閑話~魔王の黒霊騎士~最終戦の決闘
寺社勢力を統制し、行動に口出しした。江戸時代に施行された『寺院諸法度』は、信仰に口出しする悪法という面もあるでしょう。少なくとも時代劇のネタとしては、かなり稀少な程度に不人気だと愚考します。
とはいえ戦国時代の宗教・布教の『状況』を考えると。寺社にもメリットはあったと推測します。
そのメリットとは、ずばり『安全』であり。
戦国時代?の布教は、ひんしゅくものな”ヤクザ布教”だった。『織田信長が比叡山を焼き討ちした』と、言われている件を”宗教屋”にだけは非難される謂われはない。
そういう”迷惑布教”を抑制したのが、『寺院諸法度』だと愚考します。
カオスヴァルキリーは『戦争種族』である。よく『戦闘民族』と間違われ、混同されるが。
個人の戦闘力だけでなく、集団戦・軍団戦も重視するし。大規模戦闘を可能とする補給・経済や製造技術など。【命・尊厳】を左右する、あらゆる『分野』の戦争に勝利するため、努力を怠らない。
『魔力・戦闘力』に腐心する、魔人とは一線を画す『戦争種族』だ。
「まさかナイキス殿が『魔導能力者』とは・・・驚きました」
「私には過ぎた部下ですわ。
とはいえ、そろそろ彼女も伴侶を決めたい時期ですし。『妖精霊騎士の魔導』を解禁しました」
侍女頭のアヤメに対し、魔王の側室C.V.様は得意げに語る。
その声は珍しく弾んでおり。二流外交官でも、ご機嫌うかがいするのには、絶好の機会と言えた。
そして戦時に指揮系統が明確なC.V.は、高度な階級社会が確立しており。功績への評価も、数値化され『順位』がつけられている。
その中でも、多数のC.V.が会得する『魔術能力』の原典となる、『魔導能力』を編み出す。継承して、他のC.V.に『デザイン』を教導する者は、一目置かれる尊敬の対象であり。
ナイキスを側近にしている、シャルミナにまで高い評価をもたらす。
〔もっともシャルミナ様には、ナイキス殿を飼い殺しにする気など、ないでしょうけど〕
万が一にも”盗賊ギルド”の類に狙われないよう、普通のC.V.としてあつかってきたが。連中の破滅は確定し、ナイキス殿は結婚相手を見出した。
〔異種族婚をするとなれば、『魔導能力』を伴侶に隠すのは、悪印象を与えかねない。今回の決闘で、お披露目もしたし。適当な相手に、部下自慢をしたい〕と、いうところでしょう。
そして将軍C.V.のシャルミナ様が、単なる部下自慢で終わるはずもなく。
「冒険者の皆さんも、訓練場を有効活用するでしょうし。
そろそろ私の部下たちも、次の修練に移るべきだと考えますの」
〔黒霊騎士団のC.V.とシャドウ一族で、合同訓練をしましょう。そして気に入った者どうしで、多重婚を形成しましょう〕
「・・・日々、修練にまい進していく。とても良い、お考えです」
シャルミナ様の意向を、アヤメは正確に察したものの。イセリナ様に仕える者として、安易にうなずくわけにはいかない。
騎士団C.V.と合同訓練をするなら。まずはイセリナ様の配下C.V.と行うのが筋であり。順番的にイセリナ様が従える、陸戦師団の重騎士と婚姻関係を結ぶべきだが。
かと言ってシャルミナ様たちが属する、魔王勢力の機嫌を損ねるなど、論外であり。
アヤメは難しい外交を行うことになる。
そして結局、『術理』の一つを交流することで〔見合いまで猶予をいただく〕と、いうことになった。
「連絡は‥‥使いの者は、まだかっ!」「「「・・:・;」」」
決闘で二連敗した騎士と魔術師たち。貴族の血を引くが、当主になれない三男以下の者たちは、追い詰められていた。
〔役職をよこせ、利権を提供しろ・・・と交渉しただけなのにっ〕
それに対し行われたのは、野蛮極まりない『決闘裁判』の強要、だけにとどまらず。実家の利権を奪われ、上級貴族から圧力をかけられ。
〔梯子をおろす〕どころではない。
〔梯子は壊され、屋根の下で暴行が行われている〕と、言う感じであり。
「何故、こんな事に・・;・」「我らが、いったい何をしたとっ⁉」
「情報を・・いや、謝罪すべきかっ…何とか危機の乗り越えて・・・」
決闘に勝てば、全てが解決するとは言うものの。既に2敗している自分たちに、逆転の目などなく。
そもそも最終戦を勝ったとして、どんな交渉をすればいいのか、わからない。
『利権』を返してくれ。実家との関係を修復してくれ。寄親の怒りを鎮めてくれ。2敗したのを、1敗にしてくれ。決闘で善戦した者にお目こぼしを・・・(自分だけは、助けてくれ)
これらの交渉を成立させるのに必要な、『3戦目の決闘に勝利する』見通しが立たない。
そのどうしようもない現状に、騎士団・魔術師協会のメンバーは怯え続け。
「「「「「・・ー・ッ⁉」」」」」
控え室の扉をたたく、ノックの音にすら驚愕した。
3連戦の決闘における最終戦。それが行われる訓練場兼『闘技場』に、予定より大人数が立っていた。
「これは、いったいどういうことかしら…ー・・?」
「「「本日、只今だけ魔術師協会に所属する、見習い魔術師です!!」」」
「「「恥ずかしいので、『仮面』を装着している従士でございます!!」」」
「「「「「・-・^~:・」」」」」
「ほほう・・・・・」
8級C.V.ナイキスの前に立ち並ぶ、自称『従士+見習い魔術師』を名乗る者たち。
彼らの『体形』は、先の決闘2戦を見物し観客席にいた、冒険者たちに酷似しており。『仮面』と言うにはキツイ、下手な変装は失笑ものだったが。
〔ううっ、臭い…〕〔我慢しろっ、この一戦だけだ〕〔初撃に全力をこめる!〕
『覆面』とは言えない、ボロ布を顔に巻き付けている奴のつぶやきが、ナイキスの耳に届く。その言動は決闘を汚す、道化のそれであり。ナイキスの平静を削っていった。
「一応、確認するけど・・・キサマたちは決闘に参加する覚悟があるということで、よいのね?」
「それは…」
「もちろんです!」
「ただし1、2戦と同様にっ!重傷を負わせるのはご勘弁ください」
「『盲目化の魔術』も使用禁止で、お願いいたします」
「あっ、できれば『デュラハンゲー…
『妖精の刃にして、精霊の防具たるもの
兜をかかえ、首無しの鎧をまとい 騎馬にまたがり、戦輪に乗る者よ!
(妖精郷の)丘より出で、(幽世の)境界を駆け抜け
死線の弦にて、怪奇の旋律を奏でて惑え!!
妖精霊騎士の凱装』
「「「「・・-・ー・ッ」」」」
「「「「「・・-;・~;!!」」」」」
驚愕する対戦相手たちの眼前で、『異形の鎧』をナイキスはまとう。伸ばした黒髪が顔面を覆い、『付与術式の闇』がナイキスの表情を加工していき。
「あの~、C.V.様?そんな本気を出さなくても…」
「『話』が違うっ!」
「・・・降参していいですか?」
「穏やかに決闘を終わらせようとした、私が間違っていた。
さあ、『デュラハン』の恐怖に慄くがいい!」
かくして蹂躙が始まった。
〔戦国時代において、”略奪放火”が日常茶飯事の戦術であり。それをやらかしていた武士・野武士に足軽たちが破戒僧になれば、”過激な布教”を行うのも当然だろう〕・・・などという理屈は通りません。
〔大仏を焼かれた~〕〔本山を焼き討ちされた~〕と、騒ぐなら。自分たちの”過ち・やらかし”も公平に白日にさらすべきであり。
あるいは戦国時代に『キリスト教』が戦国時代に、あっという間に伝播した理由を考えてみましょう。
日本人は閉鎖的であり。観光客が増えた昨今ならともかく”髪の色が、目の色が!?”と、大騒ぎする者が圧倒的に多い国です。しかも戦国時代は治安も悪く、密偵を警戒する住人がスタンダードであり。
南蛮人・紅毛人と呼ばれた『宣教師』が、よさげな教義を唱えるだけで、あっさり布教ができるとは思えません。そもそも布教する際の言葉も、カタコトであり。カタコトで戦国時代の諸国にある『方言』をどれほど話せたか?
『言語理解』がある歴史ドラマのようには、いかないでしょう。
そう考えるとキリスト教を布教するには『戦術』が必要であり。
その戦術は当時の坊主がやらかしていた”暴力布教”をしないこと。問答という”街宣活動”をやらず。問答に敗れると、暴れたり報復を企て、周囲に大迷惑をふりまく。高利貸しを営み、人身売買を兼業する。
それら”やらかし”を行わない。少なくとも坊主ほど派手に行わないことで、宣教師たちは戦国時代にキリスト教を、あっという間に広め。〔実は宣教師も坊主も、同じ人買いをしていた〕と、いうのがバレて、天下人二人はキリスト教を禁じた。
そういう”人買いを行う破戒僧”を封じようというのが、『寺院諸法度』だったと愚考します。