閑話~分割払いの表裏
因習の一つに”双子は忌むべきモノ”というのがあります。
その理由はいくつかあり。”跡継ぎ争いの火種になる””医術レベルが低いため、双子の成育が困難だ””財政・儀礼などの問題で、双子を育てる負担が大きい”など。物理的な理由から迷信まて、様々な理由が推測できます。
そんな世界において『多芸神アポロン』と『月神アルテミス』。あるいは北欧神話の『美神フレイア』と『豊穣神フレイ』。それと『双子座』の『カストルとポルックス』は、どうして成立・活躍できたのでしょう?
私の知るかぎり、東西文化圏で信仰されている宗教に、上記以外で双子の『神格』はいない。世界・歴史的に見れば、『双子神』はかなり珍しい。いたとしてもマイナーエピソードを発掘しないと、見つけられないでしょう。
そんな中で、それなりメジャーな『双子神』がいて、『双子座』英雄がいる。
とても興味深いお話しです。
依頼料を『分割払い』にする。
それによって依頼人は〔(シーフに狙われる)大金を持ち歩く〕と、いうリスクが軽減され。
〔緊急事態に、なけなしの『金』をしぼり出す〕と、いう苦難に直面することなく、必要な依頼を出せるようになり。
一方の冒険者ギルドは報酬・依頼件数の両方が増加した。
依頼を出す際に〔大金が用意できない〕と、いう困難が減ったことにより、依頼件数が増え。それに伴い『報酬』も増加することになり。
両者が得をする、トッテモ素晴らしいw、『仕組み』がデキあがりました。
無論、世知辛い世の中で、そんな都合のよい話しなど、あるはずも無く。
冒険者ギルドの受付嬢キャスカは、”厄介な依頼者”への対応に苦労していた。
「だ・か・ら!『依頼料の分割払い』を行うには、『審査』が必要なんです!
原則、個人からの依頼は『現金の一括払い』と、決まっています!!」
「そこを、なんとかっ!互いに美味しい話なのだ・・特例を認めるがいい!!」
〔ふざけるんじゃないわよっ!〕
あつかましい貴族家の一員が、恥知らずな依頼をしてくる。
”未開地の開拓に協力してくれ。報酬の支払いは、開拓が成功してから”
この”依頼?内容”を意訳すると、次のようになり。
”害獣・モンスターの襲撃から、開拓民を守りつつ。過酷な荒れ地を開拓し、食糧の確保もしろ。
(何度も失敗している)開拓が成功し、当家が利益を得て、当家の功績が評価された後に。
冒険者たちに、報酬をゆっくりとくれてやろう”
こういう〔自力で開墾したほうが、はるかにお得だ〕と、いう内容ですらマシなほうであり。
普通に報酬を踏み倒したり、貴族の利権争いに巻き込んでくる。
〔代替わりして・・部下が勝手に・・紛争中だから・・〕と、いう建前で報酬を踏み倒し。
〔山賊・モンスターの群れがいる、仇敵の貴族と紛争している〕と、いうような開拓+αで(不毛な)争いが発生する地域に、冒険者たちを送って、捨て駒にする。
”お家の存亡が、かかっているのだ。なりふりかまってられない”
”冒険者ギルドは豊かになったのだ。貴人にその富を献上すべき”と、いうような特権ルールを振りかざし。
冒険者・ギルドの両方を食い潰す、あつかましい依頼?をしてくる連中が急造していた。
そのため冒険者ギルドのスタッフは、その無理難題を断る。無礼をとがめられない礼節をもちつつ、言質を取られないよう。最低でも対応し続ける話術・精神力が必須となっていた。
そうして不毛な時間が過ぎ去り。
「おのれっ・・これ程、頼んでも依頼を受けぬとは!
こうなれば『分割払い』の話をW`※ァ!?!」
「待てぇーーい!!」
受付で騒ぐ不届き者の後頭部から、イイ音が響く。同時に『依頼』にはほど遠い、”要求・横暴”の連呼が止まり。
受付嬢たちは、秘かに一息をつく。
「無礼な・・・狼藉者かっ!?」
「田舎貴族が、これ以上さえずるな!
冒険者ギルドに手を出すことが、何を意味するか?・・・キサマは理解して、やっているのだろうな」
「なっ!?何者だ!・!」
仮にも、まあ、一応は貴族の血をひく依頼人??に対し、後頭部をなぐって威圧を行う。
荒くれ者とはいえ・・・否、暴力の世界に生きる冒険者こそ、その蛮行がもたらす危険性を熟知しており。普通の冒険者なら、こんなことを絶対に行うはず無いのだが。
「我が名はユングウィル!
ギルド連盟の(自称)騎士にして、C.V.様の忠実な僕だ!!」
〔初耳ね・・〕〔騎士を名乗るなら、もっと実力がないと^・^〕
〔C.V.様の名を出して、大丈夫かしら?〕〔ダメに決まっているでしょう!!〕
イロイロと突っ込まれている、男の本名をユングゥと言う。
貴族の血は引いているものの、跡継ぎになれる可能性はなく。かと言って冒険者としてのセンスに欠ける。”盗賊ギルド”に牛耳られていた、冒険者ギルドでは、早死にしそうな性格だったが。
「関係ない者は引っこんでいろ!冒険者ふぜいが口を出す・・;・!?」
「あいにく我は冒険者であるのと同時に、貴族家の代理人でもある。
貴族からの依頼は、我が聞いてやろう」
「・・・-;」
そう告げて、自称ユングウィルさんは『貴族の紋章』を見せつけ。冒険者ギルドに”たかり”に来たモノを、威嚇した。
現在、自称ユングウィル殿は貴族からの依頼を専門に受ける、受付窓口・・・という木っ端貴族への『防壁』となっており。『男性・貴族の血』や『大きな身体』などを活かして、有象無象を追い払っている。
世の中には”大声をあげて、しつこく要求すれば、おこぼれをもらえる”と、考えるあつかましい連中がおり。不本意ながら、平民?の女性受付たちで、奴らの対応を行うのは困難だ。
『分割払い』に伴う激務で、そんなヒマはないのに加え。受付嬢を見下し、欲望を隠そうともしない。”暴行魔”の予備軍と言っていい、連中の相手をするのは、誇張でなく心身を削られる。
そのため冒険者ギルド(+C.V.様)は、有望な貴族子弟たちを、ギルドの警備員兼『交渉役』として雇い。
「どうした?(腰が引けてる)その様子だと、単なる貴族家の関係者か?」
「ぐくっ!?」
「安心するがいい。
我はエセ貴族・ボンボンや御用商人だろうと、無下にはしない」
「おおっ!だったら・・・」
「ただし!!受付嬢やギルマスの業務を妨害することは許さん。
そして最低限の資格をチェックさせてもらう・・・おいっ!」
「っ!?」「何をするっ!」「無礼な・・ワタシに触れて`・;」
ユングウィルさんの合図で、押しかけた連中が、半ば強制的に連行されていく。
それを横目に見ながら、キャスカたちは受付業務を再開させた。
冒険者ギルドには様々な施設があり。
その中で〔最も有益で、全く活かされていない〕と、C.V.様たちに言われた施設がある。
「オハナシをする順番になるまで、退屈だろう。ここで見学してるがいい」
「ここは・・・」
その施設を『訓練場』という。
実戦の初歩も知らない、見習い冒険者たちを訓練する。少しでも生き残れる可能性を高める、有益な場所であり。
〔訓練内容が、低レベルな対人戦にすぎない〕と、C.V.様たちに言われた。平均レベルの冒険者たちを鍛える場として、有効活用されていない施設が『訓練場』であり。
『Ki.sYa--●\^/●ーー!!』
「「「ウォオオーーー`-!!」」」
「やるっ・・だったら『連火烈弾!』×4」
「どわぁーッ!?」「チィ!」「やらせH*:*・!:!」「アニキぃー!?」
しかし『依頼料の分割払い』が導入され。報酬・依頼件数のどちらも大幅に増加したことに伴い。
『訓練場』は悲鳴と怒号が交錯する、危険な闘技場と化していた。
「やったかっ!?」「・・-*・」「アホかっ!油断しているヒィー!;~!!」
『G`gィーー○\:/○--』
三人組の戦士が『竜角鬼』を撃破した・・と思った途端に、足下をすくわれ逆襲され。
「ああっ!?すみません、すみません!
『バルカン』の威力を間違えました・・;・」
「気にするな嬢ちゃん」「そうさっ!実戦でくたばるより、ずっとマシ!!」
「〔マシ!!〕じゃねぇ-ー、防具の修理代はっ!?」「アニキぃ・・:・」
赤色の髪を激しくゆらしながら、下位C.V.のフルル殿が謝罪をくり返し。
そんなマジック少女に対し、冒険者が喜怒哀楽をあらわにしている。
それは今までなら、考えられない光景だった。
荒事をこなす冒険者たちは〔功績をあげて、有名になりたい!〕と、いう願望と同程度に。
〔手の内を隠して、楽に勝ちたい。対抗策をとられないようにしたい〕と、いう思惑もある。
それらは戦いの世界に身を置く者として、当然の思考ではあるものの。
〔依頼をこなして名声を得たい〕→情熱
〔奇襲するのはいいが、されるのはイヤだ〕→姑息
微妙にかみ合わない。相性の悪い感情であり。それらをうまく両立させるのは、容易ではない。
むしろ感情の折り合いがつかず、手柄を最優先する、即物的な思考になったり。
姑息な奇襲で楽して勝つのに加え。〔大勢に認められる、名誉も欲しい。功績が認められないのは、世の中が悪い〕と、いう感じに歪んでいく。
その結果、安易に仲間を酷使して、切り捨てたり。自分たちだけに都合の良すぎる”二重基準”をふりかざす。
権力を持つ貴族ですら破滅する、”ヒトとして終わった”言動を、荒くれ者がやらかし。
”ざまぁ”ですめばいいのだが。残念ながら、周囲を巻き込み、被害をばらまくのが実情であり。
この状況を放置する冒険者ギルドは、”無能”のそしりを受けても、自業自得というものだが。他人の考え・生き様を変えるのは、言うほど容易ではなく。
「そこで我々は『依頼料の分割払い』を行うのに伴い。C.V.様たちの力をお借りして、激しい訓練を行っていくことにした。
暇になると、ロクな事を考えなくなる。
だから訓練によって、仕事量を調整し。さらに増えた依頼に対応できる、様々なタイプの冒険者を育成する。
〔魔術だ~;・;怪物だー;`;〕などと、いちいち動揺しない。実力のある冒険者を育て、今の大変革に臨むのだ!」
「「・・-+・」」「・-・;・」「ほ、ほうー・~」
ユングウィルの演説に対し、連行された有象無象はドン引きする。
〔野蛮な!〕〔適当に相づちをうって誤魔化そう〕
〔そんな危険な場所に、連れてくるな!〕
そんな内心が透けて見える連中を、ユングウィルは胸中で罵倒する。
C.V.様の御力によって、冒険者たちが実力をつける。生死・依頼の成否を左右する訓練を行っている。
『魔術生物』はともかく、攻撃魔術で(仮にも)手加減を行っている。
これらの『重要性』がわからない。わからないなりに、探って知ろうとしない。
そんな”愚か者”たちと、『取引』をする価値など無く。
『・~・:+:・-・』
『・~・=・:・~?』
『・~c・:・-・』
訓練場で中堅冒険者たちに『火弾』を放っている。『火術式』の訓練を行っている、若手C.V.殿の一人へ、ユングウィルは合図の『術式信号』を送り。
『フレイムバイザー set up ●ー●フレアーカノン!!』
『Sha//:\~\^シュsyuルLu---』
『火属性の眼甲』をつけたC.V.兵卒が、ひときわ派手な『攻撃魔術』を放ち。
ちょうど変型していた『竜角鬼』のパーツを、バラバラに飛び散らせ。
「「「「「なぁっ!?」」」」」
「「「・・^・ー・」」」「「「「・:・-`・」」」」
焼けた破片を訓練場の辺り一面にばらまく。訓練場に広がる火の粉は、熱そうだが『延焼』しないよう、『付与』を施されており。
”三文芝居”を知っている、冒険者たちは落ち着いて、退避行動を取ったのだが。
「おやおや、運の悪い。C.V.殿の『魔術』が事故をオこすなど、めったにないのダガ」
「な、な、なっ・・・」「・・アチィ、あち、アチっ!!」
「どうしてくれるっ・・弁償で済むと思うなぁ!:!」
「承知した。ならば『竜角鬼』の持ち主である御方を紹介しよう。
賠償は、そちらにするがいい」
ユングウィルの知るかぎり。もっとも『穏健』の2文字が遠い、女性シャドウ様の元へ、不届き者たちを誘導する。連中が五体満足で帰ってこれる、可能性は皆無だが。
冒険者たちが長期的に請け負っている【依頼】を妨害する連中は、ユングウィルたち良識ある貴族家に連なる者たちにとって、”仇敵”に等しく。
「ついでに『お願い』もしてみたらどうだろう?」
「無論だ!金で済む問題ではないぞっ」
有象無象が確実に破滅するよう、『一押し』をしてやり。
いつの間にか静かになった、訓練場から送り出した。
まあ『双子座』の誕生神話は、昼ドラで『男女の敵』なエピソードだと愚考します。『大神ゼウス』のロクでもない”武勇伝”ですので、現代文化には受け入れられないでしょう。
『フレイ、フレイア』の双子神は『和平の条件として、北欧神族に取り込まれた』と、いう神話であり。二柱の神格に無礼を働くのは、不毛な争いにつながりかねない。北欧神族は『戦争大好き』な武闘派神族ですけれど。
そんな彼らが『和平』を結び、戦争を終わらせる。〔よっぽどイヤな戦争だったんだな~〕と推測し。〔双子がどうの・・・〕などと、言ってる場合ではないのでしょう。
そんな中で、『多芸神アポロン』『月神アルテミス』の二柱は、色々と想像の余地がある。魅力的な神話だと、愚考します。




