閑話~魔王の黒霊騎士~デュラハンゲーム:
コメディ・パラレルな『忠臣蔵』で、『吉良家の家人たちが、惨殺されない』と、いう珍しいシーンを観て、思った事がいくつかあります。
それは〔ずいぶんオリジナルに近い忠臣蔵は、”ねつ造”がされているな~〕と、いうこと。
立派な仇討ちをしたなら『脚色』の必要など、一切ないはずなのに。
”討ち入り”で屋敷の男性を、ほぼ皆殺しにしたならば。当然、討ち入り『装束』は、返り血で真っ赤に染まっている。屋敷の床に大量の血が流れ、そこを歩いた浪士の足袋も、血で汚れてしかるべきですが。
剣客の腕前どころか、実戦経験もロクに無い。そんな”赤穂浪士”が少なからずいて、屋敷にいた男性の大半を皆殺しにしたなら。(一部は逃走に成功してます)装束も屋敷も血みどろ状態のはずですけど。
どちらもキレイなものであり。創作時代劇の『殺陣』なら問題ないことですが。『史実』の忠臣蔵でそれをやらかしたら、観る人が誤解してしまう。
外面のいい詐欺師が、被害者を騙すのと同じように。赤穂浪士はきれいな装束で、”歴史ねつ造”を仕掛けている。
百万歩譲って、江戸時代なら通用するにしても。現代社会で、そんな忠臣蔵をもてはやすのは〔いかがなものだろう〕と、思うのです。
この世界の『魔術』は面倒だ。物理法則を無視できず、その干渉を受ける。物理的に不可能な死者蘇生は、『魔術』でもできない。
そういう『魔術法則』が幅をきかせる世界において、『幻魔の名を冠する魔導』は、どんな存在なのか?
端的に言えば、『適当』である。
自らの世界を確立している、最上位C.V.ならともかく。
8級C.V.のナイキスでは『自分の物語』を構築するのが、せいぜいだ。そして周囲を惹きつける魅力、巻き込む『説得力』によって、『魔導』の力を行使する。
そのため『魔力』で周囲に干渉するのと同時に、周囲の魔力から影響を受ける。
ナイキスの『イメージ』を他者に押し付け、干渉を行うが。あまりにも荒唐無稽な『(魔導の)物語』では、魔力を浪費するうえに、周囲からの抵抗も大きく。
その結果、『妖精霊騎士の魔導』は他者を圧倒しているようで、他人の顔色をうかがっている。そんな二律背反な『魔導能力』となっており。
『妖精郷の騎士』と『亡霊の首無し騎士』の二つを、『術式』でいびつに再現した偶像が、『デュラハンゲーム』の正体であった。
『シェードスモーク・:・』×『ガイストクライ‥!』×『シャドーソード』
「ぬぅっ⁉」「おのれぇー‐―」「危ないっ!」「「「うわぁーー・;」」」
『闇色の煙』が放出され、『業霊の叫び』が脳髄にまで響き。
触手・夕暮れ時の影に似た『妖剣』が、冒険者たちの顔面をなでる。
それらは直接的なダメージこそないものの、冒険者の集団を恐慌に陥らせる、『幻惑』の力を存分に発揮して。
「落ち着け‼この決闘でC.V.さんが、致命傷を与えることはないっ」
「まずは様子見だ…防御に徹して・:」
『『『ガイストクライ!!!』』』
「ひぅっ…」「「「ギャあァ---ー~ー」」」
「逃げるなっ、落ち着いて対処‘・;」
三重の『ガイストクライ』によって、半数近い冒険者たちが昏倒し、倒れ伏す。
そんな仲間を助け起こす者、自身の回復に努める者に、ナイキスの『魔導能力』を見定めようとする者たちが群れ。
数でナイキスを押しつつもうとした、冒険者たちの連携は崩壊する。
無論、個々でナイキスに切りかかろうとする、冒険者は少なくないが。
「くそっ、視界が…」「『煙』が邪魔だっ『ウィンドエッジ!』」
「わぷ、ぷっ⁉」「てめぇ、何しやがるっ!」「「「・・-・‘・」」」
ただでさえ混乱している冒険者たちが、障害物になっているのに加え。
初見で放った『シェードスモーク』『シャドーソード』が、それぞれの効果で『視界』を狭め、ふさいでいき。
『(ガイストクライ)‼』
「またっ⁉」「うるせぇー~*ー*」「へぶ;*らっ…」
いまだ体勢が整わない冒険者たちに、ナイキスは『ガイストクライ』で注意を引く。それをフェイントにして『突撃の戦輪』を併せて発動し、白兵戦を仕掛け。
魔術戦闘・闘技場での戦闘経験が皆無に近く。
『数の暴力』をふるい慣れておらず。暴力に酔う”私刑”をせず、怪物討伐を最優先にする『死兵』と化したこともない。
「「「「「ギャあァーーーー;ー!?!」」」」」
荒くれ者ではあるものの、まっとうな人間に近い冒険者たちを、ナイキスは容赦なく蹂躙する。
刃をつぶした模擬剣で打ちのめし。蹴り飛ばし、踏みつけ、優勢の流れを保ち。
「くっ…動きさえ止めればっ!」「うォおおーーーーッ」
「立てっ!立って…*」
『妖精の刃にして、精霊の防具たるもの
兜をかかえ、首無しの鎧をまとい (静寂の狭間で)咆哮をあげる者よ
爪痕を印に、魔剣の柄を止め金に[変えて]持ち
([惰弱と負傷に])重苦と挑戦の鎧甲をもたらせ
デュラハンチャレンジ‼!』
「か、身体がっ・・・」「重い…頭がぁ!*?」「ぬぉおー‐―*:」
冒険者たちに与えた負傷部位を目印・起点にして、ナイキスは『呪術』をかける。負傷した身体部位に、重鎧の『防御術式』がかけられ。
初手の『咆哮』で鼓膜・頭部にかかった負荷にも、『鎧の重さ』がのしかかる。
それは倒れ膝をついた者たちが、この戦いで再び立ち上がるのを封じ。
「・・・降参する」「まだだっ!まだ戦え…」
「こんな決闘でケガしてられるかっ!」
「それに『役目』は果たしたしなぁ・~・・」
ナイキスに魔術発動『後』の隙を作り。
『バーストフレア!!!』
『バルカン‼』×2
「・・-・‘‐/:・:ッ」
ナイキスの全身が『光炎』に包まれ。さらに『小火球の連射』が、左右双方から殺到する。
さすがに『ファランクスバルカン』×2のキルゾーンは作られないが。
『バーストフレア』の火力は、人間の『耐火術式』を破壊する魔力が込められており。
[決闘とはいえ、血生臭い殺し合いは、したくないのだけど]
「・・・それは、申し訳ございません」
「・;ッ⁉」「「「・・・…・」」」
冒険者の興行・副業をダメにしかねない、安直な『大火力』に苦言を言いつつ。
ナイキスは焦げた前髪の切り方を考え、『必殺の火術』を解析し。
「冒険者たちをけしかけた・・・本当の対戦相手は貴女たちと、いうことでいいのかしら?」
「いかにも。8級火属性のC.V.フレイシアおよびチームも含めた5名。
ハーレムの地位を賭けて、ナイキス様に決闘を挑みます!」
「いいでしょう…受けて立つわ!!」
こうして本当の決闘が始まった。
ネタバレ説明:『デュラハンゲーム』について
黒霊騎士シャルミナに仕える、C.V.ナイキスが編み出した。『魔術能力』を編み出す、原典となる『魔導能力』であり。
その正体は『怪奇の騎士』をイメージして、3種類の『魔術』を連動させる。
[兜or首を切られた頭](鎧の胴体or首なし馬orチャリオット)
「髪・刺青・宝飾他で見えないようにした、本来の頭」
これら三つを使って、3種類の魔術を連動して使う。
『サッカー』で頭と左右の足を使い。『拳闘』でフェイントを織り交ぜて、コンビネーションを放つ。右手で注意をひきつつ、左手で仕掛けを行い、話術で場を盛り上げる『手品』のように。
戦場を蹂躙する『超絶魔術』には遠く及ばないものの。
〔3種類の『魔術』を巧みにふるい、『固有の異能』×『既存の術理』を融合させよう〕と、いうのが『デュラハンゲーム』の要諦であり。
『不気味な外見』×『職人が作った鎧をまとう騎士』という、『不思議な騎士』をイメージした、ナイキスの『魔導能力』です。
なお所属する黒霊騎士団メンバーの評判・婚活のため、『妖精霊騎士』を名乗っていますが。〔清潔なら別に死霊騎士でもかまわない〕と、彼女は思っています。
それとナイキスの魔力量では、高火力・高出力の『コアデザイン』を構築することは、不可能であり。
1)『影・闇・咆哮』などでかく乱し、注意をそらす。
2)『障害』をかけたり。移動サポートや『布石』をうつ。
3)『布石』から連鎖し、『大魔術』を放つ。かく乱して『秘かに魔術』をかける。
こんな感じに裏方・援護の『魔術能力』を操るのが、ナイキスというC.V.知将の実態であり。
他のC.V.・・・・・正確には『黒霊騎士団』という狂猛C.V.騎士団に、技術指導をする教官の地位に加え。凶悪C.V.騎士団の中では【穏健派】であり、誠実な外交窓口になってくれる。
何より最も狂猛な騎士団長に換言できる、経験・実績と胆力を持っており。
〔そろそろ私も結婚したい。
できれば英雄・勇者などでなく。考えて、配慮して、知恵が回る人がいいのだけど〕
〔いいわよ。一緒に知恵者を探しましょう〕
〔ナイキスは働きすぎだ。いい機会だし、ゆっくり番を探すといい〕
〔貴女たち・・・結婚相手が怯える殺気を放ってはいけませんわ〕
〔ありがとう、みんな!恩に着るわ〕
〔・・・・・・・・・・まあシャルミナさんの戦闘力は狂猛無比だし。
”邪教”を殲滅してから、冒険者ギルドに携わってもらえばいいか〕
こんなやり取り?がされていたとか、されてないとか。
混成都市ウァーテルを統べるC.V.イリスにとっても、ナイキスの『お相手探し』は重要事項であり。
冒険者ギルドからC.V.として得る利益の幾ばくかを、即決で断念するくらいには重要事項です。
以上、『デュラハンゲーム』(と黒霊騎士団)のネタバレ説明でした。
私は別に、全ての時代劇・歴史物語に〔リアルな描写を求める〕と、言う気はありません。
『創作』の作品にリアリティばかり求めたら、面白くありませんし、きりがない。何より予算・人的コストを考えれば、『血のり』を用意するだけで困難でしょう。
しかし”忠臣蔵”は別です。理由は大まかに4っつあり。
1)『創作時代劇』ではなく、『史実』なのだから。最低限のリアリティを要求する。
2)〔『史実』をもとにしたフィクションです〕と、いう『注意書き』すらない。〔実際にあったことです〕と、いうなら最低限の『歴史考察』を要求する。『注意書き・歴史考察』の両方ともないのは”歴史ねつ造”です。
3)『下剋上』によって、殺し殺されの『戦国時代』ならともかく。平和な江戸時代・江戸の町で、吉良家の家人に”大量殺人”を行ったのだから。
『戦国の合戦』とは差異をつけるべき。混同する演出は、”詐欺”に近い。
4)”忠臣蔵”が立派な『仇討ち』と主張するなら。流血を消去する『偽装』する必要など、ないわけであり。極端な『偽装』をするなら〔やましいことがある〕と、言ってるに等しい。
以上の4っつの理由に加え。
”返り血ゼロの赤穂浪士”=『武術の達人・装備を充実させていた・作戦をしっかり立てていた』と、いうイメージを与えていますが。
いくら過激派な赤穂藩の浪人たちとはいえ『全員が武術の達人』と、いうのは無理があり。
”返り血のない赤穂浪士の『装束』”は、同時に”ロクでもない夜襲”を隠蔽している。
吉良家で働く『女性たち』をなかったことにしている、”脚色”を行っていると愚考します。




