閑話~水蛇の姉妹:旋矢笙の誓約::
私は『戦車』が嫌いです。『侵略しない銀チャリオット』『飛翔する征服大王の戦車』など、一部の例外はありますが。
〔馬、特に軍馬はひき逃げ?事故?をやらかしている。それならチャリオットは『人員・血税』を含め、もっとひどいだろう〕と、思っており。『軍神アレス』の“チャリオット”などは、その最たるものでしょう。
とはいえ神話の『チャリオット』には、『太陽を運ぶ』という重要な役目があり。
『北欧神話』の太陽・月は『スコルとハティ』という、『フェンリル』の子供たちに追われ、呑み込まれる時があるとのこと。
『太陽を運ぶ戦車』は神聖な兵器だったのかもしれません。その割に固有名称がある『チャリオット』は少ない。英雄大戦でしか耳にしませんけど。
しかし外来の神である『女神フレイヤ』が、『戦車』を駆るとなれば。他の『神話』と同様に、『太陽を運ぶ戦車』というイメージが伴う。『豊穣をもたらす太陽神』という面が、『フレイヤ女神』にあったかもしれません。
タクマが所属するシャドウ一族は、かつて“密偵稼業”を行っていたとか。そもそも『シャドウ』の名も『世の影・陰』から来ており。戦乱の時代は、裏社会で活躍していた時期もあったとのこと。
もっとも、それは今では昔の話であり。聖賢の御方様にお仕えしてから、シャドウ一族はもっぱら密偵狩り・退治を行っていた。
一時期C.V.様に、その役目を奪われたものの。『士官及び、その試験』を転機に、タクマたちが『御役目』を取り戻そうとしたのだが。
〔私の目的のために、派手な『術式』の使用はおやめください〕
〔言うことを聞いてくれ!お願いだっ、頼むぅーー:・〕
〔・・・ごめんね。今回は羽矢弥ちゃんの言うとおりに、してくれるかな〕
尻に敷かれた野郎の泣き言はともかく。
敬意をはらうべき元侍女様、忠誠を誓った聖賢の御方様に【お願い】されれば、否やなどあろうはずも無く。
タクマたちは最低限の『密偵狩り』だけで、任務を停止することにした。
「いいか・・何としても『コレ』を届けてくれ」
「任せろ。だが、貴様自身で運ばなくていいのか?」
スラムの一画にある建物。ボロ小屋で気配を消した者たちが、素早くやり取りを交わす。
その手には包みでくるまれた『吹き矢筒』があり。
羽矢弥様との模擬戦で、タクマが落とし紛失したものだった。
「俺は駄目だ・・もう目を付けられているかもしれん。
それに近々、スラムで大きな動きがあるだろう。それを調べるまで、逃げるわけにはいかん。身を潜めて・・・」
『雷旋矢』
「*.!/*」「「「「なっ!・?」」」」
高威力の『旋矢』が、小屋の屋根ごと『密偵』を撃ち抜く。帯電した『矢じり』が標的の即死を、射手に伝え。
「くっ・・」
くるんだ『吹き矢筒』をつかんで、生き残った密偵たちが脱兎のごとく駆け出す。
その1人が懐から瓶を取り出し。
『旋矢』
「`+*!/っ?」
タクマの狙撃で瓶を取り落としても、かまわず走る脚を止めない。その速度はなかなかのものであり。他国の密偵としては、腕利きの部類に入るのだろう。
「「・・^・-」」
『待て、こいつらは俺がしとめる・・・-・旋風閃っ!』
『術式信号』で、包囲している見習いシャドウたちをとどめ。
弓を背負い、『加速の身体強化』を発動して、タクマは疾走する。そうしてまたたく間に、駆ける密偵たちの側面をとると。
『旋矢笙』
「*;っー」
『風術仕掛け』の吹き矢筒から、『吹き矢』を放ち。延髄を穿って、1人を仕留める。
「チィッ!オレが足止めをする!!おまえらは、逃げろっ」
悲痛な叫びをあげて、密偵の一人が殿を名乗り出る。命をかけた戦士として、讃えるべき行いなのだろうが。
「『旋矢笙』×3」
「ぐっ!*?ギ+*、あァっ!?」
右目、左手指がそれぞれ穿たれ。『旋矢』で操られ急降下した『吹き矢』が、右膝の皿に突き刺さる。それは覚悟の力では、どうにもならない混乱を身体にもたらし。タクマにかすりもしない、飛び道具を放つのがやっとだった。
「・・:-++.>。逃がさんぞ、シーフども!」
〔〔〔承知っ!〕〕〕
「待てっ、キサマぁ・・待って*;k`」
あいにくタクマは『命がけの行為』に、いちいち感動することはない。
彼が尊ぶのは、日々を必死に生きる人々の営みであり。それを無秩序に破壊して貪る、“連中”の尊厳など“踏みにじるモノ”でしかないのだ。
『旋風閃!』
「・/*-/ーッ・・・」「*::~*+:」
さらにタクマは加速し、一人の肩口を切り裂き。もう一人を壁とのクッション代わりに圧殺し。
「チッ、浅いか・・せん矢!」
「グ・`・ウオォーーッ」
山なり曲射の『矢』が追撃を行うも。限界以上の脚力を引き出した、密偵はかろうじて『矢』をかわし。タクミの視界から消え去った。
身体を清める。かけられた『呪術』を解く。
本職の密偵にとって、それらは必須事項だ。魔術を使う連中の追跡を振り切り、『情報』を持ち帰る。そのために使い捨ての『耳目』から『情報』を集積し、長に伝える密偵は『解呪』を入念にかけてから、拠点に戻らなければならない。
その『解呪・破術』つながりで、密偵は神殿とつながったそうだが。
本神殿が“絶望の光”に落とされ。密偵が独自の『解呪手段』を編み出した以上、その関係は大きく変化するだろう。
「ただいま、戻りました」
「戻ったか・・ご苦労だったな」
そうして身体を洗浄したメズルは、アジトで報告を行う。
人間相手の諜報活動は『手紙・電書鳥や魔術道具』など、様々な伝達手段があるが。『魔力』を盗み取る魔女C.V.たちは、それらを『透視』している可能性が高く。
実際、そうでもしないと説明がつかない、『情報』の流出があり。
実際、メズルに刻まれた『傷』も、『魔術の目印』になっていないか、徹底的に調べ。偽装のアジトに滞在して、シャドウが襲撃してこないかなど。メズルは複数の手段で『身体を清め』たのだが。
「それでウァーテルはどうだった?」
「C.V.連中が我が物顔で、ふるまっています。しかもシーフどもへの警戒をゆるめることも、一切ない。奴らは〔配下を増員する〕なんて、言ってますが。
あれは間違いなく『罠』ですぜ」
「そうか・・・そう判断した理由は何だ?」
「・・おおっぴらに『魔術』を披露している。隠せるはずの『魔術』を見せて、オレたち密偵を釣りだそうとしています」
「ほう・・・」
そして『罠』だとわかっていても、密偵はそれを無視できない。『情報』を得るのが、密偵の仕事という理由もあるが。
金で情報を得ていた者が、次々と行方不明になれば。直接、調べるしかないという、不穏な状況だからだ。
その後もメズルは、密偵の長ミスラへいくつも重要な情報を伝え。
「こんなところでしょうか」
「ああ、よくやってくれた。貴様には・・・」
『そろそろ遺言は終わりましたか?』
「「!!ッ:・*gaアa*aa--ーー:~」」
獣すら吐かない、絶叫を強制的にあげさせられた。
〔協力し団結すれば、その力は何倍にもなる〕と、いう主張があり。世の中には弱肉強食を唱え、それを否定する者が少なくない。
しかしユリネ姉様の『魔竜鬼』である『水那』にとって、その主張は“愚劣”としか言いようがなく。〔“発狂”しているに等しい〕と、言っても過言ではない。
何故なら人間は『五感』という五つの感覚器が顔面に集中しており。
少なくとも『聴覚・嗅覚と視覚』の感覚で得た、『音・臭いと光学』3種類の『情報』を束ね。それらを実戦で活かさなければ、生き残れない。
『協力・団結』の力を否定することは、そういう人体・顔面の構造を否定することであり。
〔どうせ暴力万歳な“ケダモノ”なんだし、とっとと引導を渡しましょう〕
〔はい、姉様〕
〔ちょっと待てぇい!『水那』に物騒なコトばかり、教えるな!!!〕
そんなやり取りの後に〔水を綺麗に〕と、いう穏健な企画が潰されてしまい。仕方がないから『水那』はタクマ兄様たちのお手伝いをしている。
どうせ自分たちのプライドを最優先にして。その影響で“他人が泣こうが、渇こうが、奈落に堕ちようが、知ったことではない”と、いう連中なのだ。
“弱肉強食”の教えにならい、『魔竜鬼』に蹂躙されても、文句はないでしょう。
『酷冷泉泡×8』
「「「「「「「「ガボ、がg`-ァーーーp」」」」」」」」
『魔力』の塊である『魔竜鬼』は、人間と異なり『魔術は神秘だ』と、認識しない。腕をふるい、指で作業をするように、自らの『属性魔力』を操る。
よって一度、ユリネ姉様から『魔術』を教えられれば、低コスト・無詠唱でその『魔術』を行使可能であり。『酷冷泉』を改良した、『酷冷泉泡』の同時発動も容易なことだ。
「なんでっ・・どうしてこKOコ;`*・-ー」「ヒィ-ー;~」
「「「;+*・・・」」」「来るなっ、くる*;+」「「ギャァーー・-」」
『魔力』で質量を増した、無数の水の泡が狭い空間を乱舞する。
逃げ道をふさぐように、逃走経路が存在するかのように『酷冷泉泡』の泡が踊り。
「冷たっ!;?・・`ー」「おいっ!?」「卑怯な妖術を使うとはっ・・-・」
「術者を探せっ!“バケモノ”を操る魔ジョ*`//g`-/*\*;」
『よく聞こえなかったなわ。もう1回、そのユカイなお口でさえずってくれる?』
「「「・・:ー;*」」」
『魔力』で構成した『水蛇の蛇体』で、密偵の一人を文字通り締めあげる。
間接が歪み、ねじれた胴体を持ち上げ、天井の建材を頭で打ち鳴らす。そんな単純な“暴力”を見せただけで、“弱肉強食の住人”たちは恐怖で凍りつき。
『酷冷泉泡!!!』
脚が止まった連中を、『水那』は容赦なく『魔力の水泡』に呑み込んでいった。
ネタバレ説明:『水那』と『旋矢笙』
下級シャドウであるタクマ。その妹である侍女シャドウのユリネ。
彼女が自らの『魔力』で産み出した、クリーチャーもどき+守護霊+分身?で家族な『魔竜鬼』の『水那』は、不思議な『つながり』があり。
今回はそれに『誓約』をかけて、密偵の居場所を調べました。
『術理』として、まず『旋矢笙』の放つ吹き矢を被術者に刺し、『術式の目印』をつける。それを『水那』の感知で探ったというもの。
この程度なら一人で行う『目印+探知』を、単なる分業にしただけであり。
密偵のメズルが『身体を清めた儀式』で、『術式目印』は解除される。もしくは『目印』をメズル察知されたでしょうけど。
1)タクマは『旋矢笙』で『吹き矢』を放ち、標的に『目印』をつける。
1`)ただしタクマ自身は敵が逃走した時点で、『目印』を見失い『探知』できなくなる。(戦闘が継続しているなら、探知も続けられる)
2)『水那』は『分体の水蛇・水滴』を標的に巻きつかせ、付着させて『目印』をつけられる。その『感知』もできる。
2`)ただしタクマが見失った『目印』の感知を始めると、『水滴の目印』は効果を失う。『分身の水蛇』は一時的に見失う。
3)1)~2)を『誓約』とする。それにより『水那』は『タクマの目印』を、かなりの長距離・高精度で捕捉できる。
この章では〔肩口を切り裂いた〕時に、『旋矢笙』で吹き矢を射出して、『目印』をつけていました。
ちなみに『雑な魔術』で『タクマがつけた目印』を消しても、『水蛇の魔竜鬼』はナゼか探知してしまい。間違っても『泉・聖水』などの『水属性魔術』で、『解呪』を行ったりすれば。
妹さんの『水那』は〔絶対に逃ガサナイ〕と、おっしゃっています。
〔ハ、ha、ハッ、ナゼなんだろうねー;ー〕
〔〔〔てめぇとは、絶対に歓楽街に行かねえ。近づきもしねぇ!!;!〕〕〕
〔申し訳ございませんが!^!皆サマは出禁にさせていただきます。
『見舞金』とか不要ですので、絶対に来ないでください!;;!〕
ちなみに『吹き矢』をタクマ自身に刺すと。『水那サン』は〔救援信号が発せられた〕と、認識して急行します。
お互いの【プライバシー】を守るため、兄妹でたくさんの『創意工夫』をしているようですが。平時は兄貴に門限をつけて、とりあえずの対処となさっています。
もっとも『北欧神話』の太陽神として、〔最有力候補は『バルドル』のほうが可能性が高い〕と、愚考します。不死性があり、光り輝き、巨人を含む皆(ロキを除く)に愛された。
北欧より南の地域では、『太陽は光と日照りをもたらす』と、いう中道の存在ですが。雪深い北欧において、太陽は求めてやまない『人気のある存在』であり。人気チートを持つと言っても、過言ではない『バルドル=太陽』だと思うのです。
『女神フレイヤの戦車が、太陽を運んだ』と、いう具体的な神話が伝承されていない以上、『楽しい妄想』の域を出ない。『外来の神だから、アレンジ神話があるかもしれない』と、いう程度の話です。
ただし『フレイヤの戦車』をひく『猫』は、『バルドル』のような本命・対抗馬の存在がなく。こちらはもう少しマシな推測をしてみたいです。