表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
341/422

閑話~訓練場の表裏

 それなりにメジャーな双子神である『多芸神アポロン』と『月神アルテミス』


 その誕生神話は、すさまじく過酷な内容であり。


 『女王神ヘラが出産を妨害し。「全ての大地で出産を禁じる」と、いう呪縛?・神の権力を行使してくる。

  そのため女神レトは、新しくできたばかりの「島」で出産を行った』


 『女王神ヘラ』が行った、出産を妨害した手段の中でも、最も壮大な内容であり。小心者としては論評したくない、ハードな神話です。

〔全ての冒険者に修練が必要だ〕


 こんな正論だけで、冒険者たちが熱心に『訓練』をできるなら、苦労しない。


 食うや食わずの冒険者たちにとって〔修練をしているヒマがあるなら、依頼の一つもこなして稼ぎたい〕と、いうのが本音であり。

 依頼を成し遂げるため〔準備を行い、情報を集める〕ことこそ、冒険者パーティーの利益になる(生存につながる)のが、実情だ。

 他にも〔実戦こそが、あらゆる訓練に勝る〕〔不測の事態が発生した際に、訓練場で行った訓練など役に立たない〕〔他人に手の内を見られるのは、避けたい〕と、いう様々な理由により。


 中堅冒険者たちは『自主トレ』こそすれ、冒険者ギルドの訓練場を使用することは皆無だった。

 そして〔依頼をこなして欲しい〕と、思っている冒険者ギルドも、それを認めている。



 しかし『依頼料の分割払い』に伴う、様々な変化により。

 C.V.様、シャドウ一族様から多大な援助をもらい、【重要依頼】を任された。その状況下では〔“依頼書の奪いあい”をしているヒマがあるなら、訓練で実力をつけろ!〕と、通達されており。


 〔冒険者は自由だ!〕〔俺には、オレのやり方がある!!〕

 〔そもそも『手の内』がバレて。闇討ちされたら、どうしてくれるっ!!〕と、いう理屈を並べる者も少なくなかったのだが。



 



 〔後学のため、“見世物”ぐらいは観てください〕


 半ば強制依頼に等しい言葉に従い。訓練場を囲むように作られた観覧席に、中堅冒険者(荒くれ者)たちは座らされ。

 

 『お前たちが、「訓練」に反対する冒険者ですか?』


 「『水那』さん。そんなことを言っては、いけません。

  彼らは【依頼】をこなしてくれる冒険者さんたちです。まずは穏便に話し合わないと」


 そこで待っていたのは平民の服に身を包んだ、女性?二人であり。名乗りもしない“無礼者”であり。


 そして冒険者たちの勘が、警鐘を鳴らす『ナニか』であった。



 「あんたらは何者だっ!?」


 「これは失礼いたしました。

  私の名はアン・グリュールヴ。6級水属性のC.V.です」


 『私の名は「水那」と言う。姉様の「魔竜鬼イモウト」であり、兄様の「ドゥーガ(魔竜鬼)」を兼ねる。よろしくね、冒険者の皆さん』


 そう告げたC.V.関係者の二人は、わかりやすく『冷気』を放ってきた。


 〔理論上、人間(単独)ではかなわない戦闘力を持つ〕と、言われる6級C.V.の『魔力』で訓練場を覆い。広がる濃霧に巨大な『蛇影』が投影され、冒険者たちの心胆を寒からしめる。


 〔〔〔〔〔勝ち目など、欠片も無い〕〕〕〕〕


 魔力量・その展開速度に精密なコントロール。どれをとっても人外のソレであり、束になってもかなわない。彼女たちと自分たちの間に、それほどの実力差があると、冒険者たちは察したのだが。



 「それでは皆さんに『見世物ショー』を披露いたします」


 『楽しいタノしい「茶番劇ショー」を観て。ワタシの「手札」を目の当たりにして。

  その秘密が役に立つか、教えてください。お代は、それでけっこうです』


 口上セリフと共に、不穏な妖気が発せられる。

 訓練場を水流が撫でていき、泥沼と化した地面から『いびつな氷柱』が浮かび上がった。


 「「「「「・・・~・ッ」」」」」


 『氷像から出でし、水のしずく  覚醒をもたらす、清涼の霧  


  氷晶の明かりは、夢幻を溶かし  海鳴りの魔女は旋律を唄う 


  ブルーセイレーン!!』


 アンと名乗ったC.V.が呪文を唱える。水流・妖霧と輝く氷の三つが、『氷柱』に降りかかり、通り過ぎていき。


 「なっ!?三重で魔術を発ど`・-・・」


 「「「「・・・-ー ̄ー~ーー」」」」


 『見世物』とやらを見物していた、冒険者たちを絶句させた。ただしそれはアン様の『魔術能力ブルーセイレーン』に対してではなく。

 『歪んだ氷柱』に見えていたモノが、凍らされていた『大蛇サーペント』であること。突然、怪物が解放され、かま首をもたげ。獲物エサの物色をするべく、辺りを睥睨へいげいしていることに対してだ。


 その開いた瞳孔は人間を獲物とする、捕食者のソレであり。中堅冒険者たちは恐怖しつつも、生き延びるために武器をかまえようとして。


 『そろそろ、食べていいですか?』


 「いいですよ。『ヒュドラ(・・・・)』に食べさせてください」


 『・・・・・(そう言えば)・・・・・・・・(ショーの最中です)承知しました。「分身蛇竜ヒュドラ」の養分オヤツにします』


 『Gy;`-/!*:g・a*・~:?;//!!』


 理解したくない『捕食の光景(シーン)』を観て、 冒険者たちは硬直する。


 『蛇影』と思っていたモノが、三つに分かれ。

 『大蛇?』のかま首にかみつき、胴体にからみ、尾から呑み込んでいく。わずかな抵抗(ムダなあがき)は、蛇頭を地面に叩きつけられて終わり。


 泥沼と化したはずの柔らかい地面に、『水?』が破裂した音が響く。


 「「「「「・・+;ー`-・」」」」」


 「お目汚しをいたしました」 


 凍りついた荒くれ者たちに、6級水属性のC.V.(アン)様が話しかけてくる。


 「これにて『見世物』を閉幕といたします。

  迷宮・魔境の奥には、このような『モンスター』が棲まい。経験の少ない勇者の皆様では、(貴方たちのように)驚愕で隙をさらすことになりかねません。


  どうか経験を積んだ冒険者の方たちには、驚愕を少なくするための『訓練』に、ご協力をお願い申し上げます」


 『・・^ ̄^・お願いします』


 そう告げるアン様にならい、水那様も頭を下げてくる。

 それは『巨大なボスドラゴン(死をもたらす災厄)』が、地面にアゴをのせているような。身体構造的には平身低頭しているのに、無謀な人間(冒険者)たちを見下ろしている。


 そんな幻視を冒険者たちはしたものの、C.V.(アン)()間違いなく頭を下げており。


 「「「「「全力をつくします!:!!」」」」」


 冒険者たちは生存本能の命じるままに返答をする。



 それと同時に、周りでう(オヤツを)ごめいていた(食べ終わった)『多頭蛇竜の影』も、訓練場から霧とともに消え去っていった。


 




 冒険者は忙しい。いきなり〔修練・・をしてください〕と、言われても。その時間を確保するのは難しく。何より自分の戦闘スタイル・受けた依頼の冒険に、『修練』の内容が役に立たなければ。


 食うや食わずの冒険者たちは、依頼を探して成し遂げることに、時間をかけるのは当然のことだろう。



 「だけど、それでは【依頼】を達成することはできない。ちょっと(・・・・)『攻撃魔術』を放たれたくらいで、動揺しペースを乱す。


  そんな『魔術』への恐怖を払拭するために、これより『訓練・・』を行う!」


 『連火烈弾バルカン!』×5 


 「どわぁー:~!!」「へぶっ!?」「あだ、ダ、だダァっ!?」



 筋力を高める。武術の動作をくり返し、身体に動作を覚えさせて、戦闘力を高める。

 そういう『修練』の結果は、一朝一夕で結果は出ず。加えて冒険の最中、未知の脅威に遭遇して動揺すれば、何の役にも立たない。

 逃げ足のほうが、生存率を高める。


 

 「ほらほら、どうしたっ!火属性の『攻撃魔術』とはいえ、威力を抑えられた、必中効果もない『術式』だぞ。


  避けて、防いで、耐えてみろ!:!」


 『バルカン!』×2、『バルカン!』×3


 教官を務めるユングウィルの言葉に応じ。火属性の下位C.V.たちが『バルカン』の火弾を拡散させて放つ。それによって冒険者たちは半包囲されるも、『バルカン』の圧・威力は下がり。


 「この野郎ぉ・・・」「避けてみせるっ!」「うぉおおーーー!!」


 冒険者たちは、それぞれの特性を活かして、『バルカン』に対抗する。

 盾で防ぐ者、跳躍して回避を試みる者。そして『バルカン』の圧力が小さいところに、突撃を仕掛ける者までおり。



 それはわかりやすい『訓練』の成果であった。


 人間は未知を恐れ。恐れは動揺につながり、実力を発揮できなくなる。

 それを防ぐため『騎士』たちは厳しい訓練を行い。指揮官の命令で、命がけの戦いができるよう『身』を鍛える。


 ただしそれは『領地からの税収』を得られる。軍資金(税金)で『装備』を整え、『訓練』に集中できる。

 権力者とその家臣だからこそ、可能な『訓練』であり。


 少しばかり収入が安定・増加した程度な、冒険者たちには不可能な『訓練』だ。



 「そうだっ・・敵を観察し、状況を把握して、覚悟を決めろ!!」


 『バルカン!』×3

 『フレイムシールド・・・っ』『ヒートクロー!!』


 『バルカン』の連発に対応し始めた冒険者たちに対し、C.V.たちも瞬時に対抗策をとる。

 『術式バルカン』を再び集束させ、それを『火炎の盾(フレイムシールド)』で守り。遊撃役ヒートクロのC.V.が、牽制けんせいしつつも隙をうかがう。



 ならば冒険者たちの『訓練』は、手札の多さで行う。

 様々な『魔術文化』を持つC.V.様とのつながりを活かし。戦争種族であるC.V.様に『訓練』をつけてもらい。


 色々な『術式』に攻撃される、『体験(訓練)』を行い。冒険で不測の事態が起きても、対応できる。動揺を最小限に抑えて動けるようになる、『経験値』を『訓練』によって得る。


 それが冒険者ギルドの『訓練場』を活かす方法であり。



 「そこまでっ・・!」


 「どうだっ・・+まいったか!」「これが冒険者ベテランの実力だぞ^!」

 「へへっ、俺たちも捨てたもんじゃねぇ・・・」


 「「「「「・・・-^・」」」」」


 

 『訓練』とはいえ、勝利によって冒険者たちに自信をつけさせる。自信によって、実力を高めさせることを狙い。



 「それでは次の『訓練』を開始する。準備をしろっ!!」


 「「「・・・えっ」」」


 『ドラゴンホーン・・ホーンスラッシュ・・・スラッシュマンティス!!』


 ユングウィルの号令とともに、『魔道具』に込められた『呪力』が発動し。それは『訓練場』に埋められていた触媒モノを、『竜角鬼マンティス』へと変化させ。


 「待てっ・・オレ等は戦い終わったばかR-ィ*//」

 「ぎゃブっ*?」「うわぁ~---」



 得がたい経験をさせ。厳しく理不尽な冒険を、死亡するリスクが少ない(ゼロではない)疑似体験をさせ。さらに『自信』が“自惚うぬぼれ”に変わった、荒くれ者たちの鼻っ柱を折れる。


 【依頼】を達成するために必要な、努力を“おこたったり”。不誠実なコトをしたり、裏切ればどうなるか、わかりやすく心に刻み込む。



 『フレイムバイザー setup●ー●インフェルノボール!!』


 『ッ!!K・*\sh/ァ*:**』


 「「「・・・-;・」」」


 火属性の下位?^?C.V.様が本気を出して、『竜角鬼クリーチャー』を爆散させる。



 それによって学ぶことの多い、今日・・の『訓練』は終了し。 


 明日・・からは中堅冒険者たちが、教師として後輩冒険者たちを『訓練』する。

 そんな交渉がとてもスムーズ(・・・・・・・)に進められた。

 『女神レトは、新しくできたばかりの「島」で出産を行った』


 その神話の別バージョンとして『新しい島』ではなく、『海中を漂う(潜水する)浮島』で出産した。

 女神レトは女神様ではなく、『人間の王女』としてあつかわれた・・・・・などがあります。


 『検索』で軽く調べることは、できなかった時代のこととはいえ。『アポロン、アルテミス』二柱の母神として、ローマ時代にも信仰されていた。美術品も数点ある『女神』が『人間』に格下げされていた。


 私は基本的に『文化の伝播でんぱで、誤訳されたり。間違って伝えられることもある』と、考えており。凡人として『間違って伝えられることもあるさ』と、思っていますけど。


 『女神レト』をはじめとした“人間に格下げされた女神の神話”に、関しては例外であり。

 『女神とその子供・神格』をおとしめる。“デマ・中傷”の類だと思っています。


 そのため、それらに関しては〔文化の伝播だな~〕と、呑気に楽しむことはできず。『考古学』などで、『神格』が復権することを願います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ