり浮かんで、幸せな家族計画など立てられない。
〔こうなったら炎熱C.V.班たちには、何としてもユングウィル様のハーレムに参加してもらう。そのためなら灰色のルールも認めるわ〕
そう考えてフレイシアたちの『小細工』を、ナイキスたちは黙認したのだけど。
「「・・-;っ」」「ハッ、ハッ、ハッ」「・:~`・ー・」
「駄目だ・・#+を^っ…ら・-・」
〔彼女たちの戦力を見誤ったー・‐・〕
決闘を引き分けに持ち込み、『仲良く』ハーレムを形成する。もしくはフレイシアたちが辛勝にしてから、『外交交渉』でナイキスは『お情け』をもらう。
そんなナイキスの計画は、青息吐息なC.V.兵士班によって頓挫した。
同じ8級C.V.でも、戦闘経験・指揮官C.V.の育成方針によって、実力は雲泥の差がつく。そして半ば確信していたことだが。
温厚な平時のシャルミナ様は、適切な訓練をナイキスたちに施しており。
炎熱C.V.班の上司は、訓練以前にロクな経験を、彼女たちに積ませなかった。
そのため決闘の結末をコントロールする、ナイキスの計画はくるってしまう。
C.V.同士の魔術戦に慣れていない。彼女たちは『ガイストクライ』『シェードスモーク』によって、それぞれ聴覚・視覚に負荷がかかり。その負荷が心身にまで伝播して、体力・魔力を大きく消耗させ。
この状況では、もう接戦・引き分けに『決闘』を誘導するのは不可能であり。
〔今さら、決闘のやり直しなどできない。こうなったら覚悟を決めて…〕
『チャージホイール…』
決着をつけるべく、ナイキスは突撃体勢に入る。不本意な決着に、ナイキスは内心でため息をつくも。
「何をしている、フレイシア!!フィニー、フルル、フリスにフラミア!!!
それが四凶刃の一員に、師事したC.V.の実力なの⁉
本気を出せ…出し惜しみするな!!!」
訓練場の空気、全てを震わせる一喝が響く。
その声音は魔力を帯びて無い。それなのに状況を一変させる力を感じさせ。
実際に状況を一変させた。
ネタバレ説明:『デュラハンチャレンジ』について
『防御力・重量』を両方とも増加させる、『付与術式』であり。
味方の黒霊騎士C.V.がまとう、全身鎧の防御力を高め。敵に対しては、『加重』によって動きを封じる。
条件付きとはいえ『バフ・デバフ』を両立させる、ナイキスの『魔術能力』であり。『魔術の解呪』では、容易に解除することはできない。
それなりに強制力もある『デザイン』です。
本来は騎士団の主力である黒霊騎士C.V.たちの『全身鎧』を調整したり。一時的に『重い鎧』を付与で作り、激しい訓練を行わせる。
正式な黒騎士を選抜する際に、『デュラハンチャレンジ』のデバフに対抗する、実力を示させる試験を行うなど。
『妖精霊騎士の挑戦』と、いう表の面に加え。
敵の手足へ『デュラハンチャレンジ』による加重をかけ、転倒させたり。
転倒して地面に伏した者を、踏み砕いたり。あるいは伏した頭を、容赦なく蹴り飛ばす。『チャージホイール』によって、一気に群れ・敵部隊を踏み潰す、蹂躙を行う。
ほぼ戦闘を終了させる『障害』をかける裏の面を持ち。
他に岩・地面など『固体』に『デュラハンチャレンジ』をかけて。陣地を築いたり、敵の『魔術干渉』を阻害するなど。魔術戦の駆け引きにも使える。
白兵戦が主流な黒霊騎士団の中にあって、『デュラハンチャレンジ』は応用法の多い『デザイン』であり。騎士団における戦術の幅を、大きく広げる『兵装』でもあります。
とはいえ『デュラハンチャレンジ』の本分は、やはり『全身鎧』の調整であり。
魔力を持つ騎士C.V.が、『魔力の鎧』をまとえるよう。修練を行う『訓練装置』こそ、『デュラハンチャレンジ』の主流な使い方です。
〔それぐらい人間の騎士もやっている〕と、考える人も多いでしょうけど。
普通に魔力持ちのC.V.が、『マジックメイル』をまとうと。
『体内魔力』と『鎧の魔力』が反発したり。わずかなズレで、『強い魔力』が『弱い魔力』を物質もろとも削っていく。
物理法則を無視できない、『魔術法則』がある世界において。
『都合よく鎧が装着者のサイズに合わせて、変形する』という、雷装・星鎧のようなことは一切なく。
乙女の意地にかけて、発汗・臭い対策はしているけど。『鎧の不具合』はシャレにならない危険なレベルであり。
これに単独行動・軍団戦によって、装着者の使う『魔術』が変わると。
『マジックメイル』を調整する難易度・維持コストは跳ね上がってしまい。
〔『デュラハンチャレンジ』の修練はキツイですって?
ハハ、ハッ・・・トッテモ面白い冗談だこと~;--〕
〔『鎧の魔力』と『体内魔力』が反発すれば、最悪だと内臓が揺らされる。その後は『尊厳』の危機が待っているけど。
言って理解できないなら、体験してみる^?^〕
〔〔〔〔・~・失礼いたしました!!〕〕〕〕
このようなやり取りの後に、『妖精霊鎧の試着』を劣化コピーした『魔術』が、有志のC.V.たちによって習得されていき。
〔大変です!『マジックメイル』に呪いがかけられ…〕
〔『魔力による強制干渉』・・:・『デュラハンチャレンジ!!』〕
〔ありがとうございます!〕〔魔導師範は命の恩人です!!〕
〔私たちにも『デュラハンチャレンジ』を、ご教授くださいませ!!!〕
〔・・・+・;〕
こうしてナイキスは魔導師範の地位を不動のものとし。
大事なプライベートの時間を、大きく削られてしまったとか。
以上、『デュラハンチャレンジ』(とナイキス)のネタバレ説明でした。
そして忠臣蔵の討ち入り被害者は、他にもいます。
それは『浅野家』再興を信じた、穏健派の赤穂藩士たちであり。
『忠臣蔵』を尊ぶ連中からは”不忠の輩”と、蔑まれ。
『忠臣蔵』の討ち入りを”物騒な凶行”と、考える者たちからは”厄介者”と認定される。
〔実際に”討ち入り”に参加しなくとも、”強硬派”とつながりがある(かもしれない)〕と、考えられたり。
〔”不忠の輩”に関わったり、仕事を頼めば。雇用主まで後ろ指をさされる〕と、リスクを警戒したでしょう。
つまり吉良家屋敷への討ち入りは、貧困にあえぐ元赤穂藩士およびその家族たちを破滅させた。〔再就職の道を妨害し、路頭に迷わせた〕と、言えます。
しかも赤穂浪士(おそらく大石内蔵助)の被害は、これだけにとどまりません。
討ち入り軍資金に困った大石内蔵助は、浅野内匠頭の元正妻だった『瑶泉院』から、多大な資産を受け取っていますけど。
これは”刃傷沙汰を起こした、浅野家再興の運動資金”にも使われなかった。
『瑶泉院』にとって命綱に等しい『大事な蓄え』であり。
決行するかわからず、成功するかも不明、巻き添えで破滅するか、知れたものではない。そんな”討ち入り”に、虎の子の資金を提供するのは、不自然極まりないでしょう。
とはいえ証拠もないのに〔大石内蔵助が、瑶泉院から資金を脅し取った〕と、いうのは”誹謗中傷”というもの。
そのため〔瑶泉院が『資産』を失ったことにより、各方面との外交的なつきあいができなくなった〕と、しか言えず。
その結果、〔元赤穂藩の女性たちは、瑶泉院のコネで就職できず。亡くなった時の葬儀も、自力・家族に負担をかけて行うしかない〕と、考えます。
私は別に〔瑶泉院は元妻として、元赤穂藩士を養う義務がある〕などと、言う気は一切ありませんが。それでも身分のある女性が、財産を持ち消費を行えば、雇用が生まれる。食べていける元赤穂藩士が、いるわけであり。
彼女の資産は、47人そこらな”強硬派”の生活・軍資金になど、使いつぶしていいものではなく。まして危ない武器商人・武具の在庫一掃に浪費されるなど。
迷惑な話どころではなく。”大勢の元赤穂藩士を生活苦にする害悪だ!”と、申し上げたい。