表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
349/422

閑話~魔王の黒霊騎士~魔王の文武官

 一応、知識として『僧医』がいた。僧侶が医者を兼ねていた時代があるのは、知っています。

 しかし『僧医』で有名どころの名前が、全く思いつかない。


 各宗派の開祖・道鏡・武蔵坊・僧侶の相談役・・・西郷隆盛と一緒に身投げした坊さんetc.

 たまに大河で祈祷する僧侶が出てきますけど。〔時代劇に僧医は登場してないような?〕と、思うのです。昔話を調べれば、妖怪退治をした坊さんがいるでしょうし。開墾・洞窟工事に携わったお坊様もいたでしょうけど。


 私はどうにも僧侶=医者のイメージがつながらない。

 その理由を〔時代劇・教科書に出てこないから!〕と、他人様のせいにするのは簡単ですけど。


 私は他にも原因があると考えます。

 『仮面をつけた冒険者vs.仮装した疑似モンスター(中身は人間)』と、いう冒険者ギルドの闘技場(訓練場)で催される興行。


 シャルミナの提案した、それは驚きをもって迎え入れられる。 


 もともとはユングウィルの『熟練冒険者の手の内を隠し、敗北しても面子がつぶれないよう。正体を隠しつつ、未知の(疑似)モンスターと戦う訓練を行う』と、いう計画だった。

 炎熱C.V.たちにも面子があるし、『竜角鬼クリーチャー』には相応のコストがかかっている。タダ同然の報酬で行う以上、訓練する冒険者たちに〔花を持たせる・勝ちを譲る〕わけにはいかず。


 そのため『火の攻撃魔術』『身長のある妖樹鎌切クリーチャーからの攻撃』を、冒険者たちに防御させるだけ(・・)の訓練になっていた。

 訓練とはいえ、ほとんど反撃できない内容であり。少なくない冒険者たちが、うっぷんを蓄積していったのだが。




 「S級冒険者はともかく・・・A級以下の中堅冒険者には伸びしろがあり、修練をおこなうべきです。手札を隠すため、閉じこもったり。手頃なクエストが来るまで、呆けているヒマなどございません」


 〔A級冒険者は級冒険者です!〕


 〔シャルミナ様は、何をなさるつもりだ?〕


 〔ご安心ください。

  事前に確認して、まっとうな人間に()(おそらく)被害は出ません〕


 冒険者ギルドの訓練場が、盛んに使われるようになった。

 シグルの街にある冒険者ギルド、その最奥にあるギルドマスターの部屋において、話し合いの場が設けられていた。


 魔王の側室にして、黒霊騎士C.V.のシャルミナ・ヴァイ・ローウェル様が中央に座し。

 その両脇を、ユングウィルとC.V.ナイキス殿が固め。C.V.の部下・人間の助言者アドバイザーとして、シャルミナ様をわずかでも抑える布陣を作り。


 その対面で哀れなギルドマスター、プラシル女史が精いっぱい身を縮めている。


 最近、前ギルマスが突然の退職(逃亡)をしてしまい。

 急遽、昇格したギルマスのプラシルさんは、理不尽な魔王騎士(シャルミナ様)に挑む勇者のようだった。同時に立場・戦闘力で、はるかに勝る格上C.V.(シャルミナ)様に蹂躙される、敗残兵でもあり。


 そんなプラシルさんに対し、過酷な交渉を押しつけるのは忍びなく。

 『疑似モンスター』の提案をした冒険者ギルドのスタッフとして、ユングウィルは口を開く。


 

 「シャルミナ様・・本当に『賭け試合』をなさる、おつもりですか?」


 「ええ、そのつもりです」


 「それは『盗賊ギルドの利権を奪う』と、いう解釈でよろしいのでしょうか?」



 悪徳の都を滅ぼして、混成都市ウァーテルを築いた。冒険者ギルドから『山賊討伐』の依頼が消えるほど、『山賊蹂躙(・・)』を行っている。他にも『暗殺ギルド』『密偵組織』を滅ぼし、『多数の教団』を壊滅させた。


 直接的な恩を受けてないユングウィルたちにとって、それらは『武勇伝』と言うより、『魔王軍の侵攻』を連想させ。


 〔盗賊ギルドの二の舞になるかもしれない〕と、いう恐怖をいだくのと同時に。

 加えて〔C.V.勢力に組みすれば、盗賊ギルドと敵対したあげく。シーフに襲われかねない〕と、いう予想をユングウィルはしており。



 状勢からいって、冒険者ギルドはC.V.様の勢力につくしかない。〔中立外交など、不可能だ〕と、いうことを理解しているものの。

 『盗賊ギルド』の利権を奪い〔暗殺者なシーフたちと、敵対関係を決定づけるのは避けたい〕と、いうのが本音であり。



 「そんなことをすれば、『賭博ギャンブル』で生計を立てている『裏社会の住人』たちに、不要な血を流させてしまいますわ。『賭け試合』をすると言っても、その『客層』は選びます


  無論、”奴隷・麻薬・魔薬”の売買や”陰謀・山賊稼業”に携わっている。直接・間接的に他者の生き血をすすっている、”盗賊ギルド”の者たちには”害悪モンスター”と同様に、冥府に逝ってもらいますけど。

  

  ギャンブラーたちを巻き込んで殺す、”侵略”をする気はございません」


 〔もっとも、こちらに手を出してくるなら、容赦しませんけど〕


 「「「・・・-・^」」」


 シャルミナ様の言葉はユングウィルたちにとって、好ましい返答だった。


 人間のユングウィル(冒険者ギルド)、プラシル女史(のスタッフ)たちにとって、余計な血を流さず済むのは嬉しく。

 ハーレムを形成したい妖精霊騎士デュラハンのC.V.ナイキスたちも、”凶悪なC.V.”という悪評が広がるのは避けたい。”盗賊ギルド”と争うのは〔混成都市ウァーテルを支配している、C.V.勢力(派閥)で行ってもらいたい〕と、いうのが本音であり。


 〔侵略をする気はございません〕と、いうシャルミナ様の『言質げんち』は、誰もが望む言の葉だった。


 「とはいえ『ギャンブル』は楽しく長く、賭けてもらわないと、軍資金の見積もりができません。だから様々な『遊戯盤』を作り、季節限定のイベントを開催する。

  

  ユングウィル殿の『疑似モ(仮装・)ンスター(着ぐるみ)』は、そういう催し(イベント)の幅を広げると考えますわ」


 「素晴らしい、お考えかと」

 「将軍(シャルミナ様)の、お考えに同意します」


 「『仮装』することで、冒険者の士気が上がる。『着ぐるみ』を作る仕事(依頼)を出したり・・・・・」


 「良い提案です。これは私のところで、止めていい施策ではないでしょう。

  当座の資金は、私が出しますけど・・いずれ混成都市の宰相(イセリナ殿)と面会の場を設けることになりますわね」


 今は夢物語だとしても、みんなが幸せになる『企画』が次々と出され。

 ギルドマスターの部屋には、和気あいあいとした空気が流れる。ユングウィルたちは明るい未来を想像し〔『企画』が成功して報酬を得たら、何をしようか?〕と、夢想の翼を広げ。



 「それでは『ギャンブル』で、ヒトを食い物にする”連中ギルド”には、速やかに滅亡してもらうとしましょう」


 〔どうせ暗闘を仕掛けてくる敵対勢力・・・”害悪”な連中ですし。表裏・物心の多面から包囲して、すり潰してさしあげます〕


 「「「・・-・・~`」」」


 笑顔のまま魔王の側室(シャルミナ様)が発する『言の葉(作戦計画)』に、ユングウィルたちは

硬直する。

 否、何となく黒霊騎士シャルミナ様の『意向』は察していたものの。

 三人とも〔このまま『穏健策』だけ(・・)で幸せになりたい〕と、いう『希望』にすがっていたかったのだが。

 

 「我々、三()()のC.V.も、お供いたします。何なりとお命じください」

 「どうせ中立を宣言したところで、奴らの復讐対象になるだろうしな~」

 「ううっ・・;冒険者ギルドも協力いたします。【依頼】の流れを止める要素は、排除しないと」


 妖精霊騎士デュラハンC.V.ナイキス様、冒険者ギルドの助言者(ユングウィル)とギルマスのプラシル女史、三人はそれぞれの思惑から協力を申し出て。


 「まあ、私が『剣』を抜けば(本気を出せば)、奴らなど粉微塵になるのですけど」


 「「「絶対におやめください」」」


 手始めにシャルミナ様を制止することから、協力を開始した。


 




 それから数日後・・・


 「キサマらっ・・・許さん、ユルせん、許すものかァーーー」

 「「「「「・・+;・」」」」」



 冒険者ギルドに、殺気ダダ漏れの連中が押しかけて来た。

 頬はこけ、肌につやはなく、頭髪からは異臭が漂う。それでいて目ばかり爛々と輝いている、紛う方なき不審者なのだが。彼らは騎士・魔術師として、地位を持つ者であり。


 彼らがしばらく前に、冒険者ギルドに押しかけ圧力をかけてきた。

 要は〔冒険者ごときが、騎士団ですらできない『訓練』を行うなど分不相応だ〕と、いう”難癖”をつけられる身分を持っており。


 その後、炎熱C.V.(フレイシア)たちに迎撃され、『決闘』で白黒つけることになったとはいえ。その時点では、普通に闘争心があった。

 壁をぶち抜いたフレイシアたちに、内心では怯えていたものの。


 〔魔女C.V.たちなど、我々の敵ではない!〕と、いう”侮蔑の色”が表情にあったのだが。



 現在は〔名誉ある『決闘』を行おう〕と、いう気概はなく。

 余裕に至っては絶無であり。彼らの瞳にあるのは、悲壮感と絶望の色だった。


 「そんなに血相を変えて、いかがなさったのでしょう?」


 「〔いかがなさった〕・・・だと?キサマらのせいでぇ~-~」


 こんな奴らの対応を受付嬢キャスカたちに、任せるわけにはいかない。

 そう判断したギルドマスターのプラシルが接見をするも、連中が殺気を抑えることはなく。


 「財貨をっ・・・我が一族の誉れを返せ!とっとと決闘をするぞ!!」

 「よせっ・・まずは交渉(陳情)を行い、話し合って・・」

 「それをやって、こうなったとナゼ、理解しない!?もう決闘で勝つしか・:・」


 「事情がわかりません!説明は奥の部屋で、お願いします」


 「ギルドマスター(プラシル女史)の仰る通りですわ。熱意ある(・・・・)冒険者の皆さんに迷惑をかけないよう、お静かに説明してください」


 「「「・・・*+~;」」」


 「あの~、シャルミナ様?」


 〔いつの間に、彼らを破滅させたのですか?〕


 うっかり疑問の声をあげそうになって、プラシルはそのセリフを呑み込む。

 世の中、知らないほうがいいコトは多く。ましてやギルドメンバー()いる、この場で『暴露』を行われれば。


 〔まっとうな冒険者たちまで、陽の当たらぬ世界に引きずり込んでしまう〕と、いう確信・・をプラシルはいだき。


 

 〔新米で臨時?のギルマスなのに、どっぷり物騒な世界にはまっている〕

 

 その事実を自覚して、プラシルは秘かに泣いた。

 各メディア・作品で僧侶兼医者のキャラクターが登場しない。

 RPGな西洋『クレリック』系は癒やしの力をもっていますけど。昨今のラノベどころか時代劇ですら、病人の頭を冷やす坊さんが稀少という有様であり。

 江戸時代の時代劇に登場する『医者』は、医者業務が専門の髪をのばしている者が大半です。


 その理由は『寺社への法度』によって、『僧侶』の行動・業務が定められ。〔『僧侶』と『医者』の兼務が難しくなったから〕と、いう理由もあるかもしれませんが。


 私は『医術外交』をやり過ぎて〔『僧侶』の信用がなくなった〕と、愚考します。

 ”汚物(馬糞)を傷口に塗る”と、いう類の”迷信治療”を放置したため。”迷信治療”がバレると〔ナゼ、本当のコトを教えてくれなかったんだ!〕と、患者たちが激怒してしまい。傷口がんで苦しむ人々から、薄情な”ヤブ医者(人でなし)破戒僧(外道)”あつかいされた。


 加えて『薬草・医術知識のある忍者』たちが、医者に転職したり。薬を売買する商人・問屋が開業した。こうして医者を専業とする者が増えたため、『僧侶兼医者』はいなくなったと推測します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ