閑話~『魔術?』を封じる区画
六つ足の馬『スレイプニル』を駆る、嵐を司る主神オーディンに対し。時代後れな『チャリオット』を駆る、トールとフレイヤはどんな神格だったのでしょう?
私は『農工』の神格だったと推測します。
中世ファンタジーに登場する『馬車』は振動がひどく、乗り心地のいい物ではありません。
そして『馬車』より古い技術で作られ、戦場を駆ける『戦車』は〔乗り心地が悪い〕などと、言ってる場合ではなく。
『整備不良』が即、命に関わる。未熟な技術で製造され、戦場の地形を走れる『技術レベル』に達していなければ。莫大なコストをかけて鍛えた『戦士』を失い、惨めに敗北しかねない。
そんなロクでもない『戦車』を、北欧の『ヴァイキング』たちが戦場で使っていたとは思えず。加えて船乗りであった『ヴァイキング』が、陸上の古代兵器を尊び。
人気のある『雷神・美神』の神具にするのは、不自然だと愚考します。
混成都市ウァーテル。交通の要衝であり、公平感のある取引・司法が機能している。それでいて【まっとう】と認めた、既存の文化に敬意を払ってもいる。
生活・商いの場として、大変に魅力的な都市だが。リスクや欠点もあり。
その一つが『魔術都市』であることだ。
『魔術』の恩恵を受けられ。人間の魔術士が学ぶには、良い環境が整っている。
他では有り得ない人数の『条件つきの、魔術使い』が在住しているものの。
『マジックユーザー』でないものは、一方的に魔術士から搾取される。どこで魔術による“反則”が仕掛けられるか、知れたものではない。理解どころか、想像の枠外にある『魔術』に怯える。
そういう『非マジックユーザー』の偏見・当然の警戒心がある中で、『魔術の使用に制限をかける区域』の存在は大きい。
無論、最高権力者である聖賢の御方様が行使なさる、『魔導能力』の余波を防ぐことはできないが。
それでも不届きな魔術士の行動を制限できる。
色ボケたり、暴走したり、人間文明を否定することが珍しくない。そんな当たり前に『魔術』を使ってくる。C.V.様をそれなりに抑えられる?・・・『魔術の使用を制限する区域』の存在は大きく。
「何としても、この区画に『宿泊施設』を建造する。『すいーとるーむ』がある高級宿を運営し。
絶対に女性たちから逃れる、退避所を確保するぞ!!」
「「「「おオぉっーー・・・ー!!l」」」」
「・・・ー・:・」
元スラム街の一画。かつての悪徳の都ウァーテルが陥落した際に、かろうじて生き残った。そんな荒くれ者?のアジトに、野郎シャドウたちが押しかけ、気勢を上げていた。
〔アホだ・・アホがいる〕
その連中を胸中で罵りながらも、集団を束ねるゼムルグは、連中を受け入れるしかない。何故なら腐っても男性シャドウの戦闘力は、ゼムルグたちが束になってもかなわず。
野郎の後ろ?にいる・・男シャドウを取り囲む魔女C.V.たちは、まさに理不尽の権化であり。
部下たちの命を守り、食わせなければいけない。ゼムルグが取れる選択肢は限られていた。
「それではオレたちの仕事は、今まで通りでいいんだな?」
「ああ、それでかまわない。今まで通り、この区画の住民を養ってくれ」
「わかった。『宿』の仕入れと用心棒は任せてもらおう」
『住民を養う』:本来それは、ゼムルグたちの仕事ではない。
せいぜい流血沙汰を減らし。部下の食い扶持を稼ぐついでに、『利害調整』をするだけだ。
かつてはそれを“甘い連中だ”などと、シーフたちに見下されていたものだが。
その穏健な方針が、混成都市ウァーテルを統べる、C.V.様たちに評価され。
ゼムルグたちは、かろうじて首の皮一枚がつながり、こうして生きのびている。
「用心棒だけじゃなく、オレたちの仕事を受けないか?」
「報酬に『宿』を一軒くれてやる」
「何なら、人を紹介してくれるだけで・・・」
「食材・雑貨の仕入れと用心棒だけを任せてもらう。
それとこの区画の住民たちは【羽矢弥様】の庇護下にある。勝手に使い潰してもらっては、困るんだが」
「「「・・・・+・・・」」」
住民たちに加え、ゼムルグたちにとって羽矢弥様の名前を出し、“ロクデナシ”たちの誘惑をはねのける。
こいつ等のいう『仕事』というのは、ウワサを流して情報操作を行ったり。ハーレムの女どもに“小細工”を弄する、“お手伝い”をさすのだが。
〔仲介を行っただけで、オレは知らん〕〔ソンナことは想定外だった〕
〔オレたちを従えたいならカネを寄こせ〕
〔『マグマボール!』〕
〔〔〔*+;ッ!?ギャァーーー!;!〕〕〕
〔お金より大事な『命』を助けてあげる。報酬はそれでいいわね?〕
〔〔〔イエッサー!:!〕〕〕
怒り狂ったC.V.様たちは『戦争種族』であり。
〔子作りに参加しているC.V.は、節度をもって穏やかにすごすこと〕と、いう類の不文律など普通に破ってくる。
ゼムルグとしては、そういう理不尽に巻き込まれないよう。配下を教育し、組織の運営を慎重に行う必要があるわけだが。
「酒は駄目だが、隠れ家にツマミぐらい置いてやる。
それと前の持ち主が置いていった、古本・遊戯盤は好きに使ってくれ」
「おおっ!?」「ありがとう、アリガトウ・・・;」「恩に着る!!」
〔だったらオレたちに、かかわらないでくれ!〕
たとえロクデナシだろうと。
ソレより弱いゼムルグの立場では、『配慮?の外交』を行わねばならず。
それから連中が帰るまでの間、ゼムルグは一夫多妻の旦那たちを、もてなし続け。奴らの鬱屈とやらを聞き流しつつ、野郎どもの接待に務めた。
「酒を持ってこい!オレは一切ナニも聞いてない・・・そうだなっ!;!」
「「「「「モチロンです、ボス!^!」」」」」
〔だったら、その逃げ腰は何だっ!:?〕
不毛な八つ当たりのセリフを飲み込み。
〔安酒を飲むこと〕を条件にした『暗示』によって、ゼムルグは聞いた内容を、完全に忘れ去った
羽矢弥が作ろうとしている『魔術の使用を制限する区画』には、様々な問題がある。利権の調整・養える住民の数や風評など。
解決し続けなければならないことは、多岐に渡るが。
当面、最大の問題は『魔術の封印・使用禁止など、絶対に不可能だ』と、いうことだ。
その理由は『魔術能力』が存在するため。
『異能(個性)』と『魔術(知識の蓄積)』のいいとこ取りをした『魔術能力』は、『異能』と同程度に封印が困難であり。『魔術』と同様に、『封印』への対抗策を編みだしてしまう。
そして人間の魔術士どころか、『魔術能力』を使用するC.V.様ですら。『魔術』と『魔術能力』を、明確に判別するのは極めて困難であり。
『魔術能力』に関しては、C.V.様との『外交・契約』によって、使用制限をかけるしかなく。
『『『『ヒートバルカン!』』』』
『氷霧を帳に、流水を足枷に、そして氷で鞘を作る』
『来なさい・・・竜爪獣!!』
「「「「「「ギ/*ァ*ー;」」」」」」
『魔術』の封印を行う。実際には〔『魔術』の使用制限を行うのがやっと〕と、いうのが現状なのだが。
元スラム街だった区画の外周部では、『拘束』の効果を持つ『魔術能力』が、連射され猛威をふるっていた。
「・・・『ヒートバルカン』は初見ですけど。
どう見ても『遠距離の攻撃魔術』ではありませんかぁ?」
「大丈夫ですよ、霧葉さん。
既に『ヒートコート』をかけていますから、致命傷になる可能性は、限りなく低いですし。
もし打ち所が悪くても、私が命だけは助けますから」
「そうですか。それなら安心ですねぇ」
「ひぃッ!?ー~*;イアyだぁ:ー」
蜘蛛型の竜爪獣の爪が肉をえぐり。あらぬ方向に曲がった関節を、『霊糸』でがんじがらめにしていく。
そのとなりで『気体・液体と固体』の『魔術能力』が、3種類の行動阻害を“賊”たちにかけていき。
“とにかく騒乱を引き起こし、妨害工作をするぞ!”と、いう連中の心胆を寒からしめ。
「・・・・・これって、オレまで仕掛けたら過剰・」
『それなら水那が水路に”不届き者”たちを引きずり込んでから、●・・』
「さあっ!オレの『旋矢笙』で嫌がらせをしてやるぞ!!
〔多数の勢力に富の分配をする、この『区画』に手を出すのは割に合わない〕と、思い知れば。奴らもここに、手出しを控えるだろう」
『仰る通りです、兄様』
「ヤメッ!*?やめてくれっ・・食べないd///g`-/*moガg`-B+;*」
『水那』の操る『多頭蛇竜』が、鳥肌を立てた密偵を締め上げつつ、別の蛇頭が上半身を甘噛みにする。
その光景を目の当たりにした、下級シャドウたちはドン引きしていたが。
〔今日の『水那』は、おとなしいな~〕と、タクマは思っていた。
〔施療院の近くで流血沙汰×惨殺が、派手に行われるのは問題だろう〕
その考えのもと、”賊”たちの無力化が行われ。死人は全くと言っていいほどでず、大勢のチンピラ?が捕縛されたが。
「「・・;O.;ー・・」」「「ヤメテ、やめて、ヤァ~;~」」
「何でも言います!!どんなことでもお答えします!;`+だからぁ;・;」
心を折られたチンピラ連中が、牢番シャドウにすがりつき、哀訴を繰り返す。
その結果、弓兵シャドウのタクマが、『心を病ませる毒矢』を放ったというウワサが流れ。
『誤解です!兄様が、そんな「恐ろしい」ことをするわけがありません!!
だって私が「水蛇の毒」を渡した時も・・・』
「・・・と、『水那』さんは言ってますけど。
タクマさんは、悪評の払拭を行いますか?」
「・・・;・悪評だろうと、弓兵の名が広まったことには違いない。
どうぞ放置でお願いいたします!!」
「承知いたしました。イリス様には、私からお伝えします」
こうして仮初めの『魔術の使用を制限?する区画』が設立され。
その周辺の区画も、否応なく全面協力することとなった。
『雷神トール』・『美神フレイヤ』は、それぞれ『チャリオット』を駆っていますが。その正体は『荷車』だと妄想します。
〔荷車なんて、くだらない〕と、言うなかれ。『荷車』こそ『大量の補給』を可能にした、準兵器であり。荷物を運ばせる、『牛馬』を一頭減らせれば、そのコストが人間の腹を満たす。
『流通革命』どころではなく。人の生死・戦の勝敗を左右する、『補給・輸送』の重要機器が『荷車』だった。『北欧神話』の時代・地域は、『侵略戦車』などより、『荷車』のほうが重要だったと愚考します。
その根拠として、『トール・フレイヤ』の車をひく『獣』を、見ることをお勧めします。
『神力・神格』で魔改造されてなければ、『山羊・猫』にチャリオットなどひかせません。
〔せめて『猫』の代わりに、『メスライオン』を使えよ〕と、思うのは私だけでしょうか?
そして『美神フレイヤ』より、『雷神トール』のチャリオット?をひく『山羊』は、もっとツッコミを入れたい。
世界中を見渡しても、『山羊』がひくのは『荷車』であり。
『戦車』以前に『山羊車』すら聞いたことがありません。もちろん私の不勉強で、世界中のどこかに存在するにしても、主流ではないでしょう。
何より『雷神トール』が所有する、二頭の山羊『タングリスニ・タングニュースト』の能力?・あつかいは、『軍馬』のそれにとは、かけ離れており。
『トールたちに食べられる。骨・皮が無事なら再生して、また食べられ続ける』と、いうもの。『家畜・食肉』のあつかいであり、『騎獣?』として大事にされているとは思えません。
〔家畜がひくのは『荷車』であり。畜肉あつかいな山羊が、『戦車』をひくなどおかしい〕と、私は思うのですが。征服大王の駆る戦車の『神牛』を思い浮かべると、そのあつかいの差は歴然だと愚考します。