表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
336/422

閑話~弓兵シャドウの邪法:灰鳴千弓

 〔『多芸神アポロン』は『医術』を司っている〕と、いうのは不思議な話です。

 『神秘の超越者』である『神様』なら、『祈祷・御利益ごりやくによって、病を癒やした』と、するほうが信仰を集めやすく。実際、『神官・聖職者』は、そのようにしています。


 ケルト神話の『ディアンケヒト』など、『医術を司る神格』は世界中を見渡せば存在します。とはいえそこそこ珍しい神様であり。『神秘の聖なる(よくわからん)力で癒やす』神様のほうが、圧倒的に主流でしょう。


 それなのに古代(の神秘が色濃い)ギリシャ~ローマで信仰され、『預言』という特別の神秘を司どっていた。そんな『アポロン神』がいくら多芸とはいえ、神秘と相反する『医術(知識)』を司る。


 不自然というか、首をかしげる神話だと愚考します。

 スラムの解体:貧民街スラムの住人に、まっとうな雇用を提供する。上下水道の工事を行い、区画整理を執行して、治安を向上させる。


 そんなことが容易に可能ならば、二流どころの領主たちも、スラム解体を行っているだろう。だが実際は名君の王でも、スラム解体は困難であり。

 アホ貴族・バ家臣かしんたちが、間接・直接の両方からスラムを破壊している。『スラムを解体して住民を活かす』ことを、”スラム住民たちを直接・間接の両面から殺す”ことと一緒くたにしているのが、大半であり。


 〔また(・・)スキャンダルで貴族が没落するらしい〕

 〔酒・女に賭け事(スラムの生計)に溺れたのだろう〕

 〔愚かな貴族の秘密(情報)バレやす(容赦なく)い。何でかな(売られる)~^・~〕


 別に善良誠実に〔民のために尽くせ〕と、バッケムは権力者たちに要求しない。

 ただ〔破滅したくなければ、スラム街にも配慮しろ〕と、思い知らせるだけだ。


 過去形である。


 聖賢様、シャドウの皆様たちの大器は、ケチなゴロツキ(バッケム)が想定する、遙か彼方にあり。早期に降伏したバッケムたちは、混成都市ウァーテルの近隣・・都市で、ある任務を与えられていた。



 「混成都市に行くだとっ!?あそこは魔性の力で、半ば魔界と化しているぞ・・・」


 「ウァーテルに行くなら軍資金が、必要だろう。

 どうだ(有り金)一勝負し(根こそぎ)ていかないか(うばってやる)?」


 「仕事が欲しいなら、この町(・・・)で冒険者になってもいいだろう。

  文字の読み書きができるだとっ!?だったら、うちで雇うぞ」



 こんな風に、流言・甘言をろうし。何らかの技能を持つ者には、働き口まで紹介する。そうして硬軟×表裏の様々な手段によって、バッケムたちは人の流れをコントロールしていき。


 「こちらが、今月の成果でございます」


 「・・・ご苦労様です。こちらが報酬になりますので、ご確認ください」


 「ありがとうございます」


 報酬の中身を確認することなく、バッケムは侍女C.V.(メイレン)様に平伏する。

 C.V.様の報酬は、常にバッケムたちにとって、満足のいくものであり。そもそも無惨に狩られていく古巣シーフを知っていれば、〔報酬を(生かして)もらえるだけありがたい〕と、いうものだ。


 「『開拓地』の整備が進みました。今後、農業ができる人々は、そちらに誘導してください。

  それと賭け事・借金で他者の行動を縛る“行為”は、徐々に縮小していき・・・」


 侍女C.V.様(上から)のメッセージに、バッケムはいちいちうなづき、記憶力をフル回転させる。

 普通に機密のため、書類にすることは許されない。かと言って“忘れました、間違えました”と、いう戯言が通用しない世界であり。


 バッケムは必死に頭を働かせた。

 

 


 かつて盗賊ギルドに所属していた、バッケムたちが行っていることは二つ。


 一つは旅人・スラム街の住民も含めた『住民情報(戸籍)』を作成すること。それもまっとうな住民たちに不安を与えないよう。金貸し・投資を通して、あくまで合法的に『住民情報』を得る。


 〔貸した金を返せる見込みがあるか。売買()・従業員の情報を見せろ〕と、いうように穏健グレーな手段で情報を集める。



 しかしバッケムたちの主要任務は〔『人の流れ』をコントロールすることだ〕と、確信している。

 

 混成都市ウァーテルの人口増加を抑制する。夢をいだき、暮らしに困った人々が一気に流入して、スラム街が肥大化しないよう。

 かなり強引(・・・・・)な手段も使い。バッケムたちはウァーテル周辺・・都市の、裏社会を牛耳ることになり。


あの“謁見”によって、重要任務が何か、心に刻まれた。




 「キサマたちへの任務は、都市ウァーテルへの人口増加を抑制すること。そのために商会を作って、働き口を用意しつつ、情報を集め・・・」 


 「ボ~クっは、カッワいいメっイドっさん~^・^

  よっご()れったとっころを、掃除するー~・-」


 「「「「・・・;+*ー・~ー」」」」


 「あne・・太守様!お戯れは、ほどほどになさってください」


 「戯れじゃないよ、イセリナ。

  大事なお仕事を任せるから、外見に惑わされない人材か、ちょっと確認しただけだから」


 「「「「・+・;・」」」」


 〔〔〔〔ウソだっ!失敗したら始末するって、脅しに来たんだ;!〕〕〕〕


 一瞬、そんな考えがよぎるも。


 「クスクス・・^~^」


 「まあ、理解があるのは、良いことよ」


 バッケムたちの背筋に冷たいものが流れる。

 

 奇天烈メイドの(欠片も笑ってない)視線、は撫でるように操作された殺気、バッケムたちの思考が見透かされているコトなど。恐ろしいものはいくつかあるが。


 〔何でアンタが憐れみの目を向けるんだ・・・〕


 都市ウァーテルの中でも有数の権力を持ち、財力を誇り、【上の御方】をいさめられる。そんな上位C.V.のイセリナ様が、バッケムたち(底辺のチンピラ)に“カワイソウナ者”を見る目を向けている。


 その視線に反発心を(あわれむな)抱けない(と、言えない)

 いつの間にか折られている、自分たちの心に、バッケムたちは絶望した。






 ”スラムの解体”を行う。頭がお花畑な、魔女C.V.たちの考えそうなことである。

 そもそもスラム街に堕ちた連中など、古傷を持った敗残兵も同然であり。古傷をえぐり、追い打ちをかける。どちらの方法でも、破滅させ餌食えじきにするのはたやすい。


 「ならば、C.V.勢力もろともに、破滅させてやろう」


 酒・クスリやギャンブルに溺れさせるか。恋に狂わせ、殺しの快楽を思い出させてもいい。魔女C.V.たちを巻き込むなら、スラム街の連中に濡れ衣を着せる。

 冤罪で苦しめ〔権力者に裏切られた〕と、貧乏人どもに思わせれば。あとは流言・飢えを使って、奴らを再び転落させてスラム街(狩り場)を復活させる。そうすればわずかな報酬で『捨て駒』になる連中を、組織することも可能だろう。


 「おっと、その前に軍資金を稼がなければ」


 スラム街のガキどもで、欲望を吐き出させれば、貴族どもにもコネができる。悪徳の都ウァーテルが陥落し、奴隷の『供給』が滞っている。それは奴隷の『需要・値段』が高まっているのと、同義であり。

 解体された”元スラム”とやらに放火して、孤児が増えれば、一石()鳥にもなるだろう。


 何より、多大な手間をかけたであろう”スラム解体”が、台無しになってしまう。それはウァーテル占領から負け知らずな、“シャドウ一族”に一矢報いる、大きな転機になるだろう。


 そんな自らの勝利を確信して、シーフキングのダビルは矢継ぎ早に命令を下していった。






 『リィ・・リィ-、リィン・・Rye`リィーーー』


 日が暮れた都市に、『術式』による鈴の音が響き渡る。穏やかで、心の安らぐ風の調べは、人々の心を安らげ。


 「ひぃッ!?」「聞こえるっ!またまだ聞こえっ・・!**」

 「ヤメろぉーーー/*」


 ボンクラ鼠賊どもの心をえぐっていた。

 正確には『術式による怪音』でノイローゼに陥らせ、不眠症にしたあげく、破滅へのカウントを行っているのだが。


 順次、破滅していく連中には、どうでもいいことだろう。

 少なくとも術者シャドウ弓兵タクマにとっては、どうでもいいことだ。


 『ピィー`ピィー`ピィー`ピィー`』


 「「「「-・*;・・・ーーッ」」」」


 『鈴の音』が『呼び笛』の音に変わる。まともな(・・・・)衛士が仲間を呼ぶ際に使う、合図の『笛の音』であり。悪徳の都によって骨抜きにされていた、汚職官憲イヌが使うことなどなかったモノだが。


 「イヤだっ、死にた/-」「「・・*+ッ/-」」

 「逃げろっ、逃ゲ/ェ-」


 現在は『旋矢』で射殺す、“賊”の人数を知らせ。


 「おい、しっかりしろ!」


 「;+*:・・・」


 「よせっ、そいつは、もう!」


 「アニキを見捨てろって、言うのか!こんな矢傷ぐらいで・・・」


 うるわしい兄弟愛が披露されているが。”放火魔・水源をけがす連中”の愁嘆場なぞ、タクマにとって一顧だにする価値すらなく。


 「ガッ、Ha,ハSee--Y-s-』


 「アニキっ!?」「伏せろっ!」「「「いやダーー;-」」」



 『吹き矢を放てぬ、楽のしょう  魔笛の連なる、妖鬼の調べよ


  不安を弦に、不眠を鈴に、不審を旋律と化し


  静寂すら安らげぬ、一夜の狂宴を矢玉で彩れ!!   灰鳴千弓(怪冥閃弓)



 “盗賊ギルド”に属する連中の、聞くたえない断末魔が、路地裏に木霊する。


 本来、『灰鳴千弓かいめいせんきゅう』の“邪法”は封印・死蔵すべきたぐいのものだが。

 

 散々、川・ため池や上水道に『毒』を投じる、企て(テロル)をシャドウ一族は返り討ちにした・・・にもかかわらず、この後におよんで“放火”が通用すると考えられる。



 「そういう“オメデタイ”連中に友愛を説いてもムダよ・・・こちらも『狂気の邪法チカラ』があることを示す必要がある」



 そういうシャドウ上層部の意向を受け。タクマは『旋矢笙(布石)』を仕掛けて、『灰鳴千弓』を発動させた。

 これから“盗賊ギルド”のアジトは、この世の地獄と化すだろう。


 「まあ放火魔・毒殺魔のたぐいが、“共食い”をするだけか」


 そう告げて、タクマは『呪力の矢』を弓につがえた。










 ネタバレ説明:『灰鳴千弓かいめいせんきゅう』について


 正式名称は『怪冥閃弓』という『魔術能力』であり。上位C.V.のダレかが開発に関わった、『死霊術ネクロマンシー』です。


 発動条件は『タクマが呪力を込めた矢で、射殺す』または『旋矢笙せんやしょうの応用によって、呪力ストレスを蓄えさせた悪党を用意する』と、いうものであり。


 効果は『一夜のみ限定で使役できる、ゾンビを作る』と、いうものです。


 『魔力』が高いとは言えない、タクマの術で『強力なゾンビ』を創造?・使役することなど、本来は不可能ですが。

 『ゾンビは一夜のみの使い捨てにする。日が昇れば、ゾンビに頼った戦い方は(ていては)できない(敗北する)』と、いう誓約を課すことにより。



 本来なら、有り得ない耐久性・速さや器用さを持つ『ゾンビ』を、タクマの『魔力』で使役できる。

 加えて日の出とともに、その『醜聞ゾンビ』を処分できる。敵のネクロマンサーが使う『アンデット』を一時的にでも、『タクマのゾンビ』にしてしまえば。『日の光』によって、『そのアンデット』を燃やしてしまえる。


 『ネクロマンサー』の神経を逆なでする、裏技が使えます。




 さらに『吹き矢筒』に風術で呼気を送り、口をつけることなく『吹き矢』を放つ。隠し武器・ギミックのような『旋矢笙』にも裏技があり。


 「『吹き矢』を放つよりも。『怪音』を発する笛を吹かせるほうが有用だろう」と、いう意見が出されたあげく。

 「『針』サイズの『吹き矢筒=魔笛』を造り。地面・着衣や人体に、それを刺して、嫌がらせの『怪音』を発しよう」と、いう悪用をタクマが思いつき。



 『灰鳴千弓』と『旋矢笙』が掛け合わされ、凶悪な『魔術能力(邪法)』が編み出されます。


 その方法とは『灰鳴千弓』によって『強力なゾンビ』を創り。『そのゾンビ』を利用して、『旋矢笙』を使うというもの。

 『ゾンビ』の身体から『怪音』を発したり。『針サイズ』の『吹き矢筒=魔笛』を、他者になすりつける。そうやって『怪音』をさらに発したり、『ゾンビ』を増やす条件を満たすべく、対象を疲労させる。



 『邪法』どころか“テロル”を行う、『魔術能力』であり。


 〔放火・水場に毒を入れるテロを行うなら。こちらも『灰鳴千弓』のゾンビで、やり返すぞ!〕と、言ってるに等しい。

 不毛な武力外交を行う、危ない『魔術能力』です。 

 ちなみに検索すると『アポロン神はかつて疫病神だった。それが転じて医術を司る』『アポロンの矢が病をもたらし、それが転じて医術を司る』と、のことですが。

 私はこれらの説は疑わしく思っている。はっきり言って否定したい。


 何故なら神秘があふれ、命が軽い『古代世界』において。神が怒って『疫病』をばらまく神話など、珍しいことではなく。『疫病神』が転じて医術を司るならば、世界中の神話に『医術を司る神』で、有名・・な神格が存在するべきであり。

 

 〔『医術を司る神(ディアンケヒト)』が珍しい〕と、いう現状と相反しています。



 『矢=病→医術』の話も同様であり。その理屈だとアポロン神以上に弓矢と関わりの深い、『狩人女神アルテミス』も医術に関わる。弓矢に関わる世界中の『神々・英雄たち』が、『医術』に関わっているはずですけど。

 

 現状は改めて、述べるまでもないでしょう。


 一応、古代世界において、『矢傷』『弓矢』の殺傷力は凶悪なまでに高かった。現代人が読む『戦記・歴史物語』には、雰囲気がぶち壊しになるので、まず記されないでしょうけど。

 わざわざあつかうリスクの高い『毒矢』など用意しなくとも。『矢じり』を汚す小細工をすれば、『破傷風』という恐怖の病をもたらす、”病毒の矢”ができてしまう。


 それが命の軽く、医術知識の『蓄積』が難しい。”略奪暴行”が当然な古代世界というものであり。

 『矢=病だから、医術も司る』という〔アポロン神の権能は不自然で納得いかない〕と、愚考します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ