閑話~歓楽の街~融和の手段
北欧神話で『雷神トール』の騎乗する戦車?をひく、『二頭の山羊』は能力・待遇の両方で『家畜』あつかいであり。そうなると『トール』が乗っている『車』も〔『荷車』なのでは?〕と、愚考します。
付け加えると『トール』が『戦車?』に乗って、『移動・旅する神話』はありますけど。
〔『戦車』によって、戦場で敵を倒した。武勲の神話なんてあったっけ?〕と、記憶を探っています。少なくとも日本に伝えられた、『北欧神話』の知識本ではなかった・・・と思うのですが。
戦果をあげておらず、太陽も運ばない『車』は、『侵略戦車』なのか疑わしい。そんな疑問ぐらい抱いても、バチはあたらないと愚考します。
さて『雷神トール』の戦車?荷車のほうは、これぐらいでいいとして。次は『美神フレイヤ』の戦車?をひく『猫』について、改めて考察します。
スラム街を解体する。インフラを整え、住民に雇用をもたらす。
それを為すため元侍女シャドウの羽矢弥が行ったことは、スラム街の土地に価値を持たせる。『魔術封印の区画』を作り、宿泊施設を建て。様々な商人たちを引き込むというものだった。
「私ごときでは『知恵の泉』によって、新たな産業を興す。『施療院』を大きくして、大勢のC.V.様を集めたり。大商いで、従業員を養うことは不可能です」
〔いや、普通に可能でしょう〕〔一つに集中すれば、余裕ですね〕
まず大前提として・・・
〔C.V.様(とシャドウ一族・重騎士)が使う『魔術能力』は、『魔術』ではありません。だから『魔術封印』で使用制限ができなくとも、仕方ないです〕
〔無論、下位C.V.様の『魔術能力』ならば、封印できる『結界』は作れます。ただし維持コストが莫大なため、お値段は莫大な大金になります〕
こんなふざけたことを言っては、確実に信用を失ってしまう。
そのため羽矢弥は『施療院』の患者であるC.V.様とのコネを使って、各味方勢力の兵を動かし。
〔『魔術封印の区画』に手を出したら、各勢力に袋叩きにされる〕と、いうアピールを行うことにより。事実上の『魔術封印の区画』を物心両面で、作り上げたのだが。
「貴族・資産家たちに加え、貴族文化を『魔術能力』としてふるうC.V.様が、泊まるための高級宿を三軒建て。その三軒を中心として、十数軒の少し上等な宿屋を建てていく」
それら宿泊施設の従業員として、元スラムの住民たちを雇ってもらう・・・と、いう交渉をもちかけるが。交渉の本命は宿泊施設が密集する、『区画の維持管理』こそ、住民たちの仕事場だ。
『魔術が封印』されている『区画』なのだから、『魔術』による屋内外の清掃もできない。『宿』で使う寝具・衣服の洗濯も人力で行わねばならず。消費する食糧・燃料の輸送だけでも、かなりの手間だ。
「そういう諸々の維持管理に携わる、人員の振り分けをゼムルグ殿に頼むわ。
それと独自文化を持つC.V.様を泊める?、専用の『宿屋』を一軒あげる。現場の指揮・実際の経営はC.V.イセリナ様が行うけれど。
宿屋の支配人として、来訪したばかりのC.V.様に、都市ウァーテルを案内してあげなさい」
「ハ、ハァーーッ!」
〔異邦人のC.V.様を相手にして、観光で商売をしてもいい〕
暗にそう告げる羽矢弥に対し、スラム街の顔役は平伏する。
戦争種族であるC.V.様は、端的に言って『金持ち』だ。
戦争を行うには莫大な『軍資金』が必要であり。優れた『魔術文明』も持つC.V.様が、不毛な権力争いに忙しい、人間世界で金策を行うのはたやすく。
いざとなれば、欲の皮をつっぱらせた“賊”を襲ったり、返り討ちにすれば。それなりの財貨を得るのは、C.V.様たちにとって難しいことでは無い。
そんなC.V.様との接し方には、細心の注意が必要だが。
〔貴族・商家のしがらみに縛られること無く。金持ちC.V.様を相手に商売が可能になる〕と、いうことであり。無論、『戦姫』の世界における礼儀・不文律はあるものの。
荒くれ者の多い『自警団』にとって、美味しい商売ができる。
一般人を間にはさみ、雇用を創出できれば。金持ちC.V.様の財布からカネを落とさせる、美味しい商売ができる。
「異文化を持つ、C.V.様たちと接する注意点は、後ほど教えるわ。
それとくれぐれも長い目で、利益を得るようにしなさい。C.V.様を怒らせることは、何としても避けたいけど。
民の生活を支える、富を分配する顔役であれば。間違ってC.V.様を怒らせても、温情をかけられる・・・そういう『保険』をかけておきなさい」
「ハハ、ハッ・・・それはもちろん、ええ重々、承知しておりますとも!,!」
「理解してくれて、嬉しいわ」
追求すると、不毛なやり取りをかわし。
複数の『宿』を建てることに伴う、『資材・労働者』についての諸々を、羽矢弥はイセリナ様の代理人へと引き継いだ。
〔スラムの住民に雇用をもたらす〕・・・言うだけなら簡単だが、実行に移すのは困難であり。だから大都市にはスラム街が存在する。
中級シャドウの羽矢弥様は『魔術封印の区画』を造ることで、高級宿の区画を造る。『魔術』を嫌悪したり、宿泊中に『感知魔術』で探られたくない。
そういう“貴族”どもやC.V.様を、客として利益・雇用を創出する。そんな計画を立てられたのだが。
〔スラムの住民など信用できない!〕
〔権力者のコネで雇われようなど・・・〕
〔工事はオレたちの仕事だ。スラム暮らしが割り込むんじゃねぇ!!〕
職人ギルドがいつも通り工事を始め、いつも通りの『人夫』を集め。
現場では不穏な空気が漂っていた。
〔スラム街への偏見・差別だ!〕〔『人夫』は、意外と臆病なんだな^~^〕
〔元スラム街の住民を、“盗賊”と一緒にするな!〕
こういう本音を言って、『宿』を建てる作業員と争っても、不毛なだけであり。
『宿』を建てるコストを抑え。『魔術封印の区画』に伴う商売を、野心家に介入される前に軌道に乗せる。そのために羽矢弥様たちは、この問題を早急に解決しなければならず。
「「「「「力仕事ならば、我々にお任せください!!」」」」」
「資金は潤沢で、出資者も募れますわ」
「高所での作業は、自身があります。何なら設計者のツテも・・・」
「却下よ」
長い休みを与えられた重騎士や商人系C.V.のエレイラ様。その他、シャドウ一族・冒険者までもが、羽矢弥様に協力を申し出てくるが。
彼らに甘える・・・彼らの力を借りて、職人ギルドの作業員をたたき出すわけにはいかない。
羽矢弥様が望まれるのは、スラムの解体であり。
多様な文化を受け入れる混成都市ウァーテルで、一応まっとうな職人ギルドと反目することでは無いし。ましてや生活がかかっている作業員たちを、失業させたあげく。どこかのスラム街に落とすなど、論外でしょう。
「そういうわけで、マリーデ殿。私に力を貸してくれませんか?」
「お任せください、羽矢弥様」
歓楽街・マリーデ自身や旦那様のことを考えれば。羽矢弥様とコネを作る機会は、絶対に活かさなければならない。
マリーデは資金と人員を、惜しみなく投入し。
「素敵ですわ、ガインさん♡」「たくましい筋肉ですねぇ^・^」「お背中を流させてください」「ハイ、あ~ん」「(義理の)弟妹の面倒を見てくださる、お慈悲に感謝します」
「「「「・・・^・^・・~・」」」」「オレ様に任せておけ!」
歓楽街で直接、稼ぐ者たちに加え。こういう時に備え、作っていた人脈をフルに使い、マリーデは『職人ギルド』全体の籠絡にとりかかる。
本来は、貴族・大商人などの権力者たちを、籠絡するための人材だったが。姫長の扇奈様・イセリナ様たちの『狩り場』を荒らすリスクを犯す気など、マリーデには欠片もなく。
「酒蔵を開けて、名酒を出しなさい。個人の好物や、出身地の風習も考えて・・・」
骨抜きにしない程度に、『職人ギルド』を徹底的にもてなす。楽しい夢を見せつつ、その目ざめも快適なモノになるよう。歓楽街の総力をあげて計画的に、作業員たちを『誘導』し。
「さあ、みんなで今日も仕事に取りかかるぞ!」「何か質問はあるか?」「それじゃあ、ここの作業はよろしく頼んだぞ」「飯の時間だ、おまえらも食え!」
元スラムにいた者たちと協力して、『仕事』を行うよう職人ギルドのメンバーを誘導する。
〔優しい人・仕事を教えてくれる先輩・面倒見のいい〕と、いう作業員はかっこよくて頼りになる。
そんな感じにもてはやされば、鼻の下がのびてしまうのが、男の悲しい性であり。元スラムの住民たちも、雇用を得て、将来の展望が見えている状態のため。
まともに接っされ、あつかわれれば、仕事の効率も上がり戦力となる。
こうして多めの給金・手頃な仕事量が、ナゼか『適確』に振り分けられたこともあり。奇跡的な好循環が生まれ。
「みんな、浮かれすぎている」「こんな幸運が続くわけがない」
「そもそもスラムの連中などは・・・」
無論、堅物に異性の誘惑など通じない。家族を大事に思うアインにとって、安全こそ最優先であり。
マリーデたちの『誘導』に乗ることなく。浮き足だった同僚を、苦々しく見つつ、家路についた。
そして来客を迎えることになる。
「こちら作業の進捗が好調であることに伴う。我が依頼人?からのお祝いの肉・菓子とお花でございます。
どうぞご家族で、お召し上がりください」
「まあまあ、ご丁寧にありがとうございます」
「パパ、すごい!」
「ハハ、ハッ・・・それじゃあ、みんなで食べようか!」
大事な家族を誘惑しかねない、美男が『お祝い品』の配達を行ってきた。その影響で仕事場から帰った、アインの『目』から色が消えていく。
〔みんなの幸せのため。どうか御協力を、お願いいたします〕
〔わかった、承知した、言うとおりにする!!〕
視線だけで意思疎通は正確に行われた後、キラキラ輝く美男子は、次の配達に向かおうとするも。
「素敵な花ですね」
「お兄さんも一緒に食べていかない?」
「いえいえ、まだ仕事がありますので、今日のところは遠慮いたします」
「・・・;+゜・・」
妻子は明らかに『お祝い品』より美男の配達人に、目が行っていた。
おそらく他の職人ギルドのメンバーたちでも、同様の光景が繰り返されるのだろう。そんな予想をした、アインの反抗心が粉微塵に砕け散り。
そして職場と『珍しい来客』についての話が交わされる、とても豪華な一家団欒が始まった。
『フレイヤ女神』の『チャリオット』を、『猫』がひいている。
『メスライオン』ならともかく、『猫』に突進させるなど。“ひどい”光景しかイメージできません。
いくら北欧神話の『神々』が武闘派で、戦神を兼務していようとも。無謀な突進は限度・一線を越えており。一撃離脱の空中攻撃をしているなら、その問題も解決できるでしょうけど。
『弓矢・雷霆』などの遠距離攻撃ができる『神具』を持たない。『トール』同様にチャリオットで武勲を立てたという、『神話』を聞いたことがない『フレイヤ女神』に、それは無理があると愚考します。
ただし『雷神トール』が従えている『二頭の山羊』と違い。『猫』たちにはパワーが無いので、〔『荷車』をひいている〕と、いうのも厳しい。
『家畜化した山羊』は戦車をひいたりしませんが。それ以上に『猫』が荷車をひくのも、荒唐無稽がすぎる。いくら『北欧神話』に小人が活躍しても、『小さな獣』が力強くチャリオットを引いて、突撃するのはシュールであり。
そんなシュールなイメージを『神具』にするのは、難しいと愚考します。