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閑話~落鷹の暗躍:雷鷹鳴羽

 多神教の神々には、それぞれ司るものがあり。自然現象から人々の営みまで、様々なものを『神々』は司り。それらをベースにして、神格化したのが『神話』でもあります。


 私は北欧神話の『美神フレイヤ』は『港・拠点』が神格化した。北欧神話を信仰するヴァイキングたちにとって、重要な『港』を司るから『フレイヤ女神』は人気があると愚考します。


 例えば『フレイヤ』は『鷹の衣』『猫が引く戦車』を所有しており。『鷹・猫』を眷属としているわけですが。

 鷹は害獣を狩り、猫はネズミを獲るわけで。〔重要な拠点に害獣の被害があっては困る〕と、いうヴァイキングたちの願望が、『鷹・猫』の眷属になったと愚考します。

施療院で『無償の治療』を、元侍女シャドウの羽矢弥はやみ様は行わず。代わりにスラム街の環境・雇用を改善することで、間接的な『健康増進』をもたらす。

 当然、それをよく思わない者は、刺客をさし向けたが。重騎士・シャドウたちを率いる水属性C.V.(アン)様が、迎撃・防衛を行うという。完全に過剰防衛な陣容をしいており。


 「どうやら(これは)忙しい(まずい)ご様子、ですし。また日を改めて(逃げましょう)・・:・」


 そんな風に眷族C.V.マリーデが考えた時には、既に手遅れであり。

 『竜爪獣アラクネ』を操る、器用な霧葉シャドウ様と一緒に、施療院へと招かれ(連行され)



 「それでは、どうかよしなに、お願い申し上げます」

 「・・;・*(タスケテ、)・;・・:・・(コロさないで)


 「安心しなさい。私たちC.V.は常に誠実に、『契約』を守りたいと思っている。

  裏社会ソチラが不届きなことをしない限り、無益な殺生などしない」


 「・・アリガトウございます。アリガトウゴザイマス」

 「・・・;+*・・・ー;・」


 恐ろしい言の葉に対し〔断じて、何も聞いていません〕と、いう冷静な表情を、マリーデは作る。

 

 聞き覚えのある声は、スラム街の顔役ゼムルグが発するものだろうか。惨めに震える護衛の男が、どんな目にあったのか、断じて知りたくない。


 「あらあら、カティア様()容赦ないわねーーー」


 霧葉様のつぶやきを聞きつつ、マリーデは改めて、自分に言い聞かせる。


 〔下手をうてば、私も裏社会の住人(元盗賊ギルド)と同様に、惨めに震えることになる〕


 そう言い聞かせながら、施療院の中で最も身分の低い、マリーデは案内されるままに進み続け。




 「この部屋にしましょう、マイア」


 「了解だ・・・『影のとばりは覆い、闇の幕はささやきを吞む  ダークカーム』」


 マイア様の『詠唱』で、案内された部屋が閉ざされていく。魔術種族C.V.様がわざわざ『詠唱』した、透視・盗み聞きを防ぐ『結界部屋』が展開し。


 「用件は手短に済ませたいですが・・・

  まず確認しますが、現状のスラムを貴女たちはどう見ます?」


 「それはっ・・・」


 〔羽矢弥様の政策によって、スラムが解体されている。命が軽く、人の死が日常となっている。そんなスラム街は、なくなりました〕


 こんな媚びへつらうセリフを、羽矢弥様たちは求めていない。マリーデたち歓楽街の住人にとって、まさに奇跡に等しい偉業なのだが。お二人の『瞳』は、そんな追従ついしょうを望んでおらず。

 

 「ん、ん~。推測になるのですけど、何か『術式チート』を使われましたか?

  私には感じられないですけど、索敵用のこの子(アラクネ)が、何か不安定ですし」


 「・・・-・」


 「・・・・(退き時ね)・その通りよ。

  私のスラム解体は『広域魔術』の発動が、根幹にある。


  無論、上下水道の延伸は、御威光(イリス様)の賜物だけど。羽虫()殺しの『雷鷹飛夜』だけで、スラムの住民たちに(仕事をする)活力をもたらすことはできないわ」


 〔結果が全てであり、『魔術』の行使ぐらい、良いではありませんか!!〕


 マリーデはそう言って励まし、『厄介な真実』など聞きたくないのだが。部屋の空気は、それを許す雰囲気ではなく。

 それに様々な事情で、スラム街で暮らさざるをえない。現実に打ちのめされ、無力感にさいなまれ。そうしてスラムの劣悪な環境で、心身を疲弊させた住民たち(・・)に活力をもたらした、『仕掛け(タネ)』に興味はある。


 「だから私は『雷鷹飛夜』を放ったドサクサに紛れ、この『魔術能力』を発動していた。


  『向かい風に、飛翔する者  横風を瞳で射抜き、雨天に折れぬ両の爪よ


   羽ばたく翼の羽根をぎ  羽根の羽毛をみが


   巣を作り、寝床に微睡まどろむ  両翼を静かにゆらせ・・・雷鷹鳴羽らいようめいう!』」



 羽矢弥様の『詠唱』によって、閉じられた部屋の空気がふるえる。『風属性?』の魔力が、マリーデの肌を優しくなでていき。

 彼女は自らの身体に、『身体強化』がかけられたことを認識する。


 しかし、その効果は極めて微弱なものにすぎず。


 「・・^・^・ー・ッ?」


 「・・・なるほど『身体強化』を行うことで、心にも活力をもたらすわけですわね」



 『古の戦神』は歌によって、士気を高め。それに伴い兵士の戦力を強化したとか。

 羽矢弥様の場合、それとは逆の術理であり。『身体能力をふるわせることで、スラム住民の沈んだ心を活性化させる』と、いうのが『雷鷹鳴羽』なのでしょう。


 〔もっとも、この『術式』で活力を得られる人は、少ないでしょうけど・・・〕


 おそらくスラムに来たばかりで、まだ元気な者。スラムに逃げ込んででも〔絶対に生き延びる〕と、いう気概がある者を、対象にしているのでしょうけど。



 「そうだな・・・今日のところは、もう帰ったほうがいいだろう」


 「「ッ!?」」


 「実際に体験してみないと、わからないことがあります。

  聖賢の御方(イリス)様からたまわった特権を使い、お二人には今から一晩休みをとってもらいましょう。


  明日、改めて施療院ここに来てください」


 こうしてマリーデと霧葉様は、事実上の帰宅を命じられた。











 ネタバレ説明:『雷鷹鳴羽らいようめいう』について


 羽矢弥がスラム街の住民にに対して発動した、広域に『身体強化』をかける『結界術式』であり。


 極めて微弱な効果しかない『身体強化』をかけることで『疲労させて、快眠をもたらす』と、いうのが本命の『術式』です。快眠によって、心身を回復させ。思考が回るようにして、仕事に就けるようにする。

 これが『雷鷹鳴羽』の本当の効果です。



 本来、『他者からの魔術』によって『身体強化』をかけられると。『魔術』を発動した術者が魔力を消費して、被術者の負担は少ないのが常識ですけど。


 『雷鷹鳴羽』は極小ながら、被術者の体内電流に干渉することにより。『身体強化』の負荷・魔力消費を被術者に押しつけてしまう。そうやって疲れさせて、被術者に快眠をもたらします。


 もちろん眠りの強制は危険であり。特に物騒なスラム街ともなれば、なおさらですので、いくつか条件をつけており。


 1)寝床で眠ってから、快眠をもたらす

 2)酒を飲むと、眠気が強くなる

 3)日が暮れると、睡眠欲が増す

 4)家庭内暴力などをするゴロツキを狙って、デメリットを増大させる

 5)『○♡幸』をシた者たちは、メリットをサービスする




 「「「・・・^:^・」」」


 「何か、言ったら・・!」


 「歓楽街にとって、極めて有用な『術式』でございます。ぜひとも私に・`・」


 「黙りなさい」


 「かし(何か)こまりました(言えって・・)」  

 他にも『フレイヤ女神』が所有する、『戦車チャリオット』についてですが。


 農工を司る『雷神トール』の『戦車=戦時に物資を輸送する荷車』と、仮定すると。

 港・拠点を司る『美神フレイヤ』の『戦車=拠点の倉庫に、物資を運び入れる荷車』と、いう仮説を立てられます。


 正直、“略奪”を賛美などしたくありませんが。

 沿岸部を襲って戦利品を抱えた『ヴァイキング』たちにとって、それらを倉庫に運ぶ『荷車』も尊いものだった。『美神フレイヤ』の神具にふさわしい『戦車=荷車』と、いうイメージがされたと推測します

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