閑話~ハーレムの囲い:炎熱C.V.班
歴史創作もまじっているのでしょうけど。
『僧兵は巨漢・高僧は長生き・醤油味噌は僧がもたらした・精進料理を作った』ことから考察すると。
戦国時代の僧侶は『栄養学・医学知識』をもっており。それを利用して他勢力に影響力を持った。加持祈祷などの”迷信治療”と併せて、当時の『最新医療』も行使したと推測します。
もっとも『僧侶が医者を兼ねる』と、いうのは歴史常識であり。戦国時代という暴力時代を生き抜くうえで、多少の清濁なら騒ぐことではありません。寺社の建物を城砦化する『建造費』を稼ぐことも、生き延びるために必要なことです。
ただアンチ忠臣蔵の視点から見ると、明らかに不自然なことがある。ねつ造・中傷の疑いがあると、愚考します。
ギルドの訓練場でシャルミナ様が、『理不尽な力』を披露しているのと同じ頃。
冒険者ギルドで働く職員にすぎないユングウィルは、最重要の情報を教授されていた。
「それでは炎熱C.V.の班、及び個々の力についてご説明いたします」
〔・・・~・・よろしく頼む〕
何度目になるかわからない、自問自答をしつつも、ユングウィルに逃げ場はない。
この世界において、親の決めた『縁談』をすすめるのが常識であり。それは庶子であるユングウィルも例外ではない。むしろ『貴族の一員(仮)』として、家に貢献できることを、光栄に思うべきであり。
それを断れば、一族からつまはじきにされた”ハグレ者・危険人物”と、認識されてしまい。群れからはぐれた『獣』と同様に狩られる。最低でも”危険人物”の烙印を押され、ただでさえ少ない知人すら失うことになる。
そのためユングウィルは、言われるとおりに『結婚』する。むしろ私生児のユングウィルに、『縁談』を紹介してくれるだけでも、ありがたいと思ったものだが。
「それでは、後は若い者たちだけでっ・;・`」
「よろしくお願いいたします、ユングウィル様」
そう言って現れた縁談相手は、見覚えのある『火属性C.V.』様の一人だった。
「・・・-・+ー・・・」
「・・-・;・・~;」
「本来なら想いを交わし、愛を育むべきかもしれませんが。
ヒトの貴族・大商会は『縁談』をすると聞いて、それにあわせてみました」
そう告げる下位?C.V.のフラミア様は『男爵』の地位を得ており。ついでに実家の『借金証文』を持っていた。
頭ではユングウィルも理解している。
貴族の父親に命令できる、権力者の意向に従って『結婚』するのは当然であり。冒険者ギルドに潜り込んだ『潜入密偵』に、『縁談』があるなど奇跡以外の何物でもない。
「だからと言って、昨日まで冒険者?だった女性が、貴族になって縁談相手になる。いったいどんな魔法を使ったんだ?」
「兵隊にすぎない炎熱C.V.に、そのような力はございません。
ただこの国で”賊”を駆逐した際に、少しばかり『貸し』ができまして。スムーズに貴族の位を購入しただけです」
〔よし、詳細を聞くのはやめよう〕
ユングウィルの知る限り、C.V.様や配下の軍勢が活躍したという、武勇伝など聞いておらず。暗闘・裏取引のどちらも、知ろうとしただけで口封じされかねない。
権力者・平民のどちらも残酷だと思い知っている、私生児は一切の追求を行うことを断念し。
「貴族なら多重婚も珍しくないですし。私が正妻の地位について、他の炎熱C.V.は側室になる。
この『縁談』は、その計画の一歩です」
「よし、詳しく話しを聞かせてくれ」
〔このまま流されていたら、ロクな事にならない〕と、確信したユングウィルはダメ元で質問を行い。それに対し正妻担当のフラミアは、真摯に包み隠さず質問に答え。
〔盗賊ギルドを圧倒している、男性すら逃れられない。オレでは抵抗するだけ無駄だろう〕と、いう結論に間もなく至った。
世の中、それは理不尽なものだ。
『信賞必罰』とは言うものの。目立った功績をあげなければ、恩賞を与えらることは無く。かと言って〔恩賞など必要ない。平和が欲しい〕などと、下手にささやけば。一生涯はりつき、束縛して、逃してくれない”愛の重い女”と婚約させられる。
だからタクマは立ち回りに細心の注意をはらい。敵将の首を射抜かず、妹たちにたかり続け。雑兵を撃ち、伝令兵を射殺しつつ、下級シャドウの『旋風閃』をフォローした。
〔表立った『功績』など、ただの一つもあげていない!〕と、タクマは胸をはって断言できる。
〔勇馬君が婿入りして、四凶刃の席が空くから。今日からタクマ君が新しい四凶刃になってね〕
〔異論はございません〕〔『おめでとうございます、兄様』〕
〔お披露目は何時になさいますか?〕
〔ちょうど一族にも、援護・遠距離の攻撃ができる者たちを、育てる時期が来たと考えていました。タクマなら適任でしょう〕
シャドウ一族の中でも、四凶刃は男性シャドウが就ける、ほぼ最高位なのだが。
聖賢の御方様、姫長の扇奈様にとっては、(雑兵を束ねる)兵卒がいいところであり。上級侍女の皆さんにとっては、”雑用係”も同然だ。
よってタクマに拒否権などあるはずもなく。謹んで四凶刃の位をいただき、気楽な下級シャドウの身分に別れを告げた。弓兵シャドウとして、後輩の育成に励んだものだが。
〔四凶刃の一員たる者が、いつまでも独り身では困る〕
〔・・・仰る通りでございます〕
〔だから同じ独り身の桐恵と結婚しなさい〕
〔・・・-・^・ッ〕
ヤバいのが多い女性シャドウたちの中でも、極めつけに凶悪な『竜角鬼?』を使役する。新米で名ばかり四凶刃のタクマより、はるかに戦闘力で勝るブラコン姉妹の片割れ女と婚約する。
タクマは一瞬、気が遠くなり。
〔〔〔〔ご結婚おめでとうございます!!^!〕〕〕〕
〔これで桐恵さんが、わずかでも落ち着いてくださればっ〕
〔〔弓術の修行・弓兵シャドウの運用はお任せください!^!〕〕
部下で、愛弟子で、(お気楽な独身の)兄弟だと思っていた者たちから、手ひどい裏切りを受ける。
どいつもこいつも心の底から、タクマの結婚を祝福してくる。その胸中にあるのは〔タクマに危険人物を押しつけて、自分たちは平穏を得よう〕と、いう保身の性根のみであり。
〔苦楽を共にしよう。弓兵部隊として一旗あげよう〕と、誓った団結心など欠片もない。そんな薄情な部下たちに、タクマは静かに憤慨し。
〔他人の幸せを祝福するとは感心ね。褒美にキサマ等には、多重婚のお膳立てをしよう〕
〔〔〔〔〔〔〔〔〔〔・・・-・~・・〕〕〕〕〕〕〕〕〕〕
さすがの上層部も桐恵さんを相手に〔ハーレムを作りなさい〕と、告げる危険性を理解しているようであり。その事実を聞いて、タクマは少し心が軽くなった。
同時に硬直している部下たちの前で、心の底から笑みを浮かべた。
ネタバレ説明:炎熱C.V.班について
8級火属性の下位C.V.フレイシア・バイスラーが率いる、5人組のC.V.チームです。
下位の兵士C.V.として、『装備・付与術式』を変えて、C.V.の軍勢に組み込まれることもあり。前線で戦い、死亡率の高いC.V.兵隊なのですが。
今回、諸事情によりハーレムを形成することを命じられた。本来なら人間の生活圏に出てこない等級のC.V.なのですけど。
イリスが混成都市ウァーテルを築いたあげく、【依頼】で無茶苦茶をやらかしたため。特例で人間界に来訪した、幸運??なC.V.班です。
姓の『バイスラー』は、メンバー全員のコードネームであり。疑似家族・ハーレムメンバーであることを示すため、全員が『バイスラー』の姓を持ちます。
メンバーの能力・担当は以下のとおりであり。
1)フレイシア:チームリーダーとして戦闘指揮を行う。兵種は『防衛術士』。『焦熱動床』をメインの『魔術能力』とする。
2)フィニー:アタッカーとして攻撃を担当する。兵種は『ストライカー』だけど実質、雑兵で何でも行う。瞬間火力の高い『爆裂光炎』を研ぎ澄ませている。
3)フルル:索敵・サポートを担当する『メイガスメイド』。戦闘から家事までこなす・・・ということになっているものの、戦闘面に重点を置いており。
主な『デザイン』は『重烈火弾』
4)フリス:フルルと同位体?で、同じように索敵・サポートを担当する『メイガスメイド』。火属性としては器用に『術式』を使い。反面、チームの中で戦闘力は、最も低い。フルルと連係して『ファランクスバルカン』を放つ。
5)フラミア:平時の生活・『魔術』を担当するチームの副リーダー。職種は『創魔導士』であり。魔力量・魔術適性のどちらもメンバーの中で頭一つぬけている。とはいえあくまで下位C.V.の範ちゅうにすぎず、チートにはほど遠い。
メインの『魔術』は『インフェルノボール』。魔力を多く込めた『火球』であり、速度面などに欠点も多い。
個々の能力は、こんな感じですが。
チームの本領は、籠城・防衛戦であり。『ファランクスバルカン』×2で迎撃をしつつ、フレイシアが攻城兵器に対応する。状況にあわせてフィニーが牽制・攻撃するか、フラミアが『魔術』を放つ。
これが彼女たちの戦法であり。大ボスの攻撃を受ける『タンク』と勘違いして、レイド戦に参加させると。よほど相性の良いモンスターでないかぎり、残念な結果になってしまいます。
横山光輝先生の描かれた『武田信玄』のコミックに、次のような一幕があります。
『北条の家臣が京で薬を求めた・・・』と、いうものであり。(おそらく)癌を患った北条氏康を治療するため、一縷の望みをかけて行ったのでしょうけど。その動きは信玄に把握されて・・・
当時は『遠い京都で諜報を行うなんて、武田信玄はすごい!』で、終わりましたが。戦国の医療事情を考えると、極めて重要な一幕です。
まず現代において、地方の住民が病気にかかれば、かかりつけ医の先生に診てもらい。検査の結果、地方の医療で手に負えない重病の場合、紹介状を書いてもらい。都市の大病院で治療・手術をしてもらう。
こういう流れで、私の命は助かったのですが。
戦国時代も、これに類似した流れがあり。
北条家ほどの戦国大名が、召し抱えている医者で、治療できないとなると。
〔師匠筋の医者・文化の中心に集められた薬なら、治せるかもしれない。(だけど京都に行くことはできないから、諦めるように)〕と、いう感じのセリフが出て。それを真に受けた大名家・家臣が、京都で薬を求めるわけですが。
そんなことがバレれば〔薬を買い求めている戦国大名家には、病人がいる〕と、見透かされたり。『朝鮮人参』など薬効があるものか、毒にも薬にもならない水薬ならよいのですが。病人の健康を害する、毒薬モドキをつかまされたり。
一番、最悪なのは〔薬を求める、他家の家臣とかち合って争いになる。名医・良薬を独占しようとする、不届き者と見られ、全勢力に袋叩きにされる〕ことであり。
戦国時代の治安を考えれば、身を守れる武力も必要となるでしょう。
そうなると交渉を任せられ、薬草の知識もある。かなりハイスペックな『忍者』に、『良薬』を求めさせるしかなく。
たとえ『良薬』を得られなくとも、京都で諜報を行える。仮にも日本の中心である、京都の状勢を知ることができ。コネの一つも作れれば、儲けものでしょう。
『忍者』としても、『乱破』殺す気満々な、敵地・敵国に忍び込むより。京都で活動するほうが、色々とおいしく。
こういう戦国時代の状況で”忍者は賤しい”と、言うのはアホでしかない。〔ほっといても病・破傷風で死ぬだろう〕と、言っていい自殺志願者であり。
薬草知識がある『忍者』の地位が低く。ひどい時だと”賤しいニンジャ”あつかいされるのは、不自然だと愚考します。