閑話~魔王の黒霊騎士~訓練場の魔鐘:ベルセルクバスター
戦国時代、迷信治療がはびこり。それに気付くか否かで、軍勢の強さが決まった。兵力の損耗率・傷病兵がどのくらい復帰するかが、決まったと愚考します。
そして『僧侶・忍者』の強さは、そういう『治療法』を見出すことにあったと愚考します。
戦国時代、僧たちは身を守り勢力を広げるため、寺を要塞化したとのこと。物騒な世の中、それは生き延びるため、必要なことでしょう。
ただしコストはかなりかかったと推測します。何故なら参拝客を集めるため、寺社には荘厳さも必要であり。さらに僧侶が寝泊まりする生活空間も必要です。
戦の時だけ住居から城に集合する、武士のようにはいかない。機能・城の防御力を最優先に築かれた、『武士』の城砦と違い。外観・生活空間と城砦の防御力を併せ持つ、戦国時代の『寺院』は、多機能かつ高コストであり。
武士たちが『山城』を築いているとき、寺社はとっくに『平城』レベルの寺院を築いていた。
それ程の技術格差を、まっとうなお布施だけで成し遂げる。檀家のお布施を建造費にして、寺を要塞化するのは不可能であり。
かなりの財源があったと愚考します。
冒険者ギルドの訓練場において、炎熱C.V.のフレイシアは、単独でS級冒険者パーティーを打ち破る。
『魔術・魔術能力』を駆使して、数の不利をくつがえしたのは、『魔術』の有用性を示し。実力のある冒険者たちに勝利した戦績は、フレイシアたちC.V.の実力を、見物していた冒険者たちに刻み込んだ
これにより『魔術』に慣れさせる、促成の訓練に対し、荒くれ者たちも熱心になるだろう。
半数だけ。
「ふざけんなっ、こんなのはインチキだ‼」
「・・ー・あんな『魔術』が使えるはずが無い」
「卑怯な手が使われてないか、調べさせろ…」
フレイシアの戦いを見ていた、冒険者たちの半数弱が騒ぎ出す。
それは決闘の結果を貶める、無様な行為であり。『魔術』を使えない、冒険者たちの本心の現れでもあった。
『魔剣』を所有できない者たちに対し〔『魔剣』の攻撃を受けて、その戦いになれましょう〕と、告げても訓練の成果が出るとはかぎらない。
むしろ『魔剣』を所有できないことへの無力感にさいなまれ。『魔剣』を持つ者に対する、劣等感・嫉妬心が増大したり。『魔剣』への恐怖をまぎらわせようと、ヤジ・中傷を行う者も少なくない。
〔普通の人間・亜人ならば、それに反発する。あるいは絶望するのでしょうけど・・・〕
あいにくフレイシアは兵卒C.V.であり、戦争種族の一員だ。この程度の反応は予測済みであり。拠点の『幻術結界』で疑似体験した魔女狩りは、こんな甘い状況ではなかった。
よってフレイシアは、ひるむことなく説得を始めようと、口を開き。
「皆さんっ・・・」
「前座のS級冒険者ごときに、ずいぶん時間を使ったものだ。
そんなことで、【依頼】を任せられる勇士が育つと思っているのか?
『KyS・シャ^sh・/_ー~ー・ー』×4
女シャドウである桐恵様の乱入によって、フレイシアの言葉は遮られ。
訓練場の地面を割って、複数の『妖樹』が伸びあがり、辺りを見下ろし。
その尖端は、最近の『訓練』によって記憶に深く刻み込まれた、虫の鎌脚へと変じていった。
『フレイムバイザーsetup●ー●ファランクスバルカン!』×2
それに対し炎熱C.V.班のフルル、フリスの二人は迷わず観客席から飛び降り、最も得意とする『魔術能力』の乱射を行う。桐恵様の意思を確認することなく、本気の『連火烈弾』が多重で斉射され。
巨大な鎌?妖樹な『竜角鬼』の体表が削られ、はじけ飛び。
「戦えない者は、撤収しなさい。setup●-●バーストフレア!!
戦える者は『竜角鬼』の足止めを頼む。桐恵様の相手は私だ!」
一人魔力をためていた炎熱C.V.の全力攻撃によって、『竜角鬼』の一体が爆砕し。その勢いのまま、フィニーは桐恵を強襲する。
「待ちなさいフィニー!桐恵様に挑むのは・・」
「待てないっ!!この状況を解決するには、彼女に挑んで勝利するしかない!」
「・^・^・・」
「出口がっ・・!?」「ダメだ・・逃げ道がふさがれて・・」
「こいつらっ!『竜角鬼』が外から・!・*+」
同時に訓練場の混乱は拍車がかかり。その火は冒険者ギルドの建物全体へ、広がりつつあった。
その原因は乱入してきた桐恵様にあるものの。
そもそもフレイシアとS級冒険者との間で、行われた『決闘』が穴だらけだったことも、遠因であり。
〔S級冒険者が情報漏洩したのを『魔術』で調べた。それを裁くため、ハンデをつけて決闘を行った〕と、いうのがフレイシアたちの主張だが。
人間・冒険者たちにとって、『魔術』の証拠は認められず。
〔下位C.V.は『誓約』がかけられているから、裁判において偽証ができない〕と、いう主張も通らない。
そのため〔炎熱C.V.班とS級冒険者との間で、もめ事が起きたから決闘を行った〕と、いう勢いでフレイシアたちの要求を通す。
腕きき冒険者と他勢力のつながりに、楔を打つため『決闘』を行ったのだけど。
冒険者ギルドの訓練場に協力していたのは、炎熱C.V.班だけではなく。
『竜角鬼』を提供して、異形のモンスターに慣れさせる訓練をしていた。
いずれは魔境・迷宮の巨大モンスターを狩れる、S級冒険者を鍛える思惑があった。
凶猛なカマキリの本性を抑制して、『妖樹モドキ』の準備をしていた桐恵様を、フレイシアたちは出し抜く形になってしまい。
「C.V.チームのアタッカーか・・その火が私に通じると思うなら、やってみるがいい」
「やってみせる!!『フレイムバイザーsetup●-●フレア`・』」
『デッドリーノヴァ』
「「「「「「「「「「ッ!-!?」」」」」」」」」」
闘技場ほどの広さがある訓練場に、『魔力』の鐘が鳴る。
冒険者・炎熱C.V.たちから、『竜角鬼』を従える桐恵に至るまで。全員の心身に響き、圧倒しつつも、意識を飛ばすことを許さない。
唐突に出現し、訓練場の空に出現した『魔性の鐘』が、不毛な争乱の場に衝撃を与え。
『剛烈にして、柔を断つ腕
折れずの戦鎚にして、削られ続ける重渦の嘆きよ
狂騒の爪を割り、狂乱の牙を砕き、凶猛なる角ごと屠る、剣をつかめ
ベルセルクバスター!!!』
シャルミナ様が『剣』をかざす。先日、魔王の側室という『持つ者』として、もたざるフレイシアたちに正論をふりかざした。
そんな上位C.V.様の剣先が『空中の魔力球』へと向けられ。
『Goo`Oo0w--ー~ ̄ー・・ーー***』
「「「「「「「「「「・^・;ッ」」」」」」」」」」
フレイシアたちの眼前で、『魔性の鐘』が術者のシャルミナ様を呑み込む。かざされた『剣』を目印・道標と見なして、『高圧の魔力球』が降下を行い。
回避・防御のどちらも不可能な、『デッドリーノヴァ』の咆吼が響き渡った。
「なるほど、これはキツイですわね」
「「「「「「「「「「・・・ー・」」」」」」」」」」
そして本物の理不尽が出現した。
「皆さんには、生き延びるために『防御』の訓練をお願いしている。『防御』ができるよう『魔術・魔造物』に、慣れる『訓練』をしてもらいましたが。
たまには『攻撃』をしたい。『魔術』で強者を気取る者に、やり返して、意趣返しをしたい。
私も『重戦士』の一翼として、お気持ちは理解できます」
〔〔〔・:・;・〕〕〕〔〔・+・-・;-;・〕〕
その御言葉に対し、訓練場にいる者たちが一致団結して、訂正を行っていれば。
〔シャルミナ様はご理解しているようで、実際の認識は隔絶している〕
その実情を説明できれば、フレイシアたちの未来は変わっていたかもしれない。
だが実際のところ〔貴女様は重戦士などではないでしょう〕〔貴女にやり返されたら、終了してしまいます〕と、胸中でつぶやくことすらできず。
「早急に新しい訓練方法を考案しましょう。
それまで皆さんは、ゆるりとお過ごしください」
「「「「「「「「「「・・+・;」」」」」」」」」」
一瞬、逃走する誘惑に、フレイシアはかられるが。
〔逃げた者が捕まるまで、この場に居座ります〕と、シャルミナ様が仰れば。『この場』が大事な者たちは、地の果てまで逃亡者を追いかけるだろう。
何故ならフレイシアたちが、そうするから。
「炎熱C.V.の皆さんと桐恵様・・・それとユングウィル様はお集まりください。建設的な会議のために、話し合いましょう」
「「「「了解です」」」」
「承知したわ」
こうして冒険者ギルド訓練場の改良が決定した。
ネタバレ説明:『ベルセルクバスター』について
本気を出した、本来のシャルミナが使用するための、『魔力の剣』を具現化する『魔術能力』であり。
派手な能力はなく、切れ味の悪い大剣を『魔力』で構築するだけ。
『鑑定・解析』系統の術で調べれば、そういう情報しかでない『魔術能力』にすぎません。
ただ愛しの魔王様から与えられた『魔術能力』であり。シャルミナ様はとっても気に入り、大事にしている。『侮辱=大惨事』が確定する、『地雷』です。
ちなみに黒霊騎士は、鍛冶師が命をすり減らして鍛造した、専用の大剣を所有しており。実戦では、そちらを使用しますけど。
個人的な修練・大事な式典や気まぐれで『与えられた魔力大剣』を使いたがり。
配下の三人組C.V.たちは、はっきり迷惑しています。
と言うのもシャルミナには前科があり。
偽の劣化不死の戦士?集団を率いる術者が、『魔力の大剣』の悪口を言ってしまい。
巻き添えで、死にかけたたあげく。『すさまじく消耗する剣』を、シャルミナの善意で、教えられそうになり。
〔この事態を解決できるのは、魔王様しかいません〕
〔〔異議なし〕〕
こうして三人組C.V.は急成長を遂げ、壁を破り、さらなる苦難にあうのですが。
ソレはまた別の物語になります。
ではどうやって割高な、寺の要塞化を行ったのか?私は『医術』を使ったと愚考します。
ただし『医術』と言っても、加持祈祷の”インチキ治療”などではなく。当時としては最新の『医術』を施し、治療費をもらったと推測します。
そもそも戦場を生き延び、死の近い戦国武将たちが、いつまでも”インチキ治療”に貴重な軍資金を払っているでしょうか?
”敵国の情報を忍びに調べさせても、医術に関してはホイホイ騙される”
それは不自然というものであり。〔戦国武将をなめすぎ〕と、いうものです。
兵士で労働力でもある、僧兵には適切な治療を行い。
一方、俗世の者には高額医療を行う。僧侶の治療=加持祈祷ですけど。そこに『医術』を織り交ぜ、さらに高額な加持祈祷を行う。
そうやって稼いだ金で、高コストの要塞寺を建造し。荒稼ぎしすぎて、他勢力の怨みをかった。そのため寺社勢力は、江戸幕府に封じられたと愚考します。