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閑話~落鷹の施療院

 見た目がシュールで、『雷神トールの戦車(荷車)』とも異なる。『ネコ』がひくフレイヤ女神の『戦車チャリオット』とは、結局なんなのでしょう?


 私はチャリオット=『船舶』だと愚考します。


 ネズミを獲る『ネコ』が船で飼われることは珍しくありません・・・というのは現代人の感覚であり。文明の技術力が低い、巨大カヌーのような『船』では、『ネコ』以前に『ネズミ』すらいないでしょう。


 それに対し、『外来の神格』であるフレイヤ女神は『ネコが関わる乗り物』に騎乗していた。そのイメージが『ネコのひく戦車』になったと妄想します。 

 元スラムの住民と、『高級宿』の建築に携わる職人ギルドのメンバーを融和させる。

 “差別”から信用問題など、様々な理由によって雇用されるのが難しい。そんなスラムの住民を建設現場に受け入れさせるため、羽矢弥はやみ様は歓楽街の人員を雇い。


 誘惑・脅迫まがいの手段を使い、元スラム街の住民たちに雇用をもたらす。


 それは男の悲しい性を利用した、ハニートラップに近い仕掛けであり。言うだけなら簡単だが、色街で生まれ育ったマリーデの知るかぎり、実行に移した者はいない。

 何故なら費用対効果コストパフォーマンスが悪すぎる。大金を払って娼婦・男娼たちスタッフを雇い、得られるのは赤の他人が職を得ることという。


 羽矢弥様には一銭の利益にもならないのに加え。職人・労働者たちに『心理誘導』を仕掛けた秘密は、絶対にバレるわけにはいかず。秘密を守れる者を選ぶなど、そのコストはけっこうなものとなっている。


 「これは、チャンスかもしれないわね」


 間違いなく『上の御方』が関わっており。今回のみのことなら、今回の報酬だけを、いただいて終わりだが。類似の企画を継続するなら、歓楽街の住人であるマリーデにとって、大きな儲け話に関われるチャンスであり。


 羽矢弥様の施療院を訪れたマリーデは、勇んで交渉にのぞんだ。


 「こたびの計画が成功したこと。人員スタッフを都合した『協力者』として、お祝い申し上げます」


 「ありがとう。の計画が成功したのは、貴女たちのおかげよ。

  報酬の金額には、色をつけておくわ」


 「お心づかい、ありがとうございます。これを機に・・良い縁が結ばれれば幸いでございます」



 〔どうか旦那サヘル様とも、よしなにお願いします〕と、いうセリフをマリーデは飲み込み。

 まずは安全確保の口上を述べる。


 元侍女シャドウである羽矢弥様は、今の時点でマリーデどころか、サヘル様より身分が上なことは確実ですが。こんな施療院を与えられた、羽矢弥様の現状が不明であり。下手に探りを入れた者たちが、どういう最期を迎えたか、マリーデも小耳にはさんでいる。


 自業自得の愚か者とはいえ、マリーデにとっても他人事ではなく。歓楽街の住人たちにも、それとなく警告している。



 そんなマリーデに対し、羽矢弥様はにこやかに告げた。


 「サヘルには『筆者光術ライターライト』の件で、世話になっている。貴女とも、これから仲良くしていきたいわ」



 『光術付与』を行った紙・インクを併用することで、誤字脱字を訂正できる。『結界部屋』を展開するなど、いくつか条件が必要となるものの。『写本』・読み書きの練習などに、かなり重宝する『術式』が『ライターライト』であり。


 『お盆に砂をしき、小さな棒をペン代わりにして、文字を練習する』と、いう類の『代替物』による勉強よりも。〔実際に紙・インクを使っている〕という事実は、生徒たちの学習意欲を刺激していた。



 「おかげで効率よく住民に、読み書きを教えられたわ。彼らが就職できた件は、しっかり(聖賢の御方(イリス)様に)報告しておいた」


 「ありがとうございますっ・・」


 羽矢弥様の言葉にマリーデは内心で快哉をあげた。



 教育が受けられず、文盲もんもうが多い平民にとって、計算・読み書きができる者の存在は大きい。商売に関われば即戦力となり。手紙で情報を伝え、契約書の不備ワナを見破る確率も上がる。

 少なくとも“愚かなスラム街の住人”と、いう偏見を軽減できるのは大きい。


 そんな『ライターライト』を編み出した、この件は必ずサヘル様の出世につながる。

 〔歓楽街に入り浸る、ナンパ野郎〕と、後ろ指をさされる旦那様の汚名を払拭し、見返す力をもたらす。その事実にマリーデは喜びつつも〔羽矢弥様との人脈は、絶対に強固にしなければ〕と、改めて考え。


 

 「羽矢弥様、どうやら招かれざる“客”が来たようだ」


 「・・・承知したわ。少し待っていてくれるかしら」


 男言葉のC.V.マイア様のセリフと視線によって、夢想から目ざめさせられた。


 

 

 

 

 かつてのスラム街に隣接して建てられた施療院。羽矢弥様が主動して建てたそれには、いくつか他の施療院とは異なる点がある。


 「私はタダで住民を癒やしたりなどしない。治療・・を求めるなら、対価を要求するわ」


 「「「「・・・-・」」」」


 そう告げた羽矢弥様に対し、心ない“罵声”を浴びせる者もおり。それ以上に陰口をたたく者は多かったが。


 「炊き出しを増やしましょう」

 「いくつか(人の生き血)条件を満たせば(をすすらないなら)、裏の仕事を見逃してあげる」

 「この住処から立ち退いてくれるならば、新居とそれを建てる『仕事』を、いくらでも紹介するわ」

 

 「美味しいよぉ・・」「選択の余地はないのかっ・・!」

 「上下水道の(続けて)整備(仕事)まで()、任せると!?」


 「冒険者ギルドと話はつけたわ。薬草採取・清掃などの低ランクな依頼を、私が窓口になって受ける。くれぐれもワタシの面子カオを潰さないように・・・」


 「「「「「ハ、ハァーーー!!!」」」」」


 『無償の治療』以外の政策を、羽矢弥様は次々と打ち出し。最小限の流血で、スラム街は解体されていったのだが。




 「この世は所詮、弱肉強食だ!己の甘さを後悔しながら、死ねぇ!/!*・*」


 『バウッ、ガルルルッ・・・』『『『ランドランダー!!!』』』

 『『旋風閃っ!』』


 「ぎゃ、ヒィッ!?」「ー/*・:・\`/*ッ!?」「くそっ、逃げる/*・!」


 待ち伏せを受けた刺客たちが、次々と討たれていく。

 『使い魔犬』が威嚇して噛みつき。動きの止まった者を、重騎士の剛拳が殴り飛ばし。

 そんな目立つ護衛たちが、取りこぼした連中・逃走を企てた者と『観測者ウォッチャー』たちを、加速したシャドウが仕留めていき。


 「毎日、毎日、ご苦労なことだ」


 『ワウッ!ウゥーー!!』


 「とはいえ、うっとうしいのも事実。お命じくだされば、私が刺客を送っている頭目を、討伐いたしますが・・・」


 「あまり“盗賊ギルド”をなめないほうがいい。侍女頭アヤメ様ならともかく、私と同レベルな貴方たちでは、不覚を取りかねない」 


 「「「「「「・・・:・」」」」」」


 「そうだな。私たちはまだまだ少数精鋭の状態だ。

  無駄な戦力の損耗は、避けるべきだろう」


 「「「「「「・・・・(アナタの)・・・・・(チャクラム)・・・・・・・・(なら余裕でしょう)」」」」」」


 羽矢弥様、マイア様の戦力評価に関し、重騎士たちのそれと、大きなすれ違いがあるものの。


 〔羽矢弥様たちには、何か思惑がある〕と、考えたマリーデは口を開き。


 『ドラゴンクロウ! クロウアラクネ・・・アラクネテクター!!×90


  さらに私は巣を編み、唱える・・・


  アラクネテクター! フェンステクター・・・アラクネフェンス!!!』


 施療院の回りに、防護柵フェンスが急造される。蜘蛛クモ型の竜爪獣クリーチャーが無数に現れ、小山を作ったと思ったら、魔力を発するフェンスが産み出された。


 「こんな感じでよろしいかしらぁ?」


 「ありがとう霧葉殿」


 「うわさに聞く『竜爪獣』は、初めて見るが・・・なるほど見事なものだ」


 「お褒めに預かり、光栄ですわぁ」


 推測していたより、はるかにヤバそうな施療院を目の当たりにして、マリーデはセリフを呑み込む。これは利権目当てに、近寄っていい場所ではない。

 歓楽街の存亡を左右しかねない、リスクを背負う覚悟がなければ、関わってはいけない『拠点』であり。マリーデは即座に戦術的撤退を決め。


 「どうやら忙しい、ご様子ですし。また日を改めて・・:・」



 「そんなつれないことを、言わないで欲しいわ」


 「ああ、マリーデ殿には相談したいことがある。それと霧葉殿にもな」


 〔〔・・・間違いなく厄介事ね〕〕


 『竜爪獣アラクネ』を操る女シャドウ(霧葉)と、一瞬目が合い。同じコトを考えたと確信しつつも、マリーデは笑みをうかべ。


 「相談とは、どんなことでございましょう?」


 「まあ、まあ、まあ・・-・

  山賊狩りしかできない、私に相談なんて光栄ですわぁ」


 本音を隠し、招かれるまま施療院?の中へと入っていった。



 『北欧神話』は魔法の『巨大な船』が三つもある神話であり。

 膨大・広範囲なギリシャ神話の神々が、『海神ポセイドン』まで『チャリオット』に乗るのに対し。『北欧神話』は『ヴァイキングが乗る船』を尊ぶ神話だと愚考します。


 そんな北欧神話において、『美神フレイヤ』のあつかいは異常と言っても過言ではなく。

 あの(・・)『主神オーディン』に対し、フレイヤは『戦死者の半分を、優先的に得る』というチートな特権を持っており。


 『フレイヤ女神はオーディンの妻だった』などという説を唱える人すらいる。『北欧神話は主神の正妻女神の名前すら、まともに伝承できなかった』と言っているに等しい、暴論すらある。それほど『フレイヤ女神』の権利はチートなのですが。

 『ヴァルキリーを束ねるフレイヤ女神』と、いう説も『フレイヤ女神』が武装してないことを考慮すると厳しく。


 そうなると『ヴァイキング』にとって重要な、『船舶』に関わる神格が『フレイヤ女神』だった。

 それなら武装していない、外来の神格でも受け入れられる。

 

 『俗』な話をすれば、船に乗っての航海は『女人禁制』であり。危険な航海から帰ってきた『ヴァイキング』たちは、たまった『色欲』を故郷の港・土地で発散したい。

 そこらへんの願望・欲望が『美神フレイヤ』の信仰になった。『美しい女性』が住まう、豊かな『港・拠点』こそ、『美神フレイヤ』の神格・現し身だと妄想するのですが。


 こういう荒唐無稽な説を考えるのは、ファンタジー好きとして楽しいです。

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